[SSLの使用について]    ID:  Password: 
ホーム
人間文化学科
国際社会コミュニケーション学科
社会経済学科
人文社会科学科
▼教員一覧
思想系の学問に興味のある人へ
日日是労働セレクト11
家族研究への布石(映像篇03)
日日是労働セレクト24
日日是労働セレクト28
日日是労働セレクト29
日日是労働セレクト1-3
思想系の読書の勧め
日日是労働セレクト69
日日是労働セレクト71
家族研究への布石(映像篇10)
恣意的日本映画年間ベスト1
武藤ゼミとはどんなゼミ?
家族研究への布石(映像篇11)
日日是労働セレクト98
日日是労働セレクト102
家族研究への布石(映像篇12)
日日是労働セレクト112
日日是労働セレクト120
日日是労働セレクト121
驢鳴犬吠1609
家族研究への布石(映像篇14)
家族研究への布石(文献篇05)
ATG映画のページ
日日是労働セレクト137
日日是労働セレクト138
花摘みの頁<02>
【新選】平成日本映画百選
驢鳴犬吠1712
日日是労働セレクト144
驢鳴犬吠1801
高知文学学校などのレジュメ集
日日是労働セレクト145
驢鳴犬吠1802
「高知市民の大学」講演レジュメ集
日日是労働セレクト146
驢鳴犬吠1803
驢鳴犬吠1804
日日是労働セレクト147
2018年度版「福島原発事故を考え ...
家族研究への布石(映像篇15)
驢鳴犬吠1805
日日是労働セレクト148
日日是労働セレクト149
驢鳴犬吠1806
日日是労働セレクト150
驢鳴犬吠1807
日日是労働セレクト151
驢鳴犬吠1808
日日是労働セレクト152
驢鳴犬吠1809
2018年度版「男女共同参画社会を ...
驢鳴犬吠1810
日日是労働セレクト153
驢鳴犬吠1811
日日是労働セレクト154
日日是労働セレクト155
驢鳴犬吠1812
日日是労働セレクト153
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第153弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト153」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので報告しよう。1本目はエロティック・サスペンス、2本目は密室喜劇である。
 最初に観た方は、『闇の中』(監督:石井均、GPミュージアムソフト、2006年)である。亡くなった喜劇
役者に石井均がいるが、この映画の監督はもちろん彼ではない。同姓同名の別人である。多重人格の女性と、
精神科医との関係を軸とした心理ドラマであるが、あまり成功しているとは言い難い。キャストも知らない
俳優が多かった。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  元パイレーツの西本はるか主演のエロティック・サスペンス。精神科医の男の前に突如現れたミス
 テリアスな女性、はたして彼女の正体は? 監督は『集団殺人クラブ』の石川均。

   〔あらすじ〕

  精神科医の新見(乃木涼介)の許に、ある日、美しい女性が患者としてやってくる。麗(西本はる
 か)と名乗る彼女は「人を殺した」という。そんな彼女の告白に半信半疑になりながらも、新見は麗
 の治療をしばらく続けるのだが……。

 他に、未向(看護師)、亀谷さやか(新見の患者のひとり)、石井英登(麗を付け狙うストーカー男)、
佐藤貢三(写真家)、西村清孝(M男)、羽村英二(麗に惚れ込む写真家の助手)などが出演している。
 新見クリニックの診療時間を記しておこう。

    新見メンタルクリニック
     心療内科・精神科
       診療時間
     10:00-13:00
     15:00-20:00
       休診日
      火・日・祝

 これが平均的なメンタルクリニックの診療形態だろうかはよく分からない。麗は、五重人格者(もちろん、
それを装っている可能性は否定できない)で、本人の他に、ミキ(殺人者)、L(S女)、麗の幼少時、ヨ
ウコ(ストリッパー)がいる。石井監督は「大人のクスクス笑い」がこの映画のメッセージであると明言し
ているが、あまり笑える作品とは思えない。なお、「多重人格」、「ドッペルゲンガー」などの他に、「乖
離性人格障害」という精神医学用語が登場するが、「新見はこれを思い出した」といったニュアンスの台詞
がある。精神科医が簡単に忘れているだろうか。また、新見と麗が自動車で死体を埋めた場所に行くシーン
があるが、乗っていた車は「わ」ナンバーなので、レンタカーだった。わざとレンタカーを使ったのかどう
かは分からない。
 次に観たのは、『あぁ…閣議』(監督:郷力大也、テレビ朝日=吉本興業、2013年)である。滑り出しは
どうかと思ったが、観ているうちにその世界に引き込まれ、最後は何となく平和な気分になった。もちろん、
本物の「閣議」がこんな按配だったら、日本の行く末を本気で憂慮しなければならないのだが……。
 物語を確認しよう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  山口智充、酒井若菜らが大臣に扮し、自らにかけられた疑惑を晴らそうと、奇想天外な法案を通そ
 うとする姿を描くコメディ。誰も知ることのない密室で行われる法案決定の場でとんでもない議案が
 語り合われるというユニークな物語だ。山口や酒井のほか、木下ほうか、ルー大柴らが閣僚メンバー
 に扮している。

   〔あらすじ〕

  総理大臣の岡崎輸(二瓶鮫一)および閣僚が一堂に集まる日本最高意思決定機関である閣議は、話
 し合いの内容が絶対に外に漏れることはない。急遽内閣に加わった新人大臣〔少子化対策担当大臣〕
 の小野塚大志(山口智充)が意気込んで臨んだ初めての閣議は、法案にただサインをするだけの形式
 ばったものだった。しかし、内閣官房長官の村西省吾(木下ほうか)が提案する法改正に、小野塚は
 疑問を持ち、反対する。それは、「日本国民は男女の差無くブラジャーやパンティを着けてはならな
 い」というトンデモナイ法案で、内容に気づいた大臣たちは次第に小野塚の味方をするが、村西には
 別の思惑があった。実は、大臣の中に女性下着を着用する変態がおり、その大臣はまだマスコミには
 漏れていない収賄事件に関わっているのだ。つまり、収賄事件の犯人をあぶり出すためにその法案は
 出されたものであり、疑われたくない大臣たちが自己保身のために賛成に転じ始め、トンデモナイ法
 案が通過されそうになるが……。

 他に、酒井若菜(崎本仁美=環境大臣)、堀内敬子(後藤弘子=法務大臣)、ルー大柴(平川丈太郎=防
衛大臣)、田村亮(富野典敏=財務大臣)、並樹史朗(北嶋弘樹=農林水産大臣)、市川勇(橘達夫=国土
交通大臣)、坂田利夫〔顔写真のみ〕(百田=前国土交通大臣)、吉川勝雄(横田章一=経済産業大臣)、
六車香平(太田正人=文部科学大臣)、大月秀幸(小津英樹=外務大臣)、佐渡稔(佐藤秋生=厚生労働大
臣)、大久保了(宗方敏郎=総務大臣)、ダオペット・ナンティラット(ニューヨークのタイ人)などが出
演している。なお、配役の一部は小生の推定である。
 「密室喜劇」と言えば、三谷幸喜監督を真っ先に思い出すが、もう少し捻りがあれば、彼の作品に匹敵す
る出来となったであろう。どこか足りないと感じるのは、あまりに安易にまとめすぎている点だろう。つま
り、三谷監督のような執拗さに少し欠けていたようである。


 某月某日

 DVDで邦画の『マンゴーと赤い車椅子』(監督:仲倉重郎、映画「マンゴーと赤い車椅子」製作委員会、
2015年)を観た。映画の流れとしては採るべきところはあまりないが、車椅子に関わる事象については想像
力を働かせることができた。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  事故による脊髄損傷で歩けなくなってしまった女性が、周囲の人々に支えられながら、赤い車椅子
 を相棒に未来へ進み出そうと奮闘する姿を描くヒューマンドラマ。監督は『きつね』の仲倉重郎。出
 演は『奴隷区 僕と23人の奴隷』の秋元才加、『サクラサク』のNAOTO、『gift』の石井貴就、新人の
 吉岡里帆、『女たちの都 ワッゲンオッゲン』の杉田かおる。

   〔あらすじ〕

  都内の内科病院に勤務する看護師の宮園彩夏(秋元才加)は、23歳の誕生日に4階の自室から転落。
 幸い一命は取りとめたが、「脊髄損傷 胸損10(T-10)」で下半身の感覚を失ってしまう。入院生活を
 送る彩夏の精神状態は荒廃し、故郷の鹿児島県大隅半島から出てきた母・洋子(愛華みれ)や病院関
 係者に不満ばかりぶつけていた。そんな彩夏の心を解きほぐしたのは、14歳の小川龍之介(石井貴就)、
 18歳の外崎千尋(吉岡里帆)ら同じ車椅子の仲間たち、そして同室の高柳マリア(杉田かおる)、野
 田幸子(松金よね子)とその夫・清一郎(ベンガル)であった。さらに大隅半島に暮らす祖母・勝子
 (三田佳子)とのメールのやり取りが、彩夏の心の支えとなっていた。父・政春(榎木孝明)が「彩
 夏はお袋と似とる」というように、彩夏と勝子には不思議な強いつながりがあった。痴呆の進む勝子
 との奇妙で少し哀しいメールを通して、彩夏は次第に笑顔を取り戻していく。ある日、自分の車椅子
 をオーダーする時、彩夏は家族が育てている赤いマンゴーを思い出し、真っ赤な車椅子を選択する。
 彩夏が入院して数日後、恋人の後藤直樹(森宮隆)がようやく見舞いに現れる。妻のいる後藤にとっ
 て彩夏との関係は不倫であった。妻との間に子どもができたという後藤は彩夏に別れを告げ、彼女の
 元を去っていく。その夜、車道に身を投げ出そうとしていた彩夏を救ったのは、同じ車椅子の入院患
 者でロック・ミュージシャンの五十嵐翔太(NAOTO)であった。彩夏の車椅子を“赤い戦車”と名付け
 る五十嵐に前を向いて生きる事を教えられ、彩夏は吹っ切れたようにリハビリに励むのだった。そん
 な時、真っ赤なマンゴーを持って田舎から勝子が見舞いに訪れ、彩夏をさらに勇気づける。だが、翔
 太は「進行性脊髄腫瘍」が進行し、ギターが弾けなくなっていく身体の変化に戸惑うばかり。ある日、
 彩夏は翔太からバンド「RNA」のラスト・ライヴのチケットを貰う。ライヴ当日、彩夏は理学療法
 士の菊地拓哉〔=キクタク〕(仁科貴)らの協力を得て病院を抜け出し、会場へ向かう。それは彩夏
 が車椅子生活になってから初めて経験する“外の世界”であった……。

 他に、折井あけみ(山口めぐみ=彩夏の先輩)、ドン小西(自転車屋)などが出演している。翔太の胸に  
音符のタトゥが描かれていたが、このタイプは初めてみた。また、寝たきりの人が起き上がる時調子を崩す
ことがあるが、「起立性低血圧」というらしい。


 某月某日

 DVDで邦画の『死んだ目をした少年』(監督:加納隼、「死んだ目をした少年」製作委員会〔スクラムトラ
イ=文化通信エンターテインメント=TCエンタテインメント=マイシアター=WIND=TBSサービス=RSKパー
トナーズ〕、2015年)を観た。中学生が主人公のどうということのない作品ではあるが、丁寧に作っている
ので、けっこう見応えがあった。キャストもほとんど知らない俳優ばかりで、その点では地味であるが、皆
自分の役柄を精一杯演じており、大根はひとりもいなかった。演出も抑制が効いており、映像的にも新機軸
があった。結論すれば、かなりの好感度を抱いた作品である。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『青春☆金属バット』や『ライフ・イズ・デッド』など鬱屈した青少年を多く描く古泉智浩の同名
 漫画を映画化した青春ドラマ。田舎町を舞台に、生きる意味を見いだせず鬱々とした毎日を過ごす少
 年たちの変化を描く。監督は『Souda Kyouto He Ikou』が第31回PFFアワードに入選した加納隼。空想
 にふけりがちな少年を『告白』の清水尚弥が、気の強い同級生を『幻肢』の紗都希が、少年にボクシ
 ングを教える大人の女性を『呪怨 黒い少女』などの元セクシー女優・高樹マリアが演じている。エ
 ンターテインメント業界紙(誌)を発行する文化通信社が、次世代の才能を応援する第1弾として製
 作に関わっている。

   〔あらすじ〕

  田舎町の中学に通い退屈な日々を過ごす犬田文治(清水尚弥)は、ある日偶然に大人の色香漂う釈
 笛子(高樹マリア)と知り合う。いじめられっ子の数宮光(福井成明)と一緒に笛子からボクシング
 を習ううちに何かが変わりはじめたように思われたが、そのことをきっかけにクラス内のバランスが
 崩れ始める……。

 他に、紗都希(五十嵐強美)、福田航也(魔裟死)、西井雅(荒井さやか)、後藤和歌奈(村崎琢美)、
櫻井圭登(田中聡)、尾形駿一(吉沢義明)、結城貴史(文治の父親)、小池友理香(強美の母親)、松岡
哲永(風俗店の店長)、葉山奨之(不良少年)などが出演している。
 強美が文治に抱く恋ごころの描き方がよかった。文法通りの描き方に混ざるので、その部分が際立ってい
た。ラストシーンで、文治の目が死んでいないのもよい。


 某月某日

 DVDで邦画を3本観たので報告しよう。このところ、殺伐とした邦画ばかりを観ていたので、今回は「ほの
ぼの系」の作品を選んでみた。それなりに癒された感じがする。
 1本目は、『小川町セレナーデ』(監督:原桂之介、「小川町セレナーデ」製作委員会〔パイプン=
KADOKAWA=アイエス・フィールド=マイシアターD.D.=ムービーステーション=ジェイ・フィルム=かわさ
き街おこしシネマプロジェクト〕、2014年)である。生物学的性(sex)と社会的性(gender)が合致しな
い人が登場する映画は多いが、たいがいの場合、いわゆる「オカマ」の存在を周囲が優しく見守っている感
じがする。小生の記憶では、『塀の中の懲りない面々』(監督:森崎東、松竹映像=磯田事務所、1987年)
に登場する「上州河童」役のケーシー高峰の印象が強烈である。その他にも、田中泯がオカマ役を演じてい
た『メゾン・ド・ヒミコ』(監督:犬童一心、アスミック・エース エンタテインメント=IMJエンタテイン
メント=日本テレビ放送網=S・D・P=カルチュア・パブリッシャーズ、2005年)などが直ぐに脳裏に浮か
ぶ。『おこげ OKOGE』(監督:中島丈博、東京テアトル、1992年)や『きらきらひかる』、監督:松岡錠
司、フジテレビジョン、1992年)などの、いわゆる「ホモ」志向の人物が登場する映画とは異なり、どこか  
滑稽で哀愁が漂っているように見えるのは、小生の偏見だろうか。古くは、『悪名』シリーズで、茶川一郎
が演じていたオカマの「おぎん」役ははまり役だった。少なくとも、小生の子どもごころに、強烈な印象を
与えている。そういえば、これも小学生の頃の記憶であるが、バスの中で、女装した男性を見かけた時は不
思議な思いに囚われた。うっすらと髭が生えていたので、男性と確信したのだろう。その際、「世の中には
そういう人もいる」という認識を得たが、「あまり触れてはいけない事柄」として捉えた。もっとも、その
後、「オネエ」は社会的認知を完全に獲得したので、「少数派」というだけの存在に変容したのではないだ
ろうか。かつて、カルーセル麻紀が性転換手術を受けたという報道が大衆の耳目を刺激したが、この映画で
その手術の挿話が出て来ても、驚く対象にはならない。一般化したからであろう。昔、モロッコ、その後、
フィリピン、今では、タイ……というのがその手術のメッカらしいが、この映画のオカマ「エンジェル」は
タイで手術を受けたらしい。演じるは安田顕、まさにマルチ俳優である。見かけよりも仕草に、その才能が
滲み出ている。
 さて、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   〔解説〕

  母親が経営するスナックが借金によって閉店間際であることを知った娘が、偽おかまバーとして再
 起をかける姿を描くハート・ウォーミングドラマ。監督は、本作で劇場映画デビューを飾る原桂之介。
 出演は『僕等がいた』の須藤理彩、『坂本君は見た目だけが真面目』の藤本泉、『HK 変態仮面』の安
 田顕、『映画 体脂肪計タニタの社員食堂』の小林きな子。

   〔あらすじ〕

  とある町に佇む小さな“スナック小夜子”には、今夜もその灯りを求めて常連客が集ってくる。ち
 ょっと疲れた人、ちょっと寂しい人、ちょっと酔っぱらいたい人……。流行っているとはいえないも
 のの、このさびれた“スナック小夜子”が醸し出す雰囲気はどこか懐かしく、来る人に癒しの時間を
 与えていた。“スナック小夜子”がオープンしたのは、ママの真奈美(須藤理彩)がシングルマザー
 として娘の小夜子(藤本泉)を育てるためだった。20年前、おかまのショーパブで舞台スタッフをし
 ていた真奈美は、スターダンサーだったエンジェル(安田顕)と仕事仲間として唯一無二の友情を分
 かち合っていた。だがエンジェルが本当の女性に生まれ変わるためタイへ出発する前夜、シャンパン
 で酔っぱらった二人は、いつのまにか男女の関係に……。生まれた娘・小夜子は、自分の父親のこと
 は知ることもなく成長し、高校卒業とともに母を残して東京でひとり暮らしを始める。数年後、いく
 つかの恋に破れ、小夜子は実家に戻ってくるが“スナック小夜子”が借金だらけで閉店しなければな
 らないことを知る。そんな中、小夜子とホステスの亮子(小林きな子)は、隣町で大人気のおかまバ
 ー“シャープ”をまねて、偽おかまバーとして再起をかけようと決意。その計画を真奈美に猛反対さ
 れた小夜子は、母の昔の友人エンジェルに力を貸してほしいと懇願するのだった。その数日後、エン
 ジェルはミラーボールとともに“スナック小夜子”にやってくる。エンジェルの厳しい指導のもと、
 小夜子と亮子は“偽おかまダンサー”として大変身。毎夜多くの客が足を運び“偽おかまバー”作戦
 は大成功と思えたが……。

 他に、濱田ここね(小夜子の幼少時代)、土屋希乃(同)、金山一彦(中村=借金取り)、いか八朗(人
生を達観したお爺ちゃん)、大杉漣(ラーメン屋のオヤジ)などが出演している。
 2本目は、『TOO YONG TO DIE! 若くして死ぬ』(監督:宮藤官九郎、「TOO YONG TO DIE! 若くして死ぬ」
製作委員会〔アスミック・エース=東宝=ジェイ・ストーム=パルコ=アミューズ=大人計画=KDDI=
GYAO〕、2016年)である。クドカンの「おふざけ映画」である。彼の作品は、以下のように4本観ているが、
その独特の味わいは、他にはない。

  『真夜中の弥次さん喜多さん』、監督:宮藤官九郎、アスミック・エース エンタテインメント=
   ジェイ・ストーム=カルチュア・パブリッシャーズ=ティー・ワイ・オー=大人計画、2005年。
  『少年メリケンサック』、監督:宮藤官九郎、「少年メリケンサック」製作委員会〔東映=テレビ東京=
   小学館=バップ=木下工務店=東映ビデオ=大人計画=吉本興業=ミュージック・オン・ティーヴィ=
   ViViA=ディーライツ=テレビ大坂=ヒラタオフィス〕、2009年。
  『中学生円山』、監督:宮藤官九郎、「中学生円山」製作委員会〔ポニーキャニオン=フジテレビジョン=
   ジェイ・ドリーム=大人計画=関西テレビ放送=シネバザール=博報堂=博報堂DYメディアパート
   ナーズ〕、2013年。
  『TOO YONG TO DIE! 若くして死ぬ』、監督:宮藤官九郎、「TOO YONG TO DIE! 若くして死ぬ」製作
   委員会〔アスミック・エース=東宝=ジェイ・ストーム=パルコ=アミューズ=大人計画=KDDI=
   GYAO〕、2016年。

 物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  宮藤官九郎監督・脚本による爆笑コメディ。若くしてこの世を去った高校生が、片思い中の女の子
 にもう一度会って告白するという願いを叶えるために、赤鬼との過酷な特訓に挑む姿を描く。神木隆
 之介が不幸な高校生の主人公を演じるほか、長瀬智也や桐谷健太、清野菜名らが奇想天外なメイクで
 鬼役をユニークに演じる。

   〔あらすじ〕

  男子高校生の関大助(神木隆之介)は、思いを寄せているクラスメイトの手塚ひろ美(森川葵)に
 告白しようとしていたところ、修学旅行中に起きた不慮の事故により他界。気が付くとそこは人々が
 責め苦を受けている地獄だった。キスしたこともないままに死んでしまったことが受け入れられない
 大助だが、赤鬼のキラーK(長瀬智也)によるとえんま様〔えんま校長〕(古田新太)の采配によっ
 ては現世に転生できるらしい。大助は生き返るために、地獄農業高校の軽音部顧問であり地獄専属ロ
 ックバンド『地獄図(ヘルズ)』のギター&ヴォーカルを務めるキラーKから猛特訓を受ける。

 他に、尾野真千子(亀井なおみ=キラーKがこの世で「近藤善和」だった頃の恋人)、桐谷健太(COZY=
ヘルズのドラマー)、清野菜名(邪子=同じくベーシスト)、古舘寛治(松浦=大助の高校時代の友人だが、
すでに40代になっている)、皆川猿時(和田じゅんこ=やはり大助のクラスメイト、地獄では、ガールズバ
ンド「デビルハラスメント」のリーダー)、宮沢りえ(20年後のひろ美)、シシド・カフカ(「デビルハラ
スメント」のドラマー)、清(同じくベーシスト)、坂井真紀(大助の母親)、荒川良々(仏)、瑛蓮(神)、
みうらじゅん(MOJA・MJ)、Char(鬼ギタリスト)、野村義男(ジゴロック挑戦者)、ゴンゾー(同)、福
田哲丸(地獄の軽音楽部)、一ノ瀬雄太(同)、藤原一真(同)、柳田将司(同)、木村充輝(歌うたいの
小鬼)、関本大介(鬼警備員)、ジャスティス岩倉(緑鬼)、烏丸せつこ(牛頭〔ゴズ〕)、田口トモロヲ
(馬頭〔メズ〕)、片桐仁(鬼野)、平井理央(アナウンサー)、関本大助(鬼警備員)などが出演してい
る。テロップに中村獅童の名前が挙がっているが、特定できなかった。
 ハチャメチャの映画であるが、それなりに面白い。たまに鑑賞したくなるクドカンであった。
 3本目は、『俺物語!!』(監督:河合勇人、「俺物語!!」製作委員会〔日本テレビ放送網=集英社=東宝=
ホリプロ=読売テレビ放送=バップ=日活=D.N.ドリームパートナーズ=STV=MMT=SDT=CTV=HTV=FBS〕、
2015年)である。主人公役の鈴木亮平は、『HK 変態仮面』(監督:福田雄一、「HENTAI KAMEN」製作委員会
〔東映ビデオ=ショウゲート=日本出版販売=レスパスビジョン〕、2013年)のヒーロー役で知った俳優だ
が、この映画の主人公も似合っていた。物語の行く末は見えていたが、ほのぼのとしてとてもいい。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  高校生らしからぬいかつい顔面と屈強な肉体をもった少年・剛田猛男の純愛を描き、テレビアニメ
 にもなった『別冊マーガレット』連載の異色少女漫画を実写映画化したラブストーリー。鈴木亮平が
 純情で心優しき主人公に挑戦。原作では身長2メートル、体重120キロという大男になりきるため、
 30キロも増量し、熱演を披露する。

   〔あらすじ〕

  15歳の高校1年生・剛田猛男(鈴木亮平)は、まったく高校生に見えない顔面と巨体の持ち主、か
 つ豪傑・硬派なまさに純日本男児。そのいかつい風貌から女子にはまったくモテないが、情に厚くい
 つ何時も人助けをする包容力で男子からは全幅の信頼を得ていた。そんな猛男がこれまで好きになっ
 た女の子は皆、猛男のマンションの隣に住む超イケメン・砂川誠(坂口健太郎)を好きになってしま
 う。だが猛男と砂川は幼馴染の親友で、砂川を素晴らしい男だと認めていた猛男はそうなることも仕
 方のないことだと思っていた。ある朝、猛男と砂川は街でしつこくナンパされている女子高生・大和
 凛子(永野芽郁)を救うが、猛男は大和を一目見て好きになってしまう。ところが再び会うことにな
 ったある日、ふとした大和の言葉で、彼女が砂川のことを好きだと気付く猛男。落ち込みながらも大
 和のために一肌脱ぎ、仲を取り持とうとする猛男であったが……。

 他に、寺脇康文(剛田豊=猛男の父)、鈴木砂羽(剛田ゆり子=同じく母)、渋川清彦(チョココロネの
店の店主)などが出演している。剛田猛男のようなタイプの男子は、まさに「絶滅危惧種」であるが、けっ
してモテないわけではない。事実、この映画がそれを証明している。父の豊が、「たくさんの失恋を乗り越
えて、ただひとりの女性にたどり着く」といったニュアンスの台詞を息子の猛男に浴びせるが、そんな古典
的な恋愛観が違和感なく伝わる映画である。凜子役の永野芽郁もとても魅力的であった。なお、砂川役の坂
口健太郎は高校生役をするには少し不適な当時24歳だったが、まったく違和感を感じなかった。今風のイケ
メンである。もっとも、猛男役の鈴木亮平は当時32歳だから、実年齢は関係ないか。なお、登場人物のひと
りであるJKが「ガチイケ」という言葉を使っていたが、この言葉は初めて聞いた。「非の打ちどころがな
い美男子」くらいの意味であろう。


 某月某日

 DVDで邦画(アニメを1本含む)を4本観たので、報告しよう。1本目は、『シャニダールの花』(監督:
石井岳龍、「シャニダールの花」製作委員会〔ファントム・フィルム=神戸芸術工科大学=ノブ・ピクチャ
ーズ〕、2013年)である。石井岳龍〔聰亙〕の鑑賞済み作品は、以下の通り11本ある。

  『突撃! 博多愚連隊』、監督:石井聰亙、狂映舎、1978年。
  『狂い咲きサンダーロード』、監督:石井聰亙、狂映舎=ダイナマイトプロ、1980年。
  『爆裂都市 Burst City』、監督:石井聰亙、ダイナマイトプロ、1982年。
  『逆噴射家族』、監督:石井聰亙、ディレクターズ・カンパニー=国際放映=ATG、1984年。
  『ユメノ銀河』、監督:石井聰亙、ケイエスエス、1997年。
  『五条霊戦記//GOJOE』、監督:石井聰亙、サンセットシネマワークス、2000年。
  『ELECTRIC DRAGON 80000V』、監督:石井聰亙、サンセットシネマワークス=タキコーポレーション、
   2000年。
  『DEAD END RUN』、監督:石井聰亙、ナル=パイオニアLDC、2003年。
  『生きてるものはいないのか』、監督:石井岳龍(聰亙)、ドラゴンマウンテン、2012年。
  『シャニダールの花』、監督:石井岳龍、「シャニダールの花」製作委員会〔ファントム・フィルム=
   神戸芸術工科大学=ノブ・ピクチャーズ〕、2013年。
  『蜜のあわれ』、監督:石井岳龍、『蜜のあわれ』製作委員会〔あいうえお館=ファントム・フィルム=
   オデッサ・エンタテイメント=北國新聞社=スチューディオスリー=ミュージック・プランターズ=
   ナコオフィス=テレビ金沢=ディー・エル・イー=エイチアイディー・インターアクティカ=
   ザフール〕、2016年。

 発表作品は20数本らしいから、半分弱は鑑賞していることになる。聰亙から岳龍に名前を変えて以来、作
風が変わったと言ってもよいようだ。いわば、「動」から「静」に転換したように見える。『蜜のあわれ』
〔「日日是労働セレクト151」、参照〕でも書いたが、幻想的な作品と言ったらよいだろうか。どことな
く、安部公房が描く世界に似ている。おそらく、彼の初期短篇に、「デンドロカカリヤ」という小品があり、
コモン君という主人公の青年が菊のような葉をつけた樹木であるデンドロカカリヤに変形する物語を連想す
るからだろう。最近観た『羊の木』(監督:吉田大八、『羊の木』製作委員会〔アスミック・エース=テレ
ビ東京=ジェイ・ストーム=住友商事=ソニー・ミュージックエンタテイメント=ギークピクチュアズ=
KDDI=講談社=テレビ大阪=ニッポン放送=朝日新聞社=GYAO〕、2018年)〔「日日是労働セレクト152」、
参照〕とは、また異なる動物と植物の融合物語である。本作は植物の人間に対する「寄生」がテーマなので、
「変身」とは違い、より一層のリアリティがあった。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  女性の胸に花が咲くという不思議な現象と、花の研究に従事する男女の恋を描くサスペンス。若手
 実力派の綾野剛と黒木華がそれぞれ、植物学者とセラピスト役を務め、花を宿した女性役で山下リオ、
 伊藤歩らが出演する。『生きてるものはいないのか』の異才・石井岳龍が7年もの歳月をかけて温め
 続けてきた一作だ。

   〔あらすじ〕

  極少数の限られた女性の胸に謎の植物の芽が現れ、見たこともない美しい花が咲くという不思議な
 現象が起こっていた。採取したその花の成分は画期的な新薬の開発につながることが発見され、製薬
 会社はその花の提供者を全国から見つけ出し、花の成長を全面的にケアする施設“シャニダール”を
 発足。その花は“シャニダールの花”と呼ばれ、提供者には億単位の報酬が与えられた。シャニダー
 ルで働くことになったセラピストの美月響子(黒木華)は、植物学者の大瀧賢治(綾野剛)の下、ユ
 リエ〔田村〕(伊藤歩)やミク〔菊島未来〕(山下リオ)ら提供者のケア業務に就く。ある日、ハル
 カ〔立花〕(刈谷友衣子)という新しい提供者が発見され、早速施設への入居を持ちかけようとハル
 カの自宅に向かった響子と大瀧であったが、ハルカは頑なに入居を拒むのだった。しかし、響子の不
 思議な魅力に心を開いたハルカは、一転入居を決意する。そんな中、花の成長に誘われるように、響
 子と大瀧は次第に恋に落ちていく……。だが、花を採取する際、提供者の女性が謎の死を遂げる事件
 が相次ぎ、大瀧は施設に不信感を抱き始める。一方、響子はそれが危険な花だと知りながらも、ます
 ますその花の魅力にのめり込んでいく。やがて、互いに惹かれ合っていた二人の運命の歯車が少しず
 つ狂い始めていくのだった……。

 他に、古舘寛治(吉崎和彦=シャニダール研究所・所長)、曽木亜古弥(ハルカの母)、松永渚(梅本美
樹=冒頭に登場する患者)、ハマヤアキコ(西島=シャニダール研究所・次長)、金延宏明(大野=医師A)、
大崎裕伸(中野=医師B)、友田かずを(木島=看護師主任)、沖田翔志朗(水島=看護師A)、中島由美
(島=看護師B)、松田尚子(大川=看護師C)、高杉征司(大林=植物研究主任)、滝沢悠平(増田=研
究者)、石井育代(林=ケアーズ主任)、堀川真衣(友田=ケアーズA)、河上由佳(広瀬=トレーナー主
任)、丹羽実麻子(松田=ユリエ担当のトレーナー)、猿渡美穂(河野=同じくミク担当)、三谷恭子(新
田=同じくハルカ担当)、茂木克仁(研究所の警備員)、大川伸介(同)、大島夏乃(大島=ゲストハウス
の患者A)、高樹リサ(高樹=同じくB)、藤澤蘭(藤澤=同じくC)、川端明恵(山下=同じくD)、志
賀廣太郎(神西大学教授)、藤田敦士(佐東=その助手)、仁井本真奈(神西大学の学生)、柳谷花穂(同)、
板尾千春(同)、井上智香子(同)、森松健(同)、柳谷菜穂(同)、村田彩香(同)、谷口英明(ニュー
スキャスター)などが出演している。
 シャニダールは、実在する洞窟で有名な地名。イラクにある。ネアンデルタール人の人骨が発見されてい
る。本作では、「ネアンデルタール人は死者を埋葬する際、花を手向けた。この瞬間、こころが発生した」
という説を否定している(吉崎所長)。「むしろ、ネアンデルタール人は花に寄生されて滅んだのである」
という説を強調する。古代人にまつわる物語はいろいろ人々の想像力をかき立てるが、所詮それは想像の域
を出ないだろう。したがって、自分の信じている物語を信じる他はない。
 2本目・3本目は、2部作の前編・後編である。前編の方から感想を綴ろう。前編は、実写版の『進撃の
巨人(前編)』(監督:樋口真嗣、「進撃の巨人」製作委員会〔東宝=講談社=電通=アミューズ=ホリプ
ロ=博報堂DYメディアパートナーズ=ジェイアール東日本=KDDI=読売新聞社=朝日新聞社=日本出版販売=
GYAO=TOKYO FM〕、2015年)である。アニメ版でも書いたが、小生にはどうにもなじめない物語である。こ
の作品(原作)の全体像を知っているわけではないので、どこが面白いのか分からない。こんな疑問だらけ
(どうやって50メートルの高さの壁を築いたのか。その建設中、巨人とどう戦ったのか。壁の外にいる巨人
は普段何を食べているのか。生殖器のない彼/女らは、どうやって繁殖するのか。巨人の身体は傷ついても
直ぐに復元するが、どういうからくりなのか。どうしたら、普通の人間と巨人が合体できるのか。重要な巨
人戦用の「立体機動装置」なるものの扱いは超絶的技能が必要だと思われるが、どう訓練すれば自由自在に
操れるようになるのか、等々)の物語にどうやったら入っていけるのだろうか。単行本の発行部数は、2018
年7月現在、累計7,600万部を突破しているそうだが(ウィキペディア)、その数字に驚くと同時に、このよ
うな物語の大流行に当惑を覚えざるを得ない。もちろん、ファンが多いのは分からないでもないが、小生で
すら抱くような数々の疑問をファンたちはどう処理しているのか、その方によほど興味がある。つまり、こ
の物語にはやはりなじめないのである。もっとも、どことなく「現代批判」のにおいがするので、その辺り
に人々は惹かれているのかもしれない。そういう意味で、今後の研究課題作品であることは間違いない。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  巨人が人間を食べるという衝撃的なテーマが話題を呼び、第35回講談社漫画賞少年部門に輝いた諫
 山創の人気コミックを実写映画化。居住区の周りに巨大な壁を築き、つかの間の平和を手に入れた人
 人の前に、突如、壁を超える大きさの巨人が出現したことから、人々に訪れる変化を描く。

   〔あらすじ〕

  突如出現した巨人たちに人類の大半が捕食され、文明は崩壊。生き残った者たちは巨人たちに侵攻
 されないよう巨大な壁を三重に築き、その内側で暮らしはじめた。それから100年以上経ち惨劇の記憶
 が薄れていく中、壁の外の世界に憧れるエレン(三浦春馬)は安穏と暮らす人々に苛立ちを募らせて
 いた。しかしある日突然想定外の超大型巨人により壁が崩され、侵攻してきた巨人たちに人々は次々
 に食べられていく。2年後、人類はより内部への撤退を余儀なくされていた。対巨人兵器、立体機動
 装置によって武装した調査兵団が結成され、エレンらは外壁を修復する決死の作戦に赴く。その途中、
 巨人の襲撃にあい、仲間のアルミン(本郷奏多)をかばったエレンは飲み込まれてしまうが……。

 他に、水原希子(ミカサ)、長谷川博己(シキシマ)、三浦貴大(ジャン)、桜庭ななみ(サシャ)、松
尾諭(サンナギ)、石原さとみ(ハンジ)、ピエール瀧(ソウダ)、國村隼(クバル)、渡部秀(フクシ)、
水崎綾女(ヒアナ)、武田梨奈(リル)、神尾佑(ユノヒラ)などが出演している。
 後編は、『進撃の巨人(後編) エンド オブ ザ ワールド』(監督:樋口真嗣、「進撃の巨人」製作委員
会〔東宝=講談社=電通=アミューズ=ホリプロ=博報堂DYメディアパートナーズ=ジェイアール東日本=
KDDI=読売新聞社=朝日新聞社=日本出版販売=GYAO=TOKYO FM〕、2015年)である。
 死んだはずのクバルが超大型巨人に変身したのには、さすがに閉口した。「何でもあり」のストーリー展
開にした場合、面白く感じる人とがっかりする人に分れると思う。小生はもちろん、後者である。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  巨人が人間を食べるという衝撃的なテーマが話題を呼び、第35回講談社漫画賞少年部門に輝き、ア
 ニメ化もされた諫山創の人気コミック『進撃の巨人』。その実写映画版2部作の後編。居住区の周り
 に巨大な壁を築き、つかの間の平和を手に入れた人々の前に、突如、壁を超える大きさの巨人が出現
 したことから、人々に訪れる変化を描く。

   〔あらすじ〕

  超大型巨人によって破壊された壁を修復するため、保護地域から出発したエレンたち調査兵団は、
 巨人の急襲に遭い窮地に陥いる。戦いの中、仲間のアルミンをかばい、巨人に飲み込まれてしまうエ
 レン。誰もが絶望しかけた時、謎の黒髪の巨人が出現、他の巨人たちを駆逐し始めた……。

 他に、草なぎ〔弓偏に前+刀〕剛(グリシャ=エレンの父)、緒川たまき(カルラ=同じく母)などが出
演している。
 両作品ともに、アニメ版よりもさすがに迫力があるが、所詮SFXの賜物と看做せば、興醒めせざるを得
ない。むしろ、石原さとみが演じた兵器班長のハンジのキャラクターが面白かった。
 4本目は、すでに前編は鑑賞済みの、アニメーション『劇場版 進撃の巨人 [後編] -自由の翼-』(監督:
荒木哲郎、「進撃の巨人」製作委員会〔ポニーキャニオン=講談社=Production I.G=電通=ポニーキャニ  
オンエンタープライズ=MBS〕、2014年)である。
 奇行種(通常種には見られない特異な行動をとる巨人の総称)の「女型(めがた)」とエレンと合体した
巨人との戦いが目玉だが、前編よりも少し物語になじんだので、いくらか面白く感じた。少なくとも、人間
の悲しみは描かれていると思う。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  巨人が人類を捕食する世界で、生き残りをかけて戦う人類の姿を描いた、諫山創の人気コミックで
 ある『進撃の巨人』。同作を基にしたテレビアニメを2部作として再編集した劇場版。後編となる本
 作では、突如現れた知性を持つ女型の巨人によって、新たな局面を迎える人類の姿が描かれる、14-25
 話までの物語が繰り広げられる。

   〔あらすじ〕

  巨人が全てを支配する世界。壁を越える超大型巨人の出現により、人々の平穏な毎日が崩されてい
 く中、エレン・イェーガー(声:梶裕貴)は突如として巨人化してしまう。自分は何者なのかと葛藤
 するエレンだったが、人類を救済するためその能力を駆使。ある者は彼を破滅に導く“悪魔”と恐れ、
 ある者は希望へと導く“救世主”と讃えるようになっていく。やがて彼らの前に、他の巨人とは明ら
 かに違う知性を持った女型の巨人が現れる。彼女は一体何者なのか、そしてエレンに秘められた能力
 の謎は……。

 他に、石川由依(ミカサ・アッカーマン)、井上麻里奈(アルミン・アルレルト)、谷山紀章(ジャン・
キルシュタイン)、嶋村侑(アニ・レオンハート)、小林ゆう(サシャ・ブラウス)、三上枝織(クリスタ・
レンズ)、下野紘(コニー・スプリンガー)、逢坂良太(マルコ・ボット)、細谷佳正(ライナー・ブラウ
ン)、橋詰知久(ベルトルト・フーバー)、藤田咲(ユミル)、神谷浩史(リヴァイ=兵士長)、小野大輔
(エルヴィン・スミス=調査兵団団長)、朴ろ〔王偏に路〕美(ハンジ・ゾエ=分隊長)、藤原啓治(ハン
ネス)などが声の出演をしている。最後に、≪to be continued≫とあるので、まだまだ続編ができるのかも
しれない。今調べてみたが、どうやら『劇場版 進撃の巨人 Season2 -覚醒の咆哮-』というアニメ映画がす
でに公開されているらしい(ウィキペディアより)。


 某月某日

 DVDで邦画の『ワイルド7』(監督:羽住英一郎、「ワイルド7」製作委員会〔ワーナー・ブラザース映画=
ソニー・ミュージックエンタテインメント=KDDI=東急レクリエーション=Yahoo! JAPAN=ROBOT=阿部秀司
事務所〕、2011年)を観た。『ワイルド7』と言えば、かつての『少年キング』のドル箱漫画だという認識
があり、実際に何回か読んだことがあるが、それも中学生の頃で、ずっとフォローしたわけではない。した
がって、メンバーがバイクのライダーであることぐらいしか覚えていなかった。ともあれ、こんな設定だと
は露知らず、現代に蘇っていたのである。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『海猿』シリーズの羽住英一郎監督が放つハイパーアクションエンターテインメント。原作は望月
 三起也の人気漫画。瑛太、椎名桔平、関ジャニ∞の丸山隆平ら世代を超えた個性派俳優7人が結集、
 筋金入りの犯罪者からなる特別警察“ワイルド7”に扮して悪を叩きのめしていく。バイク、爆発、銃
 撃戦など、見どころが満載だ。

   〔あらすじ〕

  法律で裁けない犯罪者はいっそその場で消去してしまうべきである。そんな過激な発想から生まれ
 た超法規的警察組織、通称“ワイルド7”。凶悪犯を裁く彼らもまた、選りすぐられた犯罪者たちだ
 った。飛葉大陸(瑛太)、セカイ(椎名桔平)、パイロウ(丸山隆平)、ソックス(阿部力)、オヤ
 ブン(宇梶剛士)、ヘボピー(平山祐介)、B・B・Q(松本実)。いずれ劣らぬ犯罪歴と、犯行のた
 めに身につけた特殊技能をあわせ持ったプロフェッショナルな7人。そんなある日、指揮官である草
 波勝警視正(中井貴一)のもと、“ワイルド7”の出動が要請され、メンバーたちは事件の犯人を追
 い詰める。だがその瞬間、謎のスナイパーが現れ、犯人を射殺して逃走する……。

 他に、深田恭子(本間ユキ=謎めいた美女)、吉田鋼太郎(桐生圭吾=公安調査庁の情報機関〔PSU〕の情  
報分析部門統括者)、要潤(藤堂正志=東都新聞社会部記者)、本仮屋ユイカ(岩下こずえ=同じく新人記
者)、中原丈雄(成沢守=検事総長)などが出演している。
 もとより荒唐無稽の物語であるが、観ている間は楽しめる。漫画チックな展開がつづくが、ウエットな部
分も用意してあり、この手の映画のまさに教科書的な作品だった。


 某月某日

 DVDで邦画の『ワルボロ』(監督:隅田靖、「ワルボロ」製作委員会〔東映=東映ビデオ=星光堂=ゲオ〕、
2007年)を観た。「ツッパリ」映画の好きな小生としては、なぜこの映画をこれまで見逃してきたのか分から
ない。名前も聞いたことがあるし、TSUTAYAでもずっと置いてあったはずなのに……。ま、いいか、そんなこ
とは。工房(高校生=ネット・スラング)ではなく、厨房(中学生=同)なので、喧嘩に迫力はないが、それ
なりによくまとまっている作品だと思う。1970年代に入ってからの傾向の似たような映画を以下に挙げてみよ
う。

  『愛と誠』、監督:山根成之、松竹=芸映プロ、1974年。
  『続・愛と誠』、監督:山根成之、松竹、1975年。
  『愛と誠 完結篇』、監督:南部英夫、松竹=三協映画、1976年。
  『嗚呼!! 花の応援団』、監督:曾根中生、日活、1976年。
  『嗚呼!! 花の応援団 役者やのォー』、監督:曾根中生、日活、1976年。
  『嗚呼!! 花の応援団 男涙の親衛隊』、監督:曾根中生、日活、1977年。
  『博多っ子純情』、監督:曽根中生、エル・アイ・エル=英興、1978年。
  『ガキ帝国』、監督:井筒和幸、プレイガイド・ジャーナル社=ATG、1981年。
  『ビー・バップ・ハイスクール』、監督:那須博之、セントラルアーツ=東映、1985年。
  『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌』、監督:那須博之、東映、1986年。
  『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎行進曲』、監督:那須博之、東映、1987年。
  『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲』、監督:那須博之、東映、1987年。
  『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎音頭』、監督:那須博之、東映、1988年。
  『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇』、監督:那須博之、東映、1988年。
  『岸和田少年愚連隊』、監督:井筒和幸、松竹=吉本興業、1996年。
  『69 sixty nine』、監督:李相日〈リ・サンイル〉、「69 sixty nine」製作委員会、2004年。
  『スクール・ウォーズ HERO』、監督:関本郁夫、「スクール・ウォーズ HERO」製作委員会〔テレビ
   朝日=松竹=G・カンパニー=吉本興業=電通=ホリプロ=TOKYO FM=衛星劇場=日本出版販売〕、
   2004年。
  『パッチギ!』、監督:井筒和幸、シネカノン=ハピネット・ピクチャーズ=衛星劇場=メモリー
   テック=S・D・P、2004年。
  『魁!! クロマティ高校 THE☆MOVIE』、監督、山口雄大、キングレコード=クロックワークス=
   メディア・スーツ、2005年。
  『不良少年(ヤンキー)の夢』、監督:花堂純次、アマナスキネマ東京、2005年。
  『パッチギ LOVE & PEACE』、監督:井筒和幸、「パッチギ LOVE & PEACE」パートナーズ〔シネカノン=
   ハピネット=SHOW BOX=読売テレビ=メモリーテック=エイベックス・エンタテインメント〕、2007年。
  『魁!! 男塾』、監督:坂口拓、「魁!! 男塾」製作委員会〔ゼアリズエンタープライズ=バップ=衛星
   劇場=ムービック=マコトヤ=鈍牛倶楽部=東急レクリエーション〕、2007年。
  『ワルボロ』、監督:隅田靖、「ワルボロ」製作委員会〔東映=東映ビデオ=星光堂=ゲオ〕、2007年。
  『クローズZERO』、監督:三池崇史、TBS=トライストーン・エンタテインメント=東宝=MBS=秋田書店=
   CBC=ハピネット、2007年。
  『クローズZERO II』、監督:三池崇史、「クローズZERO ?U」製作委員会〔TBS=トライストーン・
   エンタテインメント=東宝=MBS=秋田書店=CBC=ハピネット=S・D・P〕、2009年。
  『喧嘩番長 劇場版 全国制覇』、監督:東海林毅、リバプール=ジョリー・ロジャー、2010年。
  『愛と誠』、監督:三池崇史、「愛と誠」製作委員会〔角川書店=ハピネット=東映=テレビ朝日=
   OLM=NTTドコモ=木下工務店=エクセレントフィルムズ=コンセプトフィルム=ホリプロ〕、2012年。
 
 小生が鑑賞済みの、中学生から大学生までの、いわゆる「ツッパリ」を描いた邦画を挙げてみた。趣旨に  
若干外れる作品もあるが、こんなものか。『ツッパリ・ハイ・スクール 武闘派高校伝』(監督:秋山豊、
1994年)という作品があるらしいが(しかも、シリーズ化している)、もしかすると、Vシネマかもしれな
い。小生のアンテナに引っかかったことがないからである。もちろん、「横浜銀蝿」の名曲『ツッパリ High
School Rock'n Roll(登校編)』(作詞/作曲/編曲:タミヤヨシユキ、1981年)に関係しているのかもしれ
ないが、その辺りは不詳である。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  ゲッツ板谷の人気小説を映画化した青春ドラマ。テレビで人気の松田翔太と新垣結衣が初共演し、
 ガリ勉から突如不良に変わった少年と、彼が恋するマジメな美少女を好演した。

   〔あらすじ〕

  80年代、東京立川市。勉強一筋だった中学3年生のコーちゃん〔板谷宏一〕(松田翔太)は、授業
 中に絡んできた、今やすっかり不良になっている幼馴染のヤッコ(福士誠治)のチョーパン(頭突き)
 にブチギレして大暴れする。その現場は憧れの女の子・山田規久子(新垣結衣)にも見られ、恥ずか
 しいと思う反面、何故か開放感を感じてしまう。その日からコーちゃんは不良に転身し、喧嘩三昧の
 毎日に突入していく。髪をオールバックにして、短ラン、ボンタン、鉄板入りのカバンで登校するよ
 うになるコーちゃん。それを仲間たちは笑って迎える。隣の席の山田はコーちゃんを完全に無視する
 ようになり、母は激怒。他の中学の不良の攻撃にも備え、新しい生活の幕が開けるのだった。

 他に、木村了(キャーム=錦組六人衆のひとり)、城田優(小佐野=同)、古畑勝隆(ビデちゃん=同)、
途中慎吾(カッチン=同)、温水洋一(ビデちゃんの父親)、西原理恵子(保育園の保母さん)、高部あい
(サユキ=コーちゃんがちょっと好きになる女の子)、ピエール瀧(学ランの仕立て屋)、仲村トオル(猛
身=コーちゃんの叔父さん。やくざ)、仁科貴(猛身の舎弟)、戸田惠子(板谷美智子=コーちゃんの母)、
塩見三省(同じく父)、桑代貴明(同じく弟)、星ひなの(同じく妹)、武田航平(ビーバー=北六中のヤ
ンキー)、弓削智久(パーポン〔葉本〕)=北二中の鑑別所帰りのツッパリ)、阿部亮平(丸岡=同じく北
二中のツッパリ)、鈴木昌平(毒ブッチュ=南十中のツッパリ)、北村栄基(キム=朝鮮中学校の番長)、
西山宗佑(リーゼント野郎)、森豪士(リンリン)、福山一樹(ジミー)、加治将樹(トッパン)、増田修
一朗(テッパン)、沖原一生(パク)などが出演している。なお、配役については、<ウィキペディア>を参
照した。
 シャバイ、チョーパン(関西では、パッチギ)、ベシャリ、バイナラ、ダサ坊、ソッコウ、サシなどの隠
語が登場したが、「イーマン」は分からなかった。調べてみると、どうやらTV業界用語の「3万円」のこ
とらしい。ついでに、1万から5万までを以下に記しておこう。

  1万円 …… ツェー万
  2万円 …… デー万
  3万円 …… イー万
  4万円 …… エフ万
  5万円 …… ゲー万

 もっとも、錦組(北三中)と北二中の喧嘩の賭けに絡んでこの言葉を遣ったキムは、指を二本立てていた
ので、どうなのか。三本だったら、決まりなのだが。ビデちゃんは、どうやら女子プロレスラーのミミ萩原
のファンらしい。懐かしい姿(ポスター)と名前を目にしたが、彼女はもう62歳である。小生も老けたわけ
だ。なお、コーちゃんの部屋には、アグネス・ラムのポスターが貼ってあった。ピエール滝が出ているが、
なかなかカッコイイ。さらに、仲村トオルの起用は、やはり『ビー・バップ・ハイスクール』からの流れか。
主演の松田翔太は兄貴の龍平とは異なるタイプだが、松田優作が好きだった小生としては、やはり忘れ形見
として好ましい。


 某月某日

 DVDで邦画の『やくざと抗争 実録安藤組』(監督:佐藤純爾、東映東京、1973年)を観た。安藤昇の自伝
的な物語を映画化した作品である。彼も鬼籍に入ったので、時代の流れを感じざるを得ない。「やくざ映画」
と言うよりも、「愚連隊映画」と言った方が通りがいいかもしれない。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『やくざと抗争』シリーズ第二作。二作目も安藤昇原作・小説の映画化であるが、前作と違って、
 安藤昇自身がモデルとなっている。不良学生グループのリーダーだった安藤昇がやくざ、テキヤを相
 手に血で血を争う抗争を繰り返しながら、“安藤組”を結成するまでを描く。脚本は『やくざと抗争』
 の石松愛弘、監督も同作の佐藤純彌、撮影は『人斬り与太 狂犬三兄弟』の仲沢半次郎がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  昭和二十四年、渋谷。制帽をあみだにかぶり、学生服をラフにひっかけた大学生・矢頭昇(安藤昇)
 をリーダーとするチンピラたちと、愚連隊・ドス健〔銀座一番の番長〕(山本麟一)、橋場組は顔を
 合わせると喧嘩の毎日だった。そしてある日、矢頭はドス健に顔面深く斬り裂かれる。傷の痛みをこ
 らえて歩き廻っていた矢頭は、幼な馴染みの早苗(藤浩子)と会い、看護を受ける。傷の癒えた矢頭
 は、橋場(諸角啓二郎)の兄弟分でもある児島(丹波哲郎)の仲裁を無視して、ドス健を襲い、仲間
 の三吉〔佐藤蛾次郎)がドス健を殺してしまった。児島の助力も得て勢いづいた矢頭は次第に仲間を
 増し、橋場組の縄張りを侵略していき、ついに、橋場を殺し、縄張りを手中に収めた。そんな矢頭に
 関東桜会会長の榊原(内田朝雄)と大幹部・蓮見(渡辺文雄)が接近してきた。榊原は渋谷に進出す
 るために、実子の勇吉(郷えい〔金偏に英〕治)を矢頭の兄弟分にしようと企だてたのである。それ
 と知った矢頭は、地元の十文字一家と関東桜会を鉢合せさせようと画策する。まず、勇吉を痛めつけ、
 その身柄を十文字組へ持ち込んだ。そして一方では関東桜会へ通報したのである。やがて矢頭にたぶ
 らかされた大文字組は関東桜会へ殴り込みをかけ、全滅してしまった。やがて、児島が現われ、矢頭
 に桜会との手打ちの話を持ってきた。その条件とは渋谷の縄張りを旧橋場組だけに留め、十文字組の
 シマは諦めろというものだった。その条件を呑むことのできない矢頭とその仲間は、関東桜会と一戦
 を交えるのであった。

 他に、江守徹(加納=矢頭の仲間)、袋正(三崎=同)、北川恵一(西原=同)、安岡力也(黒木=同)、
小林稔侍(野田=同)、今井健二(佐倉=橋場組の代貸)、堀田真三(橋場組の若い衆)、深江章喜(本堂=
十文字組の親分)、室田日出男(唐沢=十文字組の代貸)、佐藤晟也(同じく子分)、日尾孝司(関東桜会
の構成員)、藤山浩二(同)、八名信夫(岩上=ドス健の仲間)、松井康子(富江)、小林千枝(児島の妻)、
植田灯孝(デカ長)、相馬剛三(医者)などが出演している。なお、一部の出演者は、小生の推定である。
 安藤昇が出演している映画はかなり観ているが、この映画は初見だと思う。ただし、すっかり忘れている
だけかもしれない。売り文句が振るっている。いわく、「見えない実体、暴力団をメスる」である。「メス
る」という隠語は初めて知った。その他、矢頭が頬にドスで傷をつけられた後の手術で麻酔を拒否するシー
ンがある。矢頭によれば、「麻酔をかけると、傷口が汚くなる」からである。さらに、≪PX≫という言葉
が登場する。<ウィキペデイア>では、以下のように説明されている。

  アメリカ軍の基地内の売店(post exchange)。酒保を参照のこと。日本(とりわけ東京)では戦後
 進駐軍によって多数の商業施設が接収され、米兵向け≪PX≫として使われた。銀座三丁目の松屋や同
 四丁目交差点の和光も「TOKYO PX」の看板に掛け替えられ、1952年頃まで収用された。
  日本の自衛隊でも売店(駐屯地または基地購買部)を≪PX≫と呼ぶ。

 橋場組が「みかじめ料」を集金するシーンがあるが、今ではその慣習も廃れたらしい。なお、「安藤組」
という呼称は俗称で、実際には「株式会社東興業」の由。エンコ詰(指詰め)や刺青を禁じていたらしい。
念のために、再び<ウィキペディア>の記述を以下に引用させていただく。執筆者に感謝。

 「安藤組は、株式会社東興業の俗称。マスコミによって、名付けられた。業種は、不動産売買、興行、
  警備、水商売の用心棒、賭博など。昭和27年から昭和39年12月9日まで活動した。社長は安藤昇。
  最盛期の組員は530人だった」。

 当時、安藤組には大学生も多く出入りしており、かの安部譲二も関わりがあったらしい。なお、映画の題
名としては、「実録もの」の先駆けらしい。当時の東映の社長だった岡田茂の命名という(ウィキペディア
より)。


 某月某日

 今日も、『日本鬼子(リーベン・クイズ) 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』(監督:松井稔、「日本鬼  
子」製作委員会、2000年)の感想のつづきを記そう。
 14番目に登場するのは、小林武司(1920年、広島生まれ、兵長)である。彼は、先ず、「物資略奪」につ
いて語り始める。第十一軍第三九師団の初年兵の頃である。城壁のある大きな部落を襲撃したと語る。卵で
命乞いをする姑娘を犯して殺害している。そのとき、この映画の題名にも使用されている「日本鬼子(リー
ベン・クイズ)=日本の鬼」という言葉が発せられたという。彼は、戦後、『中帰連』という雑誌に、「獣
欲 ─ 病む父親を殺し、看護する娘を輪姦する」という手記を発表している。残虐非道な行為を敢えてしな  
ければ、戦友から「仲間外れ」にされる極限状況の中で、他に選択肢はなかったと語りたいのだろう。ただ
し、人を殺したり、略奪したり、放火したりすることは、上官の命令で通ったが、「強姦」に関しては、も
ちろん通らない。事実上は、日常茶飯事であったこの鬼畜的な行為を語ることは、この雑誌に発表するまで
はできなかったと語る。
 15番目に登場したのは、金子安次(誕生地・生年、不詳。伍長)である。この人も、「強姦」について語
る。最後には、子どもともども手榴弾で殺害した挿話もあった。そもそも、略奪に向かうとき、二人の兵隊
が組になって、先ず「女」を探すと語る。やりたい放題である。このような行為を中隊長は見て見ぬふりを
していたという。自分の成績に関わるからである。「強姦をして軍法会議にかけられた兵隊などひとりもい
ない」と彼は語る。さらに、当時の兵隊だったら、誰もがそうしたと語り、「やらない」という者がいたら、
うそだという。
 次に登場したのは、榎本(9)である。彼は、「いつ死ぬか分からない」状況にあって、若者が性欲の捌
け口を敵の女に求めるのは当然のことであると認識しているようである。もちろん、軍隊の内務令では「戦
場において婦人を強姦した場合には銃殺」ということになっていたので、発覚を未然に防ぐために、たいて
いは事後殺害したと語っている。
 この後、再びナレーションが入る。これも、聞き書きをしてみよう。

  「支那派遣軍は、頻繁となった中国軍航空基地からのアメリカ空軍の爆撃を防ぐための基地破壊と、
   北京から仏印をつなぐ大動脈確保を目的とした大規模な「大陸打通作戦=一号作戦(1944年4月
   から1945年1月)」を行うが、占領地を確保できなかった。その頃、南方戦線では、アメリカ軍
   に制空権・制海権を完全に奪われ、孤立した日本軍部隊の玉砕が相次いだ。サイパン陥落の責任
   を取って、東條内閣は総辞職した。日本軍はもはやアメリカに対して人命を無視した特攻攻撃以
   外に戦う術を失っていた。中国の日本軍も制空権を中国・アメリカに奪われ、蒋介石の欧米列強
   を抗日戦に巻き込む長期戦論、毛沢東の日本軍を中国人民の大海に沈めるという持久戦論の前に
   崩壊を始めていた。やがてアメリカ軍の中国大陸侵攻上陸が予想され、北支那方面軍は対米陣地
   構築と八路軍撃滅を目的とした「秀嶺作戦(1945年3月から7月)」に従事する」。

 なお、1944年(昭和19年)の陸軍の兵力は以下の通りである。

  日本本土              約131万人
  (千島・樺太、朝鮮を含む)
  満洲=関東軍            約46万人
  中国=支那派遣軍          約80万人
  南方                約163万人

 次いで、絵鳩(5)が再び登場する。当時、彼は初年兵の助教という役目を負っていて、逃げ遅れた農民
の「検閲」を行ったという。少年が残された母親がいるので助けてくれと訴えたが、「戦争には非道はつき
ものである」と自分に言い聞かせて、これを斥けたと語る。重機関銃中隊は銃剣を所持しないので、腰に差
した「ゴボウ剣」で縛り付けた捕虜を突き刺す訓練をした由。初めはなかなか刺せないが、そのうちに刺せ
るようになり、多くの捕虜を使って「教育」は終了したという。さらに、中国の農民を使役して、「地雷踏
み」をさせている。先ず、「県公署」というところに行って、「苦力(クーリー)=筋肉労働者」を集めろ
と命じる。そして、その生きた人間を地雷探知機の代わりにして、一列横隊で道を進めさせるのである。も
ちろん、逃げないように後ろには銃を持った日本兵が控えていた。20人ほどの列の中で、4、5人の死傷者
が出たという。
 次に、小山(11)が再び口を開く。日本軍の用事(目的地に到着、など)を済ませた後の苦力は皆殺しに
されたらしい。当時の彼は神経が麻痺していたので、夥しい死骸を見ても、「また、やってるな」くらいに
しか思わなかったという。ここで、またナレーションが入る。「本土決戦」、「皇土死守」、「一億玉砕」
などの言葉が飛び交う。再び、小山(11)が口を開く。「現地調弁(調達)」の話が出てくる。そう言えば、
父親かあるいは小学校時代の先生なども、何かの折にこの「現地調達」という言葉を使用していた。すなわ
ち、小生にしてみれば、ものごころつくかつかないうちにこの言葉を知っていたことになる。
 この後、再び金子(15)、そして、絵鳩(5)、榎本(9)と続く。部落を襲えば、あたかも蝗の大群に
襲われたかのように、ほとんど全滅したという。半月も駐屯すると、食糧が底をついてくる。そこで、噂が
飛び始める。「人間の肉を喰った」という醜聞である。もはや、「狂っている」としか言いようがない。
 ここで、再びナレーションが入る。これは全文写し取ろう。

  「戦争終結の最後の機会を与えるために呼びかけられたポツダム宣言を黙殺した日本だったが、広島、
   長崎への原爆投下、ソ連の対日参戦により、1945年(昭和20年)8月15日、ポツダム宣言を受諾、無
   条件降伏した。敗戦で、中国にいた日本軍兵士のうち、57万5千人がソ連によってシベリアに抑留さ
   れ、強制労働に課せられた。うち、5万5千人が、帰国を果せず死亡した。中国では、4年に亙り、
   「国共内戦」が続いたが、これに勝利した人民解放軍は、1949年10月、中華人民共和国を建国した。
   翌年、1950年7月、5年を経たシベリア抑留者のうち969人が、対中国戦犯として、ソ連から中華人
   民共和国に引き渡され、遼寧省・撫順の戦犯管理所に拘留された。また、敗戦後も、山西省で、閻
   錫山の国民党軍に協力して解放軍と戦った山西残留日本軍(暫編独立第十総隊)を含む140人が、
   山西省の太原(たいげん)戦犯管理所に拘留された。この作品の証言者14人(15人ではない)も、
   このふたつの管理所に拘留されたのである。建国早々の中華人民共和国は、これら戦犯に対し、周
   恩来の指導により、「戦犯とても人間であり、その人格を尊重せよ」という人道主義の政策を取っ
   た。管理所の職員は、個人の恨みを超えて一切の体罰、侮蔑的言動を厳禁し、食事・医療・運動・
   学習・文化・衛生など、すべての面できわめて人道的で温かい処遇をした。それは、厳罰を覚悟し
   ていた戦犯たちに、大きな感動と反省を喚び起した。やがて彼らは、人間的良心に目覚め、侵略戦
   争の自らの罪を自覚し、中国人民に謝罪した。交流から6年後の1956年6月から、中華人民共和国
   最高人民法院(撫順)特別軍事法廷が開かれ、病死・自殺を除く1,062人中、45人だけが起訴され
   た」。

 ここで、鈴木啓久(ひらく)中将(1941年より北支那方面軍〔敗戦時〕関東軍第三方面軍第四四軍第一一
七師団・師団長。禁固20年、満期前に釈放)が、「三光政策」の実態を証言している。さらに、藤田茂中将
(1938年より支那方面軍〔敗戦時〕関東軍第十七方面軍第三四軍第五九師団・師団長。禁固18年、満期前に
釈放)が登場している。自分のことを「人間性をなくした残忍な姿」と告白し、「実に憎むべき私でありま
す」と締めくくっている。
 ここで、永富(2)の特務情報工作隊時代のことが語られ始める。これはすでに書いたことだが、「閻魔
大王」という綽名がつくほど非道なことをしたと告白している。たとえば、八路軍の「婦女工作隊」の隊員
を殺したことを述べている。彼は、禁固13年の判決を受けたが、満期前に釈放されている。
 ここで、またナレーションに戻る。

  「判決は死刑・無期はなく、禁固8年から20年で、抑留・拘留期間が参入され、ほとんどが満期前
   に釈放されている。他の、1,017人の戦犯は、6月から8月の3回に分けて、起訴免除、即時釈放と
   いう寛大な処分を受け、敗戦から11年目に祖国・日本への帰国が許された。彼らが帰国した1956
   年の日本では、経済白書が、日本経済の成長と近代化を発表、「もはや戦後ではない」という言
   葉が流行した。しかし、彼らを待ち受けていたものは、「中共帰りの洗脳組」という偏見であっ
   た。警察、公安に監視され、就職に当っても、さまざまな妨害や嫌がらせを受け続けた」。

 最後に、一般市民を前にして、鈴木(7)が講演している場面があり、インタビューでは、「自分の恥
を語らなければ、戦争の実態・真実を伝えられない」と、率直に語っている。次に、湯浅(10)が登場し、  
将兵は上の命令で動いており、罪の意識はなかったと語る。しかし、それを語らない人の方が圧倒的に多
いと嘆いている。さらに、鹿田(6)が口を開く。中国の人に、「あなたたちは、日本に帰ったら立派な
家庭を持ちなさい。そして、二度と銃を持って中国を侵略しないでください」と言われたという。そして、
自分は80歳になるが、若い世代にこのことを具体的に話したいと思うと語っている。それがせめてもの、
「私の贖罪」であると。
 
 なお、敗戦時(1945年)の陸海軍の兵力は以下の通りである。

  日本本土              陸軍 約247万6千人     海軍 約197万8千人
  台湾・南西諸島           陸軍 約16万9千人     海軍 約7万5千人
  朝鮮                陸軍 約29万4千人     海軍 約4万2千人
  満洲                陸軍 約66万4千人     
  中国                陸軍 約105万6千人     海軍 約7万1千人
  南方                陸軍 約81万4千人     海軍 約25万8千人

 膨大な数の日本人が軍務に就いていたことが分かるが、どのくらいの人が戦前の生活に戻れたのだろうか。
最後に、次の言葉が並ぶ。

  過去を歪めたり、
  否定することはできない。
  過去に目を閉ざすものは、
  現在も見えなくなる。
  非人間的な行為を
  心に刻もうとしないものは、
  又同じ危険に陥る。

             元西独大統領 ワイツゼッカー

 小生には、この作品で語られることがすべて真実であるというような、ナイーヴな感慨はない。事実、ネ
ット情報を覗けば、「中国帰還者連絡会(中帰連)」に対するバッシングも多い。小生は、ここで語られて
いることは、「可能性としては十分あり得た」という立場である。したがって、その内容が真実であるかど
うかについては、口を閉ざすしかない。知りようがないからである。人間の暗部を語ることは確かに難しい。
しかし、その声に蓋をすることはできない。少なくとも、このような労作が現に存在し、何ごとかを語って
いるのだから、被害・加害を問わず、戦争は人類最大の悲劇であることを改めて胸に刻むべきだと思う。そ
して、これらの証言を「人間の経験のひとつの可能性」として、われわれの生き方を吟味する際の教材とす
べきだと思う。

   〔追記〕

  ともあれ、4回に亙って、ひとつの映画についての感想を記すことはおそらく初めてです。その
 間、大分気が滅入りましたし、もう適当にお茶を濁しておこうと考えもしました。しかし、それは
 できませんでした。もちろん、小生の記述にはだいぶ誤りもあるでしょうし、勝手に解釈して語ら
 れていないことが付け加えられているかもしれません。したがって、もし、読者諸兄姉の中に、ご
 質問やご意見がありましたなら、是非忌憚なきお言葉を賜りたいと思います。
  その際には、muto@kochi-u.ac.jp まで、ご一報ください。


 某月某日

 今日も、『日本鬼子(リーベン・クイズ) 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』(監督:松井稔、「日本鬼
子」製作委員会、2000年)の感想のつづきを記そう。
 小山一郎の次は、榎本(9)が再登場し、「小麦収買作戦」(=事実上の掠奪)について語る。収奪を行う
際、抵抗する者は容赦なくクリーク(沼)の中に放り込み、一斉射撃で殺したと証言している。
 この後、ナレーションが入るが、これを耳で聞き取った限り写し取ってみよう。

  「南方戦線では、アメリカ軍の圧倒的物量による大反抗に、日本軍の敗退、退却が始まった。東條英機
   が作った『戦陣訓』「生きて虜囚の辱めを受けず、(死して罪過の汚名を残すことなかれ)」……そ
   の後太平洋の島々で反復されることになる「玉砕」は、降伏を許されぬ日本軍の悲劇であった。欧州
   では、三国同盟の一翼イタリアが無条件降伏した。日本は、南方占領地域の指導者を集め、大東亞會
   議を開催、戦争完遂の決意と大東亞共榮圏の確立を宣言したが、それは傾きかかった日本の戦局と隔
   絶した茶番劇でしかなかった。アメリカ、イギリス、中国は、日本の無条件降伏までともに戦うカイ
   ロ宣言を発表した。中国戦線では、解放区からの遊撃戦を展開する共産党八路軍、アメリカの援助を
   受けた国民党政府軍との、展望なき消耗戦が繰り返されていた。支那派遣軍第十一軍は、主として、
   蒋介石の国民党政府軍との戦闘に当っていたが、湖北省の第三九師団は、国民政府の首都、四川省重
   慶に最も近い部隊であった」。

 なお、1943年(昭和18年)の陸軍の兵力は以下の通りである。

  日本本土              約70万人
  (千島・樺太、朝鮮を含む)
  満洲=関東軍            約60万人
  中国=支那派遣軍          約68万人
  南方                約92万人

 これを見ると、圧倒的に「南方戦線」の兵力が増えていることが分かる。うろ覚えであるが、『兵隊やく
ざ』シリーズで、有田(田村高廣)が、大宮(勝新太郎)に向って、「中国戦線から南方に送られるなんて、
ほとんど死ににいくようなもんだ。いっそ、脱走しよう」と語るシーンがあったような気がする。「魔のバ
シー海峡(戦争後半にはアメリカ海軍の潜水艦が多数配置され、多くの日本輸送船を沈めたことから輸送船
の墓場と呼ばれた)〔ウィキペディアより〕」を越えることされ危うかったのだから。映画監督の鈴木清順
も、乗船していた輸送船が沈没し、数日間漂流した経験があるという。名作『ツィゴイネルワイゼン』(監
督:鈴木清順、シネマ・プラセット、1980年)は、この時の体験が活かされている由。なお、戦争末期に南
方戦線に送られた兵力には補充兵なども多く、その様子は『きけわだつみの声 日本戦歿学生の手記』(監
督:関川秀雄、東横映画、1950年)に詳しく描写されている。
 ここで、12番目の富永正三(1914年、熊本県生まれ、中尉)が登場する。この人も絵鳩(5)と同じく東
京帝大の卒業生であるが、絵鳩とは異なり、幹候試験を受けて合格しているようである。小隊長を命じられ
て、部下の兵隊と面と向かったとき、彼らの眼付は人間らしさに欠けていたという。あたかも、虎や豹の殺
気を帯びた三角の眼をしており、びっくりしたと語っている。砲弾の中を潜ってきた歴戦の勇士の眼付だっ
たのだろう。戦闘経験など皆無の彼にとって、こんな連中をうまく束ねることなどできるのだろうかと、か
なり動揺したらしい。翌日、見習士官22名(彼を含む)が集められ、「1週間で、野戦の小隊長に仕上げる」
という教育が始まった。その最終日に、見習士官の度胸試しが敢行され、生きた人間の首を斬ることを命じ
られる。そこで、「斬首の模範」が見習士官たちの目の前で示された。彼は、立ち竦み、身体が硬直した感
じになったと語る。自分自身もいざ生首を斬る段にかかると、「こんなことが許されるのだろうか」という
思いに駆られ、カントの『実践理性批判』を思い浮かべたという。その「人格主義」の観点から言えば、蛮
行に等しく、許されるわけがない。しかし、敢えて「ヒューマニスト」の看板を下ろして、模範どおりに斬
首したと語る。その瞬間、下腹に自信めいたものがズシンと降りた由。なお、残った捕虜1名は、古参の中
尉によって、軍刀の試し斬りにされたという。その動作は「朝飯前」という感じだったと語っている。見習
士官たちは惑乱状態であるのに、この古参の中尉はごく日常的な動作で済ませたという。夜になって、点呼
の時間になっても、まったく古参兵たちに引け目を感じなくなっていたと語る。斬首の経験が彼を劇的に変
えたのであろう。
 次に、鹿田(6)が再び語り出す。白陽寺攻撃(1943年12月25日)の様子である。纏足した老婆や、子ど
もなども、雲の子を散らすように逃げ惑ったという。先ず、軽機関銃で30名くらいは殺したという。ある家
では、鹿田を「大人(ダーレン)=目上の人への尊称」と呼んで、土下座して命乞いをしたという。しかし、
聞き届けることなく、2百数十名を殺戮したと語る。完全な非戦闘員である農民を惨殺したことになる。
 次いで、13番目の久保田哲二(1919年、広島県生まれ、曹長)に移る。彼は、開口一番、「挺身隊=謀略
部隊」について語り始める。国民党軍の兵士と同じ格好になって、民家に放火するなどして暗躍したらしい。
さらに、騙して井戸に投げ込むことなども行ったと語る。銃剣を使用すれば、血が残るからである。自分自
身の命が惜しいので、住民のことなど考えなかったという。「空気注射」の生体実験も行った由。刺し殺す
前には煙草を吸わせたらしいが、農民は最後まで命乞いをしたという。
 次に、また鹿田(6)が登場し、情報主任時代の話をし始める。「密偵」と看做して拷問にかけるが、誰
も白状しない。果たして密偵であったのか、分からないのである。知らないから言えないのが、ほとんど大
半ではなかったかと今では思う。斬首の話の絡みで、戦後何度となく魘されたという。
 ここで、次の人に移るが、かなり気が滅入ってきたので、後日に回したいと思う。
 その代り、アニメーションであるが、DVDでもう1本映画を鑑賞しているので、それを記そう。『劇場版
進撃の巨人 [前編] -紅蓮の弓矢-』(監督:荒木哲郎、「進撃の巨人」製作委員会〔ポニーキャニオン=
講談社=Production I.G=電通=ポニーキャニオンエンタープライズ=MBS〕、2014年)である。四十歳を越
えたふたり(ひとりは男性、別のもうひとりは女性)が、口を揃えて激賞していたので、観てみたが、はな
はだがっかりした。まったくつまらないわけではないが、どうも小生の性には合わず、「どこが面白いのだ
ろう」と思いながら観た。『幻魔大戦』(監督:りんたろう、角川春樹事務所、1983年)、『風の谷のナウ
シカ』(監督:宮崎駿、徳間書店=博報堂、1984年)、『ゲド戦記』(監督:宮崎吾朗、「ゲド戦記」製作
委員会〔日本テレビ放送網=電通=博報堂DYメディアパートナーズ=ブエナ ビスタ ホーム エンターテイ
メント=ディーライツ=東宝〕、2006年)などでも感じたが、荒唐無稽の「戦記もの」が嫌いだからだろう。
しかしながら、同傾向の作品として、『キリクと魔女(1998)』(監督:ミッシェル・オスロ、フランス=
ベルギー=ルクセンブルグ、2003年)は、「頗る付き」の傑作だと思ったので、やはり物語設定や、登場人
物の造型や、ストーリー展開に問題があるのだと思う。さらに、日本のアニメでも、『AKIRA』(監督:大
友克洋、アキラ製作委員会、1988年)などは高く評価しているので、間違いないと思う。裸の巨人族が出現
して人類を襲い、多くの土地を奪われたので、自らを囲い込んで百年の平和を保ったが、またあの巨人が人
類の居住地を襲うようになる……という設定だが、ギリシャ神話の「巨人伝説」を下敷にしているだけだし、
登場人物の名前も、どこかで聞いたことのある名前を適当に並べただけにしか思えないし、登場人物の人物
像もステレオ・タイプそのものである。さらに、巨人と合体する展開もご都合主義の物語でしかない。いっ
たい、このアニメのどこが面白いのか、書いているうちに少し腹が立ってきたほどである。
 ともあれ、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。
なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  巨人が人類を捕食する世界で、生き残りをかけて戦う人類の姿を描いた、諫山創の人気コミックで
 ある『進撃の巨人』。同作を基にしたテレビアニメを2部作として再編集した劇場版。前編となる本
 作では、巨人との遭遇を機に調査兵団入りを決意する主人公エレンが秘められた能力を発揮するまで
 を描いた、1-13話までの物語が繰り広げられる。

   〔あらすじ〕

  巨人がすべてを支配する世界。巨人の餌と化した人類は、高さ50メートルの巨大な壁を築き、 壁外
 への自由と引き換えに侵略を防いでいた。まだ見ぬ壁外の世界を夢見る10歳の少年エレン・イェーガ
 ー(声:梶裕貴)は、仮初めの平和に満足し、外の世界へ出ることを諦めた人々に違和感を覚える。
 彼らを“家畜”と呼ぶエレンと、エレンを“異物”と感じる人々。だが、壁を越える超大型巨人の出
 現により、エレンの“夢”も人々の“平和”も、突如として崩れ去ってしまう……。

 他に、石川由衣(ミカサ・アッカーマン)、井上麻里奈(アルレルト・アルミン)、谷山紀章(ジャン・
キュルシュタイン)などが声の出演をしている。
 もう一度繰り返しておく。どこが面白いのだ、と。


 某月某日

 今日は、『日本鬼子(リーベン・クイズ) 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』(監督:松井稔、「日本鬼
子」製作委員会、2000年)の感想のつづきを記そう。
 当時、中国側では、「抗日民族統一戦線」が組織される。それは、およそイデオロギーを異にする、「国
民党軍」と「共産党軍(紅軍)」から成り立っており、さらに紅軍は、「八路軍(国民革命軍八路軍)」と
「新四軍(国民革命軍新編第四軍)」から成立していた。なお、中国の新聞『大公報』により、「百団大戦」
という呼称 * が用いられている。

 * ひゃくだん たいせん 【百団大戦】(Weblio 辞書より)
  日中戦争において、1940年八月から約五か月間、百個団(連隊)以上の八路軍が、日本軍に正面から挑
  んだ戦闘。これにより日本軍側は初めて中共軍の実力を認識させられた。

 また、日本の「燼滅掃蕩作戦」を、中国側は「三光」と呼んでいる。いわゆる、「殺光(殺し尽くし)」、
「焼光(焼き尽くし)」、「搶光(奪い尽くす)」作戦のことである。
 9番目は、榎本正代(1919年、埼玉県生まれ、曹長)である。鈴木、金子と同じ軍歴を辿っている。八路
軍のいそうな村を襲い、スパイでも何でもない女性を「皇軍慰問」と称して凌辱・殺害したと告白している。
 10番目は、湯浅謙(1916年、東京生まれ、軍医中尉)である。北支那方面軍第一軍第三六師団に属。ろあ
ん(さんずいに路+安)陸軍病院(山西省)で、軍務として、6回にわたって10人の生体解剖に関わったと
告白している。<ウィキペディア>のよれば、「戦後、戦犯容疑者として中国の戦犯管理所へ移送されるが、
中国の人道的な対応に接し、自身の罪を強く認識し深く反省する。起訴免除の判決を受けた後、日本へ帰国
する。帰国後、「中帰連(中国帰還者連絡会)」の会員として、反戦平和、日中友好運動に参加する。自身
の戦争体験、特に生体解剖を証言し、戦争の愚かしさを伝える」、との由。
 ここで再び、ナレーションが入る。日本軍は、八路軍の補給基地を潰すために、「集家工作」を行い「無
住地帯」を作ったと語る。
 次いで、船生(4)が再び登場し、「家があれば焼き、人がいれば殺した」と語る。「快走(かいぞ)」
(=早く行け)という言葉で、ある家の中にいた老爺を促したが出てこない。そこで家に火を点けて焼き殺
している。それを見ていた孫と思われる子どもも、八路軍に報告されることを懼れて、部下に命じて射殺し
ている。さらに、村にある日本軍にとって使える物は掠奪したと語る。そして、要らないものは破戒し、八
路軍が利用できないようにする由。まさに、「三光」の実態である。
 ここで、再びナレーションが入る。ミッドウェー海戦(1946年6月)における海軍の惨敗を、大本営はこれ
を大成果と発表し、国民を欺いたと語る。次いで、「浙かん(=章+攵+貢)作戦」(1942年5月15日から作
戦行動。中国大陸の杭州から南昌間の「せっかん」鉄道沿線を東西から攻撃して、金華・玉山・麗水などの
米軍飛行場を占領破壊する目的の作戦)の話、「労工狩り」(中国人の強制連行)の話が続く。1942年11月
27日、「華人労務者内地移入ニ関スル件」が閣議決定される。
 11番目は、小山一郎(1920年、東京生まれ、軍曹)である。彼も、鈴木、金子、榎本と同じ軍歴を有する。
彼によって、上記「労工狩り」の具体的な作戦である「と号作戦=第三次魯東作戦」の話が語られる。1万
5千人の兵力をもって、15歳から45、6歳の、労働力のある屈強な男性を選んで捕獲する作戦である。小山の
所属した43大隊によって、4、5百人の中国人を捕まえ、そのうち300人くらいは使えるということが分かっ
た、という。さらに、これら強制連行した中国人を「家畜のように扱った」と語っている。
 戦後1946年、外務省管理局は、1943年4月から1945年5月まで強制連行した中国人は38,935人(死亡6,830人)
であるとの「華人労働者就労事情調査報告」を作成している。
 今日は、もう遅いので、ここまでにしておこう。


 某月某日

 月が替わった。先月は怪我をしたので、今月はより注意深く過ごしたい。
 さて、DVDで邦画の『日本鬼子(リーベン・クイズ) 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』(監督:松井稔、
「日本鬼子」製作委員会、2000年)を観た。アジア・太平洋戦争については、あまたのメディアを通して、
小生自身かなり知っているつもりであるが、この作品を鑑賞して新たに知り得た事柄も多かった。当該戦争
において、日本や日本人の被害についての文献や映像資料は山のようにあるが、加害者の立場から描かれて
いる作品は案外少ない。その意味で、貴重なドキュメンタリーと言えよう。構成は15名に及ぶ元帝国陸軍将
兵のインタビューから成り立っている。その意味で単調な映像が続くが、どうしてどうして、160分に及ぶ
長尺の映画ながら、退屈な部分はまったくなかった。編集者の力量が確かだからであろう。なお、以下で、  
現在では不適切な表現を用いるが、歴史的事実を述べるために、伏字にはしないのでご諒察いただきたい。
 冒頭に以下の言葉が並ぶ。

  聖戦の名のもとに/侵略戦争の銃を握らされた/私たちの祖父や父。
  彼らは戦争で何をしたのか…/戦争の被害については/多くのことが語られてきたが、
  加害については沈黙、/否定されてきた。
  被害の体験は語り易いが、/加害の体験は語り難い。/しかし加害体験こそが
  戦争の真実、人間の弱さと/恐ろしさを明らかにし、/再び過ちを繰り返さぬための
  歴史の教訓を伝える。
  
 トップバッターは、土屋芳雄(1931年、山形県生まれ、憲兵少尉)である。20歳の時、徴兵検査に合格、
満洲公主嶺独立守備隊に入隊。主に、捕虜への拷問について語る。「水を呑ませる拷問」が一番効いた由。
1936年12月31日に起きた「斉斉哈爾(チチハル)陸軍監獄集団脱獄事件」や、張恵民事件の首謀者らの銃殺
について語る。当時の中国人を「チャンコロ」と呼んで、「人間ではなく、虫けらとみなした」と証言して
いる。あらゆる命令は天皇の命令であり、天皇は神の子孫であるから、一切抗うことはできなかったと弁明
する。憲兵として、328人の殺害、1,917人の逮捕、拷問、投獄に関与したと告白し、中国人に謝罪している。
なお、当時の警務統制委員会は、憲兵隊、領事館警察、関東局警察、満洲国警察、鉄道警備隊から成り立っ
ていた。憲兵隊は「厳重処分権」を有していた由で、厳重処分とは、事実上の「処刑」を意味していた。
 ここでナレーション(久野綾希子)が入る。1937年7月7日、北京郊外で「盧溝橋事件」が起こる。1937年
12月13日、帝国陸軍、南京を占領。蒋介石が率いる中国国民政府は重慶に遷都。いわゆる「南京虐殺」が起
こる。殺された中国人は1万人から30万人までの諸説あるが、「数の多少は戦争犯罪の罪科を軽減するもの
ではない」と結ばれる。
 2番目は、永富博道(1916年、熊本県生まれ、軍曹)である。愛国学生連盟の一員であり、右翼の大物で
ある頭山満の門下生でもあった。特務機関に属し、何千何万という死体を見たと証言。語る中で、「安居楽
業」という言葉が登場する。「良民証」の交付を待つ中国人に向けて、ある将校が用いた言葉である。「皇
軍が南京に入った以上、皆さんは安心して生活してほしい」という意味である。さて、その約束はどうなっ
たのだろうか。
 彼は、後に、北支那派遣軍に入隊。戦後も、閻錫山軍・暫編独立第十総隊の山西残留日本軍に参加、人民
解放軍と戦う(1949年まで)。上校(=大佐)にまで昇進し、周囲の者に「閻魔大王」と呼ばれて怖れられ
たという。
 3番目は、篠塚良雄(1923年、千葉生れ、兵長)である。16歳の時、少年兵として、関東軍防疫給水部に  
入隊。言わずと知れた「七三一部隊=石井部隊」のことである。ノモンハン事件(1939年)が起きたころ、
病原菌の大量生産に携わる。赤痢・チフス・パラチフスなどである。石油缶のようなものにグリセリンを混
合させてハンダ付けで密封し、木箱に入れ、菰で巻いて荒縄で結わえたものである。ハルハ河上流のホルス
テン川に投げ込んだと証言。ノモンハン事件は日本の大敗に終わって、9月15日に「ノモンハン停戦協定」が  
日本とソ連との間で交わされるが、その際、石井四郎は感状を得ている。大敗にも拘らず「感状」が与えら
れたのは、「細菌兵器」の実験に成功したからである、と篠塚は語る。なお、1939年8月23日に、「独ソ不可
侵条約」が締結され、同9月1日に第二次世界大戦が勃発している(ドイツおよび独立スロバキアのポーラン
ド侵攻が契機となる)。その後、篠塚は、第四部第一課唐沢班に配属され、コレラ・ペスト・脾脱疽(=炭
疽菌)などの大量生産に従事。ワクチンと細菌の力関係を研究。その際、中国人5名を生体実験に用いて殺
害している。ワクチンなしの被験者は、3日で瀕死の状態に陥ったと語る。当時の生体実験の被験者は「マ
ルタ」と呼ばれ、「今日は何本倒した。俺は2本だ」のごとき会話が日常的に交わされたという。マルタは
処刑に当る筈の罪人であるから、罪悪感はなかったと篠塚は語る。なお、七三一部隊は、10年間で三千人を
殺害したとされ、生物兵器開発のための人体実験を繰り返した。軍医中将であった石井四郎は、戦後、アメ
リカ合衆国に研究データをと提供することによって、戦犯を免責されている。
 ここで、大陸に進出した陸軍の兵力が以下のように示される。

    関東軍   1939年(約27万人)→1940年(約40万人)
    支那派遣軍 1939年(約71万人)→1940年(約68万人)

 1940年3月30日、親日政府として、汪兆銘を首長とする南京政府(中華民国国民政府)が樹立される。これ
に対して、米国は「日米通商航海条約」の廃棄を日本に通告する。
 4番目は、船生(ふにゅう)退助(1919年、栃木県生まれ、曹長)である。命を捨てて兵隊に行く覚悟は
できていたと語る。「大東亜共栄圏」構想が発表されたころである。初年兵として入隊して、最初の1週間
は「お客さん」だった由。しかし、その後の古参兵による初年兵いびりは凄まじかったという。しかし、彼
は要領がよかったのか、古参兵に可愛がられ、「兵隊に来てよかった」と思ったという。彼は少数派だった
のだろう。古参兵のいびりとして「一品検査」があったと語る。戦後の小中学校における「持ち物検査」な
どは、この名残りではないかと思うが、どうだろうか。抜き打ち検査は確かに効果的ではあろうが、やられ
る方はたまったものではない。
 5番目は、絵鳩毅(1913年、鳥取生れ、軍曹)である。彼は東京帝国大学を卒業して上田高等女学校の教
師を務めていたので、幹候試験を受けていたら、きっと通っていただろう。しかし、彼は、幹部候補生志願
(将校志願)をしなかったために、一兵卒に留まっている。彼はまず、徴兵検査のことから語り始める。当
時、国民の義務としての「徴兵」は絶対であったから、それを忌避することなどは考えなかったとの由。も
し、徴兵忌避をしようものなら、自分はもちろんのこと、親兄弟が非国民として世間からのけ者にされるこ
とを熟知していたからであろう。彼は、なまじインテリだったので、入隊すると陸軍内務班はまさに「地獄」
だったと語る。野間宏の『真空地帯』で描かれている世界が展開したのであろう。「態度がでかい」と因縁
をつけられ、上履(じょうか=上履き。ゴム製や革製)でビンタを何度も喰らった由。古参兵が憂さ晴らし
のために初年兵をいたぶることは日常茶飯事である。銃剣の「捧げ筒」は5分と続けられないが、下に降ろ
すとビンタが待っている。さらに、「相互ビンタ」といって、初年兵同士でビンタを交わすことを強要され
たという。限りない制裁はまだまだ続く。いわゆる「ミンミンゼミ」、「鶯の谷渡り」、「お女郎さん」な
どである。中でも、「各班回し」は屈辱的だったという。編上靴を首に下げ、「汚れていないかどうか」各
班を回るのである。「けっこう綺麗じゃないか、舐めてみろ」などと言われようものなら、当時29歳の彼に
とって、どれほど惨めだったか。これでは戦争どころではない。悪名高き「陸軍内務班」の実態を余すとこ
ろなく伝えている。もちろん、小生にとっては、『真空地帯』(監督:山本薩夫、新星映画、1952年)や
『陸軍残虐物語』(監督:佐藤純彌、東映東京、1963年)などの映画で、お馴染みではあるが……。
 6番目は、鹿田正夫(1918年、島根県生まれ、少尉)である。彼は、30歳くらいの補充兵の話から口を開
く。その人は軽度の発達障害者らしく、万事動作がのろい。それでだいぶいじめられていたが、気の毒に思
ったと話す。自分にも火の粉が降りかかったとき、よほどその上官を叩きのめそうと思ったが、堪えた由。
とにかく、戦陣訓やら軍人勅語やらで雁字搦めに縛られた上、上官に暴行を振るおうものなら、重営倉行き
は必定で、その後の処遇は火を見るよりも明らかである。下手をすれば軍法会議にかけられ、陸軍刑務所に
入れられ、前科者になるのである。彼は誓った。必ずや、幹部候補生になって、下士官どもを抑えつけてや
ると。
 ここで、またナレーションが入る。1940年9月27日、「日独伊三国同盟」成立。1941年4月13日、「日ソ中
立条約」締結。1941年の陸軍の兵力は以下の通りである。

 日本本土              約56万5千人
 (千島・樺太、朝鮮を含む)
 満洲=関東軍            約70万人
 中国=支那派遣軍          約68万人
 南方                約15万5千人

 7番目は、鈴木良雄(1920年、埼玉県生まれ、曹長)である。北支那方面軍第十二独立混成第十旅団から
第五九師団に配属される。「実的刺突(じってきしとつ)」の実態を語り始める。「教育」と称して、生身
の人間を銃剣で刺し殺す訓練である。これに関しては、『私は貝になりたい』(監督:橋本忍、東宝、1959
年)を参照されたし。分隊長の命令で始めるが、なかなかできない。ところが、いざやり遂げてみると、人
間が変わる。仕舞いには、情け容赦のない精神構造が形成される。こうなると人を殺すことが面白くなって
くるのである。
 8番目は、金子安次(東京都東大和市で収録。生年等、不詳。伍長)である。彼も、上記の鈴木良雄と同
じ経路で軍隊生活を送っている。やはり、「人を殺すことが何とも思わなくなる」と語る。いわゆる「興味
の殺人」に変容し、やりたい放題になる。「何人殺した」が手柄になるのが軍隊である。
 今日は、もう時刻も遅いので、ここまでにしておこう。すなわち、このつづきは明日以降に回そう。

                                                  
***このページは一般に公開されています。リンクアドレスには下記をご利用ください。***
http://souls.cc.kochi-u.ac.jp/?&rf=5755
 Copyright (C) 2005, Kochi University Faculty of Humanities and Economics All Rights Reserved.