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驢鳴犬吠1912
無印良品映画の頁(2)
驢鳴犬吠2001
日日是労働セレクト168
日日是労働セレクト167
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第167弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト167」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『ナラタージュ』(監督:行定勲、「ナラタージュ」製作委員会〔アスミック・エース=東宝= 
ジェイ・ストーム=KADOKAWA=ジェイアール東日本企画=セカンドサイト=KDDI=GYAO=ザフール=日本出
版販売=リッジヘッド〕、2017年)を観た。いかにも行定監督が作った映画で、通俗的な恋愛映画を得意と
する監督の面目躍如といったところか。彼の映画は、以下に挙げるように15本観ているが、それなりに現代
を描いていると思う。なお、題名の「ナラタージュ」とは、「ナレーション」と「モンタージュ」を掛け合
わせた言葉であり、ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法を意味する由。

  『閉じる日』、監督:行定勲、シネロケット=日本トラステック、2000年。
  『ひまわり』、監督:行定勲、ケイエスエス、2000年。
  『GO』、監督:行定勲、「GO」製作委員会、2001年。
  『贅沢な骨』、監督:行定勲、mouchette、2001年。
  『ロックンロールミシン』、監督:行定勲、SPACE SHOWER WORKS=ギャガ・コミュニケーションズ=
   東映ビデオ、2002年。
  『きょうのできごと/a day on the planet』、監督:行定勲、レントラックジャパン=讀賣テレビ放送=
   葵プロモーション=電通=シィー・スタイル=コムストック、2003年。
  『世界の中心で、愛をさけぶ』、監督:行定勲、東宝=TBS=博報堂DYメディアパートナーズ=小学館=
   S・D・P=MBS、2004年。
  『北の零年』、監督:行定勲、「北の零年」製作委員会、2005年。
  『ユビサキから世界を』、監督:行定勲、フォーライフミュージックエンタテインメント=ランブル
   フィッシュ=ケーブルテレビ山形、2006年。
  『クローズド・ノート(Closed Note)』、監督:行定勲、「クローズド・ノート」製作委員会〔東宝=
   博報堂DYメディアパートナーズ=S・D・P=ソニー・ミュージックエンタテインメント=角川書店〕、
   2007年。
  『パレード』、監督:行定勲、「パレード」製作委員会〔WOWOW=ショウゲート=キングレコード=
   ハピネット〕、2010年。
  『今度は愛妻家』、監督:行定勲、「今度は愛妻家」製作委員会〔東映=木下工務店=テレビ東京=
   アミューズソフトエンタテインメント=電通=東映ビデオ=パルコ=読売新聞=ウエスト=テレビ
   大阪〕、2010年。
  『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』、監督:行定勲、「つやのよる」製作委員会〔東映=
   木下不動産=ハピネット=東映ビデオ=ギャンビット=イノベーションデザイン=東放学園=キング
   レコード=ユニバーサル ミュージック=モード・フィルム=ドワンゴ=グラブ=KIT〕、2013年。
  『真夜中の五分前』、監督:行定勲、“Five Minutes to Tomorrow” FILM PARTNERS〔アミューズ=
   東映=木下グループ=東映ビデオ=イノベーションデザイン=他〕、2014年。
  『ナラタージュ』、監督:行定勲、「ナラタージュ」製作委員会〔アスミック・エース=東宝=ジェイ・
   ストーム=KADOKAWA=ジェイアール東日本企画=セカンドサイト=KDDI=GYAO=ザフール=日本出版
   販売=リッジヘッド〕、2017年。

 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  2006年版「この恋愛小説がすごい!」1位に輝くなど話題を呼んだ島本理生の同名ベストセラー小
 説を、恋愛映画の名手である行定勲監督が映画化した大人のためのラブストーリー。高校教師と生徒
 が時を経て再会し、究極の恋に落ちるさまがつづられる。ヒロインの泉を有村架純、教師の葉山を松
 本潤が演じる。

   〔あらすじ〕

  大学2年生の春、工藤泉(有村架純)は高校の演劇部の顧問だった葉山貴司(松本潤)から後輩の
 ために卒業公演に参加してくれないかとの連絡を受ける。葉山は学校になじめなかった泉を救ってく
 れた教師で、卒業式の日の誰にも言えない彼との思い出を胸にしまっていたが、再会で気持を募らせ
 る。ところが、離婚の成立していない妻の存在を知り、心を痛める。

 他に、坂口健太郎(小野玲二=短期間だが泉と付き合う男)、瀬戸康史(宮沢慶太=泉の現在の同僚)、
市川実日子(葉山美雪=貴司の妻。一時別居していた)、大西礼芳(山田志緒=演劇部の仲間)、古舘佑太
郎(黒川博文=同。後に志緒の夫になる)、神岡実希(塚本柚子=同。自殺する)、駒木根隆介(金田伊織=
同)、金子大地(新堂慶=同)、三浦誠記(三浦=体育教師)、大鷹明良(美雪の父)、堀ちえみ(小野の
母)、武発史郎(同じく父)、西牟田恵(柚子の母)などが出演している。
 観ていて一番感じたことは、主人公の泉の人よりもワンテンポ遅れた反応である。相手役の葉山はもっと
遅いし、もう一人の相手役である小野は早すぎる。内的時間のずれが互いに修正できないので、泉はどちら
ともうまく行かない。小生が若い頃だったら、小野と同じように反応が早すぎただろうし、今では葉山より
も遅いかもしれない。したがって、多少とも傲慢かもしれないが、泉の気持がよく分かる。彼女はけっして
二股をかけたわけではないのだ。むしろ、誠実すぎるこころが、自分も相手も傷つけてしまうのである。骨
董品の懐中時計が小道具に使われているが、そこに静止した永遠が凝縮している。言い換えれば、泉の恋は
そこに留まったままの永遠なのである。


 某月某日

 DVDで邦画の『蒸発旅日記』(監督:山田勇男、ワイズ出版、2003年)を観た。TSUTAYAで以前にも手に取
ったことがあったが、なぜか縁がなかった映画である。1970年代の雰囲気を備えており、つげ義春の原作ら
しい映像美を楽しむことができた。とくに、二人のストリッパーが登場するが、本職だけに踊りが素晴らし
い。ともあれ、つげ作品が原作の映画を以下に記してみよう。

  『無能の人』、監督:竹中直人、ケイエスエス=松竹第一興業、1991年。
  『つげ義春ワールド ゲンセンカン主人』、監督:石井輝男、キノシタ映画、1993年。
  『ねじ式』、監督:石井輝男、石井プロダクション、1998年。
  『バネ式』、監督:吉田照美、「バネ式」製作委員会、2002年(筆者、未見)。
  『リアリズムの宿』、監督:山下敦弘、ビターズ・エンド=バップ、2003年。
  『蒸発旅日記』、監督:山田勇男、ワイズ出版、2003年。

 いずれもつげの世界を何とか描こうとしている。小生の最も好きな作品である「もっきり屋の少女」は、
映画『ねじ式』の中で描かれているが、残念ながら成功していない。映画化したら面白そうな作品はまだま
だありそうだが、されないところがいいのだろう。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部  
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『無能の人』などで知られるカルト漫画家・つげ義春のエッセイ『貧困旅行記』を映像化。漫画作
 品のイメージも取り入れ、美術監督の重鎮・木村威夫による鮮烈な色彩と怪しげな映像空間が圧巻だ。

   〔あらすじ〕

  生活に行き詰まりを感じた漫画家の津部義男(銀座吟八)は、有り金全部と時刻表だけをもって旅
 に出る。目的は、自作の愛読者だという顔も知らない、看護婦をしている須藤静子(秋桜子)という
 女性に会うためだった。津部は彼女と結婚し、今の生活を一変させようとする。

 他に、田村高廣(墓石を探す男)、清水ひとみ(姐さん踊り子)、住吉正博(ベレー帽男=姐さんの押し
かけマネージャー)、藤繭ゑ〔藤野羽衣子〕(若い踊り子)、飯島大介(列車の男A)、近藤京三(同じく
B)、和田幾子(列車の婦人)、夕沈(列車の娘)、和崎俊哉(住職)、伊藤博幸(浴衣男A=精神病院を
抜け出した男)、樫山圭(同じくB)、日野利彦(日傘の男)、石川真希(蓮池の女)、稲川実代子(煙草
売りの女)、浜菜みやこ(「新月」従業員)、林裕子(「緑風荘」の娘)、松沢有紗(同じく若女将)、木
下真利(喫茶店「カリガリ」のウェイトレス)、七海遥(「新月」の少年)、高野早苗(紙風船少女)、中
川恵太(静子の弟)、五十嵐小夜子(パチンコ婦人)、斉藤太郎(捕物男A)、福田作男(同じくB)など
が出演している。


 某月某日

 You Tube で邦画の『地獄』(監督:中川信夫、新東宝、1960年)を観た。以前より観たかった映画の一つ
だったが、You Tube にあることを発見したので、早速観てみた。評判通りの作品で、新東宝のカラーがよく
出ている映画である。中川監督の作品は、以下のように5本観ているが、当該作品は後々まで記憶に残りそ
うな映画であった。

  『湯の町夜曲 月の出の接吻』、監督:中川信夫、新東宝、1950年。
  『高原の駅よさようなら』、監督:中川信夫、新東宝、1951年。
  『憲兵と幽霊』、監督:中川信夫、新東宝、1958年。
  『地獄』、監督:中川信夫、新東宝、1960年。
  『怪異談 生きてゐる小平次』、監督:中川信夫、磯田事務所=ATG、1982年。

 実は、『地獄』という題名の邦画は他に2本ある。『地獄』(監督:神代辰巳、東映京都、1979年)と、
『地獄』(監督:石井輝男、石井プロダクション、1999年)である。後者は未見だが、前者は観ているので、
その関連記事がある(「日日是労働(臨時版)1703-1706」、参照)。以下に引用してみよう。


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 2017年6月19日(月)

 DVDで邦画の『地獄』(監督:神代辰巳、東映京都、1979年)を観た。煽情的な筋書でそれなりに面白かっ
たが、ゲテモノの域を出ないと思った。物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話にな
る。執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  姦通の罪によって地獄に落ちた母を追って、近親相姦の罪を犯して地獄に落ちる一人の女を描く。脚
 本は『禁じられた体験』の田中陽造、監督は『赫い髪の女』の神代辰巳、撮影は『沖縄10年戦争』の赤
 塚滋がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  孤児院で育ったレーサーの水沼アキ(原田美枝子)は、事故を起こして休養の旅の途中、生形幸男(林
 隆三)と知り合い、彼の生家、生形村を訪れる。そこにあった「金輪を回し、止まれば極楽、逆に戻れば
 地獄」と言い伝えのある笠卒塔婆に指をふれると、金輪は物凄い速度で逆回転をして地鳴りが起こった。
 足元が崩れ、そこに地獄が現われた。失神したアキの目に映じたものは、呪われたアキの出生の秘密と姦
 通の罪で地獄にのたうつ母ミホ(原田美枝子/二役)の姿だった。この村はアキの生まれ故郷。アキは生
 形竜造(西田健)と、弟雲平(田中邦衛)の嫁ミホとの間に生まれた不義の娘。竜造とミホは雲平に殺さ
 れ、アキは竜造の妻シマ(岸田今日子)によって孤児院に送られたのだ。竜造とシマの間には松男(石橋
 蓮司)と幸男の二人の兄弟がいた。暫くして、失神したアキを見つけて介抱していた幸男の兄松男は彼女
 を抱いてしまう。アキの出現で平穏を保ってきた生形家に亀裂が生じた。亡き妻ミホの面影を求めて執拗
 に迫る雲平、アキの豊満な肉体が忘れられない松男。シマはアキがミホの娘と知ると、村人を使って強姦
 させようとするが、間違って養女の久美(栗田ひとみ)が犯されてしまう。そして腹違いの兄妹と知りつ
 つ愛しあう幸男とアキ。「妹ひとりを地獄に行かせて、俺だけ逃げるわけにはいかない」……アキと幸男
 は最も罪深い近親相姦に、最も至純な愛のかたちを見出したのだ。久美は焼身自殺をとげ、雲平はアキの
 引く三味線の音に誘われるまま崖から転落死し、シマは土牢の中でミイラとなった竜造の頭を胸に抱き、
 舌をかみきって死ぬ。20年前のミホと竜造と同じ崖道を進むアキと幸男。二人を追う松男と村人達。その
 時、頭上の岩が落下して松男達を襲った。山小屋で兄妹は抱きあう。そして山小屋が湖へ落ちていった。
 湖をどこまでも沈んでいくと、やがて闇が少しずつ晴れ、三途の川が広がってきた。阿鼻叫喚の地獄をめ
 ぐるアキ。そこにはシマ、久美、村人達、竜造と雲平、幸男と松男がいる。ついにアキは獣と化したミホ
 と対面した。「母さん!」アキは叫ぶが母にはわが子の判別もつかない。母に声をかけた報いに、アキは
 足元から樹の幹に変っていった。そしてミホは桜の木になったアキに体当りをはじめた。ギシッと樹の幹
 が真二つに折れると玉のような赤子が産声をあげた。柔らかな朝の光のそそぐなか、その赤子は生を歓喜
 するように泣いていた。

 他に、加藤嘉(山尾治)、稲野和子(浪江)、岡島艶子(お芳)、広瀬義宣(赤塚作次)、笹木俊志(谷
地登)、志茂山高也(福田正一)、細川純一(名和太)、福本清三(メカニック)、木谷邦臣(トレーナー)、
高谷瞬二(車掌)、友金敏雄(アナウンス)、佐藤友美(尼僧)、和歌林三津江(老女)、丸平峰子(中年
女)、有島淳平(村人A)、小峰隆司(同B)、畑中伶一(同C)、波多野博(同D)、藤沢徹夫(同E)、
泉好太郎(同F)、藤本英之(松男の少年時代)、上田孝則(幸男の少年時代)、浜村純(懸衣翁)、毛利
菊枝(懸衣嫗)、金子信雄(閻魔大王)、天本英世(荼吉尼天/ナレーター)、大前均(鬼1)、原田力(同
2)、マンモス鈴木(同3)、大位山勝三(同4)などが出演している。なお、山崎ハコが「心だけ愛して」
を歌っている。映画のキャッチフレーズは「堕ちる前に見ておけ」である。

***********************************************


 神代監督と中川監督の作風の違いがあるとはいえ、両者ともに日本人の描きがちな地獄をそのまま映像化
しているので、さして新鮮味はない。しかしながら、当該作品は、地獄よりもこの世の方が地獄に見え、そ
の点である程度成功していると思う。とくに、田村を演じた沼田曜一の怪演は素晴らしく、「こんな人とは
おつきあいしたくない」と思わせるところだけでも、この映画の見所となっている。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  中川信夫・宮川一郎の共同脚本を、『女死刑囚の脱獄』の中川信夫が監督したもので、死後の世界
 として想定されている地獄を、幻想的にえがいたスペクタクル映画。『黒い乳房』の森田守が撮影を
 担当した。

   〔あらすじ〕

  仏教大学の学生清水四郎(天知茂)は悪魔的な雰囲気をもった学友田村(沼田曜一)のため、悩ま
 されていた。彼には、恩師矢島教授(中村虎彦)の娘である幸子(三ツ矢歌子)という婚約者がいた。
 ある日、幸子の許を訪れ楽しい時を過ごしていたが、田村が来て不快な気持にさせられた。田村と自
 宅に帰る途中、酔漢の志賀恭一(泉田洋志)を轢殺してしまった。清水は良心の呵責と、つきまとう
 田村の存在に苦悩した。幸子と警視庁に自首しようとタクシーを走らせる途中、運転手がハンドルを
 切り損ねて樹木に激突した。幸子は死んだ。幸子の母芙美(宮田文子)は、ショックのため気が狂っ
 てしまった。清水は、酒で苦痛を忘れようとした。その勢いで、酒場の女である洋子(小野彰子)を
 抱いた。田舎に住む父親である清水剛造(林寛)から母のイト(徳大寺君枝)が危篤だから帰るよう
 にという電報が来た。清水の父親は、田舎で「天上園」という養老施設を経営していた。この天上園
 には、それぞれ過去に罪を背負った人たちが集っていた。田村が、また清水の後を追ってやって来た。
 矢島教授も、芙美と講演旅行の帰途立ち寄った。洋子の呼び出しで、清水は指定の場所である崖に行
 った。彼女は、何と轢死させた酔漢である志賀の情婦だった。拳銃を持って迫る洋子を、あやまって
 崖下に突き落した。殺意なき殺人をまた犯してしまった。数日後、天上園の十周年記念が催された。
 宴席に出された、腐った魚のため関係者は全員中毒症状を起こした。死にいたる直前、清水はおそる
 べき死後の世界“地獄”を夢想した。赤い炎と青い炎の中に、八大地獄の醜怪無残な姿が現われた。
 天上園の亡者たちの間を清水は、幸子との間にできた女児の姿を求めてさまよい歩いた。

 他に、山下明子(絹子=剛造の妾)、谷口円斎(剛造の友人の画家、剛造の家に居候している)、三ツ矢
歌子(谷口サチ子〔二役〕=円斎の娘。実は四郎の妹)、大谷友彦(草間医師)、宮浩一(赤川=新聞記者)、
新宮寺寛(針谷=刑事)、津路清子(やす=洋子の母)、山川朔太郎(川漁師)、石川冷(刺青の老人)、
嵐寛寿郎(閻魔大王)などが出演している。三ツ矢歌子を久しぶりに見たが、中年を過ぎてからしか知らな
かったので、だいぶ見違えた。この映画に花を添えていると思った。


 某月某日

 DVDで邦画の『八重子のハミング』(監督:佐々部清、Team「八重子のハミング」〔シネムーブ=北斗=オ  
フィス en〕、2016年)を観た。いわゆる「介護もの」で、優れて現代的な問題を扱っている作品である。基
本的に善人しか出てこない映画は苦手なのだが、その世界に没入すればそれほどでもない。最初はちょっと
鼻につく場面もあったが、おおむね爽やかに仕上げている。似たような作品を挙げるとすれば、『そうかも
しれない』(監督:保坂延彦、「そうかもしれない」製作委員会、2005年)辺りだろうか。「日日是労働セ
レクト63」に関連記事があるので、それを以下に掲げてみよう。


 ***********************************************

 2本目は、『そうかもしれない』(監督:保坂延彦、「そうかもしれない」製作委員会、2005年)である。
老老介護の問題を真正面から扱っている映画。これまでにも、いわゆる「高齢社会」問題に取材した映画は
けっこうあり、『恍惚の人』(監督:豊田四郎、芸苑社、1973年)を嚆矢として、『人間の約束』(監督:
吉田喜重、西部セゾングループ=テレビ朝日=キネマ東京、1986年)、『老人Z』(監督:北久保弘之、東
京テアトル=ザ・テレビジョン=ムービック=テレビ朝日=ソニーミュージックエンタテインメント、1991
年)、『阿弥陀堂だより』(監督:小泉堯史、『阿弥陀堂だより』製作委員会、2002年)、『折り梅』(監
督:松井久子、エッセン・コミュニケーションズ、2002年)、『ホーム・スイートホーム 誰にでも帰りた
い家がある』(監督:栗山富夫、アークビジョン、2004年)、『死に花』(監督:犬童一心、東映=アミュ
ーズ=テレビ朝日=東映ビデオ=IMJエンタテインメント=毎日新聞社、2004年)、『メゾン・ド・ヒミコ』
(監督:犬童一心、アスミック・エース エンタテインメント=IMJエンタテインメント=日本テレビ放網=
S・D・P=カルチュア・パブリッシャーズ、2005年)などが直ぐに思い出されるだろう。そういう意味では、
屋上屋を架すことになるかもしれないが、出演者の桂春團治(作家の高山治役)と雪村いづみ(その妻ヨシ
子役)のコンビネーションが抜群なので、ささやかな題材ながら人のこころを打つ作品となっている。また、
本格的な「老老介護」を描いている作品は他にあまりないのではないか。夫婦二人だけの世界なので、惚け
た方も、惚けられた方も、互いに労わり合わなければならないことがよく伝わってくる。小生にも子どもが
いないので、妻と二人でこの夫婦のようになるのかもしれない。少しだけ、覚悟はできている。耕治人原作
(筆者、未読)の「天井から降る哀しい音」、「どんなご縁で」、「そうかもしれない」、「一条の光」が
アレンジされているという。機会があれば、読んでみたい。他に、阿藤快(甥の武=ヨシ子の姉の子。森田
石油というガソリン・スタンドを経営している)、下條アトム(神田書房の編集者である時岡)、烏丸せつ
こ(ヨシ子を世話するヘルパー)、夏木陽介(医師)、柳家小三治(花屋)などが出演している。

  ***********************************************


 この『そうかもしれない』と当該作品との共通項は、夫が妻を介護する立場だという点である。どちらも  
夫の奮闘記の体裁であるが、味わいは自ずと異なる。どちらかというと、前者は孤軍奮闘という観があるが、
後者は協力者が多く、その点で恵まれているように見える。作品としての出来の点では、後者がやや教科書
的なので、軍配を上げるとすれば前者ということになる。もっとも、後者の出来が悪いわけではなく、前者
の独自性を高く評価しているからである。さらに、この種の映画の中からひとつだけ鑑賞を推奨するとすれ
ば、『人間の約束』だろうか。この作品の余韻が素晴らしいからである。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   〔解説〕

  山口県萩市を舞台に、四度のガン手術を乗り越え妻を約12年間介護した陽信孝の手記を『半落ち』
 の佐々部清監督が映画化。八重子が若年性アルツハイマーであることが判明。闘病を続ける夫の誠吾
 は、近寄る死の影を見据えつつ、病が進行する妻を支え共に歩む。『群青色の、とおり道』でも佐々
 部監督と組んだ升毅と『パイレーツによろしく』以来28年ぶりの映画出演となる高橋洋子が、夫婦の
 強い絆を表す。2016年10月29日より山口県先行ロードショー。

   〔あらすじ〕

  ガンが見つかった石崎誠吾(升毅)は、入院し闘病生活に入る。一方で元音楽教師である妻・八重
 子(高橋洋子)が若年性アルツハイマーであることが判明。次々にさまざまなことを忘れていく彼女
 に戸惑いつつ、ガンと闘いながら八重子の介護をするうちに、彼は妻がゆっくり時間をかけ別れを言
 おうとしていると悟る。

 他に、文音(石崎千鶴子=保育士の長女)、中村優一(石崎英二=千鶴子の夫)、安倍萌生(石崎百合子=
次女)、辻伊吹(小森正樹=百合子のパートナー)、二宮慶多(石崎誠一郎=千鶴子と英二の息子)、上月
左知子(石崎ミツ=誠吾の母)、月影瞳(水本早紀=誠吾の元生徒)、朝加真由美(青木小夜子=誠吾の姉)、
井上順(中村正義=萩市長)、梅沢富美男(榎木貞之=誠吾の親友、榎木医院院長)などが出演している。
高橋洋子を久しぶりに見たが、キャラクターは変わっていないと思った。
 なお、劇中誠吾が詠じた短歌がいくつかあったので、以下に書き出しておく。

  四十年(よとせ)過ぎ/妻と歩めし/瀬戸の人生(みち)/うず潮の道/今ぞなつかし

  八十路だつ/母の言葉の/厳しけれ/愛深ければ/自身に満つる

  白みゆく/窓辺に立てる/妻の背に/ただひたすらに/手を合わせおり

  ひときわに/白髪目立つ/妻の背に/胸痛みおり/日々の戦い

  旅先の/宿の女将の/はからいに/大風呂に入る

  幼くも/孫それぞれに/ひたすらに/心の薬/妻にそそげり

 平凡な短歌だが、その折々の気持が素直に表現されていると思う。その他、「怒りには限界があるが、や
さしさにはない 」とか、「教育は直ぐには答えが出ない」とか、「アルツハイマーの人への薬はやさしさに  
他ならない」などは、その通りだと思った。


 某月某日

 DVDで邦画の『火花』(監督:板尾創路、『火花』製作委員会〔吉本興業=東宝=電通=ジェイアール東日
本企画=文藝春秋=朝日新聞社=KDDI=日本出版販売=GYAO〕、2017年)を観た。受賞当時けっこう話題に
上った又吉直樹の芥川賞受賞作品の映画化である。芥川賞作品が映画化されたものとしては、小生が鑑賞済
みの作品だけでも10本ある。

  『太陽の季節』、監督:古川卓巳、日活、1956年。
   原作者:石原新太郎。
  『飼育』、監督:大島渚、パレス フィルムプロダクション、1961年。
   原作者:大江健三郎。
  『鯨神』、監督:田中徳三、大映東京、1962年。
   原作者:宇野鴻一郎。
  『忍ぶ川』、監督:熊井啓、東宝=俳優座、1972年。
   原作者:三浦哲郎。
  『月山』、監督:村野鐡太郎、櫂の会=鐡プロ=俳優座映画放送、1979年。
   原作者:森敦。
  『家族シネマ』、監督:パク・チョルス(朴哲洙)、配給:日活(日韓合作)、1999年。
   原作者:柳美里。
  『蛇にピアス』、監督:蜷川幸雄、ギャガ・コミュニケーションズ=ポイント・ブレイク・
   ピクチャーズ=アミューズソフトエンタテインメント=アークエンタテインメント=集英社=
   日活・チャンネルNECO=ステューディオ スリー、2008年。
   原作者:金原ひとみ。
  『苦役列車』、監督:山下敦弘、「苦役列車」製作委員会〔東映=木下工務店=キングレコード=
   東映ビデオ=東映チャンネル=Yahoo! Japan=日本コロンビア=マッチポイント=ビターズ・エンド=
   東京スポーツ新聞社=ソニーPCL=niconico=CGCGスタジオ〕、2012年。
   原作者:西村賢太。
  『共喰い』、監督:青山真治、『共喰い』製作委員会〔スタイルジャム=ミッドシップ=ギーク
   ピクチュアズ=アミューズソフトエンタテインメント=TOKYO MX=ビターズ・エンド〕、2013年。
   原作者:田中慎弥。
  『火花』、監督:板尾創路、『火花』製作委員会〔吉本興業=東宝=電通=ジェイアール東日本企画=
   文藝春秋=朝日新聞社=KDDI=日本出版販売=GYAO〕、2017年。
   原作者:又吉直樹。

 その他にも、『暢気眼鏡』(監督:島耕二、日活、1940年)〔原作者:尾崎一雄〕、『伴淳・森繁の糞尿
譚』(監督:野村芳太郎、松竹京都、1957年)〔原作者:火野葦平。なお、原作名は『糞尿譚』〕、『広場
の孤独』(監督:佐分利信、俳優座、1953年)〔原作者:堀田善衛〕、『硫黄島』(監督:宇野重吉、日活、
1959年)〔原作者:菊村到〕、『赤頭巾ちゃん気をつけて』(監督:森谷司郎、東宝、1970年)〔原作者:
庄司薫〕、『「されどわれらが日々」より 別れの詩』(監督:森谷司郎、東宝、1971年)〔原作者:柴田
翔。なお、原作名は『されどわれらが日々──』〕、『限りなく透明に近いブルー』(監督:村上龍、キテ
ィ・フィルム=東宝、1979年)〔原作者:村上龍〕、『エーゲ海に捧ぐ』(監督:池田満寿夫、日=伊合作、
1979年)〔原作者:池田満寿夫〕、『ゲルマニウムの夜』(監督:大森立嗣、ネオプレックス=荒戸映画事
務所、2005年)〔原作者:花村萬月〕がある。
 小生が調べた限りなので、その他の作品の中にも映画化されているものがあるかもしれんない。いずれに
せよ、それほど多くはない。今年は文学(文芸)作品が原作の映画を努めて観ようと思っているが、芥川賞
受賞作の映画化作品の鑑賞は『鯨神』以来である。文学作品とその映画化作品との間の関係はどうなってい
るのだろうか。それが小生の研究テーマのひとつであるが、当該作品に関しては、原作を読んでいないので
何とも言えない。機会があれば読んでみたい。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   〔解説〕

  第153回芥川賞に輝いた、お笑いコンビ、ピースの又吉直樹による同名小説を、又吉の先輩でもある
 板尾創路が映画化した青春ドラマ。漫才の世界で現実の壁に阻まれながらも、夢を追い求める若手芸
 人・徳永を菅田将暉、先輩芸人の神谷を桐谷健太が演じる。また、菅田と桐谷がテーマソングとして
 ビートたけしの名曲「浅草キッド」をカバーしている。

   〔あらすじ〕

  若手コンビ、「スパークス」としてデビューするもまったく芽が出ないお笑い芸人の徳永(菅田将
 暉)は、営業先の熱海の花火大会で先輩芸人の神谷才蔵(桐谷健太)と出会う。「あほんだら」とい
 うコンビで見せる常識の枠からはみ出た漫才や彼の人間味に魅了された徳永は弟子にしてほしいと願
 い、神谷は自分の伝記を作ってもらうことを条件に了承。2人は芸に対する熱い思いを交わすように
 なる。

 その他、木村文乃(真樹=男女の関係を抜きにして、神谷の面倒を見ていた女性)、川谷修士(山下=徳
永の相方)、三浦誠己(大林(神谷の相方)、加藤諒(鹿谷=売れっ子のピン芸人)、高橋努(真樹の新し
い男)、日野陽仁(オーデションの審査委員)、山崎樹範(同)などが出演している。
 出足はまったく喰いつきが悪いと思ったが、徐々に面白くなっていった。最後の方の哀愁はよく描けてい
ると思う。とくに、スパークス解散直前の漫才の場面と、花火を見に熱海に行く徳永と神谷の遣り取りには、
「人情もの」としての味わいがあった。


 某月某日

 まるで傾向の違う邦画を2本観たので報告しよう。もちろん、時空が異なれば世界は変わるが、人間のし
ていることにはさして変わりはない。
 1本目は、You Tube で観た『男の意氣』(演出〔監督〕:中村登、松竹、1942年〕である。戦時中の映画
を観るのは久しぶりであるが、戦争の気配こそ薄いけれども、物語の流れ自体は国策に沿っている。この当
時、多くの組織がひとつに統制されたことはよく知られているが(例:大政翼賛会/大日本産業報国会)、
物語の舞台になる回漕店の組合でも、統制が議論される時代であった。主演の上原謙はどういう気持で演じ
たのかは定かではないが、明らかに国策に沿った考えの持ち主の役柄に扮している。
 「丸八」という暖簾の回漕店(コトバンク:荷送り人と海運業者との間に立って、貨物運送の取次を業務
とする店。回漕問屋。廻船問屋)がある。大旦那は半造(坂本武)といい、なかなかの頑固者である。妻は
早くに亡くしており、息子(長男かどうかは分からない。というのも、「謙次」という名前だからである)、
長女(息子の姉)、次女(息子の妹)と、三人の子どもがいる。息子は支那(現 中国)にある会社の社員で  
あるが、3ヶ月の長期休暇をもらって5年ぶりに帰朝している。名前を謙次(上原謙)といい、周りからは
「若旦那」と呼ばれている。長女の郁子(川崎弘子)は、番頭の良吉(徳大寺伸)と添い遂げてしまい、半
造の怒りを買って、勘当の身の上である。妹の治子(朝霧鏡子)は、丸八のライヴァル店である「山岩」の
若旦那(登場しない)といい仲なので、まるでロミオとジュリエットの関係である。そんな時、治子に縁談
が持ち上がった。半造の弟(謙次たちの叔父に当たる)の勘兵衛(河村黎吉)が持ち込んだ話で、相手は大
地主の丸菱の息子の新次郎(近衛敏明)である。渋った治子を謙次が説き伏せて、見合の席となった。丸菱
の社長〔新次郎の父〕(大山健二)は治子を気に入ったが、謙次の説得で「気にいらなかった」ことになっ
た。謙次が「治子には好きな男があること」を暗に仄めかしたからである。もっとも、この縁談には裏があ
り、丸菱の大型船の積荷を扱いたいからであった。しかし、半造はそのことを否定する。どこまで「政略」
であったかは、判然としない。もっとも、勘兵衛は治子の気持などまるで斟酌しない。この頃の叔父として
は、当然の計らいだったろう。さて、丸菱の大型船が入港することになった。回漕はほとんど山岩に決まり
かけていた。5千トン当たり相場から300円の値引きをする話が出来上がっていたからである。そこに、謙次  
が割って入る。500円の値引きを丸菱の社長と約束する。謙次の幼馴染で、今は同業の実家が潰れて、丸八
の世話になっている女性がいる。千代(木暮実千代)である。もっとも、彼女は今では半造の右腕に当たる
働きで、「親方」とまで呼ばれている身分である。その彼女は謙次の受けてきた話は無謀だいう。謙次は謙
次で、やってみなければ分からないという。二人は互いに散々喧嘩をしてきた仲である。しまいには千代が
折れて、この大仕事を引き受けることになる。さて、困った。腕利きの「立会人(荷物の捌きを仕切る役)」
がどうしても要るからである。そこで、謙次は今までの経緯をご破算にして、良吉に頼みに行く。しかし、
遅かった。良吉は山岩と1ヶ月間の仕事契約を結んでいたのである。それでも、良吉は大旦那と丸八への恩
返しのつもりで、立会い人を引き受ける。その結果、山岩の友次郎(伊藤光一)に怪我をさせられるが、む
しろ災い転じて福となす。仕事は首尾よく行くし、半造の許しが出たからである。その後、謙次は、回漕店
組合で大演説をぶつ。それは半造の考えと真逆で、回漕店を統制する(ひとつに統一する)というものであ
った。最初のうちは半造は暖簾を失うことを悲しんだが、謙次の成長ぶりにかえって喜ぶのだった。謙次は
支那に帰ってゆく。それを見送る人々。千代は謙次に自分の気持を伝えるが、謙次は困惑するばかりである。
半造は、良吉とともに、謙次を見送る。おまけに、治子は、山岩の若旦那と結ばれる運びとなっていること
を、謙次は知るのであった。
 他に、藤野秀夫(山岩の主人)、日守新一(久どん=丸八の番頭)、小林十九二(幸助)、川名輝(丸菱  
の社長秘書)、大原英子(おふみ=丸八の女中)、西村青児(組合の委員長)、河原侃(委員A)、久保田
勝己(委員B)、縣秀介(委員C)、野上潤(嘉助=友次郎の手下)、島村俊雄(船頭)、前畑正美(同)、
大坂志郎(正太)、宮紀久子(給仕)などが出演している。
 皇恩と親の恩の両立を図る意味で、どちらの顔も立てていることがよく分かる筋書である。さらに、「時
勢の力」という言葉が出て来るが、その言葉が強調されるところからも、この映画が「国策映画」であった
ことが分かるだろう。なお、半造とおふみの会話が戦時中を実感させた。以下の通りである。

  半造:今日の配給は何だ?
  おふみ:カツオでございます。

 まさか、魚介類まで「配給」になっているとは思わなかったので、貴重な会話と言ってよいだろう。戦時
体制についてはわずかしか知識がないので、戦争映画を研究する上では致命的である。いつか集中的に勉強
しなければならないだろう。
 2本目は、DVDで観た『ハードロマンチッカー』(監督:グ スーヨン〔具秀然〕、「ハードロマンチッカ
ー」製作委員会〔東映=木下グループ=角川春樹事務所=東映ビデオ=日本照明〕、2011年)である。いわ
ゆる「ツッパリもの」であるが、どこか一味違うものがあった。物語は定番の流れなのだが、この映画で描
かれる暴力は、乾いた感じがした。小生はあらゆる暴力に嫌悪感を覚える気質だが、フィクションだと平気
である。いつも何故だろうと思うのだが、答えは出ないままである。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。さらに、今回は、<ウィキペディア>
の助けも借りたい。両者の執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   <Movie Walker>

   〔解説〕

  『偶然にも最悪な少年』のグ・スーヨン監督が、自伝小説を松田翔太主演で映画化した青春ドラマ。
 暴力的な世界に足を踏み入れていく少年の姿を圧倒的なバイオレンスシーンとともに描き出す。松田
 翔太が髪を金色に染め上げ、グ監督の青年時代を熱演。顔をはれあがらせ、血まみれになるさまは思
 わず目を背けたくなるようなリアルさだ。

   〔あらすじ〕

  山口県下関で暮らす在日韓国人2世の少年グー。高校を中退し、フリーターをしている彼は、顔な
 じみの暴力団員や下関署の刑事に絡まれながら、怠惰な毎日を過ごしていた。ところがある日、後輩
 が起こした事件をきっかけに暴力の連鎖に巻き込まれていく。

   <ウィキペディア>

  『ハード・ロマンチッカー』は、CMディレクターのグ・スーヨンによる半自伝的小説。作者本人に
 よって同名で映画化され、2011年に公開された。松田翔太主演。小説では1978年が舞台であるが、映
 画では携帯電話がある21世紀の現代を舞台にしている。

   〔あらすじ〕

  山口県下関市に在住する在日韓国人の若者グーは、警察、ヤクザ、同世代の若者達と顔見知りにな
 りながら、そのどれにも所属することがなかった。そんなある日、グーは日本人の後輩の辰が朝鮮高
 校の生徒たちに恋人をリンチされ、報復として暴行した主犯格であるキム・チョンギの自宅に押し入
 って彼の祖母を殺害したという事件を知る。警察が動く中、グーは辰に貸した金を取り立てるために
 情報を集め始め、なりゆきで若い在日朝鮮人グループのリーダーであるパク・ヨンオの弟を辰の友人
 という理由で痛めつけて暴走族リーダー、金子の名前を騙り金を取り立てた。グーは北九州市で謎の
 男である高木が経営している店で働くが、すでに下関ではパク・ヨンオと金子のグループが彼を狙っ
 ていた。

   〔キャスト〕

  松田翔太(グー=在日韓国人の青年。辰の事件以降、徐々に敵を増やしていく)、柄本時生(マサ
 ル=グーの後輩の高校生。グーに対しては内心良くは思っていない)、小野ゆり子(中村みえ子=マ
 サルとの合コンにいた女子高生。グーが好意を寄せている)、芦名星(ナツコ=高木のクラブにいた
 女性従業員)、永山絢斗(辰=グーの後輩の高校生。キム・チョンギの祖母を殺害する)、渡部豪太
 (安田=タカシグループの一員。トルエン中毒)、金子ノブアキ(タカシ=グーの友人。自分のマン
 ションを仲間の溜まり場にしている青年実業家)、川野直輝(金子=在日韓国人で暴走族ヘッド。グ
 ーとは交流があるがのちに敵対する)、遠藤要(パク・ヨンオ=在日朝鮮人グループのリーダー。朝
 鮮高校時代ボクシング部のチャンピオンだった)、落合モトキ(パク・ヨンオの弟=在日朝鮮人グル
 ープの一員だが小心者。マサルや辰とも交流がある)、石垣佑磨(イー・パッキ=在日朝鮮人だがタ
 カシグループの一員。郷野組の組員見習い)、裴ジョンミョン(カン・テファン=イー・パッキと同
 じ)、遠藤雄弥(キム・チョンギ=朝鮮高校の高校生。非常に暴力的だが、パク・ヨンオのグループ
 には所属していない)、中村獅童(高木=北九州の小倉でクラブを経営している実業家。実は伊藤組
 の幹部)、趙ミン(王偏に民)和(グーがバイトをしていた店のマスター)、渡部篤郎(藤田=グー
 のことを監視している刑事)、真木蔵人(庄司=郷野組の組員。グーのことを気にかけている)、渡
 辺大(マサ=郷野組の組員で、庄司の舎弟)、真木よう子(姐さん)、友田彩也香(赤井ユキ=タカ
 シの彼女)、栗林里莉(マサルの彼女)、白竜(郷野組の若頭)、淡路恵子(グーの祖母)。

 バイオレンス映画の存在意義を考えるとき、すぐに浮かぶ答えは日常生活で溜まった鬱憤の「ガス抜き」
だが、嫌悪感しか残らない作品と、どこか爽快感を覚える作品とに分かれるから、ただのガス抜きではない
だろう。暴力は否定すべきだが、人間の根源にも通じているので、根絶はできないだろう。だとすれば、ど
うやって暴力を飼い馴らすかが問題になる。その問題を考えるために、バイオレンス映画が存在するという
答えは、果たして説得力をもつだろうか。


 某月某日

 DVDで2本の邦画を観たので、以下で報告しよう。
 1本目は、『友罪』(監督:瀬々敬久、「友罪」製作委員〔WOWOW=ハピネット=ギャガ=ジェイ・ストー
ム=ツインズ ジャパン=集英社=TBSラジオ=読売新聞社〕、2018年)である。「14歳未満の者が殺人を犯
しても刑事責任は問われない(刑法第41条)」という事実を知ったのはいつごろだろうか。もしかすると、
三島由紀夫の『午後の曳航』を読んだときかもしれない。当該映画は、そのケースに当り、少年Aのその後
を描いている。もちろん、「酒鬼薔薇聖斗事件(神戸連続児童殺傷事件)」を連想したが、同名の原作(薬
丸岳 作)と関係があるのかどうかは判然としない。また、「友罪」と熟する言葉はこれまで存在しなかった
であろう。つまり、「有罪」にひっかけて作者が造語したことは明らかである。これと似た作品名に『娼年』
〔← 少年〕(石田衣良 作)などがあり、この小説も映画化されている。
 さて、ずいぶん重たい映画で、物語も錯綜しており、最初は分り難いがだんだんと全体が見えてくるしか
けになっている。観ている間はとても惹きつけられたが、ご多分に漏れず「龍頭蛇尾」の感は免れず、ラス
ト・シーンには少しがっかりした。途中までのリアリティが薄まってしまったからである。
 ここで、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。一部配役に関しては、<ウ
ィキペディア>を参照した。両者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  第35回吉川英治文学新人賞に輝いた薬丸岳のベストセラー小説を、生田斗真&瑛太の主演で映画化
 したサスペンス。町工場で共に働き、少しずつ友情を育んできた2人の男が、近所で起きた児童殺人
 事件を機にそれぞれが起こした17年前の事件と向き合うさまがつづられる。監督は『64-ロクヨン-』
 など重厚な人間ドラマを得意とする瀬々敬久。

   〔あらすじ〕

  町工場で働く益田純一(生田斗真)は、ある日事故で指を切断する重傷を負うが、同僚の鈴木秀人
 〔青柳健太郎〕(瑛太)の冷静な対処のおかげで事なきを得る。入院中の彼を訪れた元恋人で雑誌記
 者の杉本清美(山本美月)は、ちまたで起きている児童殺人事件が17年前の連続殺傷事件の犯人・青
 柳健太郎によるものではないかと疑っていた。事件について調べて始めた益田は青柳の14歳の頃の写
 真を見るが、それは鈴木に似ていた。

   〔原作のあらすじ〕(ウィキペディアより)

  元雑誌記者の益田純一は、編集方針を巡って編集者と暴力沙汰を起こしてしまい、書き手として廃
 業していた。日雇い生活を繰り返す中、社員寮のある町工場に職を得るようになる。同時期に鈴木と
 いう同世代の男性とともに試用期間に入った益田は、慣れない仕事に悪戦苦闘する。一方、鈴木は多
 くの技能・資格を持っていて不愛想だが即戦力ともいえる人材だった。益田は中学時代に友人がいじ
 めを受け自殺したことに、罪の意識を感じていた。ギリギリまで友人の側にいた益田だったが、最後
 の最後でいじめる側に回ってしまい、その直後に友人は自ら命を絶った。そのことから今でも友人の
 家族のもとを訪ねては、罪の意識を和らげる代わりにひと時の息子の代わりを務めている。一方の鈴
 木は、仕事からの帰り道に男から追いかけられている美代子と出会う。彼女はかつて男に騙され、ア
 ダルトビデオに半ば強引に出演させらた過去があり、そのことから逃れるために人目を避けるように
 暮らしていた。ある日、作業中に益田は事故を起こし、指を切断する重傷を負う。しかし、鈴木の冷
 静な対応と駆け付けた中年タクシー運転手の山内のおかげで何とか指は元に戻る。この山内という運
 転手は、過去に息子が交通事故を起こし、二つの家族の子供の命を奪ったという過去をもっていた。
 他人の家族を壊してしまったので、山内は自分たち家族も解散させるべきとして、一家離散。そんな
 山内のもとに、息子が結婚をすると話が飛び込んできて山内は怒りを覚えた。

   〔配役〕

  益田純一(生田斗真)、鈴木秀人/青柳健太郎(瑛太)、藤沢美代子(夏帆)、杉本清美(山本美月)、
 白石弥生(富田靖子)、清水〔益田や鈴木の同僚〕(奥野瑛太)、内海〔同〕(飯田芳)、川島社長(小
 市慢太郎)、山内修司(佐藤浩市)、山内智子〔修司の妻〕(西田尚美)、飯島武士〔智子の弟〕(村上
 淳)、飯島麻奈美〔武士の妻〕(片岡礼子)、山内正人〔修司と智子の息子〕(石田法嗣)、千尋〔正人
 の妻〕(北浦愛)、村上院長(矢島健一)、バー テンの小杉(青木崇高)、唐木達也(忍成修吾)、坂井
 真紀〔純一が中学生だった頃見捨てた桜井学の母〕(桜井さちこ)、須藤編集長〔杉本の上司〕(古舘寛
 治)、白石唯〔弥生の娘〕(蒔田彩珠)、戸塚〔タクシー会社事務員〕(宇野祥平)、岸上〔山内正人が
 交通事故を起こし、子どもを亡くしている〕(大西信満)、篠塚朝子〔同〕(渡辺真起子)、篠塚〔朝子
 の夫〕(光石研)などが出演している。

 瀬々敬久監督の作品は、以下のように7本観ているが、いずれもいろいろ思索の種を提供してくれる作品
群である。とくに、小生は『感染列島』の鑑賞をお勧めしたい。本作同様、佐藤浩市が重要な役を演じてい
る。

  『肌の隙間』、監督:瀬々敬久、国映=新東宝、2004年。
  『感染列島』、監督:瀬々敬久、「感染列島」製作委員会〔TBS=東宝=電通=MBS=ホリプロ=CBC=
   ツインズジャパン=小学館=RKB=朝日新聞社=HBC=RCC=SBS=TBC=Yahoo! Japan〕、2009年。
  『ストレイヤーズ・クロニクル』、監督:瀬々敬久、映画「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会
   〔日本テレビ放送網=ワーナー・ブラザーズ映画=讀賣テレビ放送=バップ=ツインジャパン=D.N.
   ドリームパートナーズ=電通=集英社=札幌テレビ放送=宮城テレビ放送=静岡第一テレビ=中京
   テレビ放送=広島テレビ放送=福岡放送〕、2015年。
  『64(ロクヨン)前編』、監督:瀬々敬久、映画「64」製作委員会〔TBSテレビ=東宝=電通=CBC
   テレビ=WOWOW=朝日新聞社=毎日新聞社=TBSラジオ=MBS=RKB=KDDI=コブラピクチャーズ=HBC=
   TBC=BSN=SBS=RSK=RCC=GYAO=TCエンタテイメント=日本出版販売〕、2016年。
  『64(ロクヨン)後編』、監督:瀬々敬久、映画「64」製作委員会〔TBSテレビ=東宝=電通=CBC
   テレビ=WOWOW=朝日新聞社=毎日新聞社=TBSラジオ=MBS=RKB=KDDI=コブラピクチャーズ=HBC=
   TBC=BSN=SBS=RSK=RCC=GYAO=TCエンタテイメント=日本出版販売〕、2016年。
  『最低。』、監督:瀬々敬久、KADOKAWA、2017年。
  『友罪』、監督:瀬々敬久、「友罪」製作委員会〔WOWOW=ハピネット=ギャガ=ジェイ・ストーム=
   ツインズ ジャパン=集英社=TBSラジオ=読売新聞社〕、2018年。

 2本目は、『三十路女はロマンチックな夢を見るか?』(監督:山岸謙太郎、「三十路女はロマンチック
な夢を見るか?」製作委員会〔STELLA WORKS=キングレコード=キャンター〕、2017年)である。これは不
思議な映画である。どちらかと言えばコメディだが、妙にシリアスな場面もあり、なかなか凝った演出をし
ている。山岸監督の作品は初めて観るが、『東京無国籍少女』(監督:押井守、東映ビデオ、2015年)の原
案を提供しており、オリジナリティの期待できる作家監督である。
 物語を確認しておこう。これも上と同じで、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『ドクムシ』の武田梨奈が夢もない独身女性を演じたロマンティックサスペンス。30歳の誕生日ま
 であと数日に迫った那奈の部屋に、突如銀行強盗3人が侵入。しかし彼らはまったく強盗らしくなく、
 訳ありの様子。那奈は夢を追う強盗団の逃走劇に巻き込まれていく。監督は、後に押井守監督が長編
 リメイクした『東京無国籍少女』(2012年)を手がけた山岸謙太郎。強盗を働き逃げる3人を、『ト
 モダチゲーム 劇場版』の久保田悠来、『トリガール』の佐生雪、『八月のラヴソング』の酒井美紀
 が演じる。

   〔あらすじ〕

  20代も残すところあと数日になった荻野那奈(武田梨奈)は、恋人はおらず、仕事も単調で、夢も
 なくしかけていた。しかも親友の工藤麻子(秋吉織栄)の寿退社を社内の挨拶で知り、ショックを受
 ける。そんな中、部屋に突如銀行強盗の逃走犯3人が押し入ってきて、那奈は拘束されてしまう。し
 かし、自分たちの犯行をビデオカメラで撮影する3人は、全然強盗らしくない様子。3人は風間拓人
 (久保田悠希)とその恋人・笹川麗良(佐生雪)、そして拓人の元彼女である栗原葵(酒井美紀)で、
 麗良と葵の間には気まずい雰囲気が流れていた。強盗団との逃亡劇という非日常に突如巻き込まれた
 那奈の運命は……?!

 他に、山村美智(赤城香奈恵 )、春花(日野まりあ=那奈の高校時代の友人)、近藤芳正(油谷茂雄=那
奈の上司の課長)、鎌田秀勝(藤沼=ヤクザ)などが出演している。なお、この映画狂の拓人は、監督自身
がモデルかもしれない。


 某月某日

 DVDで邦画の『源氏物語』(監督:吉村公三郎、大映、1951年)を観た。最近観た映画で日蓮を演じていた  
長谷川一夫が、今度は光源氏に扮している。その変わり身は、まことに鮮やかなものである。周知の如く、
『源氏物語』は日本の代表的な物語だが、実は現代語訳でも読んだことがない。暇になったら繙きたいとこ
れまで気にはなっていたが、着手すれば大幅に時間が取られるので、断念してきた。もしかすると、来年か
ら暇になるかもしれないので、死ぬまでに是非読んでみたい作品の一つである。
 さて、映画の方だが、もちろん幾度か映画化されている。小生が観たことのある映画は、当該作品の他に、
以下のように2篇ある。

  『新源氏物語』、監督:森一生、大映、1961年〔「日日是労働セレクト134」、参照〕。
  『源氏物語 千年の謎』、監督:鶴橋康夫、「源氏物語 千年の謎」製作委員会〔角川映画=TBS=東宝=
   CBC=ジェイ・ストーム=MBS=RKB=毎日新聞社〕、2011年〔「日日是労働セレクト111」、参照〕。

 前者の光源氏は市川雷蔵 、後者のそれは生田斗真が演じている。公開された時代からして、妥当なところ
か。もっとも、両者ともにさほど印象深い作品ではない。当該作品も、長谷川一夫が43歳の作品だけに、か
なり薹が立って感じられた。相手役(藤壺)の小暮実千代も33歳だったので、やや老けて感じられる。失礼
ながら、10年前に撮っていたら、両者ともにだいぶ違っていただろうと思われる。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   〔解説〕

  大映が創立十周年記念映画として永田雅一自ら製作者となり、企画課長松山英夫の企画、谷崎潤一
 郎監修、池田龜鑑校閲の下に、脚本は新藤兼人、演出は吉村公三郎、大映『自由学校(1951年/吉村
 公三郎)』に次ぐコンビである。撮影は『緑の果てに手を振る天使』の杉山公平。出演者は『折鶴笠』
 の長谷川一夫、『海の花火』の木暮実千代、『牝犬』の京マチ子、『愛妻物語』の乙羽ね信子、『ひ
 ばりの子守唄』の水戸光子、『奴隷の街』の堀雄二、『逢魔が辻の決闘』の大河内傳次郎などの他に、
 相馬千恵子、長谷川裕見子、東山千栄子、本間謙太郎、菅井一郎、進藤英太郎、等々。

   〔あらすじ〕

  時の御門(小澤栄〔栄太郎〕)の寵愛を一身にあつめた桐壺更衣(相馬千恵子)は、弘徽殿の女御
 (東山千栄子)をはじめ、御門を取巻く女性たちの嫉視のなかに、御子を身ごもり、里に帰って玉の
 ような男児を生み「光君」と呼んだ。が、桐壺はそのまま病床にふし、光君五歳のときにみまかった。
 光君は美しく成年し、源氏の姓を賜わり、御門の寵愛めでたく立身出世も早かった。そのまれに見る
 美貌は、街でも御所内でも、女たちの讃美の的となった。そして成年の日左大臣(菅井一郎)の娘葵
 の上(水戸光子)を妻に迎えたが、葵は生来冷たい女であった。源氏の胸にひめられた女性は、五歳
 で死に別れた母桐壺のおもかげによく似た藤壺の君(小暮実千代)であった。しかし、藤壺は御門が
 愛される女性であって、源氏も思うままに近づくことは出来なかった。その上何かにつけて例の意地
 の悪い弘徽殿の女御が眼を光らせて邪魔だてすると知ると、彼女の姪で、源氏にはぞっこんの朧月夜
 の君(長谷川裕見子)を、ちょっとからかって見る気にもなるのだった。唯一度の逢う瀬のあと、藤
 壺は罪を重ねることの恐ろしさに源氏を避けて逢おうとはしない。そのうち源氏は瘧病にかかり山篭
 りをするが、全快しての帰路、ふと山に隠棲する尼君(瀧花久子)とともに住む美しい幼女の紫の上
 (乙羽信子)を見て、わが家へ連れ帰る。葵の上は源氏の娘夕霧の君を生むが、死んでしまう。藤壺
 の懐妊にからんで弘徽殿の女御の悪質な策謀がはげしくなり、頭中将(本間謙太郎=左大臣の息子)
 のすすめで源氏は暫く須磨へ隠栖することになったが、明石に住む播磨入道(大河内傳次郎)の家に
 招かれ厄介になる。入道の娘淡路の上(京マチ子)には、良成(堀雄二)という恋人があるが、父は
 淡路を源氏の君にと思っている。折しも京から便りがあり、藤壺が無事男の御子を生んだあと、直ち
 に尼になったときく。その悲しみに庭へ出ている源氏をふたりの刺客(清水明/佐々木小二郎)がひ
 そかに襲うが、目的を果さず、かえって源氏と淡路とを結びつけてしまう。御門がおかくれになり、
 弘徽殿の女御も亡くなったとの知らせに、源氏は久々に京都へもどった。淡路も良成も同道した。二
 條院の源氏の館には美しく成育した紫の上が待っていた。藤壺も病い篤く、源氏が駆けつける間もな
 く息をひきとった。淡路は懐妊していたが、その子は源氏の子ではないと自白した。源氏はかつとな
 って良成を斬ろうとしたが、紫の上のやさしい取なしで淡路とともに故郷へ帰してやるのであった。
 光源氏と紫の上が琴の二重奏を弾くところで幕を閉じる。

 なお、配役等が詳しいので、以下に<ウィキペディア>の記事も引用する。これにもまた、感謝。

 『源氏物語』(げんじものがたり)は、1951年(昭和26年)11月2日公開の日本映画である。大映製作・配  
給。監督は吉村公三郎、脚本は新藤兼人。モノクロ、スタンダード、123分。
 大映の創立10周年記念映画として、豪華出演者・スタッフで製作した大作映画。紫式部の『源氏物語』の
初の映像化作品であり、本作では、桐壺の死と光源氏の幼少期をプロローグとし、26歳頃の源氏を中心とし
た1年半の物語を描いている。配収は1億4,105万円で、1951年度の邦画配収ランキング第1位となった。第
25回キネマ旬報ベスト・テン第7位、第5回カンヌ国際映画祭撮影賞受賞。

   〔スタッフ〕

  監督:吉村公三郎(近代映画協會)
  製作:永田雅一
  企画:松山英夫
  脚本:新藤兼人(近代映画協會)
  監修:谷崎潤一郎
  校閲:池田亀鑑
  後援:紫式部学會
  撮影:杉山公平
  録音:大角正夫
  照明:加藤庄之丞
  美術監督:水谷浩
  音楽監督:伊福部昭
  風俗考証:江馬務
  建築考証:藤原義一
  庭園考証:重森三玲
  舞楽考証:平安舞楽會
  衣裳調整:高島屋
  特殊撮影:松村禎三、本多省三
  編集:西田重雄
  製作主任:橋本正嗣
  按舞:藤間良輔
  箏曲:東登美子
  琵琶:安田旭邦
  助監督:三隅研次

   〔キャスト〕

  光源氏:長谷川一夫
  播磨入道:大河内傳次郎
  藤壺:木暮実千代(松竹)
  葵の上:水戸光子
  淡路の上:京マチ子
  紫の上:乙羽信子
  良成:堀雄二
  頭中将:本間謙太郎
  左大臣:菅井一郎(第一協團)
  右大臣:進藤英太郎
  御門:小沢栄(俳優座)
  朧月夜の君:長谷川裕見子
  桐壺:相馬千恵子
  桐壺の母:英百合子
  尼君:瀧花久子
  弘徴殿女御:東山千栄子(俳優座)
  惟光:加東大介
  左馬頭:近衛敏明
  藤式部丞:小柴幹治
  僧侶:殿山泰司(近代映画協會)
  下人:天野一郎
  僧都:上山草人
  源氏の従者:石原須磨男
  朱雀院の御門:筧田浩一
  源氏の幼少時代:本松一成
  刺客:清水明、佐々木小二郎
  下人:由利道夫
  弘徴殿の命婦:大美輝子、正木隆子
  典侍:大伴千春
  藤壺の命婦:橘公子、小松みどり、三星富美子、戸村昌子
  朧月夜の君の女房:相馬幸子
  淡路の上の女房:小林叶江、中目順子
  葵の上の女房:仲上小夜子、高森和子
  花売りの女:堀さわ子
  市女笠の女:高原朝子、前田和子
  紫の上の女房:松岡信江
  命婦:橘恵美子、瀧のぼる、小柳圭子、大井由貴子、南春恵、富田暁美、富士原比那子、種井信子、
     児島昌子
  桐壺の女房:小櫻瑠美

   〔作品解説〕

  本作は、当時の源氏物語ブームにあやかって製作され、当時の日本映画においては空前の規模で製
 作を敢行した。新藤兼人は、原作に最も忠実といわれる与謝野晶子の現代語訳をもとに、長大な原作
 を約1年半の物語に脚色し、さらに明石の上と女三宮を合体させた「淡路の上」という人物を新たに
 創出している。脚色には、谷崎潤一郎が監修、池田亀鑑が校閲、紫式部学会が後援にあたった。
  主演級の俳優の衣裳60組は、高島屋の全面協力によって調達し、花の宴のシーンでは30人の女官の
 衣裳代だけで総予算をオーバーしたという。
  1951年(昭和26年)11月1日に帝国劇場で行われた大映創立10周年記念式典で先行上映され、翌日の
 11月2日に封切られた。本作は当初カラー作品として構想されたが、技術的な問題でモノクロとなった。

 以上である。


 劇中、和歌が数首詠まれているので、以下にそれを最後に記しておこう。

  (光源氏)『伊勢物語』第七段

        いとどしく/すぎゆく方の/恋しきに/うらやましくも/かへる浪かな

  (光源氏)『源氏物語』第五帖「若紫」

        見てもまた/逢ふ夜まれなる/夢のうちに/やがて紛るる/我身ともがな

  (藤壺)同上

        世語りに/人や伝へむ/たぐひなく/憂き身を覚めぬ/夢になしても

  (紫の上)『源氏物語』第十三帖「明石」

        浦風や/いかに吹くらん/思ひやる/袖うち濡らし/波間なき頃

  (光源氏)『源氏物語』第九帖「葵」

       君なくて/塵つもりぬる/常夏の/露うち払ひ/いく夜寝ぬらむ

                                                 
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