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日日是労働セレクト151
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第151弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト151」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『春との旅』(監督:小林政広、「春との旅」フィルムパートナーズ〔ラテルナ=東映ビデ
オ=アスミック・エース エンタテインメント=毎日新聞社=札幌駅総合開発=北海道新聞社〕、2010年)
を観た。祖父と孫娘とのロード・ムーヴィーで、今風の味付けがしてある作品。正直言って、この手の作品
が苦手な小生としては、「まるで驚きのない映画」としか批評のしようがない。幕引きも平凡で、何を訴え
たいのかよく分からない。「家族の絆」を考えるための映画と言えば分りやすいが、そんなものを映画化し
て何の意味があるのか。昭和にどっぷりと浸ったノスタルジー人間の自己満足としか思えない作品であった。
もっとも、役者は一流どころを揃えているのでそれなりに楽しめたが、いずれも本来の毒のある演技ではな
く、平凡な人間を平凡に演じているだけであった。残念である。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『愛の予感』がロカルノ映画祭で金豹賞(グランプリ)に輝くなど、国際的な評価も高い小林政広
 監督による人間ドラマ。祖父と孫の姿を通して、生きることを見つめる。

   〔あらすじ〕

  北海道、4月。まだ風が土を愛でることのない厳しい寒さの中、元漁師の中井忠男(仲代達矢)は、   
 18歳の孫娘の春(徳永えり)とともに気の乗らない東北への旅に出ることになる。二人が訪れたのは、
 忠男の兄の重男(大滝秀治)の家だった。決して折り合いのよくなかった兄に、忠男は突然、自分を
 養ってくれと切り出す。足を痛めている忠男は、ひとり娘が死んでからは春に面倒を見てもらいなが
 ら暮らしてきた。だが、春が仕事を失い、これを機に東京に出ることを考えていると知り、忠男は最
 後の住まいを求めて重男に会いに来たのだった。しかし、忠男は重男に同居を断られてしまう。と同
 時に、重男と妻の恵子(菅井きん)が抱える事情を忠男は知ることになる。そして忠男は、次に弟の
 行男(登場せず)を訪ねるが、服役中ということが分かる。さらに、姉の市山茂子(淡島千景)のと
 ころを訪ねるが、ここも終の棲家ではないことを悟る。最後に、弟の道男(柄本明)のもとを訪ねよ
 うとする。忠男の面倒を兄弟に見てもらうことを提案したのは春であった。だが、過去から逃れるこ
 とができず、避けてきた感情や事実と向き合わざるを得なくなった祖父の姿を見て、春は自分の言葉
 を後悔していた。そんな祖父の葛藤やもがきを一緒に体験しながら春は、やがてある感情が芽生え出
 してくるのだった……。

 他に、小林薫(木下=元漁師)、田中裕子(清水愛子=行男の内縁の妻)、美保純(明子=道男の妻)、
香川照之(津田真一=春の父、離別している)、戸田菜穂(伸子=真一の現在の妻)、山本哲也(喫茶店・
純のマスター)、長尾奈奈(ホテルのフロント)などが出演している。
 仲代は元漁師には見えないし、いかにも作りものめいたその他の登場人物たちのキャリアは、本物らしく
工夫すればするほどリアリティを失っていた。監督の意図は悪くはないが、この程度の話では映画として面
白くないことを肝に銘じるべきだと思う。


 某月某日

 DVDで邦画の『セーラー服 百合族』(監督:那須博之、にっかつ、1983年)を観た。久し振りの日活ロマ
ンポルノである。DVDでは、何かの配慮があったのか、『制服 百合族』という題名に変えられている。おそ
らく、「セーラー服」がまずいと判断されたのだろう。しかしながら、この題名は、おそらく『セーラー服
と機関銃』(監督:相米慎二、角川春樹事務所=キティ・フィルム、1981年)を意識したものなので、それ
ほど気にする必要はないのではないか。「女教師」もご法度のようだが、いい加減「言葉狩り」は止めてほ
しいものである。「公序良俗」に反するとは思えない言葉を制限するのは、「表現の自由」に対する挑戦で
ある。規制、規制では、芸術は細る一方であろう。ちなみに、《日活ロマンポルノは「映画」です。今こそ
見るべき究極の15選【成人映画】》というサイトを見つけたので、興味のある人はそちらを参照してほしい。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。なお、続編として、同年に『セーラー服 百合族2』、1984年に『OL百合
族19歳』が製作されている〔筆者、未見〕。以下、物語の性質上、人によっては嫌悪感を催す表現があるか
もしれないので、注意してほしい。

   〔解説〕

  レズビアン・セックスに耽ける女子高校生の姿を描く。脚本は斎藤博、監督は『ワイセツ家族 母
 と娘』の那須博之、撮影は『悪魔の人質』の前田米造がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  高校のクラスメイト、美和子(山本奈津子)となおみ(小田かおる)は仲良しレズビアンだ。美和
 子はバージンだが、両刀使いのなおみには一平(水上功治)というボーイフレンドがいる。ある日、
 生理のないなおみは、妊娠したと思い、一平に詰め寄るが取り合ってくれない。そんな二人を美和子
 は嫉妬の眼で見つめていた。暫くして、生理のあったなおみは一平と仲直り、二人から帰っていいよ
 と言われ、寂しそうに帰る美和子は、東大一直線のガリ勉の公夫(矢田秀明)と出会った。美和子に
 好意を持つ公夫は、彼女をピーピングルームに連れて行くと、カメラで彼女を写し始め、最後には局
 部を見せてほしいと迫るが、肝心なところで彼女は拒絶する。ある晩、美和子は団地に住む江口良江
 (倉吉朝子)に呼びとめられる。良江に愛撫された美和子は、なおみとでさえ感じたことのない快感
 に打ち震えた。翌日、美和子はなおみの嫉妬心を煽ろうと、良江とのクライマックスを話すが、彼女
 は冷笑するたけだ。そこで、美和子は一平の部屋に行くと、裸になってベッドに入り、彼が帰宅する
 と、「抱いて」と叫んだ。一平は美和子にむしゃぶりつき、そこへなおみがやってきて大騒ぎとなる。
 数日後、なおみは美和子に一平との関係を追及していると、いつの間にかヘンな気分になってしまい、
 お互いにキスの雨を降らせ、指技で股間を応戦し合い、同時に果ててしまう。ある日、スナックが閉
 店し、一平となおみが帰ろうとすると、ガラス窓を破って石が投げられ、犯人が捕まった。公夫だっ
 た。彼は美和子に冷たくされた腹いせに、美和子の股間のアップが写された写真を学校中にバラまく
 という。公夫の美和子への切ない恋心に同情した一平となおみは、二人をホテルで合わそうと画策し、
 美和子は何とかバージンを喪失した。しかし、初体験にもの足りなさを感じる美和子は部屋になおみ
 を呼ぶ。どうしても、男とのセックスに満ち足りない二人は、全裸になって愛撫し合い、美和子とな
 おみの歓喜は果てしなく続くのだった……。

 他に、江崎和代(秀子=美和子の姉)、益富信孝(沢木太郎=秀子の夫)、青木勇次(ツッパリ)、木村
栄悦(同)などが出演している。那須監督は、この後、『ビー・バップ・ハイスクール』(監督:那須博之、
セントラルアーツ=東映、1985年)以下、全6篇に及ぶ同人気シリーズをすべて撮っている。蛇足ながら、
「百合族」は、ホモセクシャルの「薔薇族」を意識した造語である。当時、けっこう話題になった作品であ
るが、小生は初見である。当節の学生の《LGBT》に対する関心は高いが、この映画の主人公たちは、それほ
ど深刻に性の問題を捉えているとは思えない。やはり、お気楽な80年代の色調に彩られている。ちなみに、
『知恵蔵』に恰好の解説があるので、以下に引用しよう。執筆者に多謝。

   〔LGBT〕

  「Lesbian」(レズビアン、女性同性愛者)、「Gay」(ゲイ、男性同性愛者)、「Bisexual」(バ
 イセクシュアル、両性愛者)、「Transgender」(トランスジェンダー、出生時に診断された性と自認
 する性の不一致)の頭文字をとり、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の一部の人々を指
 した総称。全ての性的少数者を指す言葉ではないため、「Asexual」(アセクシュアル、同性にも異性
 にも性的欲望を持たない人)の「A」、「Intersex」(インターセックス、身体的に男女の区別がつき
 にくい人)の「I」、「Questioning」(クエスチョニング、自分の性別や性的指向に確信が持てない
 人)の「Q」など、LGBT以外のカテゴリーの性的少数者を表す単語の頭文字をLGBTにつけることもある。
 もともと欧米などで使われていた言葉で、米国で差別撤廃や法的権利獲得などを求めて別々に活動し
 ていたレズビアンやゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々が、1990年代のエイズ問題
 を機に連帯し、自分たちをLGBTと呼ぶようになった。
  日本では、90年代から「プライド」と呼ばれるLGBTの人々などによるパレードや映画祭など、LGBT
 への理解を深める活動が各地で行われるようになり、LGBTという言葉が広まっていった。広告会社で
 ある電通が2015年、20?59歳の男女約7万人を対象に行った調査によると、LGBTに該当する人の割合
 は7.6%だった。性的少数者の権利を守り、当事者が生活しやすい環境を整えるための行政や企業など
 の取り組みも進められている。同性カップルに結婚に相当する関係などを認める同性パートナーシッ
 プ制度は、15年に東京都渋谷区で条例が施行されて以降、東京都世田谷区や那覇市、札幌市などでも
 導入された。東京都国立市では18年4月、個人の性的指向や性自認を第三者が勝手に公表する「アウテ
 ィング」を禁じる全国初の条例が施行された。教育現場では、文部科学省が15年、都道府県の教育委
 員会などにLGBT生徒へのきめ細かな対応を求める通知を出し、16年には教職員向けにLGBT生徒への対
 応をまとめた手引きを発行した。17年に改訂されたいじめ防止基本方針には、LGBT生徒への配慮が盛
 り込まれている。また、外資系企業を中心に、一部の企業では、性的指向や性自認による差別を禁じ
 る社内規定や、社内の支援グループの整備などが進められている(南文枝 ライター/2018年)。

 これによると、美和子となおみは「バイセクシャル」ということになりそうだが、どうもピンと来ない。 
彼女たちは、単に好奇心の旺盛な若い女性としか見えないからである。ある種の概念が何かを規定すると、
その枠組でしか対象を捉えない傾向が出てくる。したがって、この《LGBT》も、差別をなくそうとすればす
るほど、皮肉にも新たな差別を産み出すような気がする。あたかも、病名が増えるにしたがって、病気が増
えるように。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので報告しよう。1本目は、『土竜の唄 香港協奏曲』(監督:三池崇史、フジテレ
ビジョン=小学館=ジェイ・ストーム=東宝=OLM、2016年)である。シリーズ2本目の作品である。瑛太や
古田新太などが新しく加わって、それなりに面白い作品に仕上がっている。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  交番勤務のダメ警官から潜入捜査官に転身した男のハチャメチャな活躍を描く、生田斗真主演のア
 クションの続編。原作コミックの中でも絶大な人気を誇る「チャイニーズマフィア編」を映画化。前
 作のキャストに加え、エリート警官・兜役に瑛太、チャイニーズマフィアのヒットガール役を菜々緒
 が演じるなど、個性派キャラが勢ぞろい。

   〔あらすじ〕

  ある日突然、“モグラ”と呼ばれる潜入捜査官になることを命じられた交番勤務のダメ巡査・菊川
 玲二(生田斗真)。日本一凶悪な犯罪組織・数寄矢会に潜り込み、“クレイジーパピヨン”こと日浦
 匡也(堤真一)と兄弟の契りを交わした彼は、何度も死にかけながらも、警察官の身分を明かさず無
 事に生き抜き、合間にちゃっかり童貞も卒業。最終目的だった数寄矢会会長・轟周宝(岩城滉一)の
 検挙は達成できなかったものの、傘下の阿湖義組組長・阿湖正義の引退、若頭補佐・月原旬を逮捕。
 しかし、思いがけず日浦組若頭に就任してしまった玲二は、極道の世界により深く潜っていく羽目に。
 同じ頃、正義感溢れるエリート警官・兜真矢(瑛太)が警視庁組織犯罪対策部課長に就任。警察官と
 ヤクザの癒着撲滅をモットーに掲げる兜は、玲二の逮捕に向けて動き出す。そんなことはつゆ知らず、
 轟周宝から大仕事を言い渡される玲二。それは、極悪非道のチャイニーズマフィア・仙骨竜の撲滅、
 そして、轟周宝とその娘にして奇跡の処女・轟迦蓮(本田翼)のボディーガードになることだった。
 最終ターゲットを守らなければならないまさかの任務を与えられた玲二に、警察の中や海外から、か
 つてない危機が次々と襲いかかる。しかし、さらに巨大で凶悪な陰謀が水面下で動き出していること
 を、玲二はまだ知らなかった……。

 他に、古田新太(桜罵百治=数寄矢会に破門されたハグレやくざ)、菜々緒(胡蜂=仙骨竜のヒットマン)、
上地雄輔(黒河剣太)、仲里依紗(若木純奈)、吹越満(酒見路夫=谷袋署署長)、遠藤憲一(赤桐一美=
潜入捜査官法制係)、皆川猿時(福澄独歩=厚生労働省麻薬取締官)、菅田俊(鰐淵拓馬)、久松郁美(チ
ーリン)、渡辺哲(備禅幸一郎)、有薗芳記(闇の外科医)などが出演している。
 ところで、堤真一が演じるやくざの日浦匡也のキャラをどこかで見たことがあると思っていたが、思い出
した。『地獄でなぜ悪い』(監督:園子温、「地獄でなぜ悪い」製作委員会〔キングレコード=ケー・エイ
チ・キャピタル=BizAsset=テイ・ジョイ=ガンジス〕、2012年)〔「日日是労働セレクト102」、参照〕
の池上純役である。もしかすると、三池監督が同映画を観て、今回の日浦匡也役に堤真一を起用することを
思い付いたのではないか。推測にすぎないが、あの半端ではない池上純のテンションの高さは、今回の日浦
匡也のそれに匹敵するからである。また、なぜそんな推測をしたかと言うと、『乾いた花』(監督:篠田正
浩、松竹大船、1964年)での演技が関係者の目にとまって、『昭和残侠伝』シリーズ(東映、1965-1972年、
全9作)における、高倉健の相棒に起用された池部良の例を知っているからである。堤の演技はわざとらし
さを前面に押し出したものであるが、悪くない。彼はシリアスな演技もできるが、コミカルな演技もなかな
かのもので、やくざでなければ、この日浦匡也には一度じっくり話を聴いてみたい気がする。
 2本目は、『蜜のあわれ』(監督:石井岳龍、『蜜のあわれ』製作委員会〔あいうえお館=ファントム・
フィルム=オデッサ・エンタテイメント=北國新聞社=スチューディオスリー=ミュージック・プランター
ズ=ナコオフィス=テレビ金沢=ディー・エル・イー=エイチアイディー・インターアクティカ=ザフール〕、
2016年)である。石井監督は、以前は石井聰亙と名乗っていた人である。彼の作品は、以下のように、10本
観ている。岳龍になってからは2本目で、久しぶりの鑑賞である。

   〔石井聰亙名義の作品〕

  『突撃! 博多愚連隊』、監督:石井聰亙、狂映舎、1978年。
  『狂い咲きサンダーロード』、監督:石井聰亙、狂映舎=ダイナマイトプロ、1980年。
  『爆裂都市 Burst City』、監督:石井聰亙、ダイナマイトプロ、1982年。
  『逆噴射家族』、監督:石井聰亙、ディレクターズ・カンパニー=国際放映=ATG、1984年。
  『ユメノ銀河』、監督:石井聰亙、ケイエスエス、1997年。
  『五条霊戦記//GOJOE』、監督:石井聰亙、サンセットシネマワークス、2000年。
  『ELECTRIC DRAGON 80000V』、監督:石井聰亙、サンセットシネマワークス=タキコーポレーション、
   2000年。
  『DEAD END RUN』、監督:石井聰亙、ナル=パイオニアLDC、2003年。

   〔石井岳龍名義の作品〕

  『生きてるものはいないのか』、監督:石井岳龍(聰亙)、ドラゴンマウンテン、2012年。
   「日日是労働セレクト98」、参照。 
  『蜜のあわれ』、監督:石井岳龍、『蜜のあわれ』製作委員会〔あいうえお館=ファントム・フィルム=
   オデッサ・エンタテイメント=北國新聞社=スチューディオスリー=ミュージック・プランターズ=
   ナコオフィス=テレビ金沢=ディー・エル・イー=エイチアイディー・インターアクティカ=
   ザフー ル〕、2016年。

 何とも評価のしにくい作品である。似ている作品を挙げれば、『夢二』(監督:鈴木清順、荒戸源次郎事
務所、1991年)あたりか。幻想的な作品だが、原作を読んでいないので、どのくらい活かされているのかは
分からない。青空文庫にあるので、機会があれば読んでみたい。
 さて、物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  大正から昭和にかけて活躍した詩人で小説家の室生犀星が、自身をモデルに老作家と金魚の化身と
 のエロティックな日常を描いた小説を映画化したファンタジー。二階堂ふみが老作家の仕事場に現れ
 ては自由奔放にふるまい、惑わす金魚の化身・赤子を演じる。監督は『ソレダケ / that’s it』の映
 像派、石井岳龍。

   〔あらすじ〕

  老境の作家(大杉漣)と暮らす愛くるしい魅力が詰まった少女・赤井赤子(二階堂ふみ)は、作家
 を「おじさま」と呼んでいる。きわどいやり取りをし、夜は身を密着させ眠る二人。ほかの人間には
 わからないものの、赤子は普通の女とどこか違っていた。彼女の正体は、人間の姿に変貌する、真っ
 赤な金魚だった。そんな赤子の前に、ある日、老作家への愛を募らせた幽霊・田村ゆり子(真木よう
 子)が現れる。作家の友人・芥川龍之介(高良健吾)や金魚売りの男・辰夫(永瀬正敏)が三人の行
 く先を見守る中、事件が起きる。

 他に、韓英恵(丸田丸子=老作家の愛人)、上田耕一(小沢=医師)、渋川清彦(バーテン)、岩井堂聖  
子(酌婦)、清末裕之(黄色い靴下の男)、加藤貴宏(顔の見えない男)などが出演している。
 二階堂ふみは売れっ子になったが、小生は、『ヒミズ』(監督:園子温、「ヒミズ」フィルムパートナー
ズ〔ギャガ=講談社〕、2011年)の茶沢景子役で注目した女優である。宮崎あおいと重なるが、彼女らにと
ってはどちらも心外かもしれない。大胆不敵な役柄が多いが、年齢を重ねてもっと落ち着いたときの彼女を
見てみたい気がする。どんな女になっているのだろうか。また、亡くなる二年前の大杉漣が出ている。まっ
たく彼の死など予想していなかったので、とても残念である。合掌。


 某月某日

 DVDで邦画の『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』(監督:三池崇史、フジテレビジョン=小学館=ジェイ・ス  
トーム=東宝=OLM、2014年)を観た。高橋のぼるの原作、宮藤官九郎の脚本、三池崇史の監督ということ
で、面白くないはずがない。全篇、三池らしい演出で、何度も笑った。物語の流れとは直接の関係はないが、
屋台のおでん屋で赤桐(客を装っている)が福澄(おでん屋の親爺を装っている)に大根を注文するシーン
がある。その直後に、赤桐の前に4分の1ほどにカットされた生の大根が立ててあった。「ゲイコマ」だな
ぁと思った。なお、おでん屋の屋号は「まとり」(=麻薬取締官)だった。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『ビッグコミック・スピリッツ』に連載中の高橋のぼるによる人気コミックを、監督・三池崇史&
 脚本・宮藤官九郎のコンビが、生田斗真主演で映画化したバイオレンスドラマ。暴力団の大物を逮捕
 するため、潜入捜査を命じられた交番勤務の警察官が、さまざまなトラブルに巻き込まれながらも目
 的達成のために奮闘する姿をコミカルに描く。

   〔あらすじ〕

  谷袋警察署交番勤務の巡査・菊川玲二(生田斗真)は、人一倍正義感が強いものの、警察学校を史
 上最低の点数で卒業、巡査になってからも始末書ばかり書かされる日々を送っていた。そんなある日、
 玲二は署長の酒見(吹越満)に呼び出され、突然クビを言い渡される。驚く玲二だったが、実は表向
 きは懲戒免職という形をとりながら犯罪組織に潜入してターゲットを挙げる潜入捜査官、通称“モグ
 ラ”となり、合成麻薬MDMAの密売ルートを暴けという命令だった。そのターゲットは関東一の広域暴
 力団・数寄矢会会長、轟周宝(岩城滉一)。数寄矢会は、関東一円を地盤とする武闘派暴力団組織で、
 組員は8,000人と言われていた。覚悟を決めて闇カジノ“虎ジャガー”に潜り込んだ玲二は、ひょん
 なことから数寄矢会傘下・阿湖義組の若頭“クレイジーパピヨン”こと日浦匡也(堤真一)に気に入
 られ、とんとん拍子に組長の阿湖正義(大杉漣)と親子盃の義を取り交わすことになる。しかし、渦
 巻く数寄矢会内部での権力闘争、そして関東進出を狙う日本最大の暴力団組織・蜂乃巣会との抗争も
 勃発し、玲二は次から次へとピンチに陥る。果たして、玲二は無事に轟周宝を挙げ、モグラとしての
 任務を果たすことができるのか……。

 他に、仲里依紗(若木純奈=玲二の恋人)、山田孝之(月原旬=轟の隠し子)、上地雄輔(黒河剣太)、  
岡村隆史(猫沢一誠=蜂之巣会・血引き一家 若頭補佐)、吹越満(酒見路夫=谷袋署署長)、遠藤憲一(赤  
桐一美=警視庁谷袋署の警官、潜入捜査官の養成係)、皆川猿時(福澄独歩=厚生労働省麻薬取締部の課長)、
的場浩司(蛇崎悟)、佐藤寛子(女ディーラー)、 南明奈(虎ガール)、渡辺哲(備禅幸一郎)、伊吹吾郎
(築間重樹)、斉木しげる(舘晶)、矢島健一(愛光修、蜂之巣会五代目会長)、寺島進(佐久野昭夫=日
浦をヤクザの世界に引き入れた男)、織本順吉(佐久野弥兵=昭夫の父親)、佐々木すみ江(佐久野シズ江=
同じく母親)、有薗芳記(茂呂里寛=闇の外科医)、小宮孝泰(吉岡=市会議員)、彩也子(明美=婦人警
官)、尾崎ナナ(イメクラ「モッコリーナ」の風俗嬢)などが出演している。


 某月某日

 DVDで邦画の『ディストラクション・ベイビーズ』(監督:真利子哲也、「ディストラクション・ベイビー  
ズ」製作委員会〔DLE=松竹メディア事業部=東京テアトル=ドリームキッド=大唐國際娯樂=エイベックス・
ミュージック・パブリッシング〕、2016年)を観た。若者の暴走がテーマだが、いわゆる「理由なき反抗」
の類か。それにしても殴打するシーンが多く、どうしてここまで無関係な人を殴らなければならないのか、
現実の暴力に対して嫌悪感の強い小生としては、観ていてけっこう辛かった。しょせん、フィクションだと
思えば、別に大したことではないのだが……。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  ももいろクローバーが出演した『NINIFUNI』などで国内外で高い評価を受ける真利子哲也監督が、
 狂気に駆られる若者たちの姿を描くバイオレンス。柳楽優弥や菅田将暉といった若手実力派をメイン
 に据え、愛媛県松山市を中心にロケを敢行。現代の若者たちの暴力と対比し、松山の伝統的な喧嘩祭
 りとして知られる秋祭りも登場する。

   〔あらすじ〕

  愛媛県松山市西部の小さな港町・三津浜にある海沿いの造船所で、芦原泰良(柳楽優弥)と弟・将
 太(村上虹郎)の兄弟は二人きりで暮らしている。泰良は喧嘩に明け暮れていたが、ある日、三津浜
 から姿を消す。泰良は松山の路地裏で強そうな相手を見つけては喧嘩を仕掛け、打ちのめされても食
 い下がっていた。北原裕也(菅田将暉)はそんな泰良に興味を持ち、「おもしろいことしようや」と
 声をかける。二人は無差別に通行人に暴行を加え、車を強奪し、乗り合わせていた少女・那奈(小松
 菜奈)と松山市外へ向かう。その頃、自分を置いて消えた兄を探しに、将太も市内へとやってきてい
 た……。

 他に、池松壮亮(三浦慎吾)、北村匠海(健児=将太の仲間)、三浦誠己(河野淳平)、でんでん(近藤
和雄)などが出演している。性と暴力はお茶の間が拒否するので、映画がそれをカヴァーしようとする。し
たがって、最近の映画にはこの手の暴力がやたらに顔を出す。たしかに、暴力は安直な興奮促進装置だが、
あまり頻繁だと効力を失い、食傷気味になる。まさにその典型のような作品であった。西日本を舞台にして
おり、かつ菅田将暉が出演しているので、『共喰い』(監督:青山真治、『共喰い』製作委員会〔スタイル
ジャム=ミッドシップ=ギークピクチュアズ=アミューズソフトエンタテインメント=TOKYO MX=ビターズ・
エンド〕、2013年)〔「日日是労働セレクト102」、参照〕を連想した。また、『軽蔑』(監督:廣木隆
一、「軽蔑」製作委員会〔角川映画=スチューディオ スリー〕、2011年)〔「日日是労働セレクト95」、
参照〕もどこか似ている作品だと思った。


 某月某日

 DVDで邦画の『SCOOP!』(監督:大根仁、映画「SCOOP!」製作委員会〔テレビ朝日=アミューズ=東宝=  
オフィスクレッシェンド=ガンパウダー〕、2016年)を観た。大根(おおね)監督は何本か映画を撮ってい
る人らしいが、小生は初めての鑑賞である。勘所を心得ている監督で、主演の福山雅治をノリノリにさせて
いるだけでも勲章ものである。脇を固める、二階堂ふみ、吉田羊、リリー・フランキー、滝藤賢一らもいい
味を出している。カメラマンが主人公の映画としては、『地雷を踏んだらサヨウナラ』(監督:五十嵐匠、
チームオクヤマ、1999年)や『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』(監督:東陽一、シグロ=バップ=ビタ
ーズ・エンド、2010年)などを連想したが、どちらも主人公は戦場カメラマンである。当該映画は、その戦
場カメラマンのロバート・キャパ(Robert Capa、1913年-1954年)〔ハンガリー生まれの写真家〕* に憧
れてカメラマンになった中年男が主人公である。似ていると思った映画は、『ありふれた愛に関する調査』
(監督:榎戸耕史、メリエス=サントリー=日本テレビ、1992年)で、探偵役の奥田瑛二のキャラが、当該
作品の都城静役の福山雅治と重なったからである。うらぶれてはいるが、どこかに崩れていないものをもっ
ている中年男という設定が、ダブって見えるのだろうか。

 * 後日、ロバート・キャパの写真集が岩波文庫として出版されていることが分かった。早速購入した。
   『ロバート・キャパ写真集』、ICP ロバート・キャパ・アーカイブ 編、岩波文庫、2017年。

 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕願いたい。

   〔解説〕

  福山雅治演じる借金まみれの中年カメラマンが、コンビを組むことになった新人記者とともにスク
 ープを連発していくさまを描く痛快作。原田眞人監督作『盗写1/250秒』を原作に、『モテキ』の大
 根仁監督がエンタテインメント色たっぷりに再映画化。新人記者の野火を二階堂ふみが演じ、福山と
 の凸凹コンビぶりで笑いを誘う。

   〔あらすじ〕

  都城静(福山雅治)はかつて数々の伝説的スクープをモノにしてきた凄腕カメラマンだったが、い
 ま現役の雑誌編集者たちはその輝かしい実績をほとんど知らない。静は過去のある出来事をきっかけ
 に報道写真への情熱を失い、芸能スキャンダル専門のパパラッチに転身した。それから何年もの間、
 自堕落な日々を過ごしてきた静に再び転機が訪れる。ひょんなことから写真週刊誌『SCOOP!』に配
 属されたばかりのド新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とコンビを組むことになってしまったのだ。
 二人は案の定まったく噛み合わず、ケンカばかりしていたが、この凸凹コンビがまさかの大活躍で独
 占スクープを連発する。そして、日本中が注目する重大事件が発生する。

 他に、吉田羊(横川定子=「SCOOP」副編集長、芸能&事件班)、滝藤賢一(馬場=同、グラビア班)、リ
リー・フランキー(チャラ源=静のポン友)、斎藤工(小田部新造=若手代議士、民自党青年局長) 、塚本
晋也(多賀=文芸誌編集長)、中村育二(花井=「SCOOP」編集長)、石川恋(恋ちゃん=モデル)、澤口奨
弥(片山元気=トップアイドル)、山地まり(山地まり=グラビアアイドル)、鈴之助(須山=プロ野球選
手)、護あさな(上原桃=女子アナ)、沖田杏梨(ANRI=Barレディ)、阿部亮平(べーちゃん=用心棒)、
寿るい(小島ルイ=アイドル)、久保田悠来(石渡龍=個性派俳優)、宮嶋茂樹(不肖・宮嶋)、星野あか
り(あかり=コールガール)、遊屋慎太郎(松永太一=連続殺人犯)、平原テツ(平原)、七瀬公(シュウ)、
森田想(美花=チャラ源の娘)、宇野祥平(大久保)、今井隆文(澤部)、松居大悟(田中)、森下創(森
下)、政修二郎(政)、矢部まなぶ(矢部)、中村無可有(中村)、益山寛司(益山)、坂本慶介(石田)、
泉里香(長谷川真澄)などが出演している。
 馬場の台詞に興味深いものがあったので、以下に記しておく。

 「今うち(=「SCOOP」)は、総合娯楽誌なんだよ。読者が見たがってんのは、グラビア、袋とじ
   ヌード、ラーメン特集、それから、芸能スキャンダル。雑誌が反体制とかジャーナリズム背負
   ってた時代は、とっくに終わってんだよ」。

 そのくせ、妙なところでおセンチになるのは、昭和生まれのせいだろうか。平成生まれの人が実権を握る
ようになれば、日本も随分変わるだろうな、とは思う。いずれにせよ、下ネタ・オンパレードのわりには、
どこか爽やかな作品であった。


 某月某日

 DVDで邦画の『罪の余白』(監督:大塚祐吉、「罪の余白」フィルムパートナーズ〔イープロジェクト=東
京メトロポリタンテレビジョン=日本BS放送=テレビ大阪サービス=文化放送=ローソンHMVエンタテイメン
ト=オスカープロモーション=キネマ旬報社=レスパスビジョン=北海道テレビ放送=アルテメイト=エボ
ラブルアジア=プロスパーデザイン=コード〕、2015年)を観た。予め犯人が読者に知られているミステリ
ー、いわゆる「倒叙物」の心理劇である。結末は少し納得がいかなかった。おそらく、マスコミに知られて
は「女優への道」が断たれてしまうと思って犯行に及んだのだろうが、ここまで来たらあくまでしらを切れ
ば済むことで、自分を追い詰めにかかる相手に危害を加えては負けではないかと思った。しょせん、作り物
の悲しさで、小生にはあまりリアリティを感じることができなかった。最近鑑賞した『少女』(監督:三島
有紀子、「少女」製作委員会、2016年)よりも、同じく微妙な年頃を扱っている作品として、出来はやや劣
るか。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  娘の死の謎を追う行動心理学者と、彼の前に現れた人の心理を操る女子高生が心理戦を繰り広げる、
 内野聖陽主演のサスペンス。第13回全日本国民的美少女コンテストでグランプリに輝いた吉本実憂が
 主人公を心理的に追い詰めていく悪魔のような少女を熱演する。原作は野生時代フロンティア文学賞
 受賞の芦沢央の同名小説。

   〔あらすじ〕

  名門女子高校に通う安藤加奈(吉田美佳子)が、教室のベランダから転落して死亡した。目撃した
 クラスメートたちの証言によると彼女が自ら手すりに登り、突然飛び降りたという。妻に先立たれ父
 娘二人で仲睦まじく生きてきたつもりの父・安藤聡(内野聖陽)にとって、娘の死は受け止めること
 のできない現実であった。なぜ娘は死んだのか。大学で行動心理学を教える安藤は、加奈の異変に気
 付けなかった自分を責め続けていた。そんな折、娘の死に涙する「笹川七緒」と名乗る美しいクラス
 メートが現れ、加奈が日記をつけていたことを知る。その日記には、木場咲(吉本実憂)という少女
 に追い込まれていく加奈の悲痛な叫びが刻まれていた。安藤は、咲の手掛かりをつかもうと笹川に会
 いに学校へ行くが、実は「笹川七緒」と名乗っていたのは咲本人であり、笹川(葵わかな)とは別人
 であった。その少女、木場咲は、学校内でもとびぬけて目立つ存在で、教師からの信頼も厚くスクー
 ルカーストの頂点に君臨していた。咲の周囲には、彼女に憧れる友人グループがあり、その中の一人
 が加奈であった。友人を手下のように扱い、教師や警察の心までも狡猾に操る咲。やがて彼女は自ら
 の罪を隠蔽するために、安藤を罠に陥れようと計画する。そんな中、ことの真相を知った安藤は咲に
 復讐を誓うが、咲に罪を認めさせようとするほど、逆に彼女の策略にはまっていくのだった。娘だけ
 でなく、仕事や社会的信頼を失い、安藤は徐々に追いつめられていくが……。

 他に、谷村美月(小沢早苗=安藤の同僚)、宇野愛海(新海真帆=咲や加奈の仲間)、宮川浩明(安藤を  
取り調べる刑事)、黒澤はるか(石野=芸能プロダクションのスカウト)、加藤雅也(高山滿=大手芸能マ
ネージャー)、三浦朋香(岩崎希恵=クラス担任の教師)、イチキ游子(児童相談所の職員)、利重剛(宮
崎知良=大学の学部長)、堀部圭亮(西崎真=学年主任)、山木コハル(山本梓=咲たちの同級生)などが
出演している。


 某月某日

 DVDで邦画の『新宿スワンII』(監督:園子温、「新宿スワンII」製作委員会〔講談社=トライストーン・
エンタテイメント=ジャパン・ミュージックエンターテインメント=ハピネット〕、2017年)を観た。もち  
ろん、『新宿スワン』(監督:園子温、「新宿スワン」製作委員会〔講談社=トライストーン・エンタテイ
メント=ジャパン・ミュージックエンターテインメント=ハピネット〕、2015年)〔「日日是労働セレクト
121」、参照〕の続篇である。前作は3年ほど前に同じくDVDで観ているが、山田孝之や沢尻エリカの印象
が強く、今回も回想シーンに登場する。当該作品は、新たにウィザードの滝が加わって、よりグレードアッ
プしており、前作を上回る出来だと思った。ただし、園子温はますますエンタメ監督の巨匠に伸し上がって
しまい、その点が少し惜しまれる。 
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   〔解説〕

  歌舞伎町のスカウトマンたちの攻防を描き、大ヒットを記録した、人気コミックが原作の人間ドラ
 マの続編。原作でも人気の高い「横浜王国編」をベースに、横浜進出を狙う新宿バーストと逆に新宿
 を手に入れようとする横浜ウィザードの全面戦争が描かれる。前作に引き続き、金髪&天然パーマの
 主人公・龍彦を綾野剛が演じる。

   〔あらすじ〕

  新宿歌舞伎町のスカウト会社・新宿バーストのエース格となった白鳥龍彦(綾野剛)は、勢力拡大
 を目論む社長・山城神(豊原功補)の命により、幹部の関玄介(深水元基)と共に横浜へと送り込ま
 れる。だがそこは、横浜ウィザードの社長・滝正樹(浅野忠信)が支配する難攻不落の王国だった。
 早々に手荒い洗礼を受ける龍彦たち。警察やヤクザとも裏取引をする滝の謀略により窮地に陥った新
 宿バーストは、龍彦を破門することで事態を回避しようとするが、新宿と横浜は全面戦争へと突入。
 そして孤立無援となった龍彦は、逆襲の狼煙をあげる……。

 他に、伊勢谷友介(真虎=バーストの幹部)、村上淳(時正=同)、金子ノブアキ(葉山豊=元ハーレム
の幹部、現バーストの幹部)、久保田悠来(洋介=龍彦の先輩、現ウィザードの麻薬取引担当者)、 上地雄
輔(森長千里=龍彦のライヴァルにして同僚。元パラサイツ所属)、広瀬アリス(小沢マユミ=龍彦がスカ
ウトした女性)、高橋メアリージュン(アリサ=滝の女)、桐山漣(鼠賀信之介=バースト所属のスカウト
マン)、中野裕太(ハネマン=ウィザードの幹部)、中野英雄(田坂晃=宝来会総長)、笹野高史(砂子=
悪徳デカ)、要潤(梶田=全酒連)、神尾佑(倉石=全酒連)、山田優(涼子=高級クラブ「ムーラン・ル
ージュ」のママ)、吉田鋼太郎(天野修善=紋舞会会長)、椎名桔平(住友=全酒連会長)、一ノ瀬ワタル
(毒山=バースト所属のスカウトマン)、北村昭博(モリケン=ウィザードのナンバー3)などが出演して
いる。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので報告しよう。両者は続き物で、第一部とその続篇(第二部とは明記されていない)
である。思いがけずTSUTAYAで見つけたので、鑑賞に及んだ。映画としてはどうかと思うが、高倉健のデビュ
ー作ということでDVDが発売されたのではないだろうか。
 1本目は『電光空手打ち』(監督:津田不二夫、東映、1956年)である。大正時代の沖縄を舞台にして、
唐手(空手)道に生きる人々を描写している。こちらの方は空手ならぬ柔道ではあるが、黒澤明の『姿三四
郎』(監督:黒澤明、東宝映画、1943年)や、『續姿三四郎』(監督:黒澤明、東宝映画、1945年)を連想
した。定番のような筋書でまったく新味はないが、山形勲や神田隆、あろうことか佐々木孝丸や加藤嘉まで
空手の型を披露するので、その点が新鮮だった。もちろん、高倉健の凛々しい佇まいには一見の価値がある
と思う。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  牧野吉晴の原作を小林大平が脚色、『東京摩天街』の津田不二夫が監督、『力闘空手打ち・三部作』
 の福島宏が撮影を担当した。主なる出演者は山形勲、『ふり袖小天狗』の浦里はるみ、『身代り紋三 
 地獄屋敷』の佐々木孝丸、『まぼろし怪盗団(三部作)』の藤里まゆみ、新人、高倉健など。

   〔あらすじ〕

  沖縄の話。剛柔流唐手(劇中では、「知倒流」を名乗っている。この「剛柔流」というのは不詳)
 の中里東恩(佐々木孝丸)は、娘の恒子(藤里まゆみ)、息子の克明(北峰有二)、弟子の赤田鉄
 才(岩城力)や忍勇作(高倉健)たちと唐手術を練っていた。忍は東恩とは別の流派に属する名越
 義仙(山形勲)の人物に惹かれて、彼の門弟になるべく東恩の許を去っていった。その頃、東京で
 文部省主催の運動体育展覧会が開かれることになり、沖縄の空手代表として義仙が選ばれた。それ
 を知った東恩は怒った。赤田は陶工湖城空典(加藤嘉)を訪れ、義仙と決闘するのだから立合人に
 なってくれと頼んだ。義仙の人物を知る空典は一喝して赤田を追い払った。空典はその事情を手紙
 にして、孫娘の志那子(浦里はるみ)に持たせて義仙の家にやった。彼女は義仙の家にいる忍と会
 った。一夜、空典は何者かに襲われ、志那子の唐手による奮闘も空しく傷ついた。宴席で図らずも
 志那子の踊りを見た義仙と忍は、彼女の踊りの中に唐手の精神が入っているのを見せられた。その
 帰途、義仙たちを襲った東恩一味を、義仙の制止もきかず、忍が迎え討ったことから、義仙の怒り
 を買った忍は破門同様の身となり、空典の家に身を寄せることとなった。忍と志那子はそこで将来
 を誓い合う仲となった。義仙は東京に向った。ある夜、執拗な赤田たちの襲撃をさけて忍は志那子
 の働く花崎楼に逃げ込み、志那子に明日の船で東京に行くのだと打ち明けた。翌日、忍を探しに志
 那子の家に来た赤田と恒子は忍がその日東京に向うのを知り、港に急いだ。志那子もまたその後を
 追った。赤田と忍が戦いの火蓋を切ったところで、第一部は幕を下ろしている。

 他に、神田隆(比嘉三郎=義仙の弟子、絵描き)、小塚十紀雄(沖縄県知事)、沢彰謙(中川学務課長)、
瀧謙太郎、山本緑、筑波景子、小林テルなどが出演している。
 2本目は、上記作品の続篇の『流星空手打ち』(監督:津田不二夫、東映、1956年)である。これも、物
語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  『電光空手打ち』に続く空手映画、スタッフも『電光空手打ち』と同じであるが、今回は名越義仙
 の役を前篇小川虎之助に代って山形勲が扮し(この部分はまったくの事実誤認。両篇ともに山形勲が
 名越義仙を演じている)、新しく『まぼろし怪盗団(三部作)』の波島進が鹿島耕三役を演じている。
 日本空手協会協賛映画。

   〔あらすじ〕

  東京に出た忍勇作(高倉健)は名越義仙(山形勲)にも会わず、ルンペンの親分である大五郎(花
 澤徳衛)の許に身を寄せ、空手道の真髄を求めて苦難の彷徨を続けていた。赤田鉄才(岩城力)、中
 里恒子(藤里まゆみ)、弟の克明(北峰有二)、湖城志那子(浦里はるみ)もまた東京に出て名越の
 家にいた。ある夜与太者に襲われる学生鹿島耕三(波島進)を救ったことから、忍は耕三の家に身を
 寄せ夜学に通うこととなった。赤田たちは愛国党総裁、木村巳之助(小島洋々)の庇護を受けつつ、
 宿敵忍との対決を求めていた。耕三の妹陽子(春日とも子)や芸者駒勇(日野明子)も忍を慕うよう
 になった。夜学の帰途名越の家の前を通った忍は、名越の弾く蛇味線の音に惹きつけられて、思わず
 門内に入った。気配を感じて外に出た志那子は忍の落した手拭を拾った。また忍は克明と恒子に会い、
 彼らの父東恩(佐々木孝丸)が死んだことを知った。忍の住所は赤田一派に知られ、襲撃を受けるこ
 とになった。耕三の家に迷惑をかけてはと忍は再び大五郎親分のところに帰っていった。一方名越の
 人格を高く評価した広道館の嘉治正五郎館長(須藤健)は名越を招いてその型を披瀝させた。その名
 声を妬んだ赤田は総裁木村の圧力を利用し公開試合を計画した。名越は「心正しからざる者との試合
 は好ましからず」といって応じなかった。遺恨に燃える赤田一味は途上に名越を襲った。駒勇からの
 報を得て忍は現場にかけつけた。烈風の中、宿命の対決が行われた。遂に赤田たちは倒された。戦い
 終えた静寂の中に、忍と志那子の相寄る影に温く微笑む名越義仙の姿があった。

 他に、神田隆(比嘉三郎)、佐原廣二(若杉真悟=義仙の門下生)、曽根秀介(鹿島耕助=耕三の父、三
河屋の主人)、藤井貢(肥田喜三郎=木村の門下)、立松晃(吉田大八=同)、左卜全(遠州の爺さん=大
五郎と御同業)、牧野狂介(浅倉修=広道館の柔道家)、久保一(与太者A)、小倉武文、小野保、篠木加
代子、高須準之助、清水正、小杉義隆、瀧島孝二、江島譲、三重街龍、河童六十四、嶋精二、木南清などが
出演している。鹿島耕三役の波島進は、TVドラマの『特別機動捜査隊』(NET〔現 テレビ朝日〕、1961年か
ら1971年)での立石主任役が懐かしい。また、嘉治正五郎役の須藤健は、同じくTVドラマの『鉄道公安36号』
(NET〔現 テレビ朝日〕、1963年から1967年)の高木公安主任役が目に浮かぶ。
 沖縄空手に関しては、東映の『女必殺拳』シリーズ(主演:志穂美悦子)に登場するが、とりわけ印象が
強いのは、『沖縄やくざ戦争』(監督:中島貞夫、東映京都、1976年)において千葉真一〔現 J.J.ソニー千
葉〕が演じた国頭正剛役の空手である。あれはすごい。数多い千葉真一のアクション・シーンの中でも最高
の部類に属するのではないかと思う。いずれにせよ、高倉健のデビュー作を観ることになるとは思わなかっ
たので、それが収穫であった。


 某月某日

 DVDで長尺の邦画を観た。前編・後編と分かれている。1本目は、『64(ロクヨン)前編』(監督:瀬々
敬之、映画「64」製作委員会〔TBSテレビ=東宝=電通=CBCテレビ=WOWOW=朝日新聞社=毎日新聞社=
TBSラジオ=MBS=RKB=KDDI=コブラピクチャーズ=HBC=TBC=BSN=SBS=RSK=RCC=GYAO=TCエンタテイ
メント=日本出版販売〕、2016年)である。原作は横山秀夫の同名小説である〔筆者、未読〕。原作のあら
すじを以下に引用しておこう(ウィキペディア)。少し改変したが、意味に変わりはない。執筆者に多謝。
なお、結末が分かるので、知りたくない人は飛ばしていただきたい。

  わずか7日間で幕を閉じた昭和64年(1989年)、D県警管内で7歳の少女・雨宮翔子が誘拐され、
 殺害される事件が起こった。当時、捜査一課特殊犯捜査係に所属していた三上義信も追尾班として初
 動捜査に加わり、犯人から要求された2,000万円の身代金を運ぶ父親の車を追った。だが土地勘に優る
 犯人に翻弄され、身代金はまんまと奪われ、5日後に翔子の遺体が無惨な状態で発見される。昭和天
 皇の崩御で悲しみに暮れると共に、新元号「平成」の制定で新しい時代の幕開けに色めき立つ世間と
 は裏腹に、幼い少女の死と遺族の慟哭を目の当たりにしたD県警は、平成の世に紛れた犯人を逃がす
 まいとこの事件を「ロクヨン」という符丁で呼び解決を誓うが、遺族に吉報がもたらされないまま時
 は過ぎ、捜査本部は専従班に縮小され、名ばかりの継続捜査状態となっていた。
  平成14年(2002年)、捜査二課次席まで出世していた三上は、突然警務部への異動を命じられ、広
 報官に任じられる。2年で刑事に戻るつもりで仕事に邁進し広報室の改革を目指すが、赤間警務部長
 からは上が決めたことを伝える窓口になり、自分が考える必要はないと忠告され、三上もある理由か
 らそれに従わざるを得なかった。三上には元ミス県警の美しい妻・美那子と高校生の娘・あゆみがい
 る。だが、あゆみは父とよく似た醜い自分の顔と美しい母の顔を憎むようになり、高校を不登校がち
 になり、ついには部屋に引きこもるようになってしまっていた。カウンセリングを受けさせるなどし
 て、状態は徐々に良い方向へ向かっているかに思えたが、整形を反対されたあゆみが家出してしまう。
 あゆみの捜索を全国の警察に口利きしてくれたのが他ならぬ赤間で、事あるごとにあゆみの件を持ち
 出し、自分の意に従わせようとする赤間の言動に、三上は苛立ちを禁じえない。そんな中、自宅にか
 かってきた無言電話があゆみからのものではないかと美那子が気に病み、再びかかってくることを期
 待し、美那子までもが引きこもり同然になってしまう。
  時効間近の「ロクヨン」について警察庁長官が視察に訪れることが決まり、被害者遺族宅への長官
 の慰問許可を取り付けて来るよう赤間から命じられた三上が雨宮宅を訪ねると、雨宮は長官の慰問を
 拒否する。14年の長きに渡って事件を解決できない警察への失望と怒りが雨宮をそうさせたのかと三
 上は考えるが、雨宮と密に連絡を取り続けていなければならないはずの刑事部と雨宮の関係が断絶し
 ていることが判明する。同じ頃、主婦による重傷交通事故が発生し、加害者が妊娠8か月であったた
 め、母胎への影響を考慮し匿名で記者クラブに発表したところ、猛抗議を受ける。記者たちは本部長
 に直接抗議文を提出すると息巻き、それを広報官もしくは秘書課長止まりにできまいかとせめぎ合い
 になり、記者と広報室の間には深い溝ができ、記者らは来たる長官視察のぶら下がり会見のボイコッ
 トを通達する。そんな中、三上の同期で人事を扱う警務部調査官の二渡が、「ロクヨン」について聞
 き回っていることが分かる。二渡はかつての「ロクヨン」関係者に「幸田メモ」という言葉を出して
 いた。幸田とは、「ロクヨン」事件で自宅班を担当し、事件の半年後に退職した元刑事の名だった。
 なぜ刑事ではない二渡が「ロクヨン」を調べているのか、幸田メモとは何なのか、雨宮と刑事部の関
 係悪化の原因がそこにあるのではないか、行く先々で様々な家庭に無言電話がかかっていたことを気
 にしつつも調査を積み重ねた三上は、県警による隠蔽に直面する。「ロクヨン」発生当時、雨宮宅を
 担当する「自宅班」の警察官らが到着したあとにも犯人からの脅迫電話があり、科捜研の警察職員の
 ミスにより、その録音に失敗していた。そして自宅班を率いる漆原はその隠蔽を指示した。憤慨した
 幸田は一部始終を報告書に記して刑事部長官舎へ投函したが、刑事部は隠蔽を追認し、幸田は警察を
 追われた。「幸田メモ」とは、幸田による内部告発であり、その隠蔽は歴代刑事部長の申し送り事項
 となっていた。
  やがて、長官は慰問の場で「ロクヨン」を解決できないD県警の刑事部長の座を警察庁人事にする
 と宣言する予定であることが、警察庁に出向中の刑事の情報で判明し、刑事部はそれを阻止すべく警
 察とマスコミの関係を意図的に悪化させ、取材をボイコットさせることで長官視察を中止に追い込も
 うとしていることが分かる。警務部と刑事部の軋轢は深さを増していき、刑事部の暴露によると思わ
 れる警務部の不祥事がマスコミにスクープされる。赤間から催促され、雨宮に慰問を受け入れてもら
 うべく彼の家へ再び訪れた三上は、翔子の遺影をみて、思わず滂沱の涙を流す。すると雨宮は、一転
 して慰問を受け入れると答えた。
  刑事部長職の召し上げに反発しつつも、三上は広報官の務めとしてマスコミ各社との信頼関係を取
 り戻し、ボイコット回避に成功させる。しかし長官視察の直前となって、「ロクヨン」を模倣したと
 思われる誘拐事件が発生。記者クラブと報道協定を結ぶべく会合が持たれる。協定は事件の詳細を記
 者クラブに逐一発表することが条件にも関わらず、刑事部は、被害者である目崎歌澄の実名をはじめ
 とする情報を一切漏らさず、一向に増えない情報に記者の不満は溜まる一方だった。何とか被害者の
 父親の名が明かされるが、協定が破綻して記者が勝手に取材に動けば、警察に通報したことが犯人に
 分かってしまう恐れがあり、被害者の命さえ危ぶまれる。三上の必死の説得で協定は正式に締結され
 る。三上は、犯人の指示を受け車で疾走する父、目崎正人を追う捜査車両への同乗を許され、そこか
 ら広報へ情報を提供する。
  しかしそこで、目崎歌澄が万引きをして警察に補導されたという知らせが入る。歌澄は誘拐されて
 いなかった。犯人は彼女の家出を利用して不在時に脅迫電話をかけ、「誘拐事件」を偽装したのだっ
 た。なぜか娘の無事を目崎正人に対して知らせようとしない刑事たちに三上は激怒するが、そこで彼
 は、一連の調査の過程で様々な家庭にかかっていたと知った最近の無言電話が、すべて「ま」行に集
 中していたことと、この「誘拐」事件直前にも目崎家に無言電話がかかっていたことを思い出し、こ
 の偽の誘拐事件の犯人が雨宮芳男であり、そして彼の命令にしたがって疾走している目崎正人こそ、
 「ロクヨン」の犯人であることに気づく。
  脅迫の電話により犯人の声を知っていた雨宮は、警察による捜査に見切りをつけ、犯人がほぼ確実
 に県内の人間であることから、事件当時の電話帳に掲載された58万世帯の電話に対して、「あ」行か
 ら順番に総当たりで無言電話をかけつづけ、目崎正人の声に辿り着いたのだった。目崎は娘の無事を
 知らされぬまま、現金2千万円をガソリンで燃やされたあと、「お前の娘は殺された」と読みとれる
 メモを読まされ、泣き叫ぶ。しかし直後に娘の無事を知ると、メモを半分食べて証拠隠滅を図り、警
 察は「保護」の名目で確保する。決定的な証拠が挙がらないため目崎への捜査は難航するが、松岡捜
 査一課長らは、かつて犯人の声を聞いた者たちに「耳実験」をおこなうなどしつつ、千の状況証拠で
 目崎の周囲を固め、必ず立件すると語る。偽装「誘拐」を引き起こした雨宮と、彼に協力した幸田は
 姿を消したが、生きているという。
  警察庁長官の訪問、および刑事部長職の「召し上げ」は、一連の事件によって流れた。
  唯一の手がかりだった「無言電話」があゆみのものではなかったと知った美那子は落胆するが、
 「あの子を受け入れてくれる別の人の元で元気にしている」という、「生存の条件」を見つけ、気丈
 に振る舞う。三上もあゆみの生存を信じ、帰りを待とうと決める。そして二渡と再会した彼は、刑事
 に戻る気はないと語る。「ロクヨン」が立件された暁には幸田メモの真相を明かさなければならず、
 そのとき松岡を広報官として支えることを決意した。

 ところで、小生が鑑賞済みである、横山秀夫の映画化された作品は以下のように4本ある。

  『半落ち』、監督:佐々部清、東映=TBS=住友商事=東京都ASA連合会、2004年。
  『クライマーズ・ハイ』、監督:原田眞人、「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ〔ビー
   ワイルド=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント=トゥモロゥー〕、2008年。
  『64(ロクヨン)前編』、『64(ロクヨン)後編』の当該作品。

 小生の印象では、当該作品は『半落ち』よりも面白く、『クライマーズ・ハイ』ほどではない、といった
ところか。とくに、「後編」はかなり興醒めな出来であった。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。なお、配役に関しては、さらに<ウィキペディア>を参照した。加えて、後編の
みに出演している俳優もここで挙げておく。

   〔解説〕

  横山秀夫のベストセラーを前後編の2部作として映画化したミステリーの前編。わずか7日間しか
 なかった昭和64年に発生し、未だ未解決となっている少女誘拐殺人事件の解明に挑む刑事と、彼を取
 り巻く人々のドラマが描かれる。佐藤浩市が事件解決に挑む刑事の三上を演じるほか、対立する記者
 に瑛太など、ベテランから若手まで実力派が勢ぞろいした力作。

   〔あらすじ〕

  7日間で幕を閉じた昭和最後の年、昭和64年。そのわずかな間に少女誘拐殺人事件が発生。それは
 刑事部で“ロクヨン”と呼ばれ、少女の死亡、未解決のままという県警最大の汚点を残し14年が過ぎ
 去った……。時効まであと1年と迫る平成14年。当時“ロクヨン”の捜査にあたった刑事・三上義信
 (佐藤浩市)は、警務部広報室に広報官として異動する。三上は時効が迫ったロクヨン解決のために
 動き出すが、そこに巨大な壁が立ちはだかる。記者クラブとの確執、キャリア上司との対立、刑事部
 と警務部の軋轢……。そんななか、ロクヨンをなぞるような新たな誘拐事件が発生する……。

 他に、夏川結衣(三上美那子=義信の妻、元巡査)、芳根京子(三上あゆみ=父親に激しく反撥する義信
と美那子の娘)、綾野剛(諏訪=広報室の係長)、金井勇太(蔵前=広報室職員)、榮倉奈々(美雲=同)、
三浦友和(松岡勝俊=ロクヨン捜査班のひとり)、赤井英和(望月=同、現在は農園を経営している)、菅
田俊(漆原=同、当時は自宅班班長、現在は高田警察署長)、筒井道隆(柿沼=同)、吉岡秀隆(幸田一樹=
同、現在は警備員)、窪田正孝(日吉浩一郎=同、当時は科学捜査研究所の所員、現在はひきこもり)、鶴
田真由(村串みずき=同)、椎名桔平(辻内欣司=県警本部長)、滝藤賢一(赤間=県警本部警務部部長)、
菅原大吉(石井=警務部の幹部)、仲村トオル(二渡真治=警務部調査官)、奥田瑛二(荒木田=県警本部
刑事部部長)、柄本佑(落合=捜査二課帳)、小澤征悦(御倉=荒木田の部下)、三浦誠己(芦田=同)、
永瀬正敏(雨宮芳男=娘を誘拐された中年男、当時漬物の製造販売を行っていた)、小橋めぐみ(雨宮敏子=
芳男の妻)、平田風果(雨宮翔子=誘拐され殺された少女)、緒形直人(目崎正人=新たな誘拐事件の被害
者)、渡辺真起子(目崎睦子=正人の妻)、萩原みのり(目崎歌澄=長女)、渡邉空美(目崎早紀=次女)、
黒川芽以(幸田麻美=一樹の妻)、佐藤優太郎(幸田カイト=一樹と麻美の息子)、烏丸せつこ(日吉雅恵=
浩一郎の母)、瑛太(秋川=『東洋新聞』の記者)、坂口健太郎(手嶋=県警記者クラブのひとり)、坂口
辰平(掛井=同)、菜葉菜(高木まどか=同)、梶原拓人(本田=同)、大塚ヒロタ(宇津木=同)、長尾
卓磨(橘=同)、椿弓里奈(桜田=同)、藤井宏之(牛山=同)、飯田芳(笠井=同)、中村沙樹(木曾亜
美=同)、三浦英(須藤=同)、松嶋亮太(釜田=同)、奥野瑛太(浪江=同)、宇野祥平(山科=同)、
赤山健太(小谷=同)、板倉チヒロ(藤田=同)、森了蔵(富野=同)、佐藤文吾(勝谷=同)、芹澤興人
(鳥谷=同)、増田修一朗(袰岩=同)、河原健二(林葉=同)、木口健太(黒川=同)、筒井奏(原田=
同)、峯豪一(岡田=同)、青柳弘太(池田=同)、仁科咲姫(安藤=同)、中山雄作(角池=同)、伊藤
雄太(竹井)、礒部泰宏(梁瀬=同)、嶋田久作(梓=『東洋新聞』の年配記者)、緋田康人(山下=その
他の新聞記者)、矢柴俊博(佐伯=同)、加藤虎ノ介(宮本=同)、足立智充(八田=同)、大西信満(緒
方=新たに起きた誘拐事件の捜査員)、管勇毅(峰岸=同)、忍成修吾(森田=同)、森本のぶ(白鳥=同)、
結城貴史(鬼頭=同)、日向丈(吉川=同)、後藤ユウミ(吉田素子=ロクヨン事件関連人物)、川瀬陽太
(「喫茶あおい」店主=同)、林摩耶(「フルーツパーラー四季」店員=同)、川屋せっちん(「釣り宿一
休」店員=同)、奥瀬繁(梁の主人=同)、才木清英(解体業者=同)、佐々木一平(アベック捜査員=刑
事部捜査一課課員)、松原慎太郎(ブラシを受け取る刑事=同)、贈人(スーツケースを発見した刑事=同)、
日下部千太郎(同)、伊藤毅(同)、松本勝(雨宮を押しとどめる刑事=所轄署刑事課課員)、崔哲浩(同)、
今村裕次郎(同)、中野剛(白田=警務部警務課長)、鈴木雄一郎(県警秘書課員)、月川修(同)、古川  
康(同)、村松和輝(同)、新野卓(同)、平野鈴(同)、原陽子(同)、小野ゆたか(同)、スギウチタ
カシ(同)、五刀剛(角刈りの刑事=刑事部暴力団対策室)、久保勝史(若造の刑事=刑事部捜査一課課員)、
安藤広郎(トイレの刑事=刑事部捜査一課課員)、村本明久(同)、志賀龍美(同)、小澤雄志(若い刑事=
所轄署刑事課課員)、成田瑛基(同)、石田佳央(守りの刑事=刑事部暴力団対策室)、芦原健介(同)、
檜尾健太(同)、塩見大貴(同)、佐野元哉(目崎家の自宅班=刑事部捜査一課課員)、由川信幸(同)、
木田毅祐(同)、小水たいが(同)、岩田知幸(邀撃班=刑事部捜査一課課員)、クラ(同)、金子貴伸
(同)、齋賀正和(同)、萩原宏樹(同)、兼原良太郎(同)、山神佳誉(同)、荒木秀行(警官=所轄署
地域課課員)、澤山薫(同)、鈴木大介(作業服を着た警官=所轄署交通課課員)、志村朋春(同)、大久
保鷹(銘川亮次=交通事故の被害者)、勝倉けい子(銘川の亡妻)、諏訪太朗(カラオケバー「月並」のマ
スター)、山崎ハコ(同じくママ)、太田恭輔(カラオケの男=「月並」の客)、清瀬やえこ(部下の若い
女=同)、花戸祐介(囃し立てる部下=同)、吉岡睦雄(別の警備員=幸田の同僚)、金子大地(少年=歌
澄の彼氏)、山崎潤(鑑識係員)、関碧(遺体の少女)などが出演している。
 2本目は、『64(ロクヨン)後編』(監督:瀬々敬之、映画「64」製作委員会〔TBSテレビ=東宝=
電通=CBCテレビ=WOWOW=朝日新聞社=毎日新聞社=TBSラジオ=MBS=RKB=KDDI=コブラピクチャーズ=
HBC=TBC=BSN=SBS=RSK=RCC=GYAO=TCエンタテイメント=日本出版販売〕、2016年)である。
 同じく、物語を確認しておこう。以下、上と同様。

   〔解説〕

  横山秀夫のベストセラーを前後編の2部作として映画化したミステリーの後編。わずか7日間しか
 なかった昭和64年に発生し、未解決となっている少女誘拐殺人事件の解明に挑む刑事と、彼を取り巻
 く人々のドラマが描かれる。佐藤浩市が事件解決に挑む刑事の三上を演じるほか、対立する記者に瑛
 太など、ベテランから若手まで実力派が勢ぞろいした力作。

   〔あらすじ〕

  昭和最後の年、昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件は刑事部で“ロクヨン”と呼ばれ、被害者が死
 亡し未解決のままという県警最大の汚点となっている。その事件から14年が過ぎ、時効が近づいてい
 た平成14年、“ロクヨン” の捜査にもあたった敏腕刑事・三上義信(佐藤浩市)は、警務部広報室に
 広報官として異動する。記者クラブとの確執、キャリア上司との闘い、刑事部と警務部の対立のさな
 か、ロクヨンをなぞるような新たな誘拐事件が発生する。そして三上の一人娘の行方は……。

 後編は腰砕けで、あまりリアリティを感じることができなかった。もっとも、出演者たちの演技はどれも  
迫力満点で、その点では申し分なかった。やはり、脚本に問題があると思った。この流れには納得できない
からである。それに、三上あゆみの消息に関しては不明のままで、どこか付け焼刃だったし、銘川亮次の生
立ちの挿話も気が抜けたサイダーのような話である。捜査二課課長を演じた柄本佑も若すぎるのではないか。
最も手応えのあったのは滝藤賢一が演じた赤間警務部長で、彼がIT会社の社長である栗原を演じた時(『予
告犯』)と同じような感慨をもった。得難い俳優だと思う。


 某月某日

 DVDで2本の邦画を観たので報告しよう。まったくの偶然ではあるが、2本ともに比較的若手の同じ女性監
督の作品である。最近の女性監督と言えば、河瀬直美、西川美和、タナダユキ、安藤桃子、蜷川実花、新藤
風などを連想したが、2001年以降(21世紀以降)にはけっこういる。大昔ならば、羽田澄子や田中絹代の名
前を挙げることができるが、圧倒的に数が少ないので、21世紀以降の女性の進出には目覚ましいものがある
ことになる。そこで、女性映画監督の21世紀以降の主な作品を以下に挙げておこう。ただし、オムニバス作
品は除いた。いずれも、小生が鑑賞済みの映画である。他にも女性監督はいるとは思うが、漏れ落ちに関し
てはご寛恕されたし。

  『ダンボールハウスガール』、監督:松浦雅子、キューフロント=電通=シネカノン=クリーク・アンド・
   リバー社、サイブロ=ネットクリエイティブ=東映ビデオ、2001年。
  『Platonic Sex』、監督:松浦雅子、「プラトニック・セックス」製作委員会〔フジテレビ=ワタナベ
   エンターテインメント=小学館〕、2001年。
  『蛇イチゴ』、監督:西川美和、「蛇イチゴ」製作委員会〔バンダイビジュアル=テレビマンユニオン=
   エンジンフイルム=シィースタイル=IMAJICA〕、2002年。
  『折り梅』、監督:松井久子、エッセン・コミュニケーションズ、2002年。  
  『沙羅双樹』、監督:河瀬直美、日活=よみうりテレビ=ビジュアルアーツ=リアルプロダクツ、2003年。
  『バーバー吉野』、監督:荻上直子、PFFパートナーズ〔ぴあ=TBS=TOKYO FM=日活=IMAGICA〕、2003年。
  『アイノカラダ』、監督:村上なほ、SPACE SHOWER PICTURES、2003年。
  『月とチェリー』、監督:タナダユキ、「ラブコレクション」製作委員会〔ヒューマックスコミュニ
   ケーションズ=ジャム・ティービー=カルチュア・パブリッシャーズ〕、2004年。
  『転がれ! たま子』、監督:新藤風、近代映画協会=シネカノン=衛星劇場=S・D・P=ハピネット・
   ピクチャーズ、2005年。
  『赤い鯨と白い蛇』、監督:せんぼんよしこ、クリーク・アンド・リバー=東北新社、2005年。
  『ゆれる』、監督:西川美和、「ゆれる」製作委員会〔エンジンフイルム=バンダイビジュアル=テレビ
   マンユニオン=衛星劇場〕、2006年。
  『かもめ食堂』、監督:荻上直子、かもめ商会(日本テレビ=バップ=幻冬舎=シャシャ・コーポレー
   ション=パラダイス・カフェ=メディア・スーツ)、2006年。
  『酒井家のしあわせ』、監督:呉美保、「酒井家のしあわせ」フィルムパートナーズ〔ビーワイルド=
   スタイルジャム=テレビ大阪=テイクイット・エージェンシー〕、2006年。
  『殯(もがり)の森』、河瀬直美、組画=Celluloid Dreams Productions=ビジュアルアーツ専門学校
   大坂、2007年。
  『赤い文化住宅の初子』、監督:タナダユキ、「赤い文化住宅の初子」フィルムパートナーズ〔トライ
   ネットエンタテインメント=ビクターエンタテインメント=スローラーナー〕、2007年。
  『めがね』、監督:荻上直子、めがね商会〔日本テレビ=バップ=シャシャ・コ ーポレイション=
   パラダイス・カフェ=日活〕、2007年。
  『さくらん』、監督:蜷川実花、蜷川組「さくらん」フィルム・コミッティ〔アスミック・エース エンタ
   テインメント=パルコ=テレビ朝日=タワーレコード/NMNL=WOWOW=メ?テレ=シネマ・インヴェスト
   メント〕、2007年。
  『人のセックスを笑うな』、監督:井口奈己、「人のセックスを笑うな」製作委員会〔ハピネット=東京
   テアトル=WOWOW〕、2007年。
  『俺たちに明日はないッス』、監督:タナダユキ、「俺たちに明日はないッス」製作委員会〔エキス
   プレス=竹書房=スローラーナー=ジェネオン エンタテインメント=朋友デジタルメディアサービス〕、
   2008年。
  『百万円と苦虫女』、監督:タナダユキ、「百万円と苦虫女」製作委員会〔日活=ポニーキャニオン=
   イトーカンパニー=WOWOW=電通=幻冬舎=エキスプレス〕、2008年。
  『ディア・ドクター(Dear Doctor)』、監督:西川美和、「Dear Doctor」製作委員会〔エンジン
   フィルム=バンダイビジュアル=テレビマンユニオン=電通=衛星劇場=デンナーシステムズ=
   ヤフー・ジャパン〕、2009年。
  『呪怨 黒い少女』、監督:安里麻里、東映ビデオ=CELL、2009年。
  『トイレット』、監督:荻上直子、“トイレット”フィルムパートナーズ〔ポニーキャニオン=スール
   キートス=パラダイス・カフェ=ショウゲート=博報堂DYメディアパートナーズ=パルコ=光文社=
   衛星劇場=Yahoo! JAPAN〕、2010年。
  『オカンの嫁入り』、監督:呉美保、「オカンの嫁入り」製作委員会〔角川映画=東映ビデオ=
   NTTドコモ=キュー・テック〕、2010年。
  『森崎書店の日々』、監督:日向朝子、『森崎書店の日々』製作委員会〔テンカラット=衛星劇場〕、
   2010年。
  『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』、監督:瀬田なつき、「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」
   製作委員会〔角川映画=NTTドコモ=アスキー・メディアワークス=スターダスト音楽出版〕、2010年。
  『食堂かたつむり』、監督:富永まい、「食堂かたつむり」フィルムパートナーズ〔ミコット・エンド・
   バサラ=東宝=アミューズ=キングレコード=TBS=博報堂DYメディアパートナーズ=ポプラ社=SME
   Records=日本出版販売=毎日放送=大広=中部日本放送=RKB毎日放送=TSUTAYAグループ=Yahoo!
   JAPAN〕、2010年。
  『夢売るふたり』、監督:西川美和、「夢売るふたり」製作委員会〔バンダイ   ビジュアル=讀賣
   テレビ放送=アスミック・エース エンタテインメント=オフィス・シロウズ=文藝春秋=電通=衛星
   劇場=パパドゥ=エネット=ヤフー〕、2012年。
  『レンタネコ』、監督:荻上直子、レンタネコ製作委員会〔VAP=BS日本=Yahoo! JAPAN=パラダイス
   カフェ=スールキートス〕、2012年。
  『ヘルタースケルター』、監督:蜷川実花、映画「ヘルタースケルター」製作委員会〔WOWOW=アスミック・
   エース=パル=ハピネット=Yahoo! JAPAN=祥伝社=ラッキースター〕、2012年。
  『内部被ばくを生き抜く』、監督:鎌仲ひとみ、環境テレビトラスト、2012年。
  『0.5ミリ』、監督:安藤桃子、ゼロ・ピクチュアズ=リアル・プロダクツ=ユマニテ、2013年。
  『そこのみにて光輝く』、監督:呉美保、「そこのみて光り輝く」製作委員会〔TCエンターテインメント=
   スクラムトライ=函館シネマアイリス=TBSサービス=ひかりTV=ギャビット=TBSラジオ=太秦=
   WIND〕、2014年。
  『小さき声のカノン ── 選択する人々』、監督:鎌仲ひとみ、ぶんぶん フィルムズ、2014年。
  『ニシノユキヒコの恋と冒険』、監督:井口奈己、「ニシノユキヒコの恋と冒険」製作委員会〔東宝=
   関西テレビ放送=電通=毎日新聞社=研音=ギャンビット=KDDI〕、2014年。
  『あん』、監督:河瀬直美、映画『あん』製作委員会〔名古屋テレビ放送=イオンエンターテイメント=
   ポプラ社=組画(くみえ)=博報堂=エレファントハウス=毎日新聞社〕、2015年。
  『きみはいい子』、監督:呉美保、「きみはいい子」製作委員会〔アークエンタテイメント=日活〕、
   2015年。
  『俳優 亀岡拓次』、監督:横浜聡子、『俳優 亀岡拓次』製作委員会〔日活=アミューズ=GYAO=
   ローソンHMVエンタテイメント=クリエイティブオフィスキュー=北海道テレビ放送〕、2016年。

 以上である。ほとんどの作品が印象に残っているので、彼女らの実力は折り紙つきということになる。と
くに、『蛇イチゴ』(監督:西川美和)は、小生のネット・サイト「恣意的日本映画年間ベスト1」における
2002年のナンバー・ワン作品である。
 さて、鑑賞した邦画の1本目は、『少女』(監督:三島有紀子、「少女」製作委員会〔東映=木下グルー
プ=ポニーキャニオン=パルコ=ファインエンターテイメント=BS日テレ=双葉社=朝日新聞社=ユニバー
サル ミュージック/Virgin Music=日本出版販売=アルマックスジャパン/ARMAX JAPAN〕、2016年)であ
る。手始めに、「少女」という言葉が題名に入っている邦画(小生が鑑賞済みに限る)を以下に挙げみよう。

  『非行少女』、監督:浦山桐郎、日活、1963年。
  『不良少女 魔子』、監督:蔵原惟二、日活、1971年。
  『少女娼婦 けものみち』、監督:神代辰巳、にっかつ、1980年。
  『時をかける少女』、監督:大林宣彦、角川春樹事務所、1983年。
  『十五少女漂流記』、監督:吉田健、松竹=アミューズ=TBS、1992年。
  『ISOLA 多重人格少女』、監督:水谷俊之、「ISOLA 多重人格少女」製作委員会〔角川書店=
   アスミック・エース エンタテインメント=東宝=イマジカ=日本出版販売=住友商事〕、2000年。
  『少女・an adolescent』、監督:奥田瑛二、ゼロ・ピクチュアズ、2001年。
  『呪怨 黒い少女』、監督:安里麻里、東映ビデオ=CELL、2009年。
  『少女』、監督:三島有紀子、「少女」製作委員会〔東映=木下グループ=ポニーキャニオン=パルコ=
   ファインエンターテイメント=BS日テレ=双葉社=朝日新聞社=ユニバーサル ミュージック/Virgin
   Music=日本出版販売=アルマックスジャパン/ARMAX JAPAN〕、2016年。

 当該作品を含めてもわずか9本、しかも東京オリンピックの前年に初めて登場するまでは1本もないので  
ある。これは意外であった。扱われている年齢が微妙であるから、もっと映画の材料になっているかと思っ
たが、題名にまでは反映していなかったと見える。意外に思った背景には、戦前の名作『浪華悲歌(なにわ
エレジー)』(監督:溝口健二、第一映画、1936年)の主演女優である山田五十鈴(アヤ子役)に、「そう
やなぁ、不良少女という立派な病気やわ」という名台詞が存在するので、この作品はともかくとして、戦前
から「少女」を冠した作品があるに違いないと思い込んでいたからであろう。太宰治の短篇作品にも、「美
少女」(「月刊文章」、1939年)があり、「少女」は恰好の題名的要素ではないだろうか。
 したがって、原作を書いた湊かなえも、それを映画化した三島有紀子も、盲点を突いたことになる。しか
も、文字通りシンプル・イズ・ベストで、何の飾りもない「少女」である。湊かなえが原作の映画は、当該
作品を含めて以下に挙げるように4本観ているが、彼女の作品は読んだことがない。この作品は少し読んで
みたくなった。

  『告白』、監督:中島哲也、「告白」製作委員会〔東宝=博報堂DYメディアパートナーズ=フェイス・
   ワンダーワークス=リクリ=双葉社=日本出版販売=ソニー・ミュージック エンタテインメント=
   Yahoo! JAPAN=TSUTAYAグループ〕、2010年。
  『北のカナリアたち』、監督:阪本順治、「北のカナリアたち」製作委員会〔東映=テレビ朝日=木下
   グループ=博報堂=博報堂DYメディアパートナーズ=加賀電子=朝日放送=セントラル・アーツ=
   メーテレ=イノベーションデザイン=TOKYO FM=アマゾン ジャパン=北海道テレビ=朝日新聞社=
   読売新聞社=幻冬舎=日本出版販売=東映ビデオ=北海道新聞社=九州朝日放送=東日本放送=新潟
   テレビ21=静岡朝日テレビ=広島ホームテレビ=愛媛朝日テレビ=瀬戸内海放送〕、2012年。
  『白ゆき姫殺人事件』、監督:中村義洋、「白ゆき姫殺人事件」製作委員会〔松竹=松竹ブロード
   キャスティング=集英社=ジェイアール東日本企画=ぴあ=博報堂=GyaO!〕、2014年。
  『少女』、監督:三島有紀子、「少女」製作委員会〔東映=木下グループ=ポニーキャニオン=パルコ=
   ファインエンターテイメント=BS日テレ=双葉社=朝日新聞社=ユニバーサル ミュージック/Virgin
   Music=日本出版販売=アルマックスジャパン/ARMAX JAPAN〕、2016年。

 さて、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  湊かなえのベストセラーを、本田翼&山本美月主演で映画化したミステリアスなドラマ。17歳とい
 う多感な時期を迎えた2人の女子高生の姿を通し、それぞれが抱える闇や“死”にまつわる禁断の世
 界を映し出す。監督は『繕い裁つ人』など、ひたむきに生きる人々の姿を美しい映像とともに描いて
 きた三島有紀子。

   〔あらすじ〕

  夏休み、高校2年生の桜井由紀(本田翼)は小児科病棟でボランティアをしていた。夏休みに入る
 少し前、転校生の滝沢紫織(佐藤玲)が「親友の死体を見たことがある」と少し自慢げに話していた
 のを聞いて、言い知れぬ違和感とわずかな羨ましさを覚えたのだ。由紀は、紫織よりも強く死の瞬間
 を目撃したい、そのときを誰よりもおもしろく演出したいと考え、残酷にも短い生命を終えようとし
 ている少年たちと仲良くなり、自らの思いを遂げようとしていた。一方、由紀の親友である草野敦子
 (山本美月)も、由紀には内緒で老人ホームのボランティアに出かけていた。陰湿ないじめのせいで
 生きる気力を失いかけていた敦子は、人が死ぬ瞬間を見れば生きる勇気を持てるのではないかと期待
 していた……。

 他に、真剣佑(牧瀬光=由紀のボーイフレンド)、児嶋一哉(小倉一樹=自殺する国語教師)、菅原大吉
(紫織の父、強制猥褻罪の容疑で逮捕される)、川上麻衣子(由紀の母親)、銀粉蝶(偽善的な「赤ずきん
ちゃん」を演じる中年女性)、白川和子(偏執狂的な性格の由紀の祖母)、稲垣吾郎(高雄孝夫=過去に冤
罪で苦しんだことのある介護職の青年)などが出演している。山本美月が出演しているからか、『絶叫学級』
(監督:佐藤徹也、「絶叫学級」製作委員会〔リバプール=集英社=名古屋テレビ放送=東宝〕、2013年)
を連想した。女子高生の陰湿ないじめは見るに耐えないが、「痴漢」冤罪事件も胸が痛む。とにかく、現代
的な問題の詰った作品であった。
 2本目は、『繕い裁つ人』(監督:三島有紀子、「繕い裁つ人」製作委員会〔関西テレビ=ポニーキャニ
オン=ギャガ=講談社=ダブ=グランマーブル〕、2015年)である。今度は、打って変わって生真面目な作
品である。洋服の仕立て屋を主人公にした物語は珍しく、他に思いつかなかった。呉服屋を舞台にした映画
は過去にいくつかあったが、洋裁店を舞台にした映画が少ないせいであろう。原作は池部葵(漫画家)で、
『Kiss PLUS』という雑誌で連載された由(2009年-2015年)。この原作もちょっと読んでみたい。さて、上
記の作品の一年前に製作された映画であるが、監督のことに少し触れてみよう。<ウィキペディア>によれば、
1969年生れとあるので、飛び抜けて若いわけではなさそうである。その名前も、父親が三島由紀夫に因んで
つけたらしい。何本か作品を撮っているが、この両作品に触れるまで、名前すら知らなかった人である。山
田詠美のように、芥川賞候補になりながら受賞には及ばず、結局直木賞作家になった人といった感じか。つ
まり、芸術的な作品も書けるが、本領はエンタメ作家といったタイプではなかろうか。山田詠美にも三島有
紀子にも失礼な話かもしれないが、そんな想念が浮かんだので、あえて書いておく。
 さて、物語に触れておこう。以下、上と同様。

   〔解説〕

  池辺葵による同名コミックを中谷美紀主演で映画化したヒューマンドラマ。昔ながらの小さな洋裁
 店の女主人と、彼女が仕立てた服を愛用する人たちとの物語がつづられる。三浦貴大、片桐はいり、
 黒木華らが女主人と交流を深める人々に扮し、『ぶどうのなみだ』など優しい雰囲気のドラマで定評
 のある三島有紀子が監督を務める。

   〔あらすじ〕

  祖母が始めた仕立て屋『南洋裁店』を継いだ南市江(中谷美紀)は、古びたミシンをカタカタ言わ
 せて一生ものとなるような服を一着一着丁寧に作っている。昔ながらの職人スタイルを取っているた
 め量産はできず、百貨店の営業・藤井(三浦貴大)からの再三にわたるブランド化の提案も断り続け
 ている。祖母が作った服の仕立て直しやサイズ直しをし、祖母のデザインを流用した新作を作る日々
 に、市江は十分満足していた。しかし、自分がデザインしたドレスを作りたいはずという藤井の言葉
 が、市江の心を動かす……。

 他に、余貴美子(南広江=市江の母)、片桐はいり(牧葵=唯一市江の作品が売られている店の店主)、
黒木華(葉子=藤井の足が不自由な妹)、杉咲花(ゆき=市江の祖母の顧客の娘)、中尾ミエ(泉先生=市
江の恩師)、伊武雅刀(テーラー橋本の店主)、永野芽郁(中田まり=ゆきの友人)、小野花梨(直子=同)、
奥野匡(中田=まりの祖父)などが出演している。大人のメルヘンといった感じの作品で、『食堂かたつむ
り』(監督:富永まい、「食堂かたつむり」フィルムパートナーズ〔ミコット・エンド・バサラ=東宝=ア
ミューズ=キングレコード=TBS=博報堂DYメディアパートナーズ=ポプラ社=SME Records=日本出版販売=
毎日放送=大広=中部日本放送=RKB毎日放送=TSUTAYAグループ=Yahoo! JAPAN〕、2010年)に少し似てい
ると思った。主人公の倫子(柴咲コウ)の母役が余貴美子だったせいかもしれない。ともあれ、腕のよい職
人は魅力的である。日本も職人システムを復活させて、質素でもゆったり生きることのできる社会を築いた
らよいのにと思う。ますます「人の要らないシステム」を加速させて、世界はどこに行こうとしているのだ
ろうか……そんなことを考えさせてくれる映画であった。


 某月某日

 DVDで邦画の『日本の悲劇』(監督:小林政広、モンキータウンプロダクション、2012年)を観た。同名の
映画が以下に挙げるように2本ある。

  『日本の悲劇』、監督:亀井文雄、日本映画新社、1946年〔筆者、未見〕。
  『日本の悲劇』、監督:木下恵介、松竹大船、1953年。

 いずれもまったく異なる作品である。小生からすれば、小林監督が何故今頃になって同じ題名の映画を製
作する気になったのかが理解できない。第一に紛らわしいし、第二にこの映画の内容からして、たしかに社
会問題になっている「無縁社会」を取り上げてはいるが、日本における普遍的な悲劇とも思えないからであ
る。ただし、重要な社会問題を静かに瞶めた姿勢は買えると思う。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『春との旅』に続き、小林政広監督が再び主演に仲代達矢を迎えたヒューマンドラマ。ある家族の
 崩壊を通して日本が陥っている“無縁社会の深淵”を描く。共演は『龍が如く 劇場版』の北村一輝、
 『ぼくはうみがみたくなりました』の大森暁美、『キャタピラー』の寺島しのぶ。

   〔あらすじ〕

  大病を患い入院していた村井不二男(仲代達矢)が、息子の義男(北村一輝)に付き添われて自宅
 へ帰って来る。その日は、不二男の妻・良子(大森暁美)の命日だった。手術をしなければ不二男は
 残り三ヶ月の命だと医師から宣告され、義男は不二男に病院に戻るよう懇願するが、不二男は全く耳
 を貸さない。義男は突然職を失ったことで鬱病を患い、妻・とも子(寺島しのぶ)や子どもとも別れ、
 いまだ生活を立て直せず、不二男の年金を頼りに暮らしていた。そんなある日、不二男は自室を封鎖
 し食事も水も摂ることをやめてしまう。父の狂気に混乱し、怒り、悲しみ、呆然とする義男。一方、
 不二男の脳裏には義男ととも子、そして孫を交えた平凡だが幸福感に満ち溢れた日々が浮かんでは消
 えていくのだった……。

 不二男が入院している間、義男の生活は、毎日スーパーで380円の弁当を2つ買って来て、昼に1個を食べ、
夜に焼酎のつまみとして残りの1個の半分を食べ、翌朝に残りの半分を回すという生活である。一日の生活
費は1,500円。煙草も3日に1箱、すなわち1月45,000円。水道光熱費の15,000円を加えても、1月60,000円
で暮らしている。切り詰めて切り詰めて、爪に火を点して生活してきたと語る。自分はリストラを受け、精
神に異常を来たし、元気だった母親は倒れ、寝たきりになって4年で逝去。大病を患う父親の年金頼りの生
活。追い打ちをかけるように、実家の気仙沼に帰った元妻の消息も、大地震後分らないという設定である。
 もちろん、ここに描かれている義男は不幸の塊に見える。しかし、木下恵介の『日本の悲劇』の主人公で
ある井上春子(望月優子)に感じた哀しみを、この義男に感じることができないのはどうしたことなのか。
北村一輝の演技はけっして稚拙ではないが、どこか時代の甘さを感じてしまう。日本の不幸な母親を演じた
ら右に出る者のいなかった望月優子との貫禄の違いだからか。いずれにせよ、仲代達矢の演じた不二男にも
本当のリアリティを感じることができなかったのは事実である。
 最後に、こんな文字が浮かぶ。

  2010年、日本の自殺者は3万1,560人。
  東日本大震災の死者、行方不明者は約2万人。
  無慈悲にも死者となったひとりひとりに捧ぐ。

 小生にはあらずもがなの文字に見えた。小生のこころが冷淡だからか。一種の「黙示録」としてこの映画
を撮ったのだろうが、どこか「お涙頂戴」の影がつきまとっている。なお、「年金詐欺(すでに死亡してい
る親を死亡していないことにしてその年金を搾取する犯罪)」は、すでに1970年代の三浦哲郎の短篇小説に
描かれていたことを覚えている。悲しい現実だが、本当に「日本の悲劇」なのだろうか。この辺りの事情は、
『家族難民 中流と下流──二極化する日本人の老後』(山田昌弘 著、朝日文庫、2016年、105頁以下)に詳
しい記述がある。
 なお、パート・カラーを用いているが、ありきたりであった。『張り込み』(監督:篠原哲雄、シネロケ
ット=日本トラステック、2000年)の効果的なパート・カラーを思い出したので、余計に陳腐に見えたこと
を記しておこう。


 某月某日

 他者が意味不明の振る舞いをした時、貴兄姉だったらどんな反応を示すだろうか。仮に、小生がある講義
で、「リポートを持って来た人は提出してください」と受講生諸君に呼びかけたとしよう。リポートを持っ
て来た人がその場でそれを提出するのは当然のことだと思うのだが、最近の若い諸君の一部はその場では反
応せず、小生の帰りがけに五月雨式にリポートを提出しようとするのである。なぜ、呼びかけた時に反応し
ないのだろうか。小生には非常に不思議に感じられる事柄である。また、「ここの文章は大事な点が述べら
れている箇所ですから、線を引いておきましょう」と言っても、まったく反応しない受講生がいる。これら
の行為は、多少とも大袈裟な表現を用いれば、《responsibility》(責任)の欠如を意味する。つまり、目
の前にいるはずの小生が見えていないのである。あるいは、見ようとしないのである。    
 《responsibility》は、直訳すれば、「返答能力」となるが、人の呼びかけに返答しようとしない(ある
いは、できない)のだから、少なくとも「共に社会を構築しようとする意思」が希薄であるように見える。
現在の中等教育がどのように行われているのかは判然としないが、ここまで社会的な意思が欠如した若者を
大量生産しているとすれば、何か空恐ろしくなる。これは推測にすぎないが、「何かを言い出すこと」がで
きない、いわゆる「コミュニケーション障害」を引き起こしている要素(たとえば、目立つことを極度に恐
れること)が社会に蔓延しているのであろう。そして、「ゴリ押しができる人」や「厚顔無恥な人」ばかり
が、「何かわけの分らない言葉」を連発し、周囲の大多数の人がそれをおかしいとも思わず、あるいは思っ
てもそれを咎めず、ひたすら我慢しているという構図が見える。彼/女らの重い口を開ける妙案はないが、
「何とかしなければならない」という思いは少しも消えない。少し勇気が要ることであろうが、どんな時に
も「声掛け」は必要である。そうでなければ、「人でなしの国」(漱石、『草枕』)で生きることになりか
ねない。「人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう」……当り前である。


 某月某日

 さて、DVDで邦画の『みだれ髪』(監督:衣笠貞之助、大映東京、1961)を観た。『みだれ髪』と言えば、  
1901年(明治34年)に与謝野晶子が初めて出版した歌集を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。製作  
側にどういう意図があったのかは窺い知れないが、泉鏡花の原作の「三枚続」では映画のタイトルとして映
えないので、この題名に落ち着いたのであろうか。舞台となる時代が明治三十年代なので、その影響もあっ
たのかもしれない。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  泉鏡花の「三枚続」を、『歌行燈』の衣笠貞之助で脚色・監督した悲恋もの。撮影は『弾痕街の友
 情』の渡辺公夫。

   〔あらすじ〕

  明治三十年、東京・深川の材木問屋の娘・勝山夏子(山本富士子)が明石病院にかつぎこまれた。
 怪我をさせたのは両国のどじょう(どぜう)屋の板前・杉本愛吉(勝新太郎)で、酔ってふりまわし
 た一升瓶が夏子の足にあたったのだ。夏子の手当をしたのは山ノ井光起(川崎敬三)という若い医師、
 彼には華族(山小路男爵)の令嬢・貞子(南佐斗子)という婚約者がいた。いつしか光起と夏子は恋
 しあうようになった。光起の仕事を理解するため、夏子はドイツ語塾に通った。が、そこで身分が違
 うといじめられた。これを知った愛吉は塾に怒鳴りこんだ。それが原因で夏子はお出入り禁止、光起
 との交際も禁じられた。しょげる夏子をみる愛吉は、自分の彼女に対する愛を知った。深川の大火で
 夏子の家は丸焼けになった。病身の父と借財のため、夏子は光起をあきらめる決心をした。歳月は流
 れた。芸者になった夏子は小夏と名のり下田に流れていた。彼女を慕う愛吉は、近所の鰻屋“河伝”
 に住みこんでいた。金でなびかぬ小夏に“河伝”の親爺である伝六(西村晃)が熱を上げたために、
 その女郎上がりの女房(角梨枝子)が刃傷沙汰を起し、止めに入った愛吉は馘首になった。夏子は小
 田原に住みかえ、愛吉も後を追った。一日、愛吉の真情を知った夏子は、彼を箱根に誘った。一方、
 貞子との結婚に失敗した光起は悶々の日を送っていた。たまたま熱海に行った光起は、夏子の消息を
 知り料亭相模屋で二人は再会した。その席へ出刃を持った愛吉がとびこんできた。彼は光起の気持を
 誤解したらしく、いきなり彼に切りかかった。それを止めようとして仲に入った夏子の脇腹にささっ
 てしまった。明日は二人で箱根に行くという前夜、愛吉に手をとられながら夏子は寂しく息絶えた。

 他に、花布辰男(山ノ井国俊=光起の父)、中村伸郎(加茂川亘=山小路家と山ノ井家の仲介役)、北林
谷栄(才子=亘の妻、ドイツ語教師)、宮島城司(宗盛)、倉田マユミ(おゆき=勝山家の女中)、殿山泰
司(彦蔵=おゆきの父、「鍛冶彦」を小田原で経営)、佐野浅夫(雁次=軍鶏の「ハグロ」で詐欺を働く男)
〔軍鶏の挿話がこの物語のアクセントになっているが、どうにも取って付けたようで、馴染めない。夏子の
こどもの頃の綽名が「シャモ」というのも同様にピンと来ない。ましていわんや、軍鶏を用いた詐欺は、佐
野浅夫の熱演にも拘らず、結末は拍子抜けであった〕、宮島健一(重助)、南美江(なみ)、賀原夏子(お
その=愛吉の母)、見明凡太朗(栗栖=巡査)、穂高のり子(中村=明石病院の看護婦)、目黒幸子(お八
重=山ノ井家の女中)、田中三津子(君子)、万代敦子(令嬢)、響令子(お玉=下田の女中)、竹里光子
(おはつ)、町田博子(お咲)、宇野良子(のり子=加茂川家の女中)、中田勉(太っちょ)、伊達正(鰻
屋の親爺)、早川雄三(馭者)、武江義雄(芳造=河伝の板前)、宮内順子(おきん)、市田ひろみ(富子)、
耕田久鯉子(浜奴)、花村泰子(かの子)、三角八郎(賭けに加わる男)、丸井太郎(同)などが出演して
いる。
 山本富士子は艶やかだったが、相手役の川崎敬三や勝新太郎とはそぐわない感じが始終付き纏った。誰だ
ったら合うだろうか。市川雷蔵くらいしか思い浮かばないが……。いずれにせよ、勝新の役は、無法松のよ
うに見えた。身分違いの叶わぬ恋はとかくドラマになりがちであるが、あまりにもストレートすぎて、作品
として成功しているとは思えなかった。最後に、北林谷栄のドイツ語教師ぶりには少し驚いたことを記して
おこう。なお、原作の「三枚続」(泉鏡花)は「青空文庫」にあるので、機会があれば読んでみたい。

                                                 
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