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 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第154弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト154」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 映画館で、邦画の『億男』(監督:大友啓史、映画「億男」製作委員会〔東宝=日本テレビ放送網=アミ
ューズ=トイズファクトリー=読売テレビ放送=KDDI=LINE=ローソンエンタテインメント=ひかTV=GYAO〕、
2018年)を観た。久し振りに「TOHOシネマズ高知」に行ってみたのであるが、いわば「代休日の特権」である。
 期待通りの作品で、そこそこ面白かった。もっとも、「製作委員会」形式の場合、どうしても無難なつくり
にまとまってしまい、意外性はほとんどなかった。もちろん、アラを探せばいくらでもありそうだが、致命的
な欠陥はなかった。ご都合主義的なストーリー展開だが、適度にスピード感もあったので、エンタメとしては
よく出来た作品だと思う。
 まだ放映中の作品ではあるが、あえて物語の確認を行っておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話に
なる。執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  主演・佐藤健&監督・大友啓史という『るろうに剣心』シリーズのコンビによる人間ドラマ。借金
 を抱え、妻子にも見捨てられた男が宝くじで3億円を手に入れて人生をやり直そうとするが、親友に
 お金を持ち逃げされた挙句、金の亡者たちに翻弄される姿を描く。主人公の親友役を高橋一生が演じ
 るほか、藤原竜也、北村一輝ら個性派が多数共演する。

   〔あらすじ〕

  図書館司書の大倉一男(佐藤健)は、兄が3,000万円の借金を残して失踪して以来、夜もパン工場で
 働きながら借金を返済している。だがある日、窮屈に生きることしか選んでいない一男に愛想を尽か
 した妻の万佐子(黒木華)は、離婚届を残して娘・まどか(菅野真比奈)と共に家を出てしまう。そ
 んな中、突然一男は当選金額3億円という宝くじが当たる。これで借金を返せるだけでなく、家族の
 絆を修復することができるはず。ところがネットを見ると、宝くじの高額当選者たちはみな悲惨な人
 生を送っているという記事ばかり。怖くなった一男は、大学時代の親友で、起業して億万長者となっ
 た古河九十九(高橋一生)にアドバイスを求めることに。久しぶりの再会と、九十九プロデュースの
 豪遊に浮かれて酔いつぶれた一男。だが翌朝目を覚ますと、3億円と共に九十九は姿を消していた。
 3億円と親友の行方を求めて、一男のお金をめぐる冒険が始まる……。

 他に、池田エライザ(あきら)、安田十和子(沢尻エリカ)、藤原竜也(千住清人)、北村一輝(百瀬栄
一)、川瀬陽太(千住の主宰する「夢実現セミナー」の参加者。7千万円の借金がある)、尾上寛之(大倉
たちが所属した大学落研のメンバーのひとり)などが出演している。藤原竜也は相変わらず「ぶっ飛んだ」
人の役が嵌るが、北村一輝はこれまでのキャラとは違う感じだった。落語の「芝浜」を絡ませたり、モロッ
コの市場を登場させたり、酔狂なパーティや競馬の貴賓席の様子を描いたりして、なかなか派手な演出を行
っているが、一男の兄の失踪の経緯や、元バイカムのメンバーのキャラに関しては、もう少し詰めた方がよ
いと思った。とくに、沢尻エリカの演じた安田十和子の万札に囲まれた質実な生活は、少し無理があると思
った。もっとも、エンタメに徹しているので、枝葉末節の齟齬など、問題にすべきではないのかもしれない。
「代替可能性の最も高い金銭といえども、代替不可能なものはいくらあがいても買えない」という結論は、
およそ誰でも知っていることなので、とくにメッセージ性のある映画ではない。結局、「家族」に辿り着く
のかと思うと、深い絶望を感じるしかない。


 某月某日

 DVDで邦画の『太秦ライムライト』(監督:落合賢、ELEVEN ARTS=劇団とっても便利=京都太秦ライムラ
イト製作委員会、2014年)を観た。映画のキャストのうち、「大部屋俳優」とか、「端役」とか、「仕出し」
とか、「エキストラ」と呼ばれる人たちがいる。また、スタッフには、さまざまな役割があり、プロデュー
サー、企画、監督、脚本、撮影、照明、音楽、美術、録音、編集、装飾、記録、スチール、衣装、整音……
など、実に多くの人々が映画製作に関わっている。そのうち、「斬られ役」専門の俳優がおり、時代劇の主
人公の引き立て役になっている。その「斬られ役」に敢えてスポットライトを当てて製作したのが当該作品
である。あまり売れていない役者や吹き替えスタントマンなどが、重要な役で登場したりする作品もないわ
けではない。たとえば、以下の作品などがすぐに思い浮かぶ。

  『蒲田行進曲』、監督:深作欣二、松竹=角川春樹事務所、1982年。
  『エキストラ』、監督:浅間義隆、松竹、1982年(筆者、未見)。
  『ザ・マジックアワー』、監督:三谷幸喜、フジテレビ=東宝、2008年。
  『鍵泥棒のメソッド』、監督:内田けんじ、「鍵泥棒のメソッド」製作委員会〔クロックワークス=
   テレビ朝日=朝日放送=電通=パルコ=メディアファクトリー=Yahoo! JAPAN=シネバザール=キング
   レコード=メーテレ=北海道テレビ〕、2012年。
  『イン・ザ・ヒーロー』、監督:武正晴、Team REAL HERO〔RESPECT=東映=木下グループ=讀賣テレビ
   放送=中央映画貿易=文響社〕、2014年。
  『俳優 亀岡拓次』、監督:横浜聡子、『俳優 亀岡拓次』製作委員会〔日活=アミューズ=GYAO=
   ローソンHMVエンタテイメント=クリエイティブオフィスキュー=北海道テレビ放送〕、2016年。

 また撮影現場を描いたものとしては、『キネマの天地』(監督:山田洋次、松竹、1986年)が印象深い。
なお、山田監督は、『京都太秦物語』(2010年)という映画も製作している(筆者、未見)。
 当該作品は、「5万回斬られた男」という異名を持つ福本清三を主演に据え、本人が「斬られ役」専門の
役者「香美山清一」を演じている。「殺され役」として名を成した後、人気俳優になった川谷拓三を思い起
こすが、名前に同じ「三(ぞう)」が付くので、不思議な因縁を感じる。今あまり売れていない役者は、こ
の「三」のつく名前を付けたらどうだろうか。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  時代劇が斜陽となった京都太秦撮影所で、長年斬られ役として活躍した大部屋俳優と新人女優との
 交流を描くドラマ。監督は『タイガーマスク』の落合賢。脚本・製作はチャップリン研究家としても
 有名な大野裕之。実際に長年斬られ役として活躍している福本清三が初主演。共演は、武術太極拳で
 世界ジュニア選手権優勝の経験がある山本千尋、合田雅吏、本田博太郎、松方弘樹ほか。2014年1月
 14日、NHK BSプレミアムにてテレビ編集版(約100分)を先行放映。2014年6月14日より、劇場完
 全版を京都大阪神戸で先行公開。

   〔あらすじ〕

  かつて日本のハリウッドと呼ばれた京都・太秦。香美山清一(福本清三)は、太秦の日映撮影所に
 所属する斬られ役一筋の大部屋俳優だ。ある日、半世紀近く続いたテレビ時代劇ドラマ『江戸桜風雲
 録』が、突如打ち切られた。後続番組の若者向けネオ時代劇『オダノブ』に映画職人たちの出番はな
 い。大御所時代劇のスターの尾上清十郎(松方弘樹)は、「また、いつか斬らせてくれ」と香美山に
 声をかけ、撮影所を去っていく。そんなおり、香美山は、京都の駆け出しの女優・伊賀さつき(山本
 千尋)と出会い、かつての「太秦城のお姫様」の面影を感じる。さつきも、時代劇が減っても志を失
 わない香美山の生き方に惹かれ、やがて二人はともに殺陣の稽古をする師弟関係となる。香美山の指
 導の御陰で、さつきはチャンスをつかみ、スター女優への階段を歩むべく、東京に旅立った。対照的
 に、香美山には老いが忍び寄り、ついに引退の日を迎える。……時が経ち、さつきが主演を演じる、
 大作時代劇の話が持ち上がった。久しぶりの京都に胸躍らせたさつきだったが、撮影所には、香美山
 の姿もなく、お世話になった人が皆引退してしまったことを知り、いつしか大切なものを見失ってい
 たことに気づく。今風の時代劇を作ろうとする川島プロデューサー(合田雅吏)に対して、さつきも、
 大御所スター尾上清十郎(松方弘樹)も、香美山に出演して欲しいと思っていた。体調を崩して引退
 して故郷で余生を送っていた香美山のもとを、さつきは訪れて復帰を懇願する。かたくなに復帰を拒
 否する香美山。だが、どうしても侍の血が騒ぐ……。一ヶ月後、香美山は撮影所にいた。最期に尾上
 と刀を交わすために。そして、最愛の弟子さつきに斬られるために……。

 他に、本田博太郎(長沼兼一=撮影所の重鎮)、萬田久子(田村美鶴=かつての「太秦城のお姫様」、現
在は居酒屋「美つる」の女将)、小林稔侍(先代の尾上清十郎)、仁科貴(その付き人)、中島貞夫(本人
役)、栗塚旭(同)、風間トオル(同)、峰蘭太郎(東龍二郎=殺陣師)、木下通博(太田邦彦=斬られ役)、
柴田善行(松本雄策=同)、中島ボイル(天野達也=同)、多井一晃(野々村たけし=若手の仕出し)、尚
玄(工藤純=売れっ子俳優)、中村静香(メグ=その相手役)、川嶋杏奈(田村鮎奈=美鶴の娘)、シロタ
ケシ(芸人1)、高橋俊次(同じく2)、市瀬秀和(和田シゲル=香美山たちと揉める監督)、石橋穂乃香
(山崎奈緒=スタッフのひとり)、海老瀬はな(香美山奈邦子=今は亡き清一の妻)、上西雄大(渡部=工
藤純のマネージャー)、和泉ちぬ(北町京子)、佐藤都輝子(中嶋洋子)、鷲尾直彦(鳴門泰之)、小堀正
博(若き日の香美山清一)、美琴(若き日の田村美鶴)、上野宝子(郡ゆか)、周防ゆう(姫役)、木戸聡
彦(アケミツ=『オダノブ』の登場人物)、西本珀(子ども)などが出演している。長沼と東と香美山は、
「盟友」とも言える間柄だが、さすがにヴェテランだけに、実にいい味を出していた。とくに殺陣師の東龍
二郎役の峰蘭太郎の「色気」とも言える立ち居振る舞いは、これだけでも見ものである。最後に、香美山は
尾上と剣を交えるが、片や時代劇スター、此方大部屋の斬られ役俳優、その立場は違うけれども、それなり
に「絵」になっていた。弟子のさつきに斬られて本望、実に爽やかな最期であった。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので報告しよう。いずれも、「命(いのち)」をダイレクトなかたちでテーマにした
作品であり、前者はリアリズム、後者はファンタジーの様式で描かれている。
 1本目は、『岳 -ガク-』(監督:片山修、映画『岳』製作委員会〔東宝=テレビ朝日=小学館=トライス
トーン・エンタテイメント=小学館集英社プロダクション=KDDI=博報堂DYメディアパートナーズ=毎日新
聞社=日本出版販売=長野朝日放送〕、2011年)である。「山岳映画」はけっこう存在するが、比較的ハッ
ピー・エンディングだったので、軽い解放感があった。以下、当該作品以外に有名な山岳映画〔山岳が関わ
る邦画〕(筆者、鑑賞済み)を挙げてみよう。

  『銀嶺の果て』、監督:谷口千吉、東宝、1947年。
  『氷壁』、監督:増村保造、大映東京、1958年。
  『妻は告白する』、監督:増村保造、大映東京、1961年。
  『黒い画集・ある遭難』、監督:杉江敏男、東京映画、1961年。
  『富士山頂』、監督:村野鐡太郎、石原プロモーション、1970年。
  『八甲田山』、監督:森谷司郎、橋本プロ=東宝=シナノ企画、1977年。
  『植村直己物語』、監督:佐藤純彌、電通=毎日放送、1986年。
  『クライマーズ・ハイ』、監督:原田眞人、「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ〔ビー
   ワイルド=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント=トゥモロゥー〕、2008年。

 まだまだあるが、これくらいにとどめておく。興味のある人は、ネット情報である『ヴァーチャル クライ  
マー』の「山岳映画・データファイル -邦画編-」を参照されたし。
 さて、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛容いただきたい。

   〔解説〕

  「小学館漫画大賞」を受賞した石塚真一の人気コミック『岳 みんなの山』を豪華キャストで実写
 映画化。高度なクライミング技術を持つ山岳救助ボランティア、島崎三歩に扮した小栗旬は、高所恐
 怖症にも拘らず、日本アルプスでの雪山ロケで迫真の登山シーンを披露する。監督は『花より男子』
 など人気ドラマを手がけてきた片山修。

   〔あらすじ〕

  雄大な北アルプス山系。そこには、誰よりも山を愛する男・島崎三歩(小栗旬)がいた。世界中の
 巨峰を登り歩いてきた三歩は、山岳救助ボランティアとして登山者たちの命を守っている。彼は、山
 のように大きな包容力を持ち、仮に要救助者が死んでしまっていても「よく、頑張った」と労わりの
 言葉をかける男である。そんな三歩の暮らす山に、北部警察署山岳救助隊に配属されたばかりの椎名
 久美(長澤まさみ)がやってくる。久美は、同じ山岳救助隊の隊長・野田正人(佐々木蔵之介)や三
 歩の指導の下、過酷な訓練を乗り越え新人女性隊員として確実に成長していく。だが、実際の救助で
 は自分の未熟さや大自然の脅威により、遭難者の命を救うことが出来ない日々が続く。打ちひしがれ
 自信を無くす久美。そんな折、猛吹雪の雪山で多重遭難が発生。仲間と共に救助に向かった久美を待
 ち受けていたのは、想像を絶する雪山の脅威だった……。

 他に、市毛良枝(谷村文子=谷村山荘のオーナー)、渡部篤郎(牧英紀=昴エアーのヘリコプター・パイ
ロット)、石田卓也(阿久津敏夫=長野県北部警察署山岳遭難救助隊隊員)、矢柴俊博(座間洋平=同)、
やべきょうすけ(安藤俊一=同)、浜田学(関勇=同)、鈴之助(守屋鉄志=同)、尾上寛之(遭難する青
年)、浪岡一喜(散歩の親友)、森廉(青木誠=ヘリの助手)、ベンガル(遭難者の父親)、小林海人(横
井ナオタ)、宇梶剛士(横井修治=ナオタの父親)、光石研(梶一郎)、中越典子(梶陽子=一郎の娘)、
石黒賢(椎名恭二〔遺影のみ〕=椎名久美の父親)などが出演している。
 三歩の爽やかさは格別だが、近くにいたらどこか気持悪い。演技か天然かで、けっこう迷うと思う。市毛
良枝を久しぶりに見たが、感じのいい小母さんになっていた。
 2本目は、『世界から猫が消えたなら』(監督:永井聡、映画「世界から猫が消えたなら」製作委員会
〔東宝=博報堂DYメディアパートナーズ=小学館=アミューズ=ストライブインターナショナル=マガジン
ハウス=ローソンHMVエンタテインメント=ソニー・ミュージックエンタテインメント=KDDI=GYAO〕、
2016年)である。電話、映画、時計などが次々に消えてゆくが、その後のフォローが全然ないに等しいので、
SFとしては失格だし、ファンタジーとしてもメッセージ性が皆無と言ってよい。つまり、ただそう設定し
ただけのあまり面白くない展開の映画だった。悪魔が出て来て命の遣り取りをするのもありきたりだし、恋
愛映画としても、家族映画としても物足りなかった。ゲーテの『ファウスト』を連想したが、芸術性も思想
性もはるかに劣ると思った。要するに、思い付きで作った映画としか思えない。「猫が消えたなら」という
設定も噴飯ものに近く、穿った見方をすれば、「猫」がタイトルに付けば観客動員数を増やすことができる
と考えたのではないか。実に安易で子ども騙しの域を出ていないと思う。
 ともあれ、物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  川村元気の同名小説を佐藤健主演で映画化したヒューマンドラマ。余命わずかと宣告された30歳の
 男が、悪魔と取引し、大切なものと引き換えに1日の命を与えられ、かつての恋人や親友、両親の想
 いを知る姿を描く。佐藤が主人公と悪魔の二役を演じるほか、宮崎あおい、濱田岳、奥田瑛二、原田
 美枝子といった実力派が顔を揃える。

   〔あらすじ〕

  悪性の脳腫瘍を患い、余命残りわずかとなった30歳の郵便配達員の僕(佐藤健)。そんな僕の前に、
 僕と同じ姿をした悪魔(佐藤健:二役)が現れ、世界からモノを消してゆくことと引き換えに、1日
 の命を与えると告げる。何かを得るためには、何かを失わなくてはならない。電話、映画、時計……
 そして猫。失われてゆく世界の中で、僕は学生時代の恋人(宮崎あおい)に再会する。大切な初恋の
 相手の姿を目にして思い出したのは、かつて愛し、別れた時。さらに、親友や疎遠になった父(奥田
 瑛二の想い触れた僕は、やがて亡き母(原田美枝子)が残した手紙を見つける。そして遂に訪れた人
 生最後の日、僕はある決断を下すが……。

 他に、濱田岳(ツタヤ=タツヤ、「僕」にいろいろな見るべき映画を教えてくれる映画好きの青年)、奥  
野瑛太(トムさん=世界の放浪者)、石井杏奈(ミカ=ツタヤと同じビデオ・ショップの店員)などが出演
している。
 最近(昔からか)、余命いくばくもない人物を主人公にして「お涙頂戴」映画を企画する人々が多いが、
小生に言わせれば、何年生きようが、人間は「余命いくばくもない」存在であることに変わりないと思う。

                                                  
 2018年10月10日(水)

 DVDで邦画の『起終点駅 ターミナル』(監督:篠原哲雄、「起終点駅 ターミナル」製作委員会〔東映=木
下グループ=小学館=東映ビデオ=ポニーキャニオン=エネット=MTRインベストメント=Brillia=ケイシ
イシイ=いなべエフエム=北海道テレビ放送=北海道新聞社=デスティニー〕、2015年)を観た。
 取って付けたような挿話もあるにはあるが、全体的にはよくまとまっている作品である。人生の意味を
考えさせてくれる映画と言えようか。篠原監督の作品は、以下のように11本観ている。一部を除いて、人生
の断片を切り取って、それに彼流の味付けを施した渋い作品群である。当該作品は、演出の遊びに走ること
もなく、リアリズムで押し通している。

  『洗濯機は俺にまかせろ』、監督:篠原哲雄、ボノボ=スターポート、1999年。
  『張り込み』、監督:篠原哲雄、シネロケット=日本トラステック、2000年。
  『死者の学園祭』、監督:篠原哲雄、「死者の学園祭」製作委員会〔角川書店=ホリプロ=東映=
   アスミック・エース エンターテインメント〕、2000年。
  『昭和歌謡大全集』、監督:篠原哲雄、光和インターナショナル=バンダイビジュアル、2002年。
  『深呼吸の必要』、監督:篠原哲雄、SINKOKYU associates〔日本ヘラルド映画=松竹=電通=バンダイ
   ビジュアル=エンジンネットワーク=IMAGICA=TOKYO FM=ニッポン放送=デスティニー〕、2004年。
  『female 【フィーメイル】』、監督:篠原哲雄/廣木隆一/松尾スズキ/西川美和/塚本晋也/
   夏まゆみ、female Film Partners〔セガ=アミューズ=ミコット・エンド・バサラ=ジャパン・
   デジタル・コンテンツ=モブキャスト〕、2005年。
  『地下鉄(メトロ)に乗って』、監督:篠原哲雄、METRO ASSOCIATES〔ギャガ・コミュニケーションズ=
   ジェネオン エンタテインメント=テレビ朝日=メーテレ=電通=松竹=IMAGICA=LDH=アドギア=
   ミコット・エンド・バサラ=デスティニー〕、2006年。
  『山桜』、監督:篠原哲雄、「山桜」製作委員会〔バンダイビジュアル=ジェネオン エンタテイン
   メント=テレビ朝日=テンカラット=日楽堂=デスティニー〕、2007年。
  『真夏のオリオン』、監督:篠原哲雄、「真夏のオリオン」パートナーズ〔テレビ朝日=東宝=博報堂
   DYメディアパートナーズ=バップ=小学館=木下工務店=デスティニー=日本出版販売=朝日放送=
   メーテレ=朝日新聞社〕、2009年。
  『小川の辺』、監督:篠原哲雄、「小川の辺」製作委員会〔バンダイビジュアル=東映=東映ビデオ=
   木下工務店=アサツー ディ・ケイ=シネスパーク=山形新聞社=山形放送=山形テレビ=テレビユー
   山形=さくらんぼテレビ=ケーブルテレビ山形=東北ケーブルテレビネットワーク=デスティニー〕、
   2011年。
  『起終点駅 ターミナル』、監督:篠原哲雄、「起終点駅 ターミナル」製作委員会〔東映=木下
   グループ=小学館=東映ビデオ=ポニーキャニオン=エネット=MTRインベストメント=Brillia=
   ケイシイシイ=いなべエフエム=北海道テレビ放送=北海道新聞社=デスティニー〕、2015年。

 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  直木賞作家・桜木紫乃の同名小説を、篠原哲雄監督が主演に佐藤浩市を迎えて映画化したヒューマ
 ンドラマ。北海道・釧路で国選弁護人をしている心に傷を抱えた男が依頼人の女性とのふれあいを通
 して、生きる道を見出していく姿を描く。主人公の元に現れる女性を本田翼、彼の人生に大きな影を
 落とす女性を尾野真千子が演じる。

   〔あらすじ〕

  弁護士の鷲田完治(佐藤浩市)は、25年前、北海道・旭川で裁判官(判事)を務めていた。被告人
 として出廷した学生時代の恋人・結城冴子(尾野真千子)と再会した彼は、裁判後、彼女が働くスナ
 ックに通い二人の関係は再燃する。やがて妻子の待つ東京へ戻ることが決まるが、完治はすべてをな
 げうって冴子と生きていこうと決心。しかし冴子はその思いに応えることなく彼の眼前で自らの命を
 絶った。以来、自らを罰するかのように完治は判事の職も家族も捨て、釧路の地で国選の仕事しか引
 き受けない弁護士として孤独の中に生きてきた。ある日、弁護を担当した椎名敦子(本田翼)が完治
 の許を訪ね、ある人を探してほしいと頼み込む。家族に見放され一人生きてきた敦子との出会いによ
 り、完治の止まっていた時間が動き始めた。敦子もまた、彼に心を開き人生の希望を見出していく。

 他に、中村獅童(大下一龍=その筋の人)、和田正人(森山卓士=判事補、完治の息子の同級生)、音尾
琢真(大村真一=完治の隣人の息子)、泉谷しげる(南達三=完治が離婚する際調停してくれた弁護士)、
山田悠介(堂島恒彦=完治の息子)、君嶋麻耶(大庭誠=敦子が探している男)、岸博之(裁判所の事務官)、
池田道枝(遠山節子=万引で逮捕された初老の女性)などが出演している。なお、一部の配役は小生の推定
である。
 目の前で恋人に鉄道自殺をされれば、それがこころの傷にならない方がおかしいが、「人の重荷になりた
くない」という動機で、果たして自殺するだろうか。自殺された方は、もっと重荷を背負うことになるだろ
う。また、それがきっかけで完治は離婚したらしいが、それでも息子が気掛かりなのだろうか。一度は捨て
ると覚悟を決めたはずなのに……。敦子の家出のきっかけは、「中学生の時、敦子の兄と結ばれて子どもを
なした同級生(由美子)が、実家に住むようになったから」であるが、微妙な年頃だけにこれは頷ける。た
だし、大昔ならいざ知らず、いくら風俗や水商売と雖も、保証人のいない未成年者を雇うだろうか。敦子の
父と母と姪は同年同月同日に亡くなっているらしいが、その死因は明きらかにされない。しかも、兄と兄の
妻である由美子はどこに消えたのだろうか。敦子は保険証を持たない風来坊だが、実際にはこのような立場
の人はけっこういるらしい。病院にかかる時は、友人の保険証を拝借するという話(もちろん、詐欺罪に相
当する)も聞いたことがある。敦子は風邪らしき症状で病院に行って手当てを受けるが、完治が支払った診
療費は18,950円である。保険証がないと、たしかに高額である。敦子の男である大庭誠も、人生を投げてい
るのだろうか。あっさりと自殺を選んだ冴子と同様、まったく覇気がない。その他、認知症気味の隣人も、
狂言回しとして設定されている。二軒の郵便箱が仲良く並んでいるところから、何かあると睨んでいたが、
案の定フィナーレに導く伏線が敷かれていた。全体的につくりものめいた作品であるが、丁寧に演出してい
るので、人生の真実に少しは触れていると思う。


 某月某日

 DVDで邦画の『黒い指の男』(監督:飯塚増一、東映、1959年)を観た。存在さえ知らなかった映画であ
るが、TSUTAYAで発見して早速借りてみた。おそらく、高倉健が主演しているのでDVD化された作品ではある
が、そこそこ面白かった。もっとも、子どもの頃から散々観てきたパターンのギャング映画なので、新味は
ほとんどなかった。悪役の二本柳寛の他、懐かしい面々が並んでいた。知らない俳優も散見したが、テイス
トとしては東映というよりも日活風だった。デビュー間もない佐久間良子が出演しているが、とても初々し
く見えた。中年になってからの彼女の印象が強いので、余計にそう見えたのであろう。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『大東京誕生 大江戸の鐘』の猪俣勝人・柴英三郎の共同脚本を、新人第一回の飯塚増一が監督、
 『娘の中の娘』の三村明が撮影したアクションドラマ。

   〔あらすじ〕

  五年ぶりに娑婆の陽をあびて感慨深げに立つやくざ風の男……稲妻の新吉〔三田新吉〕(高倉健)
 である。しかし帰ってみると、深見一家は既に離散し、圭造親分は殺し屋の鉄(萩原満)に殺害され、
 根城であったゴールド会館は近代的娯楽センターに変り、舎弟だったはずの岩切五郎(二本柳寛)が
 今や社長となって、縄張りを握るという変りようであった。しかもかつて新吉を愛していたはずの親
 分の姉娘である深見あつ子(故里やよい)は岩切の囲われ者となり、ヌード写真のスタジオを経営す
 る妹の深見京子(佐久間良子)が新吉に五年という年月の生んだこの世界の移り変りを諭すのであっ
 た。表向きは「岩切商事」の看板を出していても、詐欺・恐喝の限りを尽くす岩切の悪辣な顔役ぶり
 は誰知らぬ者のないほどで、折しも外国人貿易商のリチャード(ピーター・ウィリアムズ)から数千
 万円に上る宝石を強奪する計画を立てていた岩切は、かつての兄貴分の新吉の出獄にひどく狼狽した。
 新吉には彼の出獄を待っていた母のおりん(吉川満子)と弟の宏(小野透)があった。貧しくとも堅
 気にくらす幸せな生活であった。出獄した新吉は五年ぶりに賭場に姿を現したが、少しの衰えも見せ
 ぬその腕に目をつけて、その指先の利用を企むのは岩切であった。かつての新吉の指の魔力こそは、
 金庫の錠を解きほぐす悪魔の指先だったのである。岩切は新吉の弟である宏をうまく話にのせ、悪へ
 の荷担とは知らず承知した宏を囮に、新吉をリチャードの宝石強奪に強制的に参加させた。夜更けて、
 ビルに忍び込み、守衛(坂井一夫)を倒し、悪党双方入り乱れて血みどろの闘いの後、ついに目指す
 金庫は新吉の指先で狂いなく開かれる。しかし、一瞬の間に新吉の手には拳銃が握られ、京子と救い
 出された宏の知らせでかけつけた警官隊に追われた岩切は死物狂いであつ子の許に逃れた。迫る新吉
 に拳銃の狙いをつけた岩切は背後のあつ子の手で倒れる。しかし憎しみに歪んだ断末魔の岩切の手で、
 あつ子も倒れた。重なり倒れた二つの死体は群がる群衆に兇暴な顔役の末路を凄惨に伝えていた。

 他に、春丘典子(岸田みね子=浩のガールフレンド)、加藤嘉(杉山=新吉をかつて逮捕した刑事)、須
藤健(熊代=岩切の子分)、山本麟一(猿田=同)、日尾孝司(蛭田=同)、長谷部健(サブちゃん=流し
の歌手)、杉義一(シロちゃん=同)、柳谷寛(カネさん=新吉の昔馴染み)、花澤徳衛(居酒屋「一平」
の親爺)、岩城力(鎌田=UPSの支配人)、谷本小夜子(ゴールド会館の女店員)、鈴木朝子(キャビンの
女給)、曽根晴美(リチャードの用心棒のひとり)などが出演している。
 新吉は、寄場(=刑務所)で作った小さな草鞋を、彼の出所を出迎えた杉山刑事に進呈するが、この慣習
は以前他の映画で見たことがある。たぶん、新吉の指先の器用さを示す伏線であろう。60年安保の前年なの
で、かなり時代が古い。そのせいか、「冷房完備」ならぬ「暖房完備」という看板が見えた。その他、モノ
の値段に関する情報を以下に書き込んでおこう。

  宏がアルバイトをしていたモータープールの洗車が、一日300円 
   → 新吉は「たったそれっぽっちか」と反応している。例の「ニコヨン *」よりも60円高い。

   * 1949年6月、東京都の失業対策事業として職業安定所が支払う日雇い労働者への定額日給を240
    円と定めた。そしてこの百円2枚と十円4枚という日当から日雇い労働者のことを「ニコヨン」
    と呼んだ。ただし、日当の額の変化とともに意味を成さなくなり、この呼び方は使われなくな
    る。現在ニコヨンは死語となっており、ニコヨン世代と現代のニートやネットカフェ難民を比
    較する際に使われる程度となっている(ネットの「日本語俗語辞書」より)。

  母親のおりんが経営している中華料理店「宝来軒」のメニュー

    ラーメン  40円
    餃子    30円
    ワンタン  40円
    たんめん  50円
    五目そば  80円
    やきそば  70円
    チャーハン 70円

 その他、新吉が「一平」で飲んだ冷酒は100円、新吉が出前の際に要求した金額が300円、みね子が溜めて
しまった大学の授業料は36,000円だった。さらに、宏が騙されて「指名手配犯」である殺し屋の鉄を自動車
で運んだ際の運転手のアルバイト料は3万円である。ラーメン代などと比較すると、かなりの高額ではない
のか。総じて、小生の子どものころ(1964年前後)の相場とほとんど同じ値段である。とくに、しょっちゅ
う食べていたラーメンの値段は40円だったので、どことなく懐かしかった。それとは対照的に、リチャード
が岩切に吹っかけた宝石の値段は、4,000万円である。現在でも相当な金額であるといえよう。


 某月某日

 DVDで邦画の『海よりもまだ深く』(監督:是枝裕和、フジテレビジョン=バンダイビジュアル=AOI Pro.=
ギャガ、2016年)を観た。是枝監督の作品は、以下のように12本観ているが、二、三番目くらいの評価を与
えてもよいと思う。1位は『誰も知らない』で動かないが、『歩いても 歩いても』とは甲乙つけがたい出来
である。しかも面白いことに、両者ともに歌謡曲の歌詞の一部をそのまま題名にしている点が共通する。当
該作品は、「別れの予感」(作詞:荒木とよひさ/作曲:三木たかし/唄:テレサ・テン、1987年)であり、
このことばの後、「空よりもまだ青く」が続く。『歩いても 歩いても』の方は、「ブルー・ライト・ヨコハ
マ」(作詞:橋本淳/作曲・編曲:筒美京平/唄:いしだあゆみ、1968年)であり、このことばの後、「小
舟のように」と続く。両者ともに印象の強い楽曲であり、実際に大ヒットを飛ばしたことを覚えている。こ
のような題名の付け方としては、「さすらい」(作詞:西沢爽/作曲:狛林正一/編曲:佐々永治/唄:小
林旭、1960年)の冒頭の歌詞である「夜がまた来る」(後に続くことばは、「思い出つれて」である)をそ
のまま題名にした『夜がまた来る』(監督:石井隆、ビデオチャンプ=キングレコード=テレビ東京、1994
年)が思い浮かぶ。ちょっとお洒落な命名法ではある。なお、最近亡くなった樹木希林がいい味を出してい
る。日本の映画界は、惜しい女優を失ったと思う。合掌。

  『幻の光』、監督:是枝裕和、テレビマンユニオン、1995年。
  『ワンダフルライフ』、監督:是枝裕和、テレビマンユニオン=エンジンフイルム=ワンダフルライフ
   製作委員会、1998年。
  『DISTANCE』、監督:是枝裕和、『DISTANCE』製作委員会、2001年。
  『誰も知らない』、監督:是枝裕和、『誰も知らない』製作委員会、2004年。
  『花よりもなほ』、監督:是枝裕和、「花よりもなほ」フィルムパートナーズ〔松竹=エンジンフィルム=
   テレビマンユニオン=バンダイビジュアル=衛生劇場=ジェイ・ストーム=FM東京〕、2005年。
  『歩いても 歩いても』、監督:是枝裕和、「歩いても 歩いても」製作委員会〔エンジンフィルム=
   バンダイビジュアル=テレビマンユニオン=衛星劇場=シネカノン〕、2008年。
  『空気人形』、監督:是枝裕和、「空気人形」製作委員会〔エンジンフイルム=バンダイビジュアル=
   テレビマンユニオン=衛生劇場=アスミック・エース エンタテインメント〕、2009年。
  『奇跡』、監督:是枝裕和、映画「奇跡」製作委員会〔ジェイアール東日本企画=バンダイビジュアル=
   ギャガ=白組=衛星劇場=毎日放送=RKB毎日放送=Yahoo! JAPAN=ジェイアール西日本コミュニ
   ケーションズ=ディーライツ=西日本新聞社=エフエム福岡=中国放送=熊本放送=南日本放送=
   J-WAVE=ジェイアール九州エージェンシー〕、2011年。
  『そして父になる』、監督:是枝裕和、「そして父になる」製作委員会〔フジテレビジョン=アミューズ=
   ギャガ〕、2013年。
  『海街diary』、監督:是枝裕和、「海街diary」製作委員会〔フジテレビジョン=小学館=東宝=
   ギャガ〕、2015年。
  『海よりもまだ深く』、監督:是枝裕和、フジテレビジョン=バンダイビジュアル=AOI Pro.=ギャガ、
   2016年。
  『三度目の殺人』、監督:是枝裕和、「三度目の殺人」製作委員会〔フジテレビジョン=アミューズ=
   ギャガ〕、2017年。

 さて、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  是枝裕和監督が、ダメな中年男とその元妻と息子という不器用な家族の姿を描く家族ドラマ。台風
 でひさびさに一夜を一緒に過ごす事になった家族の思いを映しだす。叶わぬ夢を追い続ける主人公を
 阿部寛、その元妻を真木よう子が演じるほか、母親役の樹木希林や小林聡美、リリー・フランキーな
 ど実力派たちが物語を彩る。

   〔あらすじ〕

  母の篠田淑子(樹木希林)は苦労させられた夫を突然の病で亡くしてからは、団地で気楽な独り暮
 らしをしている。15年前に文学賞(島尾敏夫賞)を一度獲った売れない作家の長男の篠田良多(阿部
 寛)は、“小説のための取材”だと周囲にも自分にも言い訳しながら、今は探偵事務所に勤めている。
 元妻の響子(真木よう子)はそんな良多に愛想を尽かして離婚した。良多は11歳の息子の真悟(吉澤
 太陽)の養育費も満足に払えないくせに未練たらたらで、探偵の技術で響子を張り込みし、彼女に新
 しい恋人ができたことを知ってショックを受ける。ある日、たまたま良多と響子と真悟が母の淑子の
 家に集まる。すると台風のため翌朝まで帰れなくなり、4人は一つ屋根の下で一晩過ごすことになる
 が……。

 他に、小林聡美(千奈津=良多の姉)、リリー・フランキー(山辺=興信所の所長)、池松壮亮(町田=
良多の同僚)、橋爪功(仁井田=淑子の音楽の先生)、中村ゆり(愛実=山辺興信所のメンバー)、小澤征
悦(福住=響子の新しい彼)、古舘寛治(三好=編集者)、峯村リエ(夏実=良多の幼馴染)、松岡衣都美
(安藤未来=山辺興信所のターゲットであり、客でもある女性)、黒田大輔(未来の夫=妻の浮気を調べよ
うとして墓穴を掘る男)、葉山奨之(真田=高校生、山辺の警察時代の上司の息子)、ミッキー・カーチス
(二村=質屋)、立石涼子(二村の女房)、高橋和也(正隆=千奈津の夫)、蒔田彩珠(彩珠=千奈津の娘)、
一柳みのり(みのり=同)などが出演している。
 「あれ」ということばが頻出するが、「あれ」で通じ合う関係を強調しているのだろう。「ファイナル・
アンサー」とか、「違いが分かる」などのTVで盛んに聞かされたことばも上手に使っている。山辺の台詞
である「誰かの過去になる勇気を持つのが大人の男っていうもんだよ」も、リリー・フランキーが口にする
とあまり気障には聞こえない。テレサ・テンの「別れの予感」がさりげなく流れて来るのもよい。平凡な家
族映画だが、是枝監督が演出すると、一本筋が通る。久し振りによい映画を観た気分である。ただし、風呂
釜から出る湯垢を「マックロクロスケ」(『となりのトトロ』と『千と千尋の神隠し』に登場する妖怪の名
前。「ススワタリ」ともいう)と呼んだり、天袋に隠された母親のへそくりの挿話や宝くじの挿話をめぐる
一連の流れなどは、何度も使い古されたコントで、興醒めだった。是枝はさりげなく他者の作品からアイデ
ィアをパクって来るが、いかにも小市民ドラマとしか思えない物語に縮こまってしまい、その点が惜しい。
もう少しドキリとするような「オリジナリティ」を出してほしいものである。もっとも、この次の作品に当
る『三度目の殺人』がその反動とも言える物語であるが、いかんせんあまり成功しているとは思われなかっ
た。評判のよい『万引き家族』(2018年)はまだ観ていないので、そちらに期待したい。


 某月某日

 DVDで邦画を4本観たので報告しよう。台風で禁足を余儀なくされたので、何かのシリーズものを 一気に
観ようと思い、借りたのが「恐怖女子高校」シリーズである。小生が高校生の頃の作品群であるが、 「ずべ
公番長」シリーズ(1970-1971年)や、「女囚さそり」シリーズ(1972-1973年)同様、全4作品である。い
ずれも東映がリリースした女性が主人公のシリーズであるが、かなり過激な表現の頻出する映画である。ち
なみに、本シリーズは「R-18」指定を受けており、以下、現在では不適切と思われる言葉も出てくるが、作
品の歴史的背景を考慮してそのまま用いる。以上のことをあらかじめ許諾いただきたい。
 さて、個々の作品への感想に入る前に、大体の流れを見ておこう。副題で各作品をラインナップしよう。

 公開順   副題        監督    主演   助演男優  悪玉のトップ  その後ろ盾

 第1弾 女暴力教室      鈴木則文  杉本美樹  成瀬正孝   名和広     金子信雄
 第2弾 暴行リンチ教室    鈴木則文  杉本美樹  渡瀬恒彦   今井健二    金子信雄
 第3弾 不良悶絶グループ   志村正浩  池玲子   白石襄    名和広   マイク・ダニーン
 第4弾 アニマル同級生    志村正浩  池玲子   成瀬正孝   金子信雄  マイク・ダニーン

 本来、「聖域」であるはずの学校がその責務を果たさず、腐敗し切っている様子を描いている。もちろん、
不良少女や非行少女が大挙して登場するが、必ずしも当時の彼女たちの実態を描いているわけではないだろ  
う。その意味で、リアリズムではなく荒唐無稽の物語である。しかしながら、SF的な趣向があるわけではな
い。あくまで現実を映す鏡としての映画である。第3作目からは「アクション・ポルノ」と銘打ってはいる
が、日活ロマンポルノのような趣向はほとんどない。むしろ、政治的、あるいは社会的な背景から、権威や
権力に対して反旗を翻す様子を描くことがテーマの映画といってもよいだろう。70年安保直後の映画にはそ
の傾向が明らかに見受けられるが、このシリーズもその度合が強い。
 全作品に共通するものとして、(1)先ず名門私立女子高校が舞台でありながら、それを牛耳っている連
中はたいがい悪事にどっぷりと浸かっている。(2)校長・学園長、等々(必ずしも悪党ではない)や教頭
(たいがいは腰巾着タイプ)の上に理事長が存在し、いずれもワルである。(3)理事長の後ろ盾には、政
治家やマフィアの手先のような人物がおり、さまざまな悪事が渦巻いている。(4)生徒は優等生も登場す
るが、不良少女・非行少女が多くを占めており、たいていの場合、校内をわがもの顔に跋扈するグループが
存在する。(5)グループのリーダーは「番長」と呼ばれ、不良グループを束ねている。(6)転校生など
がその女子高にやって来て、校内に波紋を投げかけるが、それが物語の発端であることが多い。(7)番長
格同士は、互いに仁義を切ったり、タイマン(決闘)したりする。(8)狂言回しとして、助演の男優が登
場し(緋牡丹お竜の助っ人役男優〔高倉健〕に相当する)、物語に厚みを与えている。(9)過去の経緯が
あって、復讐劇の様相を呈している物語もある。(10)最後は、主人公の女子高生が悪玉連中を倒して凱歌
をあげる……以上の点で、これら4作品は同工異曲であるが、登場人物はそれぞれ異なっており、独立した
作品となっている。
 1本目は、『恐怖女子高校 女暴力教室』(監督:鈴木則文、東映京都、1972年)である。杉本美樹が主演
であるが、池玲子もそれに匹敵する役柄を担っている。当時、この二人は売れっ子であり、映画のみならず
グラビアにもたびたび登場し、一世を風靡している。小生とほぼ同世代(彼女たちの方が1歳年上)なので、
同級生的な親近感を覚える女優たちである。
 物語を確認しておこう。今回は、<ウィキペディア>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『恐怖女子高校 女暴力教室 』は、1972年に製作された日本映画。鈴木則文監督作品。「恐怖女子
 高校」シリーズ第1作。R-18指定作品。

   〔ストーリー〕

  聖光女子学園には二つのスケ番グループがあり、一方を牛耳るのが中田迪子〔みちこ〕(杉本美樹)。
 これと対立するのが理事長の妾の娘である福本澄子(衣麻遼子)である。そんな学園に、尾野崎由紀
 (池玲子)が転校してきた。彼女は昔、「乱れ菊のお由紀」と呼ばれた伝説のスケ番だったが、今は
 更生している。 由紀は、迪子らにリンチを受けたことがきっかけで、優等生の岬洋子(三浦夏子)と
 親しくなる。一方、迪子は、熱血教師吉岡敬一(成瀬正孝)のことを逆恨みし、男友達をつかって、
 吉岡の恋人の茅島瑕子(女屋実和子)をレイプしてしまう。 そこに現れた由紀はレイプを止めさせ、
 迪子にタイマンを申し出る。 二人は「ビーナス・ブリッジ」の上で対決するが、引き分けに終わる。
 そんな中で、岬洋子の妊娠が判明した。相手は、学園の理事長の息子郡丈夫〔こうりたけお〕(名和
 広)。彼女は郡丈夫に結婚を求めるが、郡は冷たく堕胎を勧める。のみならず、澄子らにリンチにか
 けられ、洋子は流産してしまう。絶望した洋子は、校舎から飛び降り自殺する。その後、かねてから
 不仲だった澄子ひきいるグループと、迪子のグループが決闘することになった。しかし、事情を知っ
 た由紀が迪子に加勢し、澄子に猟銃を突きつける。澄子らは河原で全裸にされ、土下座して天国の洋
 子に詫びさせられる。実は、理事長の郡大作(金子信雄)はあくどい金貸しで、由紀の両親はそのた
 めに服毒自殺に追い込まれた過去があった。由紀はその復讐を果たすために、聖光学園に転校してき
 たのだ。郡大作と妾、郡丈夫の三人は、迪子と由紀らに、猟銃を突きつけられる。復讐を終えた由紀
 らはセーラー服を脱ぎ捨て、退学を宣言するのだった。

 他に、須藤リカ(宇田蝶)、碧川ジュン(碧川初枝)、丘ナオミ(王メイ子)、一の瀬レナ(久保田弘子)、
司京子(生島マリ子)、穂積かや(星野けい子)、川奈良子(関みどり)、東映子(中川君江)、松代薫(森
川正子)、松井康子(平泉利根=学園長)、大泉滉(浜村教頭)、由利徹(山田隆=教員)、岡八郎(岡=校
医)、三原葉子(絹枝=バーのマダム)、一ノ瀬謙(三郎)、松本泰郎(吉夫)、那須伸太朗(中田伺郎=迪
子の父)、京町一代(中田あき=同じく母)、中村錦司(森田善兵衛)、片桐竜次(政公)、榊浩子(北川秋
子)、有島淳平(刑事)、白井孝史(チンピラ)、小田真士(中年男)、島田秀雄(同)などが出演している。
 なお、教員の山田が田中角栄の『日本列島改造論』を読んで知るシーンがあるが、時代を感じさせた。
 2本目は、『恐怖女子高校 暴行リンチ教室』(監督:鈴木則文、東映京都、1973年)である。誠実・献身・
人間愛を謳い、「良妻賢母」教育を前面に掲げながら、その実態は「風紀委員」が気に入らない生徒を死に追
いやるような学校を舞台にして、前作同様、杉本美樹と池玲子が活躍する作品である。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  “恐怖女子高校”シリーズ第二作。関西の女子学園を舞台に、腐りきった学校制度に挑戦する転校
 生グループと、学園で権力を握る非行グループとの凄まじい対決を描く。脚本は『さらば掟』の鴨井
 達比古、監督は『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』の鈴木則文、撮影は『恐怖女子高校 女暴力教室』の鈴
 木重平がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  世間からは恐怖の女学校(あるいは、「スケバンの墓場」)と呼ばれている希望女子学園には全国
 の女番長が一同に集められていた。なかでも風紀委員長・野坂洋子(衣麻遼子)をリーダーとする、
 宮本敏江(叶優子)、不破由美(一の瀬レナ)、上田弘子(須藤リカ)らのグループは校内の権力を
 一手に握っていた。また、学園の実質的な実権を握っている教頭の石原仙太郎(今井健二)は、洋子
 たちとグルになって、横暴の限りをつくしていた。秋山道代(城恵実)が洋子に逆らって私刑を受け、
 殺されても、石原は事故死として処理するのだった。ある日、三人の転校生が入学してきた。北野レ
 ミ(太田美鈴)、久保京子(佐分利聖子)、そして、「十字架番長」こと風間典子(杉本美樹)であ
 る。ただ典子がこの学園にやって来た目的は、自分の片腕でもあった道代の仇を討つことであった。
 日が経つにつれ両者の対立はエスカレートしていった。その頃、裏街道を闊歩するトップ屋の若林哲
 也(渡瀬恒彦)は、希望女子学園の情報を集めるために、石原の二号で、バーを経営している九条孝
 子(三原葉子)に近づき、情報を集めていた。そんな最中、典子の宿命のライバルである、関東女番
 長同盟の総番長・多岐川真樹(池玲子)が典子を追ってこの地へやって来た。真樹は、早速希望女子
 学園へ乗り込むが、典子の事情を察して、勝負を一時預けるのだった。若林と典子は、石原とグルに
 なっている市長(名和広)、警察署長(中村錦司)たちの乱交パーティをカメラに撮ることに成功し
 た。この事件が、代議士で学園の理事長でもある佐藤茂(金子信雄)の耳に入った。激怒した佐藤は、
 暴力団の手を借り、典子たちを監禁するが、真樹の出現で失敗してしまう。そして、この日開かれた
 希望女子学園の記念行事の席で典子たちは、これまでの学校側の黒い問題の全貌を明らかにするとと
 もに、佐藤の政治生命を絶ち切るのだった。

 他に、早乙女りえ(君原純子)、水沢夕子(森伸江)、浅野由紀子(西田とも子)、山川貴子(鈴村春子)、
穂積かや(佃幸子)、北村英三(中田角造)、鈴木康弘(大曽根安夫)、碧川ジュン(三島美智子)、田中
小実昌(教師)、近藤宏(波多野=少年係の刑事)、疋田泰盛(PTA会長)、波多野博(新聞記者)、前川良
三(同)、畠山麦(運転手)、森谷譲(高校生)、小島三児(大島=典子に自動車を拝借される男)などが出
演している。
 風紀委員たちのリンチは残酷を極めるが、「トイレに行かせない」リンチは、『ブラックボード』(監督、
新藤兼人、地域文化推進の会=電通=近代映画協会、1986年)にも描かれていた。もしかすると、当該作品を 
参考にしたのかもしれない。また、その際、水を大量に飲ませるが、これは『日本鬼子(リーベン・クイズ)
日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』(監督:松井稔、「日本鬼子」製作委員会、2000年)にも登場する帝國
陸軍の拷問である。その他、「総括」(日本赤軍が使用していた言葉)や、トム・ジョーンズの名前が出て
来た。なお、悪玉の名前である「佐藤茂」は、「佐藤栄作」と「吉田茂」の合成(俳優の「吉田栄作」とは
逆バージョン)であり、「中田角造」や「大曽根安夫」は、それぞれ「田中角栄」や「中曽根康弘」のもじ
りと思われる。ご丁寧なことに、大曽根安夫を演じる俳優は「鈴木康弘」である。さらに、当時の学園紛争
を思わせるラスト・シーンでは、女子高生たちが「放水」によって警官隊と戦っている。放水は警察側の非
致死性兵器のはずなので、少し面白かった。
 3本目は、『恐怖女子高校 不良悶絶グループ』(監督:志村正浩、東映京都、1973年)である。たぶん、
山口県にある「岩国米軍基地」周辺の女子高校が舞台である。したがって、ベトナム戦争やマリファナが登
場する。なお、杉本美樹は出演していない。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様である。なお、キャストに関しては、<ウィキペディア>も参照し
た。

   〔解説〕

  “恐怖女子高校”シリーズ第三作。米軍基地のある街を舞台に、ハーフや貧乏人の集団と金持ばか
 りの集団とのスケバン同志の闘いを描く。脚本は『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』の関本郁夫と『狂
 走セックス族』の鈴木則文、監督は脚本も執筆している新人志村正浩、撮影は『やくざ対Gメン 囮』
 の赤塚滋がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  米軍基地のある町、ここに私立女子高校・聖愛女子学園がある。その良家の女の子だけを集めてい
 る三年A組には“紅ばら会”なるグループがあり、番長の西園寺美也(太田美鈴)が北海道に転校す
 るので、選挙により、副番の野中鷹子(池玲子)が跡目をついだ。だがその頃、鷹子の父で市会議員
 の野中信孝(中村錦司)が、妊娠した尾形雪子(役者、不詳)という女性を同乗させて自動車事故で
 死んでしまう、という事件を起こした。そこで、鷹子と同じ副番で、PTA会長の速水勇策(名和宏)
 を父にもつ絹枝(衣麻遼子)は、鷹子をハーフや貧乏人ばかりのD組に強制的に組を代えさせて、自
 分は“紅ばら会”の番長となった。D組には、山崎リンダ(叶優子)、熊谷テレサ(ベラ・シーム)、
 奈良吹子(一の瀬レナ)らで組織された“恐竜会”なるグループがある。鷹子はリーダーのリンダと
 対決して番長の座を奪った。ある日、鷹子は、絹枝たちに襲われるが、尾形二郎(白石襄)と名乗る
 ダンプの運転手に救われた。二郎は雪子の弟で、雪子は、ある重大な秘密を知ったので殺されたのだ、
 と告げて去った。一方、絹枝は、勇策と取り引きのある商事会社の社長であるシェパード(マイク・
 ダーニン)の配下を使って“恐竜会”のエミリー(鈴木サチ)を強姦させ、反抗したエミリーは射殺
 されてしまった。鷹子たちは、学校側に抗議をするが、この事件は勇策とシェパードに闇から闇へと
 葬られ、逆に“恐竜会”のメンバーは全員退学させられてしまった。そんな時、鷹子は、再会した二
 郎から、雪子は勇策の秘書で、妊娠の相手は勇策であること、勇策と米兵の間で行っていた密輸を雪
 子と信孝が知ったことから殺されたことを知らされた。そして、その二郎も奴らに殺されてしまった。
 ある日、今は新人歌手として戻って来た美也の立会のもとに“恐竜会”は“紅ばら会”と決闘して叩
 きのめしてしまう。やがて鷹子らは勇策と絹枝父娘を、仕組んだ情事(近親相姦に当る)で失脚させ、
 二郎の持っていたマシンガンで、シェパード一味を撃ちまくった……。

 他に、三原葉子(野中紀代子=鷹子の母)、遠藤辰雄(二階堂寛=学園長)、大泉滉(大庭正秋=教師)、
早乙女りえ(沖順子)、愛田純(園井圭子)、碧川ジュン(赤坂まり)、城恵美(神田麻子)、芹明香(波
多野光子)、春日朱美(小池和子)、司京子(三浦ユリ子)、京町一代(多田ヤス)、松村康世(小笠原文
子)、ユセフ・オスマン(ニック)、岩尾正隆(北川=速水の子分)、川谷拓三(徳丸=同)、愛川まこと
(歌手)、松井康子(熊谷ユメ)、星美智子(山崎敏江)、畠山麦(司会者)、有島淳平(二郎を看取る医
者)、大月正太郎(バーテン)、波多野博(教師)、森源太郎(同)、ヘルトム・ベンケ(不良外人)、ロ
バート・ストーリー(同)、フレッド・ボサード(同)などが出演している。
 鷹子役の池玲子が米軍のマシンガンをぶっ放すシーンがあるが、まさに『セーラー服と機関銃<完璧版>』
(監督:相米慎二、角川春樹事務所=キティ・フィルム、1982年)の先駆となっている。あるいは、影響関
係があるかもしれない。川谷拓三が速水の子分役で登場するが、まだブレイク前である。しかし、あの面貌
は目立つ。アンパン(シンナー)や角棒が登場するが、睡眠薬や鉄パイプでないところが時代を感じさせた。
なお、「マブる」という動詞が登場するが、「マブい」(江戸時代から存在する形容詞:美しいの意味)の
変形かと思われる。たぶん、「いたぶる」という意味で使う「かわいがる」と同様の意味だろう。
 4本目は、『恐怖女子高校 アニマル同級生』(監督:志村正浩、東映京都、1973年)である。この作品も
杉本美樹は登場せず、池玲子が単独で主演を担っている。相手役はお馴染みの一の瀬レナと衣麻遼子である。
 物語を確認しよう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  女子学園を舞台に、札つき女子高校生の赤裸々な生態と、悪質な学園経営者との対立を描く。脚本
 は『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』の掛札昌裕と中島信昭、監督は『恐怖女子高校 不良悶絶グルー
 プ』の志村正浩、撮影は『東京=ソウル=バンコック 実録麻薬地帯』の増田敏雄がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  私立聖和女学院は海外留学制度とスポーツが売りものの学園である。この学園の悪を仕切っている
 のは、紅原竜子(衣麻遼子)を番長とする黒バラ会である。ある日、五人の転校生が竜子のいる三年
 B組に来ることになった、麻生政江(春日朱美)、阿部静子(田島晴美)、荒木真砂美(早乙女りえ)、
 小早川一絵(織部ゆう子)、そして、「口笛の亜紀」と呼ばれ学園を転々としている風花亜紀(池玲
 子)である。亜紀は、フェンシングの凄腕でフェンシング部へ入部することを条件に入学を許可され
 たのだった。その日、学園には、亜紀の姿はみえなかったが、黒バラ会は、四人全員を裸にし、リン
 チを加えた。そこへ、亜紀が入って来た。鋭く睨み合う亜紀と竜子。翌日、学園に登校した亜紀は、
 体育会会長の深沢嵐子(一の瀕レナ)に会った。嵐子は体育会という力を利用し、黒バラ会から毎月
 上納金を取り上げていた。そんな嵐子を、竜子たちは、いつか痛めてやろうと機会を狙っていたのだ
 った。数日後、アメリカの大学からスペンサー教授(マイク・ダーニン)が訪れ、留学生の選考が行
 われ、小早川一絵が選ばれた。だが、留学生とは偽りで、生徒を売春婦としてアメリカへ送り込む組
 織だったのである。その真相を知った一絵は絶望して自殺した。一方、亜紀は一絵の遺書から、悪辣
 な留学制度の真相を知り、秘かに調べ始めた。亜紀の姉の美紀も留学生として渡米して以来、行方不
 明なのである。亜紀が理事長の篠原角太郎(金子信雄)の家へ忍び込んでいた時、かつて姉の恋人だ
 った梶村政男(成瀬正孝)と会った。梶村も留学制度に不信を抱いて篠原のお抱え運転手となってい
 たのだ。亜紀と梶村は手を組み、篠原たちの悪事を暴露することを誓った。亜紀は、篠原が嵐子を二
 号にしていることを知り、竜子に学校側の悪事を話した。嵐子の弱点を握った竜子たち黒バラ会は、
 嵐子を吊し上げ、亜紀と梶村は篠原や教頭の剣持厳(汐路章)を押え、校庭で生徒たちが取り囲む中
 を、火炙りのリンチを行うのだった。

 他に、高野真二(鮫島蛮策=理事)、愛田純(水谷仙子)、門馬喜美枝(細井邦子)、中井ミキ(五味康
子)、美和じゅん子(千原房江)、城恵美(福田弘子)、泉水直子(尾野路江)、岡村文子(東田百々代=
学院長)、大泉滉(横井=教師)、小島恵子(一色魔利=鞭を操るドSの教師)、葵三津子(紅原寿美子)、
富永佳代子(小山)などが出演している。
 タイマン(決斗)、カイモノ(万引)、マツリ(乱交パーティ)などの隠語が予告篇に登場している。万
引で手に入れた品物は叩き売りとして学校で売られている。なお、売春は「ウリ」と呼ばれている。この言
葉は現在でも受けつがれていると思われる。シリーズを通して池玲子が貫録を示すが、相手役の衣麻遼子も
けっこう頑張っていると思われる。その他、一の瀬レナ、早乙女りえ、田島晴美、織部ゆう子などは、まだ
覚えていた。悪役の名和広や金子信雄はさすがの演技をしており、コメディ・リリーフとしての大泉滉も、
相変わらずの独自性を発揮していた。

                                                 
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