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 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第163弾を掲げます。今月は、直ぐ下の記事しかありません。
つまり、あまりに忙しくて、映画を鑑賞したり、このブログを書いたりする時間を捻出できなかったからで
す。7月分と8月分を合併して、「日日是労働セレクト163」とする選択肢もあったのですが、あえて、
記事ひとつだけで公開することにしました。ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しよう
と務めておりますので、本文に何かと読者のお気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の
個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切ありませんので、どうぞご理解ください。
 なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『壁あつき部屋』(監督:小林正樹、新鋭プロ、1956年)を観た。BC級戦犯を扱った映画であ
る。「冤罪」としての戦犯を題材とした『私は貝になりたい』(監督:橋本忍、東宝、1959年)と、そのリ
メイク作品である『私は貝になりたい』(監督:福澤克雄、「私は貝になりたい」製作委員会〔TBS=東宝=
ジェイ・ドリーム=博報堂DYメディアパートナーズ=毎日放送=朝日新聞社=プロダクション尾木=中部日
本放送=TBSラジオ=TOKYO FM=RKB毎日放送=北海道放送=他 JNN全28局〕、2008年)は有名であるが、こ
の作品はつい最近までまったく知らなかった。内容的にも知らなかったことが多く、安部公房が脚本を手掛
けている点でも興味深い。小林正樹と言えば、真っ先に思い出すのは『切腹』であるが、本作を含めて以下
のように16本観ている(『人間の條件』を6本として数える)。いずれもダークな作品群であるが、人間の
暗い側面を必死に描こうとしている点が素晴らしい。

  『美わしき歳月』、監督:小林正樹、松竹、1955年。
  『あなた買います』、監督:小林正樹、松竹大船、1956年。
  『泉』、監督:小林正樹、松竹大船、1956年。
  『壁あつき部屋』、監督:小林正樹、新鋭プロ、1956年。
  『黒い河』、監督:小林正樹、松竹大船、1957年。
  『人間の條件 第1部・純愛篇/第2部・激怒篇』、監督:小林正樹、にんじんくらぶ=歌舞伎座映画、
   1959年。
  『人間の條件 第3部・望郷篇/第4部・戦雲篇』、監督:小林正樹、人間プロ、1959年。
  『人間の條件 第5部・死の脱出/第6部・曠野の彷徨』、監督:小林正樹、松竹大船=文芸プロ
   にんじんくらぶ、1961年。
  『切腹』、監督:小林正樹、松竹京都、1962年。
  『怪談』、監督:小林正樹、文芸プロダクションにんじんくらぶ、1964年。
  『上意討ち ー拝領妻始末ー』、監督:小林正樹、三船プロ=東宝、1967年。
  『いのち・ぼうにふろう』、監督:小林正樹、東宝=俳優座、1971年。
  『化石』、監督:小林正樹、俳優座映画放送=四騎の会、1975年。

 物語の冒頭に語りが入るので、それを写し取っておこう。耳から仕入れたので不正確であるが、ご寛恕願
いたい。終戦から4年後の巣鴨プリズンである。

  文明と平和の名において裁かれた戦犯たちはここに服役している。わたしたちがここを訪れたのは、   
 むろん単なる好奇心からではない。この日本の過去を葬った墓にも等しいあつい壁の中に、八年の間    
 生き埋めにされていた恐るべき真実を、一人でも多くの人に訴えたいと願ったからに他ならない。

 さらに、劇中、注目すべき言葉がいくつかあった。

 つきつめて/おのれにかえる悲しみを/放つに狭く壁あつき部屋(戦犯の詠んだ歌だろうか)。
 
 戦犯とは/死の商人がかけた/平和の仮面である(許の捻り出した警句)。

  みんなだんだん埃になってゆくみたいだ。俺は始め、こういうところにいると、次第に馴化されて    
 精神的になるだろうと思っていたが、ところがどうだ、逆なんだな。娑婆にいる人間よりも娑婆臭く
 なるんだよ。娑婆に出て、店を持った空想をして、毎日想像の中で売上金の勘定をしている奴がいる
 そうだよ(横田が自分の弟に語った言葉)。

  面会に来る汽車賃があるなら、生活保護を打ち切るって……(山下の妹の言葉)。

  A級戦犯は政治犯、BC級戦犯は刑事犯、どちらも戦争の犠牲者だ(A級戦犯の言葉)。

  (上記に台詞に対して)貴様は犠牲者ではない、責任者だろう!(許の言葉)。

  下衆! 殺してやろうと思ったが、殺すのが惜しくなった。死ぬよりも腐る方が、貴様には似合っ
 てるんだ(山下が浜田に吐き捨てた言葉)。

 なお、横田が弟に差し入れを頼んだ本は、オスカー・ワイルドの『獄中記』だった。弟は意外がっていた  
が、小生は「さもありなん」と思った。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  巣鴨拘置所に服役中のBC級戦犯の手記『壁あつき部屋 ーBC級戦犯手記ー』の映画化で、新鋭プロ
 第一回作品。脚色には芥川賞受賞作家安部公房が当り、『まごころ』の小林正樹が監督している。撮
 影は『日本の悲劇』の楠田浩之、音楽は『青空大名』の木下忠司。出演者は『沖縄健児隊』の三島耕、
 『早稲田大学』の小沢栄、信欣三、『君の名は』の岸恵子、小林トシ子ほか俳優座、文学座、民芸な
 どの新劇人である。なお、映画が完成したのは1953年であるが、当時の対米感情への配慮から公開が
 見送られ、1956年になってようやく陽の目を見たという、いわくつきの作品でもある。

   〔あらすじ〕

  巣鴨拘置所……そこには文明と平和の名において裁かれた戦犯たちが服役している。その一人山下
 清元陸軍一等兵(浜田寅彦)は、戦時中南方で上官浜田元中尉(小沢栄〔栄太郎〕)の命令で一人の
 原住民を殺したのだが、その浜田の密告で重労働終身刑の判決を受けた。また横田(三島耕)は戦時
 中米俘虜収容所の通訳だっただけで巣鴨に入れられた。しかも戦時中、横田がたった一人人間らしい
 少女だと思つた優しいヨシ子(岸恵子)は、今では渋谷の特飲街に働く女である。朝鮮人の許(伊藤
 雄之助)も、神経質な山下もこうして戦犯の刻印をおされた犠牲者の一人にすぎなかった。脱出に失
 敗した山下はその直後母の死を知った。時限をきめて出所を許された山下は、浜田が女手しかない山
 下の家を今まで迫害し続けていたことを知ると、激しい怒りがムラムラとこみあげてきた。しかし恐
 怖に歪んだ浜田の表情を見た山下は、殺す気もしなくなった。たった一人残った妹(小林トシ子)は、
 「これからどうする?」という山下の問いに、「生きてくわ」とポツリと答えた。再び横田たちに迎
 えられて、拘置所の門をくぐる山下、そしてそこには、再びあつい壁だけが待っていた。

 他に、下元勉(木村=BC級戦犯)、信欣三(川西=同)、三井弘次(西村=同)、内田良平(横田の弟=
コミュニスト)、北龍二(隠亡燒=ヨシ子の父)、望月優子(浜田の妻)、小林幹(A級戦犯)、永井智雄
(BC級戦犯のひとり)、大木実(同)、井上昭文(同)、佐野浅夫(同)、横山運平(M爺さん)、戸川美
子(特飲街の女)、加藤武(「戦犯釈放促進全国同盟」の講演会のスタッフ)などが出演している。
 「特飲街(昭和21〔1946〕年、公娼制度が廃止されてから昭和33〔1958〕年に売春防止法が施行されるま
で、売春婦を置いていた特殊飲食店が立ち並ぶ街)」(コトバンクより)や、「カンカン踊り=フレンチカ
ンカン」などが登場するが、戦時中とは様相が一変している様子を上手に表現していた。岸恵子は初めての
汚れ役だったそうであるが、あまり様になっていなかった。女が崩れるとき、もっと悲惨な貌になるだろう
から……。

                                                 
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