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日日是労働セレクト148
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第148弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト148」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 昨日に引き続いて、吉田喜重監督の作品をDVDで観た。『樹氷のよろめき』(監督:吉田喜重、現代映画社、
1968年)である。これで17本目。鑑賞率は八割五分。残る未見の作品は3作になった。果たして、すべてを
観ることができるだろうか。それにしても、この題名、何とかならなかったか。酷い題名だと思う。もっと
も、作品自体は面白く、ありふれた「三角関係」を扱いながら、そこに何らかの新しいものを感じた。二人
の男と一人の女、それだけで物語が成立することの証左であろう。
 物語を確認しよう。例によって、<Movie Walker>の援軍を仰ぐ。執筆者に感謝したい。なお、一部改変し
たが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『女のみづうみ』の石堂淑朗と、『炎と女』の吉田喜重が共同でシナリオを執筆し、吉田喜重が監
 督した、現代の愛のドラマ。撮影はコンビの奥村祐治。

   〔あらすじ〕

  札幌で美容院を経営する安西百合子(岡田茉莉子)は、愛人の高校教師杉野明(蜷川幸雄)と冬の
 旅に出た。彼女はこの旅を最後に杉野と別れるつもりだった。理由を問いつめる杉野に、彼女は妊娠
 していること、それが杉野への愛の終着点であることを述べたが、杉野は逆に百合子への愛をつのら
 せた。支笏湖畔で朝を迎えた百合子は、杉野の目覚める前に旅館を出て、室蘭に向った。そこにはか
 つての恋人、今井和夫(木村功)が待っていた。彼女は今井につき添ってもらい、病院を訪ねたが、
 結果は彼女の想像妊娠にすぎないことが分った。そこへ、百合子を追ってきた杉野が現われた。当然
 のように、百合子をはさんで、杉野と今井は対立した。杉野には、今井が百合子とどんな関係にある
 のか分らなかった。一方、百合子はそんな二人の男を後に、ニセコ温泉に向った。杉野と今井も彼女
 の後を追いやがて雪の温泉町に着いた。百合子は、そこで初めて杉野に、今井をかつて愛したことが
 あるが、今井が不能だったため別れたこと、そして今井が三年後に男性を取戻したことを打明けた。
 だが、杉野と今井の間は、一層、険悪になっていった。翌朝、今井と言い争って杉野は雪山に飛び出
 して行った。夜、百合子と今井は不安に駆られて、杉野を探しに出かけ、山小屋で睡眠薬を飲んでふ
 らついている杉野を発見した。杉野は異様な状態の中で、百合子を抱きすくめた。それを見た今井は、
 その場を去ったが、今度は杉野と百合子が今井の後を追った。追いついた杉野は、不能のために百合
 子と別れたという今井の秘密を、今井にぶちまけた。しかし、今井は泰然としてとりあわない。業を
 煮やした杉野は自ら崖から身を躍らせた。冷たい雪の中で暗然と杉野の死顔に見入っていた今井の耳
 に、百合子の絶叫が響いた。

 他に、赤座美代子(祥子=杉野と関係のあるらしい女)、藤原祐子(今井の妻=ただし、登場しない。も
しかすると、このDVD版では登場シーンがカットされているのかもしれない)、高木孔美子(女教師=同)、
松井信子(美容師)、矢木原敬(杉野の住む団地の隣人)、岡田美智子(踊る女の子)、嶽石裕子(同)、
鈴木かおる(同)などが出演している。ニセコの雪原のシーンはなかなかよかった。男と女の熱い恋愛との
対比が鮮やかだからである。
 さて、次に、DVDでサイレント映画の『御誂治郎吉格子(おあつらえじろきちごうし)』(監督:伊藤大輔、
日活太秦、1931年)を観た。監督は伊藤大輔、撮影は唐澤弘光、主演は大河内傅次郎、このトリオは、たく
さんの傑作をものしたと言われている。たしかに、面白かった。DVDの解説は映画評論家の佐藤忠男が当たっ
ているが、その著書『日本映画300』(朝日文庫、1995年)にも文章を載せているので、それを以下に引
用させていただこう。

  昭和初期に一世を風靡した、伊藤大輔脚本監督、唐沢弘光撮影、大河内傳次郎主演の一連の時代
 劇のなかで、ほぼもとのかたちで保存されているただ一本の作品がこれである。このトリオの作品
 は緩急自在なストーリーの展開の仕方が絶妙であり、カメラワークがまた踊るが如く軽やかで、し
 かもその中で演技が強いメリハリをもってきまる。そういう日本映画の到達した最初のひとつのス
 タイルがどんなものであったかが分る貴重な映画である。大河内傅次郎が演じているのは泥棒の鼠
 小僧治郎吉である。きりりとひきしまったいい男であり、剛直であると同時に、いきでいなせで、
 義理人情をわきまえた男である。
  鼠小僧は言うまでもなく誇り高き義賊である。盗みはすれども非道はせず、大名屋敷専門に泥棒
 をやって、盗んだ金は貧民にほどこしている。ところが、自分ではいいことをやっているつもりで
 も、彼に盗まれた大名屋敷に仕えていたある侍はその責任をとらされて浪人し、貧しい生活におち、
 その娘は身売りでもしなければならないような境遇になっている。偶然彼女と知りあい援助の手を
 さしのべた鼠小僧は、彼女の純情さにひかれてゆく。それを嫉妬するのが現在鼠小僧と同棲してい
 る伏見直江の姐御肌の情婦。鼠小僧は侍の娘が売られてゆこうとするとそれを助けるために危険を
 おかして行動するし、その鼠小僧を捕手たちが取り囲むと、情婦は二人を嫉妬していたにもかかわ
 らず、とっさに彼の身替りになって川へとび込んで捕手たちの注意をそらし、彼を逃がしてやる。
  鼠小僧のような泥棒が、かわいそうな娘を助けて死地にとびこんでゆくというのは、義賊だから
 正義をするのは当り前だ、というのではなくて、どんな下らない人間にも一片の自尊心ぐらいはあ
 る、という気持の美化された表現なのである。その情婦のとっさの自己犠牲もまたしかり。こうい
 う美化は、現実的な描写に縛られている現代劇では容易にやれないが、かなり極端な行動をやらせ
 てもまことしやかに見える時代劇では、それがスパッとやれる。それに封建社会ののほうが、人間
 の差別も露骨だし、それに対して主人公が意地をはって、生きるの死ぬのというきっぱりした行動
 をしておかしくない。だから時代劇では、意地のドラマというのがくっきりと成り立つのである。
  純情な娘を演じたのは伏見信子。姐御肌の女を得意にした伏見直江の実の妹である。

 出演者は、大河内傅次郎(鼠小僧治郎吉/その偽物の道中師)、伏見直江(おせん〔お仙〕)、伏見信子
(お喜乃)、高勢實乗〔たかせみのる〕(床屋仁吉/目明し仁吉)、山本禮三郎(與力重松/同心重松)、
山口佐喜雄(やッちゃろの丑=仁吉の子分)などである。なお、弁士は澤登翠である。
 さらに、短篇のサイレント映画を2本観たので報告しよう。1本目は、『弥次喜多・尊王の巻』(監督:
池田富保、日活、1927年)である。冒頭から、面白いわらべ歌が聞えてくる。

   菊は/二度咲く/葵は枯れる/西に/轡の音がする
   肉と骨とで/徳川堰いて/三葉葵を/血で枯らす

 もちろん、官軍が徳川幕府を倒す有様を歌っているが、それに荷担した弥次さん(河部五郎)と喜多さん
(大河内傅次郎)が幕府側に捕縛される。そこに通りかかった喜多さんの妹の染香(酒井米子)と勤王志士
である安田雄二郎(葛木香一)。安田は大の幕府嫌いであるから、当然のごとく打って出るが、多勢に無勢
で、弥次さんと喜多さんの代わりに捕縛されてしまう。これを助けようとするご両人、安田を助けることは
できなかったが、代わりに大泥棒の山嵐(新妻四郎)を助ける。さて、ご両人は、今後安田を救えるや否や、
で終幕。弥次さん喜多さんとあるが、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』とはだいぶ様相が違う作品である。
もっとも、滑稽さを狙っているところや、バディものとしての結構は同作から借りたものであることは間違
いない。
 2本目は、『弥次喜多・鳥羽伏見の巻』(監督:池田富保、日活、1928年)である。この作品も、あの有
名な軍歌・行進曲である「トコトンヤレ節(トンヤレ節)」(作詞:品川弥二郎、作曲:大村益次郎、1868
年)〔ただし、確証はなし〕から始まっている。

   宮さん宮さん/御馬の前に/チラチラ見ゆるは/アリヤなんぢゃ/トコトンヤレ/トンヤレナ
   あれは朝敵/征伐せよとの/錦の御旗を/知らないか/トコトンヤレ/トンヤレナ

 弥次さん(河部五郎)と喜多さん(大河内傅次郎)は、今度は官軍に加わって「鳥羽伏見の戦い」〔クレ
ジットの一部では、「伏見鳥羽の巻」となっている〕に参加している。『弥次喜多・尊王の巻』で助けた、
例の山嵐(新妻四郎)が第三組の組長として彼らの上司となっている。最後は、二人だけで、朝敵に向って
突貫するという巻である。
 どちらの作品も弁士は澤登翠で、とてもサイレントとは思えない出来である。もっとも、滑稽さの質は低
調で大して笑えない。先輩の河部五郎と共演した、名優大河内傅次郎のコメディアンぶりを愉しむ作品と言
えようか。
 もう1本、ジャパン・アニメの『機動警察パトレイバー 劇場版』(監督:押井守、バンダイ=東北新社、
1989年)を観た。最近鑑賞した『WXIII〈ウェイステッドサーティーン〉 機動警察パトレイバー』(監督:
遠藤卓司、バンダイビジュアル=東北新社、2002年)〔第3作〕の第1作目に相当する。これもまたよくで
きた作品で、予定調和的とはいえ、随所に見所があった。Jアニメの面目躍如といったところであろう。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  近未来の東京を舞台にコンピュータ犯罪を解明していく警察の活躍を描く人気OVAアニメの映画
 化。脚本は『紅い眼鏡』の伊藤和典、監督は同作の押井守がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  1999年の東京。工事現場など生活の至るところでレイバーと呼ばれるロボットが活躍。警察でもパ
 トレイバーが導入されていた。ちょうどその頃、レイバーは更新時期に入り、頭脳を操るコンビーュ
 ータOSはHOSという新型OSに書き換えられていた。ある日、自衛隊レイバーを始めとするレイ
 バーの謎の暴走事故が発生、特車二課が調査に乗り出した。東京を壊滅できるだけのコンピュータ・
 ウイルスが仕掛けられた計画的犯罪で、HOSが関係しているとわかるが、その開発者は自分のデー
 タを消して姿をくらましていた。東京湾岸では東京の土地問題を一挙に解決しようと今世紀最大の洋
 上工事計画=バビロン・プロジェクトが推進されていた。ここには全国で稼動中の45%のレイバーが
 集中し、その整備は洋上プラットホーム=方舟で行われていた。やがて特車二課はHOSがある条件
 下で暴走することをつきとめる。一定の風速を越えた際に生じる高周波によるもので、そのキーは方
 舟だった。そしてその日は刻々と迫っていたのだった。大型台風が東京湾に接近中であった。特車二
 課の面々は台風上陸前に方舟を解体しようと乗り込むが、作業途中でHOS搭載済みのレイバーたち
 が暴走を始めてしまう。襲いかかるレイバーたち。その中でなんとか方舟の自己崩壊システムを起動、
 方舟は崩壊し危機は過ぎ去るのだった。

 声の出演者は、古川登志夫(篠原遊馬=巡査)、冨永みーな(泉野明=同)、大村隆介(後藤喜一=警部
補)、榊原良子(南雲しのぶ=特車二課課員)、井上瑤(香貫花クランシー)、池永通洋(太田功)、二又
一成(進士幹泰)、郷里大輔(山崎ひろみ)、千葉繁(シバシゲオ)、阪脩(榊清太郎=車両整備の神様)、
辻村真人(実山剛=篠原重工工場長)、西村知道(松井刑事)、小島敏彦(海法部長)、小川真司(福島)、
辻谷耕史(片岡)、林原めぐみ(テレビの天気予報レポーター/政府広報ナレーション)、子安武人(方舟
の篠原重工のスタッフ/ウェイター/特車二課の整備員)、立木文彦(暴走レイバーの運転手)、平井隆博
(指揮官)、西村智博(警官)、佐藤政道(技師)、菅原正志(警視庁幹部)、梁田清之(パイロット)、
中嶋聡彦(アナウンサー)である。


 某月某日

 DVDで邦画の『炎と女』(監督:吉田喜重、現代映画社、1967年)を観た。吉田喜重監督の作品は難解と
相場は決まっているが、当該作品もその例に漏れず、不思議な味わいであった。彼の作品は、以下のように、
16本観ている。彼の監督作品(長編映画)は全部で20本あるらしいので、鑑賞率は八割である。できれば全
部観たいが、さてどうなるか。

  『血は渇いてる』、監督:吉田喜重、松竹大船、1960年。
  『甘い夜の果て』、監督:吉田喜重、松竹大船、1961年。
  『秋津温泉』、監督:吉田喜重、松竹大船、1962年。
  『嵐を呼ぶ十八人』、監督:吉田喜重、松竹京都、1963年。
  『日本脱出』、監督:吉田喜重、松竹大船、1964年。
  『水で書かれた物語』、監督:吉田喜重、中日映画社=現代映画社、1965年。
  『情炎』、監督:吉田喜重、現代映画社、1967年。
  『炎と女』、監督:吉田喜重、現代映画社、1967年。
  『さらば夏の光』、監督:吉田喜重、現代映画社、1968年。
  『エロス+虐殺<ロング・バージョン>』、監督:吉田喜重、現代映画社、1969年。
  『煉獄エロイカ』、監督:吉田喜重、現代映画社=ATG、1970年。
  『告白的女優論』、監督:吉田喜重、現代映画社、1971年。
  『戒厳令』、監督:吉田喜重、現代映画社=ATG、1973年。
  『人間の約束』、監督:吉田喜重、西部セゾングループ=テレビ朝日=キネマ東京、1986年。
  『嵐が丘』、監督:吉田喜重、セゾングループ、1988年。
  『鏡の女たち』、監督:吉田喜重、グループコーポレーション=現代映画社=ルートピクチャーズ=
   グループキネマ東京、2002年。

 当該作品は、16作品の中ではかなり地味な出来で、たぶん時が経てば跡形もなく記憶から消え去りそうな
ぐらいである。もっとも、それだから駄作というわけでもなく、それなりに訴えかけてくるものもあるには
ある。小生の好みからすれば、『人間の約束』が飛び抜けて素晴らしいと思うので、それと比べればやはり
質が落ちると言わざるを得ない。彼は、好んで難しいテーマを選ぶが、当該作品のそれは「人工授精」であ
る。最近観た映画の『不信のとき』(監督:今井正、大映東京、1968年)でも、この「人工授精」が登場す
るが、この作品でもその方法で妊娠する女性の役を演じているのは岡田茉莉子である。偶然とは思えない配
役なので、何かつながりがあるのかもしれない。こちらの作品で夫を演じているのは田宮二郎だが、当該作
品の夫役の木村功同様、どこか割り切れない佇まいを見せている。法律上はその子どもの父親でありながら、
「自分の血を分けた子どもではない」という事実は、複雑な感情を生み出すのだろうか。一般に血縁信仰は
根強く、それ自体大事なことなのだろうが、小生のように子どものいない人間からすれば、そこまで入れ込
ませるものは一体何だろうかと思ってしまう。誰の血を分けた子どもであろうと、現に生きている人間に変
わりはないのだから。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『情炎(1967年)』の吉田喜重と、『無理心中 日本の夏』の田村孟、山田正弘の三人が共同でシ
 ナリオを執筆し、吉田喜重が監督した、「人工受精」をテーマとした心理ドラマ。撮影は岩波の奥村
 祐治。

   〔あらすじ〕

  造船技師伊吹真五(木村功)と立子(岡田茉莉子)の間には一年七ヵ月のひとり息子鷹士(小川出)
 があり、家庭は一見したところ幸福そうに見えた。だが鷹士は人工受精によって生れた子どもで、そ
 れが夫婦の間を微妙なものにしていた。この家には、真五の友人の医師で、人工授精の施術者だった
 藤木田(北村和夫)と、かつてその弟子だった坂口健(日下武史)と妻のシナ(「小川真由美)が出
 入りしていたが、真五は当時、貧しい医学生だった坂口が精子の提供者なのを知っていながら交友関
 係を結んでいたのだった。ある日、鷹士がいなくなった。帰宅した真五は立子を責めた。藤木田と坂
 口がちょうど来合せた時、立子は、実はシナが鷹士を連れていったのだがどういうわけか、何も言え
 なかったと語った。真五は黙り、坂口と藤木田も複雑な思いで沈黙した。立子は鷹士の父が坂口なの
 を知っていたし、シナが鷹士を、立子と坂口の姦通で生れた子と思い込んでいるのも知っていた。い
 ずれにしても立子は、鷹士が真五と自分の子どもであると確信するためには坂口との関係を明確にし
 なければならないと思った。やがてシナが鷹士を連れて戻ってきた。翌日、鷹士を連れた立子は坂口
 を誘って軽井沢の別荘にやってきた。一方、シナはこの二人に復讐するためと言って真五を誘惑した。
 だが真五は、自分と立子が坂口を買い、坂口は精子を売ったに過ぎない、と言ってことのすべてを話
 し、シナを拒断したのだった。別荘で坂口と寝た立子は、一つの結論を得た。それは、鷹士が真五の
 ものでも、坂口のものでもなく、他ならぬ自分だけのものであるということだった。翌朝の別荘の前
 に、真五の車が立子を迎えに来ていた。真五は、「家に帰ります」という立子に安らぎに似た微笑を
 浮べながら、「鷹士が僕の子であることに間違いはないのだから」と確信あり気に坂口に言うと、親
 子三人で何事もなかったように別荘を去っていった。

 他に、早瀬操(江川あかね=真五の昔の彼女)、細川俊之(髭男=この物語の狂言回し)などが出演して
いる。当該作品は、『情炎』(監督:吉田喜重、現代映画社、1967年)〔「日日是労働セレクト29」、参
照〕直後の作品であるが、吉田監督の意図が少し空回りしていた時期ではないだろうか。両作品は似ている
が、現代では平凡すぎる題材と言わざるを得ない。ただし、挿話として、「寿産院事件」は少しだけ小生の
興味を惹いた。終戦直後の産院(女性経営者)の話である。その産院では、自宅で育てられない嬰児を預か
って保育する事業を手掛けており、食料不足の折柄、国から砂糖やミルクの配給を受けていた。ところが、
それらの配給品を闇に流して儲けており、多くの嬰児が餓死したというものである。この事件は実話から取
材したもののようなので、その詳細を以下に示そう(ウィキペディアより)。

  寿産院事件:1944年(昭和19年)4月から1948年(昭和23年)1月にかけて東京都新宿区で起こった
        嬰児の大量殺人事件。被害者の数は103人というのが有力だが、正確な数は判明してお
        らず、推定被害人数は85人から169人の間とされる。

   概要

  第二次世界大戦後のベビーブームのおり、大量の嬰児が寿産院に預けられていたが、同院では嬰児
 に対する虐待が常態となっており、また、凍死、餓死、窒息死などさまざまな死因で亡くなっていた。
 寿産院を経営する夫婦は乳幼児を貰い受けるなどとした新聞広告などによって200人以上の乳幼児を集
 め、親から1人につき4,000円から5,000円の養育費と東京都からの補助金と配給品を受けとりながら
 配給品を闇市に横流しするなどして食事をろくに与えずに100人以上を死亡させた。

   発覚

  1948年(昭和23年)1月12日、偶然パトロールしていた警官2人が東京・新宿区弁天町で夜中にみか
 ん箱を運ぶ葬儀屋に対し事情聴取を試み、その中に嬰児の死体4体が入っていることを確認した。1月
 15日、新宿区柳町で「寿産院」を経営する主犯の石川ミユキ(当時51歳)と夫の猛(当時55歳)が殺
 人容疑で逮捕された。ミユキは東大医学部産婆講習科を経て産婆となり、牛込産婆会の会長を務めて
 いたほか、新宿区議会議員選挙に出馬したこともあった(落選)。猛は憲兵軍曹から警視庁巡査も務
 めたことのある人物だった。葬儀屋は釈放されたが、夫婦と助手の3人は起訴され、診断書を偽装し
 ていた医師もまた起訴された。
  死亡届を簡単に受理していた新宿区役所の態度にも疑問が示されたが、当時の新宿区区長や当該課
 長は「書類を見て判断した」とコメントした。

   顛末

  東京地方裁判所では主犯女性に懲役8年、夫に懲役4年、助手は無罪、医師は禁固4年の判決。1952
 年(昭和27年)4月、東京高等裁判所は主犯女性に懲役4年、夫には懲役2年の判決を下した。主犯夫
 婦達のその後は確認できず、寿産院のあった現場は現在空地になっている。
  この事件について当時は子どもの出生から判断され、世間では「殺されても仕方がなかった」との
 声もあったが、この反応について評論家の宮本百合子は、「正当な子ども、正当でない子どもという
 のは子どもにとってどんな区別があることでしょう」と述べていた。嬰児達の遺体は現場近くの宗円
 寺に土葬された後に無縁塔に移され合葬され、土葬された場所には慰霊地蔵が建立されている。

 終戦直後のことでもあり、現代人が判断しかねる事件であるが、主犯女性の量刑は軽いような気がする。
もっとも、この時期のことでもあり、これが妥当だったのかもしれない。
 ところで、当該作品の中で精子提供者と目されている坂口は、この事件がきっかけで医者になったようだ
が、「命をモノとして扱うこと」の是非を問うている。「人工授精」という生殖技術は、いまだに議論を呼
ぶ案件であるが、少なくとも関係者は普通ではいられないようである。
 また、真五の「子どものない家庭(うち)は、エンジンのない船みたいなものだ」という台詞があった。
「動かない船は船じゃない」と結論する考えだが、船は人力でも漕げるので、動かないわけではない。大い
なる偏見だと思った。


 某月某日

 DVDでジャパン・アニメの『WXIII〈ウェイステッドサーティーン〉 機動警察パトレイバー』(監督:遠藤
卓司、バンダイビジュアル=東北新社、2002年)を観た。今月に入ってから初めての映画鑑賞である。あま
りに忙しかったので、映画どころではなかったからである。久し振りだったので、随分楽しんだ。どこで知
ったのかは覚えていないが、さすがに評判のよいアニメは面白い。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  絶大な人気を誇るシリーズの最新作が登場。東京湾に現れた怪物を巡る闘いを描く、サスペンス・
 アクションだ。押井守脚本のマニアックな短編集「ミニパト」も同時上映。

   〔あらすじ〕

  昭和75年、東京。湾岸地帯で発生した連続レイバー襲撃事件。捜査にあたった警視庁城南署の刑事
 である秦真一郎(声:平田広明)と久住武史(綿引勝彦)は、備蓄基地で人間を喰い殺す巨大な怪物
 に遭遇する。残された肉片から、怪物がニシワキセルと言う、隕石に含まれていた物質・ニシワキト
 ロフィンの研究中に培養された細胞体と、人の癌細胞の融合体であることが判明。さらに、それが米
 軍と自衛隊の依頼を受けて東都生物医学研究所が開発した生物兵器で、レイバーが起動中に発する超
 音波に反応し襲撃したことや、しかもその生物兵器の研究に携わっていたのが、秦が捜査の過程で知
 り合い秘かな想いを寄せるようになっていた岬冴子(田中敦子)という研究員で、彼女はその研究に
 幼くして亡くした娘の一美(鈴木里彩)の癌細胞を使っていたことなどが次々と明らかになっていく。
 そんな中、怪物壊滅作戦が発令されイングラム出動が決まった。壮絶な戦いの末、怪物を退治するこ
 とに成功するイングラム。だが、冴子も怪物の後を追うように自ら命を落としてしまう。数日後、冴
 子の墓に詣でる秦。同じ頃、自衛隊の圧力によって隠蔽された筈の事件は、内部告発者によって公の
 ものとなっていた。

 他に、穂積隆信(栗栖敏郎=東都生物医学研究所所長)、拡森信吾(宮ノ森静夫=同研究員)、森田順平
(石原悟郎=陸上自衛隊一佐)、池田勝(大隈課長)、納谷六朗(岬至毅=冴子の舅)、斉藤晶(岬喜江子=
同じく姑)、大林隆之介〔現 隆介〕(後藤喜一)、冨永みーな(泉野明)、古川登志夫(篠原遊馬)、池水
通洋(太田功)、二又一成(進士幹泰)、郷里大輔(山崎ひろみ)、矢野陽子(舞台女優)、小島敏彦(海
法警視総監)、大森章督(山寺警備部長)、亀山助清(三村巡査)、橋村琢哉(岸田技官)、ポール・ルカ
ス(ディレクター)、ジャニカ・サウスウィック(通訳)、中野雷太(ラジオのアナウンサー)、白川次郎
(気象通報)などが声の出演をしている。おそらく、この手の映画を愛好している人は、細部にまで注意を
注いでいるだろうが、小生は「相変わらずモンスターの描き方は平凡だなぁ」と思いながら観ていた。典型
的なストーリー展開なので、もう少し捻りが欲しかったが、それはないものねだりなのだろう。

                                                  
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