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無印良品映画の頁(2)
驢鳴犬吠2001
日日是労働セレクト168
日日是労働セレクト168
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第168弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト168」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 You Tube で邦画の『東京おにぎり娘』(監督:田中重雄、大映、1961年)を観た。微温的な映画だが、
昭和の中頃(昭和36年)の雰囲気が味わえる作品である。まさに小生が小学校に上がった年であるが、新橋、
銀座、浅草などが出てきて、懐かしかった。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  長瀬喜伴・高岡尚平の共同脚本を、『誰よりも誰よりも君を愛す』の田中重雄が監督した下町もの。
 撮影も『誰よりも誰よりも君を愛す』の高橋通夫が担当した。

   〔あらすじ〕

  新橋の烏森にあるテーラー直江は親爺の鶴吉(中村鴈治郎)が頑固で昔気質なためにちっともはや
 らない。生地屋から借金の取り立てがうるさく、不動産屋がバーか飲み屋にしようと狙っている。見
 かねた娘のまり子(若尾文子)は店を改造しておにぎり屋を始めた。この美人でチャキチャキのまり
 子をめぐって三人の男性がいる。一人は白井五郎(川口浩)、まり子とは幼馴染で新宿の劇場で演出
 をしている青年だが、まり子はどうやらこの五郎に気がありそう。しかし五郎はまり子に対しては兄
 妹愛しか持っていそうもない。あまり親しすぎて、好きだの惚れたのという感情はもてないのだ。村
 田幸吉(川崎敬三)は、以前鶴吉に馘にされた弟子だが、今は職人を二十人も使って既製品メーカー
 としてうけに入っている。まり子が大好きで、おにぎり屋の資金をまり子に提供したのもこの幸吉で
 ある。最後の一人は、近所に住むあんちゃんの三平(ジェリー藤尾)で、パチンコ、麻雀にうつつを
 抜かして毎日ブラブラしているが、まり子への惚れ方は大変なもので、まり子も自分に惚れているも
 のと立派に思いこんでいる。まり子が、おにぎり屋をはじめると、早速すっとんできてねじり鉢巻で
 手伝いをはじめる調子のよさだ。おにぎり屋「直江」は開店以来大繁昌。鶴吉はテーラーの看板ごと
 二階に追いやられる結果になったが、娘の立派な甲斐性にまんざらでもない。だがまり子の叔母かめ
 (沢村貞子)や、麻雀屋の女将のはま(藤間紫)、五郎の母梅子(村田知栄子)が入れかわり立ちか
 わり彼女の縁談に一生懸命である。だが五郎を愛するまり子はてんでそんな話をうけつけない。その
 頃、五郎の劇場の踊り子でみどり(叶順子)という女の子が出現した。このみどりが、まり子と腹違
 いの妹と知ってびっくりしたり懐かしがったりの父親鶴吉を、まり子はもの判りのいい娘らしく優し
 く赦してやるのだった。しかしみどりが五郎と恋仲であると知ってまり子はガッカリ。淋しさを幸吉
 の誕生祝いでまぎらわそうと飲みつけない酒を飲み彼女は泣いていた。鶴吉も三平もそんなまり子の
 酔態をいたましげに見つめるだけだった。翌日はカラリと晴れた上天気だ。“おかかとウニとタラコ
 ッ”……三平の威勢のいい声で忙しくおにぎりを握るまり子の顔にはゆうべの悲しさはみじんもない。
 四方丸く納まって、まり子と幸吉の間に何やら恋の風が吹いて来たようだ。

 他に、瀬川雅人(太郎=まり子の弟)、伊藤雄之助(田代=鶴吉の馴染客の社長)、伊達正(サンドイッ
チマンの男)、橘喜久子(同じく女)、大山健二(直江の土地を狙っていた紳士)、八波むと志(不動産屋)、
早川雄三(生地屋の営業マン)、中田勉(TVの月賦屋)、志保京助(麻雀屋「はま勇」の客A)、小山内
淳(同じくB)、篠崎一豊(大工A)、藤山浩二(同じくB)、守田学(酔客A)、夏木章(同じくB)、
三角八郎(チンピラ1)、大川修(同じく2)、森一夫(同じく3)、飛田喜佐夫(運転手)、田中三津子
(おでん・小料理の「おかめ」の女中)、花村泰子(お好焼屋の女中)、三島愛子(料亭の女中)、響令子
(そばやの女中)、仲村隆(青年一)、網中一郎(同じく二)などが出演している。
 話が大時代的だが、小生が小学生の頃ならば、別に不思議でもなんでもない話ばかりだった。今どき、父
親が昔芸者に産ませた子どもが目の前に登場して、「腹違いの妹です」と挨拶される人などいるのだろうか。
しかし、この頃ならば十分にあり得ると思った。また、オーダーメイドの洋服仕立ては廃り、既製品の店が
繁盛する様子が描かれているが、さもありなんである。時代は大きく変わったのである。


 某月某日

 DVDで邦画の『トラック野郎・故郷特急便』(監督:鈴木則文、東映東京、1979年)を観た。この作品を観  
るのは2回目で、前回の鑑賞のときの感想文が「日日是労働セレクト49」にあるので、以下に引用してみ
よう。


 *********************************************

 某月某日

 DVDで邦画の『トラック野郎・故郷特急便』(監督:鈴木則文、東映東京、1979年)を観た。第10作にし
て、事実上の最終作。もしかすると、このシリーズの最高傑作かもしれない。マドンナは異例の二人。一人
は風美子(森下愛子)という高知のドライヴインで働く若い女性。もう一人は、ドサ回り(地方巡業)の演
歌歌手である小野川結花(石川さゆり)。星桃次郎〔一番星〕(菅原文太)は、惚れた女から振られるのが
これまでの定番だったが(例外は、『トラック野郎・度胸一番星』の乙羽水名子〔片平なぎさ〕)、この作
品では、結果的に結花を振ることになる。彼女の歌手としての花道を邪魔することになると判断したからで
ある。高知の桟橋での二人の別れの場面は、これまでのどの作品の中でも光っていた。風美子の方は、「土
佐犬」命のトラック野郎である垣内竜次(原田大二郎)と結ばれる。結局、一番星は独り身を余儀なくされ
るというわけだ。文太の歌の一節に「男の旅は一人旅/女の道は帰り道/しょせん通わぬ道だけど/惚れた
はれたが交差点/アーアー/一番星空から/俺の心を見てるだろう」(「一番星ブルース」、作詞:阿木燿
子、作曲:宇崎竜童、編曲:近藤和彦、唄:菅原文太・愛川欽也、1975年)があるが、まさに男の旅は「一
人旅」こそが相応しい、と語って幕を閉じることになった。また、愛川欽也(やもめのジョナサン=松下金
造)絡みの話は、彼が目の病から回復して、妻の君江(春川ますみ)との夫婦愛を改めて確認するという筋
書である。他に、大坂志郎(垣内清馬=竜次の父)、大月ウルフ(バーナード)、セリー・ハーケン(タミ
ー)、南利明(幸蔵=土佐犬の調教師)、日向明子(一条しのぶ=結花と同じドサ回りの歌手)、波乃ひろ
み(矢野多美子=風美子の同僚)、山城新伍(奥村=レコード会社のディレクター)、安部徹(岩瀬=竜次
の仇)、小畠〔小畑〕絹子(西尾サワ=風美子の母)、名和広〔宏〕(関根)、青柳裕介(検査役)、由利
徹(坊主)、藤巻潤(警官)、玉置宏(大阪梅田コマで、結花が「南国土佐を後にして」〔作詞・作曲:武
政英策、唄:ペギー葉山、1959年〕を熱唱するときの司会者)などが出演している。まだまだ書きたいこと
があるのが、それは折を見て記すことにしよう。なお、配役等については、<goo 映画>を参照した。

 *********************************************


 ほんの一部を除いて、映画の内容は覚えていなかった。鈴木監督の演出も、こんなにハチャメチャとは思  
わなかった。もっとも、それなりに楽しめたので、人気娯楽映画の強みと言えよう。出演者も、主演の菅原
文太を含めて鬼籍に入った俳優が多く、それだけ年月が経っている(40年)ことに改めて思い至る。本人は
亡くなっていても、これだけ活き活きと銀幕の中では躍動するのだから、役者冥利に尽きるだろう。これか
らも観たことのある映画を再び鑑賞して、違った感慨を得てみたいものである。
 念のために、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。
なお、一部改変したが、ご寛恕願いたい。

   〔解説〕

  お馴染、桃次郎とジョナサンのコンビが土佐路を舞台に走り回るシリーズ第十作目。脚本は『天使
 の欲望』の中島丈博と松島利昭の共同執筆、監督は『堕靡泥の星 美少女狩り』の鈴木則文、撮影は
 『暴力戦士』の出先哲也がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  銚子市場から次の荷を高知へ運ぶことになった星桃次郎(菅原文太)とやもめのジョナサン〔松下
 金造〕(愛川欽也)は、カーフェリーで高知に何かった。同じ船に乗り合せた地方廻りの歌手、小野
 川結花(石川さゆり)が楽譜を海に落としてしまい、桃次郎は海に投び込んでかき集める。高知につ
 いたところで、ジョナサンは目がくらんで蛇行運転、診断を受けると、脳血栓の疑いとか。悲観した
 ジョナサン、足摺岬で自殺を企るが、ドライブインの店員、西尾風美子(森下愛子)に助けられる。
 美人の出現で桃次郎は大ハリキリ、彼女を家に送っていく。家では中気の母・西尾サワ(小畠絹子)
 が寝ていた。隣の家に住む老人、垣内清馬(大坂志郎)は六年前に行方不明になった息子、垣内竜次
 (原田大二郎)を待ち続け、その嫁に風美子を迎えようとしていた。数日後、土佐犬をわきに座らせ
 たトラック野郎、竜次に出会った桃次郎は、そのことを告げに清馬のところへいくと、風美子の母が
 危篤で、彼女は「南国土佐」を聞かせたいという。風美子の願いに、桃次郎はキャバレーで唄ってい
 る結花を、ヤクザの岩瀬(安部徹)が止めに入るのを無視して連れ出し、臨終にはなんとか唄を聞か
 せることができた。一方、ジョナサンは病気も全快して川崎へ戻った。清馬の家では竜次が六年ぶり
 に帰ってきていた。そんなとき、闘犬大会が開かれることになった。竜次の竜馬号と岩瀬の犬が闘っ
 た。トラック仲間や風美子が応援にかけつけ、竜馬号は不利な形勢から逆転勝ち。幸せそうに肩を寄
 せ合う竜次と風美子、桃次郎もドサクサにまぎれて結花にプロポーズ。その時、桃次郎が乗せたこと
 のある外国人のヒッチハイカーがやって来た。彼バーナード(大月ウルフ)はアメリカのレコード会
 社のディレクターで、結花を大阪梅田コマに出演させると言う。しかし、結花は好きな人と一緒にな
 れるなら、歌は諦める決心をしていた。「あなたのお嫁さんにして」という結花をのせて、一番星は
 自慢のトラックをスタート。

 他に、セリー・ハーケン(タミー=バーナードの妻)、南利明(幸蔵=土佐犬の調教師)、日向明子(一
条しのぶ=結花の歌手仲間)、波乃ひろみ(矢野多美子=風美子の同僚)、山城新伍(奥村=レコード会社
のディレクター)、桐原信介(笹本)、須賀良(関東無宿)、高月忠(金毘羅丸)、土佐一太(土佐錦)、
幸英二(室戸鯨)、武田洋和(はりまや弁天)、沢田浩二(長尾鶏)、奈辺悟(一発屋)、亀山達也(上川
鴉)、清水照夫(遠州灘)、宮崎靖男(哥磨)、春川ますみ(松下君江=金造の妻)、酒井克也(松下幸之
助=長男)、桜庭一誠(松下幸次郎=次男)、大久保和美(松下美智子=長女)、文倉あかね(松下華子=
次女)、木村勇(松下幸三郎=三男)、石井ひとみ(松下サヤ子=三女)、中村太郎(松下幸四郎=四男)、
小椋基広(松下幸五郎=五男)、石井旬(松下幸六郎=六男)、名和宏(関根=闘犬大会の司会者)、大木
晤郎(支配人)、山本智子(看護婦)、広京子(ホステス)、浜ひろし(客)、花輪三重子(歌手)、青柳
裕介(検査役)、姿鉄太郎(岩瀬の乾分A)、司裕介(同じくB)、古賀弘文(同じくC)、岡本美登(同
じくD)、宮城健太郎(フェリーの船員)、山田光一(係員)、由利徹(坊主)、相馬剛三(ドライブイン
店主)、山本緑(同じく奥さん)、榊原良子(同じくウエイトレス)、山口恵子(同)、藤巻潤(パトカー
警官)、玉置宏(大阪梅田コマで、結花が「南国土佐を後にして」を熱唱するときの司会者)などが出演し
ている。
 40年も経つと街の様相もだいぶ変わる。高知市内の風景も現在のものとは違っていた。もっとも、桂浜な
どは現在も昔のままである。


 某月某日

 You Tube で邦画の『雪崩』(演出〔監督〕:成瀬巳喜男、ピー・シー・エル映画製作所、1937年)を観た。
有閑階級の暇潰しみたいな話だが、これが昭和12年に作られているところに注目したい。まったく戦争や軍
隊の影が感じられないのである。これは、前年に作られた『祇園の姉妹(きょうだい)』(監督:溝口健二、
第一映画、1936年)や『浪華悲歌(なにわエレジー)』(監督:溝口健二、第一映画、1936年)でも感じた
ことだが、意外に大事なのではないかと思っている。つまり、戦争の「せ」の字も語らないことによって、
それなりに時勢の力に抗していたのではないかという仮説である。何の確証もない仮説だが、そうあってほ
しい気持だけはある。
 冒頭に、原作者の大佛次郎の解説がある。それを以下に写し取っておこう。

  雪崩と云ふ題は、この物語の中に出る日下氏の感慨から取りました。
  日下氏はこの現代と云ふ世界に住んでゐる自分たちがしっかりと地面に根をおろしてゐるやうに見
 えてゐて、自分たちの知らぬ力で動かされて一度に斜面を滑り落ちて行くやうに見えるのを感じて驚
 きます。 
  堅固な石の家を建てゝも動きやまない砂の上に皆が立ってゐます。
  日下氏のやうに、俺れは決して動いてゐないと信じてゐる人が、やはりその雪崩の上に乗せられて、
 無意識の裡に運ばれて行くと云ふことです。

                                大佛次郎

 この文句は、そっくりこの令和の世にも当て嵌まるような気がする。いつの時代でもそうなんだと思うし
かないのである。
 物語を確認しておこう。今回は、<ウィキペディア>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

  『雪崩』(なだれ)は1937年(昭和12年)に公開された日本映画。成瀬巳喜男監督作品。

 大佛次郎の同名小説を原作として製作された文芸映画である。なお、製作のP.C.Lは同年9月に合併によっ
て東宝映画となった。

   〔あらすじ〕

  横田蕗子(霧立のぼる)に一目惚れした日下五郎(佐伯秀男)は、許嫁の江間弥生(江戸川蘭子)
 を捨てて駆け落ちすることで両親に結婚を認めさせる。それから1年が過ぎ、蕗子の従順さに飽き足
 らなくなった五郎は弥生に求愛するが、蕗子のことを哀れんだ弥生はそれを拒否した。父(汐見洋)
 から無責任さを責められた五郎は蕗子と心中するつもりで旅立つ。

   〔評価〕

  登場人物の独白シーンで画面に紗がかかるという効果が多用されており、この珍奇な手法が公開当
 時に話題を呼んだ。下りてくる紗がすだれを連想させるため、当時は「雪崩(なだれ)ではなくスダ
 レ映画だ」と揶揄された。

   〔出演者〕

  日下五郎:佐伯秀男
  横田蕗子:霧立のぼる
  江間弥生:江戸川蘭子
  五郎の父:汐見洋
  五郎の母:英百合子
  圭介(弥生の弟):生方明
  蕗子の父:丸山定夫
  小柳(弁護士):三島雅夫

   〔スタッフ〕

  監督:成瀬巳喜男
  演出:成瀬巳喜男
  脚本:成瀬巳喜男
  構案:村山知義
  撮影:立花幹也
  音楽:飯田信夫
  美術:北猛夫
  録音:鈴木勇
  編集:岩下廣一

 「青山と言えば、赤坂区かね」という台詞がある。どうやら、芝区、麻布区、赤坂区が合併統合されて、
現在の港区になったらしい。弥生の台詞に、「私たちは、大切なものを外に出さないように躾けられました」
というものがある。とくに女性は、その傾向が強かったと推察される。五郎の父親は、士族の商法ながら成
功した経歴を持つ人で、すこぶるつきの人格者でもある。彼のいくつかの台詞を挙げておこう。

  「不平不満に堪えるのが人間の仕事だ」
  「俺は人を不幸にして平気でいられる人間を憎む。最下等の唾棄すべき存在だ」
  「お前(五郎のこと)は頭がよい。何でも知っている。しかしその知識は紙のようなものだ」
  「無抵抗な者には負ける」

 ……などなど。五郎はクレバーだがワイズではないと言っているようだ。大人の知恵を示して飽きないの
だろう。また、弥生の慨嘆ももっともである。いわく、「女が結婚することを片付くと言うでしょう。まる
で要らないもののように。さらに、結婚する相手に運命の鍵を渡すのだから、つまらないものね」。あるい
は、五郎に「卑怯だ」と罵れて、「社会的ではない単独の良心など信じない」と切り返している。やはり、
五郎よりもワイズな人として描かれているのである。蕗子は素直だが、自我がない。五郎には自我はあるが、
ただの自分勝手である。このような図式は現代でも見受けられるであろうが、戦前よりは少なくなっている
のだろう。「ムニエル」という料理の名前や、「シジュフォスの神話(ここでは、シベリアの囚人の話にな
っている)」が出てきたりして、それなりの工夫がなされている。


 某月某日

 You Tubeで邦画の『父子草』(監督:丸山誠治、東宝=宝塚映画、1967年)を観た。その存在すら知らな
かった作品だが、昭和の香りが濃厚の映画で、久し振りに「昭和節」を堪能することになった。まさか、渥
美清が東宝映画に出演しているとは思わなかったし、戦争映画のイメージの強い丸山監督がこんな「人情も
の」を撮っているとも思わなかった。その意味で、小生には貴重な映画となった。先ずは丸山監督の作品で、
小生が鑑賞済みの作品を以下にあげてみよう。

  『太平洋奇跡の作戦・キスカ』、監督:丸山誠治、東宝、1965年。
  『父子草』、監督:丸山誠治、東宝=宝塚映画、1967年。
  『連合艦隊司令長官・山本五十六』、監督:丸山誠治、東宝、1968年。
  『日本海大海戦』、監督:丸山誠治、東宝、1969年。
  『大空のサムライ』、監督:丸山誠治、東宝映画、1976年。

 当該作品もある意味で「戦争映画」だが、その他の作品は戦争映画そのものだから、様相はだいぶ違う。
渥美清を得て、初めて撮れる映画と言ってもよいだろう。今度は渥美清が出演している同じような趣旨の作
品を挙げてみよう。

  『拝啓天皇陛下様』、監督:野村芳太郎、松竹大船、1963年。
  『続・拝啓天皇陛下様』、監督:野村芳太郎、松竹大船、1963年。
  『あゝ声なき友』、監督:今井正、松竹=渥美清プロダクション、1972年。

 小生のような「戦無派」には所詮理解の及ばない世界を描いている作品群ではあるが、それでも想像力を
目一杯に働かせればまったく分からないこともない世界である。もはや日本から消えてしまった世界でもあ
るが、昭和四十年代にはまだ残っていた世界でもある。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、事実
誤認を避けるために大きく改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『妻の日の愛のかたみに』の木下恵介がシナリオを執筆、『太平洋奇跡の作戦 キスカ』の丸山誠
 治が監督した人情もの。撮影は『海の若大将』の梁井潤。

   〔あらすじ〕

  ガード下に屋台のおでん屋「小笹」を出している竹子(淡路恵子)は、初老に近い土工風の男平井
 義太郎(渥美清)の、どこか淋し気でいて、鼻ッぱしらの強い、気ップのよさに興味を持っていた。
 ある日、常連の若い客、西村茂(石立鉄男)と義太郎は些細なことから喧嘩になったが、若い西村に
 敵うはずはなかった。それから、次の晩も西村に相撲で挑戦する義太郎だったが、それというのも、
 彼がシベリヤでの抑留生活を終え、昭和25年に故郷に帰還したのだが、彼がすでに戦死してしまって
 いると思った彼の妻は、弟と再婚してしまっていた。妻と弟の生活を考えた義太郎は進んで身を退い
 たのだったが、妻の手許に残してきた息子を、西村にみたてているのであった。そんなある日、西村
 の恋人である石川美代子(星由里子)と竹子から、西村が昼は予備校、夜は夜警のアルバイトのため、
 身心ともに疲労している上に、雨の中で相撲を取った際に風邪を引いたと聞かされた。早速、見舞に
 かけつけた義太郎は、生活の苦しさに大学受験を止めようとする西村を、心から叱咤激励するのだっ
 た。そして、ナデシコの別名が「父子草」であることを竹子から教わり、その種を西村に渡して、
 「お前が来年大学に受かったら、お前の勝ち、落ちたら負け」と言って、相撲の勝負のつづきに擬え
 るのだった。そして義太郎は竹子に、西村の学費と言って金を渡すと、雪の東北の飯場に出かけて行
 った。工事現場での義太郎の仕事振りは一段と熱が入り、気前のよかった彼がケチにすらなった。好
 きな酒も控えて、黙々と飯場を廻っていった。そして再び溜めた金を竹子を通じて西村の許に届けた。
 そんな義太郎の態度に竹子は男気を感じ、彼の帰りを持つのだった。やがて三月下旬、義太郎がひょ
 っこり竹子の前に現われた。店に置かれた植木鉢には父子草の種が植えられていたが、それは西村が
 大学に受かったことの証であった。ちょうどのその日は、西村の受験発表の日だったのである。義太
 郎、西村、竹子、美代子と揃って、彼らは再会の歓びに浸ったのである。

 他に、大辻司郎(鈴木=義太郎の飯場仲間)、浜村純(義太郎の父)などが出演している。まさに「生き
ていた英霊」の悲劇と、そこから立ち直った男の、ほのぼのとした物語であった。劇中、渥美清が佐渡の民
謡である「相川音頭」を唄うが、なかなか聞かせる民謡である。1966年(昭和41年)に、飯田三郎編曲の同
曲を三橋美智也が唄っている。


 某月某日

 昨日言及した『空飛ぶタイヤ』(監督:本木克英、「空飛ぶタイヤ」製作委員会〔松竹=木下グループ=
日活=朝日新聞社=ジェイ・ストーム=講談社=実業之日本社=GYAO=オフィスIKEIDO=コロナワールド=
イオンエンターテイメント〕、2018年)の感想を記そう。ネット記事を散見すると、かなり辛口の批評が目
につくが、小生には面白かった。原作の池井戸潤の小説は読んでいないので、今日買ってきた。ゆっくり楽
しもうと思っている。TVなどではお馴染みらしいが、小生は名前すら知らなかった。どんな文体なのか、
けっこう期待している。さて、肝心の映画だが、テンポの速さは買えるが、話を詰め込みすぎているので、
長い物語のダイジェスト版を観ているような味気なさが残った。長瀬智也もディーン・フジオカも悪くなか
ったが、むしろムロヒロシや寺脇康文の濃厚な演技の方がこころに沁みた。「製作委員会」方式の欠点であ
る無難な流れは今回も鼻に付いたが、俳優陣は自分の立ち位置をはっきりとつかんでおり、その意味では、
見応えがあった。ただ、大好きな谷村美月が被害者の役で、「もうおばさん扱いなんだなぁ」と残念に思っ
た。もっとも、深キョンや小池栄子が出ていたので赦す(笑)。自動車のリコールと賠償問題については、
「利益・損害計算(a benefit-harm calculus)」の是非が問われると思う。何の本で読んだのかまったく
覚えていないが、こんな話がある。アメリカ合衆国での話である。ある自動車メーカーの自動車に構造的な
欠陥があり、潜在的に死亡事故を呼び込む虞があるとしよう。その際、リコールを受けてその欠陥を無償で
直すよりも、個別的な事故の賠償金を払った方が安くつくという話である。人が死亡する虞を回避するより
も、死んだら賠償金を払う方を選ぶというのはもちろんいただけないが、利潤の追求を第一義と捉えれば、
そうなるのが自然なのかもしれない。なお、今、その自動車会社はフォードではなかったかと思い、調べて
みると、<ウィキペディア>に以下のような記事があったので、引用させていただく。執筆者に感謝したい。

  フォード・ピント<ウィキペディア>

  ピントにまつわるエピソードとして最も有名なのがいわゆる「フォード・ピント事件」である。

 先述の通り、短期間で市場に送り込むこととコスト削減の目的で、通常43ヶ月を要する開発期間を25ヶ月
に短縮して市場に送り込まれたが、開発段階でスタイリング重視のためガソリンタンクとリアバンパーが近
接した構造になったこと、およびリアバンパー及び取付部の強度が不足していたことにより、追突事故に対
して非常に脆弱であるという欠陥が発覚した。しかし、フォードは欠陥対策にかかるコストと事故発生時に
支払う賠償金額とを比較し、賠償金を支払う方が安価であると判断(事故予測180人が焼死、さらに180人が
重症、その結果の賠償額4,950万ドル。これに対し、ガソリンタンク対策費1台あたり11ドル。計1億3,700
万ドル)してそのまま放置した。ただし、このメモはピントと直接関係しないとの指摘もある。
 そんな折、市販された翌年の1972年にインターステートハイウェイを走行中のピントがエンストを起こし、
約50マイル/h(約80km/h)で走行していた後続車に追突されて炎上し、運転していた男性が死亡、同乗者が
大火傷を負う事故が発生した。この事故での陪審評決でフォードを退社した元社員らが欠陥を知りながら開
発を進めた事実を証言し、コスト比較計算の事実も発覚した。その後フォードは陪審員裁判において総額1
億2,780万ドル(当時の日本円換算で約260億円)もの巨額の懲罰的損害賠償を命じられることになり(後に
裁判官により賠償額は350万ドル=当時の日本円換算で7億円に減額される)、より大きな経済的打撃を受け
るだけでなく、製品の信頼性や同社の信用も失墜してしまう皮肉な結果となった。フォードは対策としてガ
ソリンタンクの配置を後車軸上に変更し、ガソリンタンクとバンパーの強化を行う等の対策を取った。
 この事件は今日まで大学での企業倫理系統の講義にしばしば題材として用いられ、20世紀フォックスが19
91年に製作した映画『訴訟』(原題: Class Action)の題材となっている。

 以上である。当該映画の焦点とは異なるが、参考になる話である。

 さて、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『半沢直樹』や『下町ロケット』など数々のテレビドラマ化作品で知られる人気作家・池井戸潤の
 同名小説を初めて映画化した、長瀬智也主演の人間ドラマ。トレーラーの脱輪事故で整備不良を疑わ
 れた運送会社社長が、独自の調査を開始し、衝撃の事実を突き止める。ディーン・フジオカや高橋一
 生ら注目の俳優たちが脇を固める。

   〔あらすじ〕

  トレーラーの脱輪による死傷事故で整備不良を疑われた運送会社社長の赤松徳郎(長瀬智也)は、
 世間やマスコミからバッシングを受けるが、独自に調査を始める。そして、車両の構造そのものに欠
 陥があるのではと気付いた赤松は製造元のホープ自動車へ再調査を要求。同社の販売部カスタマー戦
 略課課長の沢田悠太(ディーン・フジオカ)は赤松の要求を疎ましく思いながらも調査を進め、社内
 でひた隠しにされる真実の存在を知る。

 他に、高橋一生(井崎一亮=ホープ銀行本店営業部調査役)、深田恭子(赤松史絵=徳郎の妻)、高村佳  
偉人(赤松拓郎=徳郎・史絵の息子)、寺脇康文(高幡真治=横浜・港北中央警察署交通捜査係刑事)、高
川裕也(多鹿路雄=同)、阿部顕嵐(門田駿一=赤松運送整備係)、池上紗理依(門田の恋人)、笹野高史
(宮代直吉=赤松運送専務)、毎熊克哉(安友研介=同運送運転手)、ムロツヨシ(小牧重道=ホープ自動
車車両製造部)、中村蒼(杉本元=同社品質保証部係長)、和田聰宏(室井秀夫=同じく課長)、木下ほう
か(柏原博章=同じく部長)、小池栄子(榎本優子=週刊『潮流』記者)、浅利陽介(柚木雅史=被害者の
夫)、谷村美月(柚木妙子=被害者)、近藤公園(長岡隆光=ホープ自動車販売部カスタマー戦略課、沢田
の後釜の課長)、矢野聖人(北村信彦=同課課員)、村杉蝉之介(野坂康樹=同部部長代理)、渡辺大(小
茂田鎮=ホープ銀行自由が丘支店行員)、田口浩正(平本克幸=相模精密加工配送担当)、斎藤歩(浜崎紀
之=ホープ自動車人事部副部長)、岡山天音(加藤宏芳=同社技術開発研究所所員)、矢島健一(真鍋敏彰=
同社商品開発部部長代理)、津嘉山正種(ホープ銀行頭取)、加藤満(高森将仁=愛知・高森運送)、筒井
巧(進藤治男=はるな銀行鎌田支店の行員)、中林大樹(岡田俊樹=役柄不詳)、井上肇(三浦成夫=専務
に同行したホープ銀行行員)、小久保丈二(紀本孝道=ホープ銀行次長)、木下隆行(益田順吉=ホープ自
動車販売)、木本武宏(嶋本義裕=沼津・嶋本運送)、柄本明(野村征治=野村陸運社長)、佐々木蔵之介
(相沢寛久=富山ロジスティック総務課課長)、六角精児(谷山耕次=赤松運送整備課課長)、大倉孝二
(高嶋靖志=同社営業課課長)、津田寛治(濱中譲二=ホープ銀行本店営業部部長)、升毅(巻田三郎=同
銀行専務取締役)、岸部一徳(狩野威=ホープ自動車常務取締役)などが出演している。


 某月某日

 さて、DVDで3本の邦画を観たので、報告しよう。1本目は、『モリのいる場所』(監督:沖田修一、「モ
リのいる場所」製作委員会〔日活=バンダイビジュアル=イオンエンターテイメント=ベンチャーバンク=
朝日新聞社=ダブ〕、2018年)である。主演のひとりである樹木希林は他界したが、山崎努は達者である。
当該作品の後に、『長いお別れ』(2019年)〔筆者、未見〕に出演している。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『祈りの幕が下りる時』の山崎努と『あん』の樹木希林が洋画家・熊谷守一夫妻を演じるヒューマ
 ンドラマ。守一の自宅の庭にはさまざまな動植物が生きている。守一は30年以上、それらをじっと眺
 めるのを日課にしていた。守一の家には毎日のように人が訪ねてくる。監督・脚本は、『モヒカン故
 郷に帰る』の沖田修一。出演は、『3月のライオン』前・後編の加瀬亮、『谷崎潤一郎原案/TANIZAKI   
 TRIBUTE『悪魔』』の吉村界人。

   〔あらすじ〕

  洋画家・熊谷守一(山崎努)の自宅の庭には草木が生い茂り、彼の描く絵のモデルになるたくさん
 の虫や猫などが住み着いていた。守一は30年以上、じっとその庭の生命たちを眺めるのを日課にして
 いる。守一は妻の秀子(樹木希林)と二人で暮らしているが、毎日のように来客が訪れる。守一を撮
 ることに情熱を燃やす若い写真家の藤田武(加瀬亮)、守一に看板を描いてもらいたい温泉旅館の主
 人、隣人の佐伯さん夫婦、郵便屋さんや画商や近所の人々、そして得体の知れない男も……。今日も
 守一と彼を愛する人々のおかしくて温かな一日が始まる。

 他に、吉村界人(鹿島公平=藤田の助手〔書生〕)、光石研(朝比奈=信州の旅館「雲水館」の主人)、
青木崇高(岩谷=隣のマンション建設の現場監督)、吹越満(水島=そのマンションのオーナー)、池谷の
ぶえ(美恵ちゃん=秀子の姪)、きたろう(荒木=熊谷家の客の画商)、谷川昭一朗(峯村=同じく画商)、
林与一(昭和天皇)、三上博史(知らない男)、森下能幸(近所の男)、中島歩(郵便配達人)、黒田大輔
(熊谷家の客)、嶋田久作(役人)、安澤千草、大友律、奥野瑛太などが出演している。
 ドリフターズのネタや三上博史が演じた「知らない男」はやや滑った感があるが、ユーモアだと思えばそ
れもよかろう。その他、守一がソーセージをペンチで潰してから食べるシーンは意外性があってよかった。
守一によれば、蟻は移動するとき左の二番目の足から動かすらしいが、その様子を「スローモーションで映
せば面白いのに」と思った。もちろん、ないものねだりであるが……。庭の動植物の様子も生き生きとして
よかった。ともあれ、こんな家に住んでみたいと思った。
 2本目は、『羊と鋼の森』(監督:橋本光二郎、「羊と鋼の森」製作委員会〔東宝=日本テレビ放送網=
博報堂=朝日新聞社=毎日新聞社=KDDI=阪急交通社=文藝春秋=トーハン=GYAO=時事通信社=中日新聞
社=ヤマハ〕、2018年)である。本来この手の爽やかな映画は苦手なのだが、肌理細かい配慮が行き届いて
いるので、最後は泣いてしまった。いわゆる≪Bildungsroman≫(邦語では、「教養小説」と訳される)の系
統に属する作品で、主人公の成長が手に取るように分かる流れになっている。大ヴェテランの三浦友和と光
石研が下支えをしているが、中堅どころの鈴木亮平も頑張っていた。彼は、『俺物語!!』(監督:河合勇人、
「俺物語!!」製作委員会〔日本テレビ放送網=集英社=東宝=ホリプロ=読売テレビ放送=バップ=日活=
D.N.ドリームパートナーズ=STV=MMT=SDT=CTV=HTV=FBS〕、2015年)で注目した俳優だが、だいぶ大人
になった。この手の役どころとして過不足がないと思ったからである。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  2016年の第13回本屋大賞に輝くなど、数々の賞を受賞した宮下奈都の同名小説を、山崎賢人主演で
 映画化した青春ストーリー。将来の夢をもっていなかった一人の少年が、高校で出会ったピアノ調律
 師に感銘を受けて、調律の世界に足を踏み入れ、ピアノに関わる人々と出会い、成長していく。上白
 石萌音と上白石萌歌が姉妹役で映画初共演する。

   〔あらすじ〕

  将来の夢を持っていなかった外村直樹(山崎賢人)は高校でピアノ調律師の板鳥宗一郎(三浦友和)
 と出会う。彼が調律した音に生まれ故郷と同じ森の匂いを感じ、外村は調律の世界に魅せられていく。
 そして、先輩調律師の柳伸二(鈴木亮平)やピアノに関わる多くの人に支えられながら外村は成長し
 ていき、ピアニストの姉妹、佐倉和音(上白石萌音)と由仁(上白石萌歌)との出会いが才能に悩む
 彼の人生を大きく変えていく。

 他に、堀内敬子(北川みずき=江藤楽器店の調律師仲間)、仲里依紗(濱野絵里=柳の幼友達。最後に彼
と結婚式を挙げる)、城田優(上条真人=ジャズピアニスト)、森永悠希(南隆志=両親を失ってからピア
ノを放棄していたが、外村の調律したピアノで「子犬のワルツ」を弾いて立ち直る)、佐野勇斗(外村雅樹=
直樹の弟)、光石研(秋野匡史=元ピアニストのヴェテラン調律師)、吉行和子(外村キヨ=直樹や雅樹の
祖母)、ミハウ・ソブコヴィアク(ラインハルト・ゲルツァー=ドイツのピアノの巨匠)などが出演してい
る。
 角度を変えてみればピアノが主役であるから、当然のごとく劇中使用曲がある。それを以下に書き出して
みよう。

  1.「水の戯れ」(ラヴェル)、2.「Etude Op.25-9 ─ 蝶々」(ショパン)、
  3.「なき王女のためのパヴォーヌ」(ラヴェル)、4.「Ah! Vous dirais-je, Maman」(仏童謡)
  5.「Piano Sonata Op.58」(ショパン)、6.「クープランの墓 ─ Toccata」(ラヴェル)
  7.「Waltz Op.64-1 ─ 子犬のワルツ」(ショパン)
  8.「Piano Sonata No.23 ─ 熱情」(ベート?ヴェン)
  9.「結婚行進曲」(メンデルスゾーン)、10.「Waltz Op.39-2」(ブラームス)
  11.「An die Musik」(シューベルト)、12.「The Autumn Song」(畑美武士)
  13.エンディング・テーマ「The Dream of the Lamb」(久石譲X辻井伸行)

 小生はベートヴェヴェンのピアノ・ソナタが好きなので、「熱情」の調べはやはり素晴らしいと思った。
その他、横文字がけっこう重要な位置を占めていた。たとえば、上条が要求する「improvisation=即興」や、
外村が目指す「Concert Tuner=コンサートなどでピアノの調律をする人」などである。そもそも、ピアノの
調律には三つのカテゴリー(整調、整音、調律)があるが、ラインハルト・ゲルツァー(ドイツの巨匠とい
う設定のピアニスト)のコンサート・チューナーを務めた板鳥は、ピアノの脚を調整していた。おそらく、
ピアノ全体への目配りも大切なのであろう。さらに、その板鳥が外村に訊ねられて「理想の音」として挙げ
たのは、原民喜の「砂漠の花」の一節である。下に掲げてみよう(青空文庫より)。

  明るく静かに澄んで懐しい文体、少しは甘えてゐるやうでありながら、きびしく深いものを湛へて
 ゐる文体、夢のやうに美しいが現実のやうにたしかな文体……私はこんな文体に憧れてゐる。

 「文体」を「音」に替えれば、板鳥の理想の音となる寸法である。また、面白い台詞もあった。和音がプ
ロのピアニストを目指すと宣言したとき、由仁が「ピアノで食べていくのは大変だよ」と返したところ、和
音は「ピアノを食べて生きてゆくんだよ」と返答している。若い女性の台詞としては似つかないが、たしか
にそのようなしたたかさがなければ、プロのピアニストには到底なれないだろう。元ピアニストの秋野のプ
ロのピアニストを断念した経緯がそれを裏付ける。彼は耳が非常にいいので、一流のピアニストと自分との
彼我の違いに絶望したのである。
 ピアノの演奏が登場する映画は数多あるだろうが、やはり『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』(監督:
武内英樹、「のだめカンタービレ 最終楽章」製作委員会〔フジテレビ=講談社=アミューズ=東宝〕、2009
年)〔「日日是労働セレクト52」、参照〕と、その続篇である『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』、
監督:川村泰祐、「のだめカンタービレ 最終楽章」製作委員会〔フジテレビジョン=講談社=アミューズ=
東宝=FNS27社〕、2010年)〔「日日是労働セレクト56」、参照〕が圧巻である。なお、プロの調律師が登
場する邦画としては、『家族はつらいよ』シリーズ(監督:山田洋次)が挙げられるだろう。妻夫木聡が演
じた平田庄太役がそれである。当該作品とは異なり、どことなく気楽に描かれているが……。
 3本目は、『空飛ぶタイヤ』(監督:本木克英、「空飛ぶタイヤ」製作委員会〔松竹=木下グループ=日
活=朝日新聞社=ジェイ・ストーム=講談社=実業之日本社=GYAO=オフィスIKEIDO=コロナワールド=
イオンエンターテイメント〕、2018年)だが、今日はもう遅いので、後日感想を記したい。

                                                  
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