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無印良品映画の頁(2)
日日是労働セレクト157
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第157弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト157」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『カメラを止めるな!』(監督:上田慎一郎、ENBUゼミナール、2018年)を観た。これも新作
だが、話題になっていたので是非早く観たかった作品である。期待にそぐわず、痛快な映画だった。同じシ
ーンを別の角度から描き直す手法は、『運命じゃない人』(監督:内田けんじ、PFFパートナーズ=あ=TBS=
TOKYO FM=日活=IMAGICA、2004年)〔「日日是労働セレクト45」、参照〕や、『桐島、部活やめるってよ』
(監督:吉田大八、「桐島、部活やめるってよ」製作委員会〔日本テレビ放送網=集英社=読売テレビ放送=
バップ=DNドリームパートナーズ=アミューズ=WOWOW〕、2012年)〔「日日是労働セレクト93」、参照〕
で馴染ではあるが、また違った味があった。そもそも「ゾンビ」の出て来る映画を好まない小生ではあるが、
この作品は作中劇としてのゾンビなので、「まぁ、仕方ないか」と思った。そう言えば、『キツツキと雨』
(監督:沖田修一、「キツツキと雨」製作委員会〔角川映画=オフィス・シロウズ=関西テレビ放送=衛星
劇場=トライストーン・エンタテイメント=NTT DOCOMO=Yahoo! JAPAN=読売新聞社=パレード〕、2011年)
〔「日日是労働セレクト113」、参照〕でも、似たようなシチュエーションがあった。あまり抵抗感が湧
かないのは、ゾンビそのものがテーマではないからだろう。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  監督&俳優養成スクール、ENBUゼミナールのワークショップから生まれた異色ホラー。37分間にわ
 たるワンカットのゾンビ・サバイバル映画『ONE CUT OF THE DEAD』の撮影に挑む俳優やスタッフの前
 に本物のゾンビが出現し、事態が混迷していくさまが描かれる。ゆうばり国際ファンタスティック映
 画祭2018で観客賞を受賞するなど、国内外の映画祭で話題となった。

   〔あらすじ〕

  ゾンビ映画撮影のため、山奥にある廃墟にやってきた自主映画のクルーたち。監督は本物を求めて
 なかなかOKを出さず、ついに42テイクに至る。と、本物のゾンビが現れ撮影隊に襲いかかった。次々
 とクルーの面々はゾンビ化していくが、監督は撮影を中止するどころか嬉々として撮影を続行。37分
 ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイブムービーを撮った彼らとは……。

 出演者は、濱津隆之(日暮隆之=映画監督。彼が撮っているゾンビ映画にもにわか監督役で出演している)、
しゅはまはるみ(日暮晴美=隆之の妻、元女優。ゾンビ映画ではメイクの奈緒役)、真魚(日暮真央=隆之
と晴美の娘。映画監督志望)、長屋和彰(神谷和明=ゾンビ映画では、男優のこうた役)、秋山ゆずき(松
本逢花=ゾンビ映画では女優の千夏役)、細井学(細田学=ゾンビ映画ではカメラマン役)、市原洋(山ノ
内洋=ゾンビ映画では助監督役)、山崎俊太郎(山越俊助=ゾンビ映画では録音マン役)、大沢真一郎(古
沢真一郎=ゾンビ映画のディレクター)、竹原芳子(笹原芳子〔どんぐり〕=同じくプロデューサー)、浅
森咲希奈(松浦早希=ゾンビ映画の撮影助手)、吉田美紀(吉野美紀=同じくスタッフ)、合田純奈(栗原
綾奈=同)、山口友和(谷口智和=同)、藤村拓矢(藤丸拓哉=同)、イワゴウサトシ(黒岡大吾=最初の
監督役)、高橋恭子(相田舞=最初のメイク役)、生見司織(温水栞=ゾンビ映画のスタッフ)、眼鏡太郎
(Vシネマの監督)、ギラルド沙羅(Vシネマの子役)、佐渡未来(子役の母)、森了蔵(護身術インストラ
クター)、林泰絵(同じくアシスタント)、小山修平(インタビュアー)、左右田陽菜(幼少の真央)など
である。


 某月某日

 DVDで邦画の『孤狼の血』(監督:白石和彌、「孤狼の血」製作委員会〔東映=木下グループ=日活=山陽
鋼業=電通=朝日新聞社=東映ビデオ=WOWOW=ダイバーシティメディア=報知新聞社=GYAO=トーハン=プ
ルーク〕、2018年)を観た。新作は借り賃が高いのであまり借りたことがないが、今回はその縛りを弛めて
みた。というのも、白石監督の作品なので、鑑賞前から期待していたからである。嬉しいことに、期待以上
の出来であった。小生は現実の暴力をこころから厭うが、虚構の暴力は何でも来いと思っている。人間の本
質をみつめるためには、「暴力」が一番分り易いからである。彼の監督作品は以下のように3本しか観てい
ないが、いずれも強烈な印象を残した作品である。さすが、若松孝二監督の許で修業しただけのことはある。

  『凶悪』、監督:白石和彌、「凶悪」製作委員会〔日活=ハピネット〕、2013年。
  『日本で一番悪い奴ら』、監督:白石和彌、『日本で一番悪い奴ら』製作委員会〔日活=東映=木下
   グループ=カルチュア・エンタテインメント=ぴあ=GYAO=ポニーキャニオンエンタープライズ〕、
   2016年。
  『孤狼の血』、監督:白石和彌、「孤狼の血」製作委員会〔東映=木下グループ=日活=山陽鋼業=
   電通=朝日新聞社=東映ビデオ=WOWOW=ダイバーシティメディア=報知新聞社=GYAO=トーハン=
   プルーク〕、2018年。

 「県警対極道」という図式の映画としては、傑作『県警対組織暴力』(監督:深作欣二、東映、1975年)
〔「日日是労働セレクト20」、参照〕があるが、それに優るとも劣らない出来であった。ちょうど役所広
司に当る役を演じたのは、それまでヤクザ者の役柄を務めていたことの多い菅原文太である。当該作品の主
人公に扮した役所広司も、ヤクザ者の役を『シャブ極道』(監督:細野辰興、大映、1996年)〔「日日是労
働セレクト114」、参照〕で演じているが、文太とは一味違う刑事を世に送り出したのではないだろうか。
「マル暴の刑事は、見た目はヤクザと変わらない」などと言われることがあるが、現場で堅気衆を守るデカ
と、裏でヤクザとつるんでいる警察上層部の幹部とは、所詮生きている世界が違うのだろう。もっとも、小
生からすれば、「人間なんてそんなもの」という感慨しかない。少し図式的すぎたのと、登場人物があまり
にティピカルなのが玉に瑕と言えないこともないが、もっとリアルに描いたら怖すぎるので、この辺りが落
としどころなのだろう。マル暴刑事の綱渡りは、残酷な殺され方で終止符を打たれるが、ここまでして堅気
衆を守る刑事など本当に存在するのだろうか、という素直な疑問も残る。しかし、フィクションだからこそ、
ここまでの人間を造型してもいいのだ、と思い直した。豚小屋が出て来るが、過去にも豚小屋で殺されるヤ
クザが登場する映画を観たことがあるが、どの作品だったかは覚えていない。たぶん、この映画と同様、東
映が関わる作品だったはずである。豚の一生はみじめなものだが、人間だってそんなに変わらないと言いた
いのかもしれない。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容されたし。

   〔解説〕

  第69回日本推理作家協会賞に輝いた柚月裕子の警察小説を映画化したバイオレンス作。暴力団対策
 法成立直前の昭和63年の広島のとある街を舞台に、刑事とやくざたちの熱い生きざまが描かれる。手
 段を選ばない捜査方法でやくざとの癒着が噂されるベテラン刑事を役所広司、その部下となる新人刑
 事を松坂桃李が演じる。

   〔あらすじ〕

  昭和63年。暴力団対策法成立直前の広島・呉原。いまだに暴力団が割拠するこの土地では、新たに
 進出してきた広島の巨大組織・五十子会系の加古村組と地場の暴力団・尾谷組との抗争の火種が燻り
 始めていた。そんな中、加古村組関連企業の金融会社社員が失踪。これを殺人事件と睨んだマル暴の
 ベテラン刑事・大上(役所広司)と新人刑事・日岡(松坂桃李)は、事件解決に奔走する。だが、ヤ
 クザ同士の抗争が、正義も愛も金も、全てを呑みこんでゆく……。警察組織の目論見、大上自身に向
 けられた黒い疑惑、さまざまな欲望をむき出しにして、暴力団と警察を巻き込んだ血で血を洗う報復
 合戦が幕を開けようとしていた……。

 他に、真木よう子(高木里佳子=クラブ梨子のマダム)、滝藤賢一(嵯峨大輔=広島県警監察官・警視)、
音尾琢真(吉田滋=大上に追い詰められる加古村組組員)、駿河太郎(上早稲〔うえさわ〕二郎=呉原金融
の社員)、MEGUMI(上早稲潤子=二郎の妹)、中村倫也(永川恭二=尾谷組のヒットマン)、中村獅童(高
坂隆文=安芸新聞の記者)、矢島健一(友竹啓二=呉原東署捜査第二課のマル暴係長)、田口トモロヲ(土
井秀雄=同署の刑事)、ピエール瀧(瀧井銀次=広島仁正会系列の右翼団体「全日本祖國救済同盟」のリー
ダー)、町田マリー(瀧井洋子=銀次の妻)、石橋蓮司(五十子正平=五十子会の会長)、江口洋介(一之
瀬守孝=尾谷組の若頭)、竹野内豊(野崎康介=加古村組の若頭)、阿部純子(岡田桃子=薬剤師)、嶋田
久作(加古村猛=五十子会系加古村組組長)、伊吹吾郎(尾谷憲次=鳥取刑務所に服役中の尾谷組組長)、
中山峻(吉原圭輔=五十子会の幹部、永川恭二に撃たれる)、九十九一(善田新輔=養豚業者)、岩永ジョ
ーイ(善田大輝=その息子)、井上肇(岩本恒夫=広島県警副本部長・警視長)、滝川英次(毛利克志=呉
原東署署長)、さいねい龍二(菊地=同じく刑事)、沖原一生(有原=同)、勝矢(苗代広行=加古村組組
員)、田中偉登(柳田孝=尾谷組組員)、野中隆光(備前芳樹=同)、ウダタカオ(賽本友保=尾谷組の元
若頭・14年前に金村に殺された里佳子の亭主)などが出演している。


 某月某日

 昨年の鑑賞映画ベスト1は、『ヒメアノール』(監督:吉田恵輔、「ヒメアノール」製作委員会〔日活=
ハピネット=ジェイ・ストーム〕、2016年)だったが、過去の「イジメ」に対する復讐劇として、実に鮮烈
に描かれているというのが1位に選んだ理由だった。これほどの作品は初めて鑑賞したと書いたが〔「日日
是労働156」、参照〕、実はそれに匹敵するリベンジ劇を描いた作品を忘れていたことに気づいた。それ
は、『隣人13号』(監督:井上靖雄、「隣人13号」製作委員会、2004年)〔「日日是労働20」、参照〕と
いう作品で、これも凄かったことを覚えている。思い出したきっかけは、原作のコミックを読んだことによ
る。『隣人13号(1-3巻)』(井上三太 作、スコラ、1994-1996年)がそれである。映画は原作とはだいぶ
異なる印象だったが、どちらもかなりインパクトのある作品である。いずれにせよ、イジメタ側は忘れてい
るが、イジメラレタ側はけっして忘れはしない。事実、この作品でも、イジメタ側の赤井トールはイジメの
対象であった村崎十三をすっかり忘れていたのである。
 さて、DVDでドキュメンタリー映画(ただし、ドラマの部分もある)とその付録とも言える小品ドキュメン  
タリーを観たので、報告しよう。本篇の方は、『1000年刻みの日時計・牧野村物語』(監督:小川紳介、小
川プロダクション、1987年)であり、付録の方は、『京都鬼市場・千年シアター』(スタッフ:小川紳介/
笹岡保 他、小川プロダクション、1987年)である。実は、「社会派」映画として、昨年中に観たかった作品
ではあるが、多忙にかまけて観損なった映画のひとつである。
 本篇の方から感想を記そう。先ず、冒頭の口上を引用してみよう。

   私たちは、
   蔵王山西麓須川河岸段丘にある
   戸数100戸の牧野村で
   稲を作りながら
   13年間、暮らしてきました。
   この映画は、その間に
   撮りためて来たフィルムを
   まとめたものです。

 一口に13年間と言っても、かなり長い年月である。長期滞在して映画を作るにしても、せいぜい2、3年
が限度だろう。小川プロダクションは、その辺りの規格がまさに「破格」と言ってもよいだろう。なお、こ
の作品以前に、『ニッポン国・古屋敷村』(監督:小川紳介、小川プロダクション、1982年)があるが、そ
の続篇とも言える作品である。次いで、佐藤忠男が『日本映画300』(朝日文庫、1995年)でこの映画を
論じているので、それを引用してみよう。

   山形県上山市(かみのやまし)牧野という農村に住みついた小川プロダクションが、親しくなっ
  た村の人々との日常的なつきあいを描きながら、村の歴史と現在、農業のあり方、米の生育と田の
  土についての学問的な考察、信仰やそのいわれ、などなどを映画による長篇(222分)のエッセイの
  ようにして繰り広げた作品である。基本的にはドキュメンタリーであるが、歴史の部分などには俳
  優も出てドラマになるし、科学映画と言っていい部分もあり、自然なお喋りを楽しむ部分もある。
  村人たちとの世間話のようなお喋りが、いつのまにか映画による考古学になったり民俗学になった
  りするところが面白いところで、ひとつの社会の全体像を描く試みと言えるかもしれない。
   この映画の製作中、私は何度か上山の小川プロダクションを訪ねた。一軒の農家で共同生活をし
  ながら彼らはいろんな撮影をやっていた。あるときは田の土壌の微生物の顕微鏡撮影に熱中してい
  た。あるときは村の干柿づくりの故事来歴を撮っていた。いずれも短篇なら確実に一本の作品には
  なる呎数を撮ったはずである。しかし出来上がった作品にはそれらは全く使われていなかった。さ
  らにまたトリプル・エクラン(三面スクリーン同時上映)方式を試みたがうまくゆかなかったから
  止めた、と言っていたこともあった。他にもいろんなものを撮り、いろんなことを試みているはず
  である。つまりこの映画は、最初からある程度がっちりした計画をもって撮影をすすめたというも
  のではなく、いろんな対象を興味のおもむくまま撮り、撮りながら新しく構想を立て直し、その構
  想ががらりと変ったりして、最終的にこれだという構成がきまったときにはもう、何本分ものフィ
  ルムが撮られたまま使われずに残されてしまったのである。予測のつかない被写体を撮るドキュメ
  ンタリーの場合は無駄なフィルムをたくさん使うということはよくあることだが、この映画は必ず
  しもそういうものではない。撮りながら構想を練ったのだ。そしてどんどん捨てていったのだ。そ
  の意味でこれは、ちょっと類のないぜいたくな映画だったのである。もちろんスターに巨額のギャ
  ラを払ったり、やたら大がかりなセットを作ったりという種類のぜいたくとは違うが、時間と労力
  だけでなく製作費も相当なものだったはずであり、それは多くの知られざる人々の善意の支援に負
  うものだった。そういう意味でも稀にみる作品だった。

 なお、ドラマの部分の配役として、土方巽(与き=与吉)、宮下順子(もん=与吉の母/なか=同じく姉)、
菊池正男(座敷オヤジ)、木村チウ(老婆)〔以上、「堀切観音物語」〕、田村高廣(松平弥右衛門=奉行)、
河原崎長一郎(増戸庄右衛門=同)、石橋蓮司(仁科代右衛門=同)、島田正吾(長老)、五十嵐益夫(太  
郎右衛門=牧野村庄屋)、井上吉右衛門(惣左衛門=上関根村庄屋)、木村正喜(源右衛門=小倉村庄屋)、
五十嵐昌雄(利平=楢下村問屋)、高橋俊郎(太吉=太郎右衛門の倅)〔以上、「五巴神社の由来」〕など
が出演している。なお、ナレーターは監督の小川紳介が務めており、パーカッションを担当したのは富樫雅
彦である。
 牧野村に残る古文書『奥海道五巴』には、延享四年(1747年)に起こった一揆のことが記されているが、
これに基づいて、プロの俳優陣と牧野村の人々によって「五巴神社の由来」が作られている。島田正吾や田
村高廣などの大物が出演しているだけでも箔が付いていると言えよう。
 恒例の<movie Walker>も引用してみよう。執筆者に感謝したい。なお、一部改変した箇所があるが、ご寛
恕願いたい。

   〔解説〕

  山形県上山市牧野村に伝わる民話をドラマとして再現しながら、稲の成長など自然の成り立ちをド
 キュメンタリーとして交錯させて描く異色の記録映画。監督は『ニッポン国・古屋敷村』の小川紳介、
 撮影は『熱海殺人事件』の田村正毅がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  地平線から太陽が昇り顕微鏡撮影で稲の開花と受精が描かれる。田植え。そして、カメラは堆肥の
 腐植過程をとらえた。「水にまつわる話」……千年前から牧野村に伝わる民話と櫃作りと女人の話が
 語られる。「堀切観音物語」……与きは金持ちの家に生まれながら女遊びやバクチで身上をつぶして
 乞食となった。再び話は稲へ戻り、稲刈り作業や稲ぐい、水はけの悪い田で根腐れを起こした稲株な
 どが描かれる。低温の続くときは品種改良をしたり、試行錯誤を繰り返しながら人は寒冷に適した稲
 を作ってきた。こうして栽培技術は発展してきたのである。「山の神の婿取り譚」……20年前、井上
 康さんのお父さんが道祖神(男根)を発掘。それを長い間、山の神様のお堂の床下に隠していたが火
 事で焼けてしまったため、山の神に祭ることになった。「縄文遺跡の発掘」……道祖神の発掘がきっ
 かけで、地表を50-60センチ掘り下げたところ数千年前の縄文式土器が出土した。その土地を持ってい
 る木村迪男さんはびっくり。自分たち一家も神主さんのお祓いなどお祭りに参加する責任があるとい
 う。妻のシゲ子さんは土器を見ながら、20代、30代の頃に蚕に桑をやったり、牧草で牛を飼ったりし
 ていたことを思い出した。この発掘作業には考古学者の佐藤正四郎氏が立ち合った。たったの4メー
 トル四方を掘っただけだったが、そこからは完全な形の炉の跡や土偶まで出土した。「五巴神社の由
 来」……今から240-250年前に牧野村で一揆が起こった。そのとき五人の農民が犠牲となり、五巴神社
 が建立された。その一揆とご詮議をドラマとして再現。「木村みねさんの話」……木村みねさんが登
 場。お不動様や山の神様のことを明るく楽しく話して聞かせてくれる。そして、最後に村人全員に村
 の中学の校庭に集まってもらい、大円団を作った。

 他に、佐竹清(水にまつわる話の語り部)、柏倉亮吉(歴史の先生)、井上キヨミ(井上康の妻)、漆山
守(同じく友人=一緒に注連縄を結う)、八幡秀人志(神主)、花屋浩(炭焼き=石に詳しい人)、鈴木徹
(謡)、井上光(同)、木村真寿夫(同)、佐藤昭宏(同)、菅沼則夫(同)、高村敏夫(同)、吉田秀昭
(同)などが出演している。
 付録のドキュメンタリーを紹介しよう。1987年、京都の「大阪ガスタンク跡地」(現在では、「京都高度
技術研究所(ASTEM)」がある)に、にわか作りの「京都鬼市場」が設営された。“アジアの巷こんにちわ”
なるイベントを行うためである。そこで、『1000年刻みの日時計・牧野村物語』がロングランされ、隣では
麿赤兒が率いる「大駱駝艦」が興行していた由。客席140のミニシアターであったが、藁葺屋根の映画小屋は
ずばりノスタルジックである。小屋づくりにヴォランティアで参加した男子大学生や女子高生のインタビュ
ーが初々しい。本篇でも出演していた(座敷オヤジ役)の菊池正男が、踊りながら口上を述べている。ナレ
ーターを務めるのは、当時小川プロの助監督だった笹岡保である。


 某月某日

 今日は、2018年に鑑賞した邦画の総括をしよう。例年ならば、半期ごとに小生の鑑賞映画(邦画、限定)
ベスト10を発表していたが、一昨年につづいて昨年もノルマ(年間邦画鑑賞本数200本)を果せなかったの
で、行わなかった。よって、昨年同様年間ベスト10を企画して、それを以下に示すことにする。なお、2017
年に鑑賞した邦画は110本(上半期49本、下半期61本)だったのに対して、2018年は143本(上半期54本、下
半期89本)だったので、2018年は都合33本の増という結果であった。今年は再び年間鑑賞ノルマを200本に設
定して、大いに邦画を堪能したいものである。

 1位 『ヒメアノール』、監督:吉田恵輔、「ヒメアノール」製作委員会〔日活=ハピネット=ジェイ・
     ストーム〕、2016年。 
     * 「ヒメアノール」の音引の「ー」は本来波線であるが、フォントがないので「ー」で代用する。
 2位 『SCOOP!』、監督:大根仁、映画「SCOOP!」製作委員会〔テレビ朝日=アミューズ=東宝=オフィス
     クレッシェンド=ガンパウダー〕、2016年。
 3位 『OUTRAGE 最終章』、監督:北野武、『アウトレイジ 最終章』製作委員会〔バンダイビジュアル=
     テレビ東京=ワーナー・ブラザース映画=東北新社=オフィス北野〕、2017年。
 4位 『勝手にふるえてろ』、監督:大丸明子、映画「勝手にふるえてろ」製作委員会〔メーテレ=ホリ
     プロ=ソニー・ミュージックエンタテインメント=ファントム・フィルム=Easy Japan=朝日
     新聞社=ヒョウゴベンダ〕、2017年。
 5位 『昼顔』、監督:西谷弘、フジテレビジョン=東宝=FNS27社、2017年。
 6位 『東京オリンピック』、総監督:市川崑、東京オリンピック映画協会、1965年。
 7位 『小川町セレナーデ』、監督:原桂之介、「小川町セレナーデ」製作委員会〔パイプラン=KADOKAWA=
     アイエス・フィールド=マイシアターD.D.=ムービーステーション=ジェイ・フィルム=かわさき
     街おこしシネマプロジェクト〕、2014年。
 8位 『太秦ライムライト』、監督:落合賢、ELEVEN ARTS=劇団とっても便利=京都太秦ライムライト製作
     委員会、2014年。
 9位 『日本鬼子(リーベン・クイズ) 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』、監督:松井稔、「日本鬼子」
     製作委員会、2000年。
 10位 『闇を横切れ』、監督:増村保造、大映、1959年。

 以上である。なお、『火まつり』(監督:柳町光男、プロダクション群狼=シネセゾン、1985年)、『閉
店時間』(監督:井上梅次、大映、1962年)、『結婚』(監督:西谷真一、「結婚」製作委員会〔KADOKAWA=
アミューズ=日本映画投資〕、2017年)、『海よりもまだ深く』(監督:是枝裕和、フジテレビジョン=バ
ンダイビジュアル=AOI Pro.=ギャガ、2016年)、『起終点駅 ターミナル』(監督:篠原哲雄、「起終点
駅 ターミナル」製作委員会〔東映=木下グループ=小学館=東映ビデオ=ポニーキャニオン=エネット=
MTRインベストメント=Brillia=ケイシイシイ=いなべエフエム=北海道テレビ放送=北海道新聞社=デス
ティニー〕、2015年)、『ニッポン国・古屋敷村』(監督:小川紳介、小川プロダクション、1982年)など
の作品も面白かったが、ベスト10にはやや及ばなかった。もちろん、例によって小生の好みが100パーセント
反映しているので、きわめて恣意的なベスト10であることは言うまでもない。なお、昨年の映画鑑賞の中心
ジャンルは「社会派映画」だったが、文字通りの意味でその手の作品は10位の『闇を横切れ』あたりだろう
か。この映画を選んだのは、地方紙を描いた作品であることが貴重なのと、登場人物の人物像がくっきりと
している点が好感が持てると思ったからである。もっとも、ベスト10に選んだ作品のすべて(次点を含む)
が、ある意味で「社会派」作品と言えるかもしれない。その他、ベスト10入りした作品はすべて、小生のこ
ころを激しく揺さぶった点で忘れがたい。
 ちなみに、今年(2019年)の映画鑑賞の中心ジャンルは「文芸映画」にしようと思う。これまでにも注目
すべき文芸映画をけっこう観てきたが、今年はとくに文学作品を原作とする映画をじっくりと観てみたいも
のである。この試みは2007年から始めており、今年で13年目を迎える。過去のテーマは以下のようであった。

  2007年 戦争映画
  2008年 性愛(成人)映画
  2009年 極道(任侠)映画
  2010年 喜劇映画
  2011年 時代劇映画
  2012年 ホラー映画
  2013年 犯罪映画
  2014年 恋愛映画
  2015年 アニメ・SF・特撮映画
  2016年 ミステリー映画
  2017年 アクション映画
  2018年 社会派映画

 今年は、上で述べたように「文芸映画」を中心に観ることに決めた。さまざまな文学的テーマを扱った邦
画を鑑賞しようと思う。なお、昨年のテーマである「社会派映画」鑑賞の動機のひとつだった、ドキュメン
タリー作品に関して言えば、予定していた2作品を観損なったこと以外、ある程度達成できたことだけでも
昨年の収穫としたい。


 某月某日

 現在、京都にいる。某ネカフェでこのボードを叩いている。年末年始にかけて6本の邦画を観たので、報
告しよう。うち2本は年末に鑑賞したが、昨年のサイトはもう閉じているので、今年鑑賞した映画に含める
ことにする。最初の2本は、家族の危機を扱った映画で、商業映画としては成功している部類の作品であろ
う。次の2本は、偶然ではあるが、原作を購入した単行本で読んでいる作品で、それなりの作品に仕上がっ
ている。最後の2本は、映画作家志向の強い監督が製作した作品で、どちらもいずれは観たいと考えていた
映画である。以下、旅先なので詳細は書けない。ご諒解されたし。
 1本目は、『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(監督:山田洋次、「妻よ薔薇のように 家族はつ
らいよIII」製作委員会〔松竹=住友主事=テレビ朝日=木下グループ=松竹ブロードキャスティング=博
報堂=博報堂DYメディアパートナーズ=朝日放送テレビ=BS朝日=読売新聞社=講談社=GYAO=日本出版販
売=メーテレ=北海道テレビ放送=九州朝日放送〕、2018年)である。おそらく、戦前の作品である『妻よ
薔薇のやうに』(監督〔演出・脚色〕:成瀬巳喜男、P.C.L.、1935年)〔「日日是労働セレクト134」、
参照〕を意識した題名だと思う。物語の主人公のタイプこそ違え、他の家族から浮きあがりがちの父親(夫)
を描きたかったのであろう。父親(夫)役の西村まさ彦〔雅彦〕は、まさにはまり役で、「家族はつらいよ」
シリーズ第3弾に至って、やっと慣れてきた感がある。というのも、前2作はあまりに臭くて、山田洋次も
衰えたと感じたからである。しかしながら、考え直してみると、山田洋次だからこそ作れる映画であって、
こんなベタな映画があってもいいと思う。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  巨匠・山田洋次監督によるホームコメディの第3弾。主婦の史枝の家出により、三世代が暮らす平
 田家の面々が新たな騒動に巻き込まれていくさまがつづられる。一家の主である周造を橋爪功、その
 妻・富子を吉行和子が演じるなど、個性派キャスト8人が再集結し、独特のテンポで繰り広げられる
 エピソードが笑いを誘う。

   〔あらすじ〕

  三世代が同居する平田家。主婦の史枝(夏川結衣)は、育ち盛りの息子ふたりと夫・幸之助(西村
 まさ彦)、その両親と暮らしている。ある日、家事の合間にうとうとしていた昼下がり、家に泥棒が
 入り、冷蔵庫に隠しておいたへそくりを盗まれてしまう。「俺の稼いだ金でへそくりをしていたのか」
 と夫から嫌味を言われ、余りに気遣いのない言葉にそれまで溜まっていた不満が爆発した史枝は、家
 を飛び出してしまう。一家の主婦が不在となった平田家は大混乱。身体の具合の悪い幸之助の母・富
 子(吉行和子)に代わり、夫の周造(橋爪功)が掃除や洗濯、食事の準備と慣れない家事に挑戦する
 が、長くは続かない。家族揃って史枝の存在のありがたみをつくづく実感するも、史枝が戻ってくる
 気配は一向になく、緊急の家族会議が始まるが……。

 他に、中嶋朋子(金井成子=長女)、林家正蔵(金井泰蔵=成子の夫)、妻夫木聡(平田庄太=次男)、
蒼井優(平田憲子=庄太の妻)、藤山扇治郎(中村巡査)、小林稔侍(角田=周造の親友)、風吹ジュン
(加代=周造と角田がよく行く居酒屋の女将)、木場勝己(富子が通うカルチャースクールの文学の先生)、
広岡由里子(友子=史枝の叔母)、大沼柚希(平田謙一=幸之助と史枝の長男)、小林颯(平田信介=同じ
く次男)、笹野高史(空き巣)、笑福亭鶴瓶(タクシーの運転手)、北山雅康、小川絵莉、徳永ゆうき、立
川志らくなどが出演している。
 2本目は、『サバイバルファミリー』(監督:矢口史靖、「サバイバルファミリー」アソシエイツ〔フジ
テレビジョン=東宝=電通=アルタミラピクチャーズ〕、2017年)である。今度もどこか冴えないお父さん
が奮闘する映画である。その役を名優である小日向文世が演じている。妻役の深津絵里も抑えた演技でなか
なかよい。
 物語を確認しよう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  ある日突然、電気がなくなった世界を舞台に、とある家族のサバイバル生活を描く、矢口史靖監督
 によるコメディ。登場人物たちに次から次へとトラブルが降りかかる監督お得意の手法で物語が進行。
 バラバラだった一家が、過酷な生活を通して、絆を取り戻していく。一家の主を小日向文世、その妻
 を深津絵里が演じる。

   〔あらすじ〕

  東京に暮らす鈴木家では、お母さん〔鈴木光恵〕(深津絵里)が話しかけてもお父さん〔鈴木義之〕
 (小日向文世)はテレビに見入り、無口な息子〔鈴木賢司〕(泉澤祐希)はヘッドホンをつけ音楽に
 夢中、娘〔鈴木結衣〕(葵わかな)はスマートフォンを手放せず、一緒にいてもどこかバラバラだっ
 た。ある朝、テレビや冷蔵庫の電化製品、スマートフォンにパソコンといった通信機器、さらに電車
 や自動車、ガス、水道など、乾電池を使うものも含め電気を使うあらゆるものが突如動かなくなって
 しまう。単なる停電とは言えないこの異常事態は、一週間経っても続いたまま。情報も絶たれ、不自
 由な生活に困り果てる人々。ついに父は東京脱出を決断。生き残りを賭けたサバイバルライフがはじ
 まる。

 他に、時任三郎(斎藤敏夫=キャンプ一家の大黒柱)、藤原紀香(斎藤静子=敏夫の妻)、大野拓朗(斎
藤涼介(その息子)、志尊淳(斎藤翔平=同)、渡辺えり(古田富子=米穀店の女将)、宅麻伸(高橋亮三=
義之の会社の同僚)、柄本明(佐々木重臣=光恵の父親)、大地康雄(田中善一=養豚場の経営者)、菅原
大吉(鈴木家に水を所望するが断られる避難民)、徳井優(自転車屋)、桂雀々(水族館の職員)、森下能幸
(管理会社の社員)、ミッキー・カーチス(蒸気機関車で動く列車の老人)、左時枝(盲目のトンネル案内
人)、田中要次、有福正志などが出演している。 大地康雄に久々にお目にかかったが、実にいい演技をして
いた。さすがである。
 斎藤一家が鈴木一家に「サバイバルのコツ」を教えてくれるシーンがある。第一に「体温の確保」、第二
に「水の確保」、第三に「火を起こせるか」、次に「食料」の由。「体温の確保」が第一に来るとはまった
く知らなかったので、勉強になったことを特記しておこう。
 3本目は、『君の膵臓をたべたい』(監督:月川翔、「君の膵臓をたべたい」製作委員会〔東宝=博報堂
DYミュージック&ピクチャーズ=双葉社=ジェイアール東日本企画=博報堂=KDDI=日本出版販売=トライ
ストーン・エンタテイメント=S・D・P=東急エージェンシー=GYAO=トーハン〕、2017年)である。原作
は、大学の生協で平積みにされていた単行本を購入して読んでみた小説である。悪くない読後感だったこと
を覚えている。
 物語を確認しよう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  “泣ける小説”として人気を博した住野よるのベストセラー小説を映画化。膵臓の病を患う少女と、
 彼女の言葉を胸に後に教師となる少年の物語がつづられる。浜辺美波と人気バンド、DISH//の北村匠
 海というフレッシュなキャストに加え、原作にはない12年後の現在を描くパートでは主人公を小栗旬、
 ヒロインの親友を北川景子が演じる。

   〔あらすじ〕

  高校時代のクラスメイト・山内桜良(浜辺美波)の言葉をきっかけに母校の教師となった僕〔志賀
 春樹〕(小栗旬)は、教え子の栗山(森下大地)と話すうちに、彼女と過ごした数ヶ月を思い出して
 いく……。重い膵臓の病を患う桜良が密かに綴っていた「共病文庫」(=闘病日記)を偶然見つけたこ
 とから、僕〔17歳の春樹〕(北村匠海)と桜良は次第に一緒に過ごすようになった。だが、眩いまで
 に懸命に生きる彼女の日々は、やがて終わりを告げる……。桜良の死から12年。結婚を目前に控えた
 桜良の親友・滝本恭子(北川景子)もまた、僕と同様に桜良と過ごした日々を思い出していた。そし
 て、ある事をきっかけに、僕と恭子は桜良が12年の時を超えて伝えたかった本当の想いを知る……。

 他に、大友花恋(17歳の恭子)、矢本悠馬(ガム君)、桜田通(浜家隆弘委員長=桜良の元カレ)、上地
雄輔(宮田一晴=ガム君)、長野里美(山内良子=桜良の母親)などが出演している。
 桜良が死ぬまでにやりたいことを、以下に挙げてみよう。

   ○ 男の子とお泊り旅行
   ○ 美味しいラーメンを食べたい
   ○ 美味しいホルモンを食べたい
   ○ お酒を飲みたい
   ○ 貯金を使い切りたい

 そして、最後の一つは、

   ○ 恋人じゃない男の子といけないことをすること

である。サン=テグジュペリの『星の王子さま』や有名スイーツ店のエピソードはご愛敬だが、劇中に登場
する「真実は挑戦か」はかなり危険なゲームである。そのあたりの描写は成功していると思った。ただし、
原作でも感じたことであるが、結末はあまりに悲しい。
 4本目は、『ラプラスの魔女』(監督:三池崇史、東宝=KADOKAWA=ジェイ・ストーム=電通=ジェイア
ール東日本企画=KDDI=OLM=トーハン=GYAO、2018年)である。この原作を読んだとき、真っ先に連想し
たのは、泡坂妻夫の『乱れからくり』(幻影城、1977年)である。だいぶ以前に読んだので正確とはとても
言えないが、劇中の登場人物が彗星に当って死ぬという筋書ではなかったか。当該作品の原作は彗星ならぬ
竜巻ではあるが、滅多に起きない自然現象によって人が死ぬという設定は成功すれば斬新だと思う。少なく
とも、泡坂作品に出遭った時は驚いたことを覚えている。当該作品のリアリティはギリギリ保たれているが、
小説としても、映画としても、中ぐらいの出来か。
 物語を確認しよう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  著作が日本だけでなく、韓国などでも映像化されるなど、国内外で人気の作家・東野圭吾のデビュ
 ー30周年記念作を、三池崇史監督が主演に櫻井翔を迎えて映画化したミステリー。不可解な事件の謎
 に挑む大学教授がさらなる事件に巻き込まれていくさまが描かれる。自然現象を予言するヒロインを
 広瀬すず、彼女が追う青年を福士蒼汰が演じる。

   〔あらすじ〕

  事件現場が遠く離れているにもかかわらず、死因はどちらも同じ自然現象下での硫化水素中毒死と
 いう2つの不審死が連続して発生する。しかも、死亡したのは知人同士であった。警察からこの不可
 解な事件の調査を依頼されたのは、地球化学の研究者である大学教授・青江修介(櫻井翔)。一連の
 事件が事故ではなく、他殺であったなら、犯人は、完全無風状態になる一瞬をあらかじめ知っていて、
 その瞬間、致死量の硫化水素が発生する場所へピンポイントで被害者を誘導したことになる。そんな
 ことは、“ラプラスの悪魔”でない限り不可能だった。封鎖された事件現場の地形や地質、気象など
 を念入りに検証した青江は、自然科学的見地から事件性を否定する。しかし、事件現場に現れた羽原
 円華(広瀬すず)が、その場で次に起こる自然現象を青江の目の前で言い当てていく。青江はなりゆ
 きで円華と行動を共にすることになり、彼女が失踪した甘粕謙人(福士蒼汰)という青年を探してい
 ることを知る。一方、警察は、何か不思議な力が備わっている円華が事件に関与しているのではない
 かと疑い始める。そして、第三の事件が発生する……。

 他に、志田未来(奥西哲子=青江の助手)、佐藤江梨子(水城千佐都=事件の重要人物)、玉木宏(中岡
祐二=警視庁麻布署の刑事)、TAO(桐宮玲=円華を監視する集団のリーダー格)、高嶋政伸(武尾徹=同)、
檀れい(羽原美奈=円華の母親)、リリー・フランキー(羽原全太朗=同じく父親)、豊川悦司 (甘粕才
生=謙人の父親)が出演している。
 全球凍結(スノーボールアース仮説)、レイモ仮説、ナビエ・ストークス方程式、月の虹……など、聞い
たことのない言葉が出てきて、面白かった。もちろん、ラプラスの悪魔は、さすがに知ってはいたが……。
以下に、<ウィキペディア>から、引用しておく。多少改変したが、文意に変更はない。

  ラプラスの悪魔(英:Laplace's demon)とは、主に近世・近代の物理学分野で、因果律に基づい
 て未来の決定性を論じる時に仮想された超越的存在の概念。「ある時点において作用している全ての
 力学的・物理的な状態を完全に把握・解析する能力を持つがゆえに、宇宙の全運動(未来を含む)ま
 でも確定的に知りえるという超人間的知性のこと。フランスの数学者、ピエール=シモン・ラプラス
 (Pierre-Simon Laplace, 1749-1827)によって提唱された。ラプラスの魔物あるいはラプラスの魔
 ともいう。

 5本目は、『気球クラブ・その後』(監督:園子温、PLUSMIC CFP、2006年)である。今度は、打って変
わって、直球勝負の「青春映画」である。園子温がまだブレイクする前のインディーズ映画の佳品と位置付
けられるだろう。
 物語を確認しよう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  鬼才・園子温が荒井由実〔松任谷由実〕の「翳りゆく部屋」をモチーフに描く青春群像劇。サーク
 ル仲間の事故死をきっかけに、男女の思いが交錯する。グラビア・アイドルの川村ゆきえの初主演作。

   〔あらすじ〕

  サークル“気球クラブ・うわの空”には、本当に気球が好きな人、寂しさを紛らわしたい人、恋愛
 や友情を求める人など、さまざまな想いを抱いた若者たちが集っていた。5年後、ガールフレンドの
 みどり(川村ゆきえ)と微妙な関係を続けている北二郎(深水元基)のもとに、かつての仲間から1
 本の電話が入る。サークルのリーダーだった村上(長谷川朝晴)が、突然の事故で亡くなったという。
 このことをきっかけにバラバラになっていたメンバーは再び集まり、村上を偲んで大宴会が行われる
 ことになった。これが最後の、一夜限りのバカ騒ぎだということに、彼らは気付いていた。二郎はそ
 こで、村上の恋人だった美津子(永作博美)と再会する。そして美津子の村上への深い想いを知るの
 だった。

 他に、西山繭子、いしだ壱成、与座嘉秋、大田恭臣、ペ・ジョンミョン、江口のりこ、安藤玉恵、松尾政  
寿、内山人利、不二子などが出演している。巨人のバルーンを作って世界中を駈け巡るという村上の夢は壮
大でよい。シャミッソー(Adelbert von Chamisso)の『影をなくした男』(池内紀 訳、岩波文庫、1985年)
を連想したことを付け加えておこう。
 6本目は、『ラブホテル』(監督:相米慎二、ディレクターズ・カンパニー、1985年)である。この映画
は相米監督唯一の「ロマン・ポルノ」作品ということで、以前より観たかった作品の一つである。主演の速
水典子はきりっとしたイメージが好きだったが、最近はあまり芸能活動をしていない由。またスクリーンに
復活してほしい女優の一人である。相手役の寺田農は渋い役者の一人で、この人も好感度が高い俳優である。
その他、売れる前の伊武雅刀とか佐藤浩市なども端役ながら出演しており、キャストは豪華な映画と言える
だろう。ただし、『ぴあ シネマクラブ』で激賞されるほどの出来だったかどうかは、意見の分かれるとこ
ろではないだろうか。
 物語を確認しよう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  ホテトル嬢とタクシーの運転手の愛を描く。脚本は『ルージュ』の石井隆、監督は『魚影の群れ』
 の相米慎二、撮影は篠田昇がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  経営していた小さな出版社が倒産し、取り立てヤクザに妻の良子を犯された村木哲郎(寺田農)は、
 人生に絶望し、金で女を買い、凌辱した後、自殺しようと考えていた。ホテトル「銀河クラブ」から
 夕美〔源氏名、本名は土屋名美〕(速水典子)という女がやってきて、村木は彼女に魅せられる。二
 年後、死ねなかった村木はタクシーの運転手をしていた。借金の取り立てが妻〔村木良子〕(志水季
 里子)に及ばないように離婚していたが、良子は仕事帰りの村木を待つ習慣が出来ていた。そんなあ
 る日、二年前に出逢った名美を村木は、客として乗せた。海に行きたいという名美は、埠頭に着くと、
 海の中に入っていこうとする。名美を止めた村木は、自分は、あの時の男だと話した。自分のことを
 「天使」だという村木の言葉に揺れる名美だが、あの夜はヤクザに威されていたと嘘をつく。そして、
 タクシーに乗ったところがヤクザの事務所であると。実は、そこは名美の会社の上司、太田清(益富
 信孝)の家であり、妻子がありながら二人は不倫の関係を持っていた。数日後、太田の妻の正代(中
 川梨絵)が会社に現れ、名美を怒鳴りまくった。名美は村木に電話をして、あの夜の続きをしてほし
 いとせがんだ。あの時とは変ったという村木に、名美は威されているヤクザは太田という男で、写真
 や履歴書を取り返してくれと頼む。名美の嘘を信じた村木は太田のマンションに押し入り、事情が分
 らない太田の妻は、興信所の報告書を渡した。二年前と同じホテルで村木は名美を待った。二人は激
 しく身体を合せるが、心は離れていった。村木は名美の嘘を知るが、それを許した。名美が目覚めた
 時、村木は消えていた。名美は村木のアパートに行くが、そこも空室となっていた。悄然と立ち去る
 名美の横を村木の妻、良子が通り過ぎた。良子も村木が姿を消したことを知らないのだ。二人の女は、
 一瞬、立ち止まり、顔を見合わせると、それぞれの方向へ歩き出した。

 他に、尾美としのり(映画の助監督)、木之元亮(ヤクザ風の男)、伊武雅刀(タクシーの客)、佐藤
浩市(若いタクシー運転手)、萬田久子(モデル)などが出演している。山口百恵の「夜へ」(作詞:阿木
燿子/作曲:宇崎竜童/唄:山口百恵、1979年)という歌が、アンニュイな雰囲気を漂わせている。なお、
当時のタクシーの初乗り料金は470円。意外に値上がりしていないと感じた。ともあれ、石井隆(本作では脚
本を担当している)が絡むとどうして切ない映画になるのだろう。村木と名美の永遠の相克が、観る者のこ
ころに漣をたてる。彼は、人の世の儚さを作品化できる数少ない表現者のひとりであろう。

                                                 
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