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日日是労働セレクト146
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第146弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト146」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『金融腐蝕列島 〔呪縛〕』(監督:原田眞人、「金融腐蝕列島 〔呪縛〕」製作委員会〔東映= 
角川書店=産経新聞社〕、1999年)を観た。今年の邦画の鑑賞テーマは「社会派映画」だが、それにふさわ  
しい内容だった。原田監督は米国で腕を磨いてきた監督だが、以下のように6本が鑑賞済みである(鑑賞率
は二割五分)。いずれも骨太の「社会派エンターテインメント」作品であり、とくに『クライマーズ・ハイ』
は、小生の一押し映画である。当該作品はかなり以前より知っており、長らく観たいと思っていたのである
が、なぜかTSUTAYAのラインナップには入っておらず、今回DVDを購入しての鑑賞である。

  『金融腐蝕列島 〔呪縛〕』、監督:原田眞人、「金融腐蝕列島 〔呪縛〕」製作委員会〔東映=角川書店=
   産経新聞社〕、1999年。
  『突入せよ! 『あさま山荘』事件』、監督:原田眞人、あさま山荘事件製作委員会=東映=東京放送=
   アスミック・エンタテインメント=産経新聞社、2002年。〔「日日是労働セレクト」に記述なし〕
  『魍魎の匣』、監督:原田眞人、「魍魎の匣」製作委員会〔エムシーエフ・プランニング2=ジェネオン
   エンタテインメント=ショウゲート=朝日放送=バンダイネットワークス=小椋事務所〕、2007年。
   〔「日日是労働セレクト62」、参照〕
  『クライマーズ・ハイ』、監督:原田眞人、「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ〔ビー
   ワイルド=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント=トゥモロゥー〕、2008年。
   〔「日日是労働セレクト140」、参照〕  
  『日本のいちばん長い日』、監督:原田眞人、「日本のいちばん長い日」製作委員会〔松竹=アスミック・
   エース=テレビ朝日=木下グループ=WOWOW=巌本金属=読売新聞社=中日新聞社〕、2015年。
   〔「日日是労働セレクト124」、参照〕
  『駆込み女と駆出し男』、監督:原田眞人、「駆込み女と駆出し男」製作委員会〔松竹=バンダイ
   ビジュアル=ポニーキャニオン=アスミック・エース=こまつ座=松竹ブロードキャスティング=
   博報堂=ワコー=朝日新聞社=ぴあ〕、2015年。
   〔「日日是労働セレクト126」、参照〕

 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   〔解説〕

  腐敗した大銀行を再生すべく、立ち上がった中堅行員たちの姿を活写した社会派ドラマ。監督は、
 『バウンス ko GALS』の原田眞人。高杉良によるベストセラー小説を基に、高杉良、鈴木智、木下麦
 太が共同脚色。撮影に『オサムの朝』の阪本善尚があたっている。主演は、『ニンゲン合格』の役所
 広司と『宮澤賢治 その愛』の仲代達矢。

   〔あらすじ〕

  1997年、東京・日比谷。丸野証券の利益供与事件による総会屋・小田島敬太郎(若松武史)の逮捕
 により、300億円という不正融資疑惑が持ち上がった朝日中央銀行(ACB)本店に東京地検特捜部の
 強制捜索が入った。ところが、ACBの上層部は責任を回避しようとするばかり。そんな上層部の姿
 勢に腹を立てた“ミドル4人組”と呼ばれる企画部次長の北野浩(役所広司)、同部MOF担の片山
 昭雄(椎名桔平)、同部副部長の石井卓也(矢島健一)、広報部副部長の松原秀樹(中村育二)らは
 ボード(役員)を総辞任させ、“ブルームバーグ・テレビジョン”のアンカーウーマンである和田美
 豊(若村麻由美)の力を借りて新頭取に中山公平常務(根津甚八)を推すと、真相調査委員会を結成。
 ACBを闇社会や古い慣習などの“呪縛”から解き放ち、再生させようと東奔西走する。しかしそん
 な事態に至ってもなお、佐々木英雄相談役(仲代達矢)だけは最高顧問としてACBに居座ろうとし
 ていた。佐々木の娘婿でもある北野は、身内と対決しなければないないことに苦悩しながらも、小田
 島と佐々木の癒着が記された自殺した久山隆取締役相談役(佐藤慶)の遺書を武器に彼を辞職、逮捕
 へと追い込む。それから数日後、ACBの株主総会が行われた。中山新頭取を中心に、北野たちは闇
 社会とのつながりや行内の膿を放出することを株主に確約してこれを乗り切ることに成功。こうして、
 ACBは再生への一歩を歩き始めるのであった。

 他に、風吹ジュン(北野今日子=佐々木英雄の娘、北野浩の妻)、石橋蓮司(中澤専務)、遠藤憲一(大
野木検事)、もたいまさこ(一条弁護士)、本田博太郎(陣内新副頭取)、黒木瞳(佐藤弘子=久山隆の秘
書)、丹波哲郎(川上多治郎=通称「カワタジ」、闇世界の大物)、多岐川裕美(青木伸枝=佐々木英雄の
愛人)、梅野泰靖(坂本頭取)、小林勝彦(今井会長)、山本清(吉野副頭取)、勝部演之(太田副頭取)、
内藤武敏(唐沢=株主790番)、山崎清介(森田=企画部部長)、大高洋夫(西田=企画部)、金子和(宮
本=同)、大西智子(大津=同)、木下ほうか(永山=同)、岸博之(渋沢=総務部部長)、田口トモロヲ
(気の弱い守衛)、村上淳(危険な通行人=石井が撃たれる)、本宮泰風(見つめる青年=北野にプレッシ
ャーをかける若者)、高杉良(激励する弁護士)、佐高信(辛口評論家)、遊人(クリス・ゴタンダ)、古
本恭一(トク)、フィリップ・シルバーステン(チーフ)、今井あずさ(白木レポーター)、大城英司(赤
星記者)、大門修三(茶器記者)、中村亮(クラリネットの浮浪者)、梅沢健祐(株主対策の弁護士)、康
すおん(株主189番)、井之上隆志(同15番)、並樹史朗(同21番)、殺陣剛太(株主)、井上肇(伊良部事
務官)、水上竜士(池ノ上検事)、光岡湧太郎(伊場事務官)、加藤満(牛島弁護士)、青木鉄仁(両角弁  
護士)、吉家明仁(塩谷弁護士)、本郷弦(大蔵省梶原課長補佐)、三浦春馬(北野浩一=浩の息子)、大
谷玲凪(北野レナ=同じく娘)、町田政則(執行官)、吉崎典子(アナウンサー)、児玉謙次(横柄な弁護
士A)、藤田宗久(同じくB)、高山裕也(溝之口検事)、イアン・エドワード(A.メドーズ博士)など
が出演している。
 劇中、にわかには了解できない言葉(あるいは、それに類すること)がいくつか出てきた。以下、それを
簡単に記しておこう。

 Aライン/Cライン:合併する以前の旧行意識が働く際の派閥。もちろん、Aラインは旧朝日銀行、
           Cラインは旧中央銀行。どうやら、Aラインの方が格は上らしい。
 MOF坦:(ウィキペディアより)MOF担(モフたん)とは、都市銀行や証券会社などの大手金融
      機関のミドルオフィスに所属し、大蔵省(現: 財務省、Ministry of Finance)に頻繁に出
      入りし、さまざまな情報を官僚から聞き出す「対大蔵省折衝担当者」の俗称である。
       金融検査の検査日などを聞き出したり、官僚と懇意になって、新しいプロジェクトの根
      回しをするなどが主な仕事であったが、ノーパンしゃぶしゃぶ店での接待が社会問題化し、
      1998年には大蔵省接待汚職事件で逮捕者を出すまでに発展した。
       中央省庁再編により、金融行政が大蔵省から金融庁へ分離され、金融行政は金融庁の管
      轄になり、この俗称自体は消滅したが、同様の仕事は金融庁に対してFSA担(Financial    
      Services Agency)と呼ばれ存在するという。また、日本銀行に対してはBOJ担(Bank
      Of Japan)と呼ばれる。
 別路線:比較的若い中山公平常務が新頭取になれたのも、総務・審査・営業部門とは無縁だったから
     である。
 武勇伝:調査委員会の陣内常務(新副頭取)は店舗開発部にいたころより佐々木の世話になっている
     が、その佐々木に、フランスでの失態(B.B.の使用していたトイレのドアを開け、あろうこ
     とか「メルシー」と言ってしまったこと)を暴露される。もちろん、佐々木の調査委員会に
     対する牽制球だが、北野は軽くいなしてことなきを得ている。
 プラットホームは真ん中を歩け:いわゆる「押し屋(国鉄が初めて採用した職業ではない方の押し屋)」
                に気をつけろという意味。興味のある人は、伊坂幸太郎の小説『グ
                ラスホッパー』を参照されたし。

 なお、<ウィキペディア>にこの作品に対する詳しい解説があるので、それも引用しておこう。同じく、執
筆者に感謝したい。

  金融腐蝕列島〔呪縛〕

  1999年、東映・角川書店・産経新聞により、監督に原田眞人を起用し劇場映画化された。原作は『呪
 縛』。主題歌は中山美穂が唄う『Adore』。
  ストーリーは概ね原作と同じである。映像作品ならではの特徴としては、日比谷公園を中心に据えた
 描写が挙げられる。第一勧業銀行本店、東京地方検察庁(検察合同庁舎)、記者会見を開く日本記者ク
 ラブのプレスセンタービル、金融行政を牛耳る大蔵省、役員らが密談を開いた帝国ホテルは、すべて日
 比谷公園を取り囲むように実在している。ただ、さすがに第一勧銀本店ビルはロケで使われず、異なる
 ビルがACB本店としてロケで使用された。日比谷公園を行き交うように物語が進行するカメラワーク
 が見られる。原作にはない展開として、ブルームバーグテレビジョンの女性アンカーが登場する。新聞
 連載の小説で、従来はいなかった女性が原作読者層として加わっていたことを受けて、映画化にあたっ
 ての宣伝ターゲットを拡大するために導入されたと見られる。銀行や大蔵省と並んで旧態依然とした体
 質のマスメディアについてや、女性の雇用環境を巡るジェンダーの観点からの描写を作品に加えている。
  主演は北野役の役所広司、佐々木相談役役の仲代達矢。共演にMOF担の椎名桔平、矢島健一、中村
 育二(以上「4人組」)。この他、東京地検特捜部を率いる遠藤憲一、北野の妻役の風吹ジュン、ブル
 ームバーグのアンカーの若村麻由美、真相調査委員会の弁護士のもたいまさこ、新経営陣に根津甚八、
 本田博太郎、石橋蓮司、自殺した元会長の佐藤慶、その秘書に黒木瞳、佐々木の愛人に多岐川裕美、事
 件の発端となる総会屋に若松武史、特別出演でフィクサーに丹波哲郎らが出演。無名塾出身の俳優の名
 前が多数見られる。オダギリジョー(記者役)の映画デビュー作でもある(本名の「小田切譲」名義)
 他、子役時代の三浦春馬も出演している。
  特徴的な出演者としては、原作者の高杉良自身が出演(ACBの株主総会直前に北野を激励する顧問
 弁護士役)している。また、高杉と親しい佐高信が、テレビ番組内の「辛口評論家」役として登場する。
 撮影当時にフジテレビアナウンサーだった吉崎典子も、そのままアナウンサー役で出演している。
  プロデューサーの原正人が1997年の『金融腐蝕列島』を映画化しようと準備していたが、なかなか進
 まなかった。1998年『呪縛 - 金融腐蝕列島2』の連載が産経新聞で始まるが、モデルとなった第一勧
 業銀行は角川書店のメインバンクで、自殺した第一勧業銀行元頭取は、角川春樹が解任後に角川歴彦が
 社長になった際、会社再興を応援してくれた人物でもあり、映画好きだった元頭取と親交のあった原と
 角川歴彦が、元頭取のオマージュとして本作を製作した。原が東映・岡田茂会長(当時)に配給を頼ん
 だが、岡田から「これは客が来ないよ。やめた方が良いんじゃないか」と言われたが、完成した映画を
 観た岡田は「やあ面白いの作ったなあ。こんな映画になると思わなかったよ」と言ったという。興行成
 績はヒットまではいかないまずまずの結果だった。
  地上波テレビでは2001年10月6日にフジテレビの「ゴールデンシアター」で放映された後、地方局の
 深夜映画枠でも放映されている。

 「株主総会もの」は子どものころから観ているが、金融とか経済とかに関心の薄い小生でも面白いと思う。
それは「裁判もの」にも通底する要素で、要するに腥い「人間ドラマ」がそこにあるからだろう。皆が皆、
必死に演技合戦を繰り返すが、どこか滑稽である。この映画で言えば、仲代達矢が扮した佐々木英雄など、
まったく噴飯ものと言わざるを得ない人物像である。高級ワインに凝るところなど、児戯に等しく見えた。


 某月某日

 DVDで邦画の『不信のとき』(監督:今井正、大映東京、1968年)を観た。通俗メロドラマだが、いろいろ  
工夫の跡も見え、「非配偶者間人工授精(AID:Artificial Insemination by Donor)」なども登場するので、
当時としては画期的な物語ではなかったか。原作者が有吉佐和子だけにさすがと思った(筆者、未読)。な
お、今井正監督の作品の鑑賞は、以下に示すようにこれで20本目だが、前回観た『砂糖菓子が壊れるとき』
〔「日日是労働セレクト144」、参照〕のときよりも数段よかった。きっと、この手の映画の流れのコツ
をつかんだからだと思う。

  『怒りの海』、監督:今井正、東宝、1944年。
  『青い山脈・続青い山脈』、監督:今井正、藤本プロ=東宝、1949年。
  『また逢う日まで』、監督:今井正、東宝、1950年。
  『どっこい生きてる』、監督:今井正、新星映画=劇団前進座、1951年。
  『山びこ学校』、監督:今井正、八木プロ=日本教職員組合、1952年。
  『にごりえ』、監督:今井正、文学座=新世紀映画、1953年。
  『ひめゆりの塔』、監督:今井正、東映東京、1953年。
  『ここに泉あり』、監督:今井正、中央映画=松竹、1955年。
  『真昼の暗黒』、監督:今井正、現代ぷろだくしょん、1956年。
  『米』、監督:今井正、東映東京、1957年。
  『キクとイサム』、監督:今井正、大東映画、1959年。
  『あれが港の灯だ』、監督:今井正、東映、1961年。
  『武士道残酷物語』、監督:今井正、東映京都、1963年。
  『仇討』、監督:今井正、東映京都、1964年。
  『越後つついし親不知』、監督:今井正、東映東京、1964年。
  『砂糖菓子が壊れるとき』、監督:今井正、大映、1967年。
  『不信のとき』、監督:今井正、大映東京、1968年。
  『橋のない川(第一部)』、監督:今井正、ほるぷ映画、1969年。
  『橋のない川(第二部)』、監督:今井正、ほるぷ映画、1970年。
  『あゝ声なき友』、監督:今井正、松竹=渥美清プロダクション、1972年。

 なお、この映画は、ポスターの序列をめぐって、主演の田宮二郎と大映との間で確執が生じたいわくつき
の作品でもある。興味のある人は<ウィキペディア>(田宮二郎の項目)に詳細な記述があるので、そちらを
参照してほしい。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  有吉佐和子の小説『不信のとき』を『育ちざかり』の井手俊郎が脚色し、『砂糖菓子が壊れるとき』
 の今井正が監督した。撮影は『大悪党』の小林節雄。

   〔あらすじ〕

  ある商事会社の宣伝部員〔後に部長〕浅井義雄(田宮二郎)は、子どもがないこと以外何の不満も
 ない生活を送っていた。だが結婚生活も十年、何か新しい刺激を求めていた。そんなある日、浅井は
 取引先の美術印刷会社の小柳幾造社長〔後に会長〕(三島雅夫)に誘われて、バー“ジョルダン”に
 行った。そこのホステス、米倉マチ子(若尾文子)の、洗練された着物趣味は、デザイナー浅井の心
 をつかむのに十分だった。店がはね、マチ子をアパートに送った浅井は、激情のおもむくまま、彼女
 を抱いた。一方、小柳老人もヌードスタジオの少女マユミ(加賀まりこ)に惹かれ、老いらくのアバ
 ンチュールを楽しんでいた。そんなある晩、浅井は小柳の招待で、妻道子(岡田茉莉子)を伴ない、
 料亭からクラブへと足をのばした。道子は書家としてその名を知られていたが、浅井から見れば、所
 詮古典的なイメージの強い女性だった。だが、あでやかに振舞う道子は、浅井に新鮮な印象を吹き込
 んだ。やがて、浅井は宣伝部長に昇格し、日頃「あなたの子どもを産みたい」と言っていたマチ子は、
 清水市の病院で女児を出産した。浅井は子どもが生まれた文化の日にちなんで「文子」と命名した。
 ところが、浅井が清水から帰ると、今度は道子が妊娠したと言いだした。妻には子どもができないと
 信じていた浅井にはショックだった。同じ頃、小柳はマユミが自分の子どもを出産してくれたと有頂
 天になっていた。初夏になり、文子を連れだってマチ子が上京した。だが、二人の関係は以前のよう
 にしっくり行かなかった。やがて、道子も予定通り出産した。マチ子はそれを知ると子どもを預け、
 再び働きに出るようになった。それから一年半が過ぎた。道子の書が日展に入選したという喜びの直
 後、浅井は急性盲腸炎で倒れ手術をした。そんなある日、文子を連れて見舞に訪れたマチ子は、道子
 と鉢合わせしてしまった。道子はその場で、マチ子の産んだ子が浅井のものではないと言い張り、マ
 チ子は手切金三百万円を要求した。退院の日、浅井は道子から意外な言葉を聞いた。自分の子と思っ
 ていた義道が、実は人工受精によって授かったというのだ。動揺した浅井はマチ子を訪れ詰問した、
 取り乱したマチ子は浅井の上司に、二人の関係を暴露した。途方に暮れた浅井は、小柳に相談したが、
 彼はマユミに逃げられた直後とあって、役に立たなかった。結局、浅井は上司中西常務〔以前は宣伝
 部長〕(永井智雄)の仲介で二百万円でマチ子との関係を絶った。それから間もなく、浅井はデパー
 トで、関係浅からぬ人妻望月千鶴子(岸田今日子)に会った。そこで彼女から、今連れている子ども
 が浅井のだと言われては、浅井は自嘲的な笑いを禁じ得なかった。

 他に、柳渉(浅井義道=AIDで生まれた男子)、中野ひろみ(米倉文子)、松村ゆりか(小柳江美=幾造と  
マユミとの間にできた女子)、柳誠(千鶴子の子)、佐山真次(米倉常夫=マチ子の弟)、秋月龍(新東京
物産の会長)、花布洋(同じく社員)、岡郁二(同)、井上大吾(同)、木島進介(同)、宗近一(同)、
松山新一(同)、南堂正樹(同)、篠田三郎(同)、福原真理子(新東京物産の女子社員)、原泉(加代=
道子の母)、目黒幸子(石垣=看護婦)、三島愛子(看護婦)、中川八重子(同)、菅井きん(山川=附添
婦)、竹里光子(川野=同)、笠原玲子(ハルミ=ヌードスタジオ「エース」の女)、山下三千代(ヌード
スタジオの女)、横江弘子(同)、千葉宏美(同)、円地由利(同)、長谷川待子(ジョルダンのマダム)、
浜世津子(同じくホステス)、水木正子(同)、一条淳子(同)、白井玲子(高級クラブのホステス)、赤
沢未知子(同)、藤野千佳子(同)、田中三津子(マントールのホステス)、甲千鶴(同)、八代順子(同)、
大山健二(客A)、伊東光一(客B)、三夏伸(タクシー運転手)、山本一彦(そば屋の出前)、八重垣路
子(ことぶきの女中)、谷謙一(同じく主人)、日高加月枝(浅井がマチ子のことを訊ねる主婦)、などが
出演している。
 「木の芽(このめ)つわり」という言葉が出て来る。旧暦三月の木の芽時には、女の殺人や発狂が他の季
節よりも多いそうだが、それを称していう言葉らしい。もし、この言葉がタイトルに選ばれたとすれば(そ
んなことはあり得ないだろうが)、いわゆる《女性映画》として「不信のとき」よりも直接的かつ煽情的だ
ったかもしれない。なるほど、若尾と岡田の遣り取りは見物で、田宮二郎が出汁にされたのも仕方がなかっ
たのかもしれない。なお、三島雅夫の味が格別で、この物語に深い奥行を与えていると思った。また、上司
(中西常務)が部下(浅井宣伝部長)を叱責する際、「私のような大正生まれには、昭和生まれの君のよう
な人間が分からない」といったニュアンスの台詞があった。現代では、これが、昭和と平成に入れ替わって
いるのだろう。


 某月某日

 You Tubeで邦画の『隣りの八重ちゃん』(監督:島津保次郎、松竹蒲田、1934年)を観た。島津監督の作
品は以下に挙げるように3本観ている。

  『隣りの八重ちゃん』、監督:島津保次郎、松竹蒲田、1934年。
  『春琴抄 お琴と佐助』、監督:島津保次郎、松竹蒲田、1935年〔「日日是労働セレクト125」、参照〕。
  『浅草の灯』、監督:島津保次郎、松竹大船、1937年〔「日日是労働セレクト138」、参照〕。

 いずれも1930年代の作品であり、アジア・太平洋戦争が始まる前のものである。『日本映画300』(佐
藤忠男 著、朝日文庫、1995年)の中に当該映画に関する記事があるので、それを以下に引用してみよう。一
部改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   島津保次郎は職人肌の大監督としてメロドラマの大作なども盛んに作ったが、その合間にさらり
  と作った小品などで日本映画における日常的写実の方法の基礎をつくり、ある意味ではそれを完成    
  させたと言ってもいい人物である。一九二〇年代の半ばから、都会のサラリーマンの生活を軽いタ
  ッチでユーモアとペーソスをこめてスケッチするという行き方を試み、それまでのいかにもお芝居
  がかった日本映画のあり方に新風を吹き込んでいたのであるが、それがトーキー初期のこの作品に
  至って、平凡な人々の何気ない日々の言動を温い眼差しで観察するだけで、なんとも言えない良い
  気分になれるという、ひとつの至芸に達している。
   当時の東京の郊外。いまでは住宅密集地になっているであろうが、まだ一面の野原のあちこちに
  点々と住宅が建ちはじめているというあたりで、隣同士になっている二軒の家の家族の親戚以上に
  親密なつきあいを描いている。話の軸になるのは、一方の家の長男の帝大生である恵太郎(大日方
  傳)と、隣の家の女学生の娘八重ちゃん(逢初夢子)との、兄妹みたいに気のおけない間柄の微妙
  さである。二人はお互い、まるで自分の家みたいに自由に隣の家に出入りする。からかったりふざ
  けたり、彼女が彼の破れた靴下をつくろってやったりするあたりは殆んど夫婦すれすれ。お互い兄
  妹みたいに親しいからという気持で性的なことは意識していないので自然にふざけあえるのだが、
  しかしもう年頃である。いつ性的な関係になってもおかしくない。げんに彼は、八重ちゃんの出も
  どりのセクシーな姉の京子(岡田嘉子)から言い寄られて困ったりもする。もう本当に恋人同士と
  いう間柄になってもおかしくないし、両家の親たちや彼の弟の中学生である精二(磯野秋雄)なん
  かもみんなそのつもりでいるみたいなのに、なまじ兄妹みたいなつきあいであるために却ってそう
  切り換えることも容易でないみたいな、そんな若い男女の関係がじつに面白く描けている。
   特筆すべきは彼らの演技の自然さである。大日方傳も逢初夢子も決して上手いという演技ではな
  いのに、まるで日常の言動をスナップ写真で撮ったようにいきいきしている。大女優の岡田嘉子が
  ひとりだけお芝居くさい演技をしているので浮いてしまっているぐらいである。この素人に近い新
  人からこそフレッシュな今日性を引き出す自然な日常性が島津保次郎演出の特技であった。

 他に、水島亮太郎(新井幾造=恵太郎/精二の父)、葛木文子(松子=同じく母)、岩田祐吉(服部昌作=
八重子/京子の父)、飯田蝶子(浜子=同じく母)、高杉早苗(真鍋悦子=八重子の友人)、阿部正三郎(ガ
ラス屋)などが出演している。スタッフには、豊田四郎、吉村公三郎、木下恵介の名前も見える。なお、逢初
夢子に関しては、「存命であれば100歳を超える年齢である」と<ウィキペディア>に記載されている。
 今ではあまり使われない言葉も登場する。たとえば、「もちのろん(=もちろん)」や「グロッキー(=バ
テバテである)」などである。京子が「カフェで働く」と言い出したときには、母の浜子は「世間に顔向けが
できない」と語っているが、かなり大時代的である。恵太郎の「女の人に奢られるのは気が引けるけどいいも
んだ」という台詞も、微温的である。服部は栄転することになるが、行先は朝鮮である。この辺りにも時代が
出ている。なお、ガラス屋の代金は10銭だった。しかも、最初は15銭だったところを、浜子が負けさせたので
ある。ベティさんのアニメも登場するので、まだ米国と敵対する感じではなかったのであろう。


 某月某日

 DVDで邦画の『火まつり』(監督:柳町光男、プロダクション群狼=シネセゾン、1985年)を観た。およそ
20年前から観たいと思っていた邦画の一つで、やっと念願が叶った。その存在を知るきっかけとなった記事
があるので、それを以下に引用してみよう。『日本映画300』(佐藤忠男 著、朝日文庫、1995年)の中の  
記事である。

   映画の舞台となっているのは、日本の神道でもっとも有名な霊域のひとつとされている熊野地方
  である。
   主人公の達男(北大路欣也)という四十歳の木樵りは、山にいる神と交信できる男である。彼に
  よれば山の神は女神であり、彼はこの神と性交することもできるのである。
   彼は自分を、とくべつに神から愛されている人間だと信じている。ある日、海辺に立っている神
  社の鳥居に向って突き進む船の上に、彼は真っ裸で立つ。鳥居という赤い色をした門に、あふれる
  ばかりの性的エネルギーを持つ男が、一糸もまとわず突き進んで行くのである。神の入口に男性器
  をつきたてようとしているのである。その海は聖域で、泳いではいけないとされている。しかし彼
  は禁止を破って海へと飛び込む。すると、それまでの不漁が止んで、豊漁になる。彼はそこで、自
  分のセックスを神が喜んで受け容れた、という天の啓示を感じたようである。
   こうした象徴的で暗示的な表現がこの作品にはいたるところにあり、それによって、この男の神
  との交信や神との性的快楽という、常識的には理解し難い事柄が描かれてゆく。彼はある日、山で
  仕事中に嵐に遭い、歓喜して大きな樹を抱く。彼は樹と一体になった喜びにひたっているのである。
  カメラも、演出も演技も圧巻と言える素晴らしい場面である。彼はそこでも、山の神をついに自分
  の女にしたという実感を得たらしい。これは見る人によっては全くひとりよがりな人物なのである。
  それを作者たちは、天衣無縫の自然児として理解しようとしている。
   さいごにこの男は、ひとりよがりの極致とも言うべき行動をする。この付近一帯を海中公園とい
  う名の観光地にしようという計画がすすんで、そのために彼の家も買収されようとしている。それ
  が実現すれば、この付近は俗悪な風俗に一変するであろうし、彼もこれまでのように山や海との一
  体感にひたっていることはできないだろう。ある日、この問題を語り合うために集まった家族を、
  彼は銃で皆殺しにして自分も死ぬ。
   ラストシーンは、霊域の一部である海が、誰かのいたずらによって石油で汚染されている風景で
  ある。青い海の中央が、夕陽に照らされた石油で赤く光っていて、じつに不気味に美しい。その不
  吉な美しさが、来たるべき地球の破滅の予兆であることは言うまでもないであろう。

 中上健次が脚本を提供しているとあったので、和歌山の物語だなと思ったが、予想通りの展開で、主役を
演じた北大路欣也もはまり役だと思った。柳町監督の作品は、以下に挙げるように5本しか観ていないが、
いずれも腹にズシンと来る作品ばかりである。

  『十九歳の地図』、監督:柳町光男、プロダクション群狼、1979年。
   〔「日日是労働セレクト129」、参照〕
  『さらば愛しき大地』、監督:柳町光男、プロダクション群狼=アトリエダンカン、1982年。
   〔「日日是労働セレクト10」、参照〕
  『火まつり』、監督:柳町光男、プロダクション群狼=シネセゾン、1985年。
  『愛について、東京』、監督:柳町光男、「愛について、東京」製作委員会〔パイオニアLDC=プロ
   ダクション群狼〕、1992年。〔「日日是労働セレクト142」、参照〕
  『カミュなんて知らない』、監督:柳町光男、プロダクション群狼=ワコー=Bugs film、2006年。
   〔「日日是労働セレクト16」、参照〕

 この他、『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』(1976年、ドキュメンタリー)、『チャイナシャド
ー』(ヘラルド、丸紅、日商岩井、サンライズ、1990年)、『旅するパオジャンフー』(1995年、ドキュメ
ンタリー)があるが、機会があれば観てみたいと思っている。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  海洋公園建設で揺れる海と山に挟まれた小さな街を舞台に、嵐の山の中で神の啓示を受けた木こり
 の姿を描く。芥川賞作家・中上健次がはじめて映画の脚本を執筆、監督は『さらば愛しき大地』の柳
 町光男、撮影は『逆噴射家族』の田村正毅がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  前は海、後ろは山に挟まれた紀州・熊野の小さなその町は、海洋公園の建設が予定され、その利権
 で揺れている。町の人々は木こりと漁師で構成されているが、この両者はほとんど接触をもたない。
 木こりの達男(北大路欣也)は、自分を慕う青年・良太(中本良太)を連れ、漁師のトシオ(安岡リ
 キヤ)と付き合ったり、神の入江で泳いだり、榊で罠を作るなど、タブーをことごとく破る乱暴者だ。
 達男には妻(宮下順子)と二人の子どもがいるが、町に幼なじみの基視子(太地喜和子)が現われ交
 際がはじまる。達男の奔放な生き方に町の人々は顔をしかめているとき、海に重油が撒かれ、養殖の
 ハマチが死んだ。みんな達男がやったと思っている。基視子は姉(中島葵)のスナック「なす」を手
 伝うことになり、土地ブローカーの山川(三木のり平)をはじめ、町の若い男たちが彼女に付きまと
 いだし、年寄りたちは他所者の彼女を冷ややかに見ていた。やがて基視子は山川から金をだまし取り、
 借金で人手に渡りかけていた新宮のスナック「愛人」を取り戻した。達男、トシオ、良太たちは基視
 子の店に遊びに行く。暫くして達男たちは山に入った。晴れていた空は急に雲り、やがて激しい嵐が
 襲ってきた。良太や仲間たちは下山するが、達男はひとり残った。雲の流れ、木々の揺れる音、川の
 せせらぎの音の中で、達男は何か超自然的なものを感じる。山の神の声を聞いたのかもしれない。山
 は晴れ、達男は下山する。数日後、年に一度の“火まつり”が行なわれ、達男は暴れまくった。達男
 の家で、公園建設による土地問題について親族会議が開かれることになった。火まつり以来、穏やか
 だった達男は、猟銃を用意すると、母(菅井きん)、妻、姉(八木昌子/松下砂稚子)、子どもたち
 を次々と射ち殺し、自分の口に銃口を入れると、足で引き金を引いた。静寂な町に銃声が響きわたる。
 その夕方、二木島の入江はタ陽で金色に染められ、撒かれた重油の中にハマチが浮いていた。

 他に、伊武雅刀(移動パン屋「木村商店」)、小鹿番(鍛冶屋)、藤岡重慶(木こり)、小林稔侍(同)、
左右田一平(同)、金子研三(基視子の義兄)、高瀬春奈(ホステス)、高橋美智子(同)、梅沢昌代(民
家の女)、七尾伶子(漁師の女)、猪俣光也(同)、木下ゆず子(同)、中庸助(漁師の男)、三重街恒二
(同)、相馬剛三(同)、十貫寺梅軒(青年)、下元史郎(同)、堀礼文(同)、倉地雄平(同)、川上麻
衣子(ミーコ)、倉崎青児(浩二)、工藤栄一(運転手)、柳家小三治(船頭)、蟹江敬三(ブローカー)、
山西道広(同)、森下愛子(保母)などが出演している。黙示録のような作品で、何とも言えない哀しみに
溢れていた。


 某月某日

 DVDで邦画の『野ゆき山ゆき海べゆき』(監督:大林宣彦、日本テレビ=ATG=バップ、1986年)を観た。
「質実黒白オリジナル版」と「豪華総天然色普及版」とがあるが、とりあえずは前者で観た。大林監督の作
品は、以下に挙げるように18本観ている。<ウィキペディア>によれば、彼が監督した映画は43本あるらしい
ので、鑑賞率は4割強といったところか。

  『HOUSE ハウス』、監督:大林宣彦、東宝映像、1977年。
  『ふりむけば愛』、監督:大林宣彦、東宝=ホリプロ=ホリ企画制作、1978年。
  『ねらわれた学園』、監督:大林宣彦、角川春樹事務所、1981年。
  『転校生』、監督:大林宣彦、日本テレビ=ATG、1982年。
  『時をかける少女』、監督:大林宣彦、角川春樹事務所、1983年。
  『廃市』、監督:大林宣彦、PSC=新日本制作=ATG、1984年。
  『さびしんぼう』、監督:大林宣彦、東宝映画=アミューズ・シネマ・シティ、1985年。
  『野ゆき山ゆき海べゆき』、監督:大林宣彦、日本テレビ=ATG=バップ、1986年。
  『異人たちとの夏』、監督:大林宣彦、松竹、1988年。
  『北京的西瓜』、監督:大林宣彦、マックスダイ=ビー・エス・シー、1989年。
  『彼女が結婚しない理由』、監督:大林宣彦、東北新社=日本テレビ、1990年。
  『ふたり』、監督:大林宣彦、ギャラック=ピー・エス・シー=NHKエンタープライズ、1991年。
  『青春デンデケデケデケ』、監督:大林宣彦、ギャラックプレミアム=ビー・エス・シー=
   リバティフォテックス、1992年。
  『水の旅人 侍KIDS』、監督:大林宣彦、フジテレビジョン=オフィス・トゥー・ワン=東宝、1993年。
  『なごり雪』、監督:大林宣彦、PSC=TOSエンタープライズ=大映、2002年。
  『理由』、監督:大林宣彦、WOWOW=PSC、2004年。
  『この空の花 長岡花火物語』、監督:大林宣彦、「長岡映画」製作委員会〔長岡商工会議所=(社)長岡
   青年会議所=(社)長岡観光コンペンション協会=長岡まつり協議会=NPO法人復興支援ネット
   ワーク・フェニックス=長岡ロケナビ=市民映画館をつくる会=新潟県フィルムコミッション協議会=
   長岡都市ホテル資産保有株式会社=新潟綜合警備保障株式会社〕、2011年。
  『野のなななのか』、監督:大林宣彦、芦別映画製作委員会=PSC、2014年。

 大林監督というと、思い入れたっぷりで、押しつけがましく、背中がむず痒くなるような作風だが、それ
でも18本も観ているところから推すと、それなりに興味深いテーマを扱っていることは否定できない。本作
はアジア・太平洋戦争が関わること、ATGが絡んでいることなどから、ずっと探していた作品であるが、今回
入手することができたので、じっくりと観ることにした。大林流の味付けが濃すぎて、観ていてかなりしん
どい思いをしたが、とりあえずは最後まで観た。少し間をおいて、カラー作品の方も観てみたいと思う。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  戦争の影が押し寄せている頃の瀬戸内の城下町を舞台に子どもたちの戦争ごっこを描く。モノクロ
 版とカラー版と2種類のプリントで公開。佐藤春夫原作の『わんぱく時代』の映画化で、脚本は『子
 象物語 地上に降りた天使』の山田信夫、監督は『四月の魚』の大林宣彦、撮影は『PARIS -
 DAKAR 15 000 栄光への挑戦』の坂本善尚がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  第一尋常小学校に通う須藤総太郎(林泰文)は、第二尋常小学校から転校して来た大杉栄(片桐順
 一郎)の姉、お昌ちゃん(鷲尾いさ子)に淡い恋心を抱くようになった。だが、彼女には筏乗りの早
 見勇太(尾美としのり)という恋人がいた。栄は乱暴な性格が原因で第二小学校を追い出されたのだ
 が、早速クラスのガキ大将、ボンチャン(西島剛)との権力争いを始める。争いはエスカレートして
 遂には第一小学校側と、第二小学校側の大喧嘩となる。お昌ちゃんから相談された総太郎は、一定の
 ルールに従い武器は使用禁止の戦争ごっこを提案した。夏休みに入り、戦争ごっこが始まった。その
 頃、子どもたちの世界だけでなく、大人たちの世界にも戦いの波がおしよせてきていた。戦争ごっこ
 の一日目、総太郎のドロナワ作戦が功を奏する。その夜、日本軍の大勝利に町の人々が騒ぐなか、泥
 酔した総太郎たちの担任、川北平助先生(竹内力)はお昌ちゃんと一緒にいた平和主義者の勇太に、
 嫉妬にかられて絡み非国民と罵った。翌日、子どもたちは捕虜の交換を行なうが、飛んできた石がき
 っかけに石の投げ合いとなり皆傷ついてしまう。栄と総太郎は一対一の勝負で、タライ舟から先に川
 に落ちた方が負けという決闘をした。お昌ちゃんが審判だったが、勇太の姿を見て役目を放棄してし
 まう。それを見た総太郎は「もうやめた」と岸に向かうが、栄はやりばのない怒りをぶつけ総太郎の
 腕を折ってしまう。翌日、謝りに来たお昌ちゃんは、総太郎に栄は妾の子のため兵学校に行けず、ま
 た異母姉の自分に恋してしまったから乱暴になったのだと話した。ある日、総太郎と栄は栄の母、里
 (根岸季衣)が夫の繁太郎(峰岸徹)の借金のためにお昌ちゃんを四国の遊郭に身売りしようとして
 いることを知った。また勇太にも赤紙が来る。彼はお昌ちゃんと駆け落ちすることを決心するのだが、
 仲間の戦死を知り、その遺骨を抱く老婆(原泉)の姿を見て戦争に行かせてくれと言う。お昌ちゃん
 たちが四国へ連れて行かれる日、総太郎たちは掠奪大作戦を開始。それは成功したが、親に売られ帰
 るところがない娘たちは港に戻る。お昌ちゃんが売られるのを知った勇太は脱走し、小舟でお昌ちゃ
 んの乗っている舟に近づく。お昌ちゃんは石油をかぶり「近づいたら火をつける」と小舟に移る。だ
 が、青木中尉(佐藤浩市)が燈台から撃った弾が勇太を貫いた。お昌ちゃんは小舟に火をつけ、二人
 は小舟とともに水没していく。

 他に、三浦友和(総太郎の父=医者)、入江若葉(同じく母)、佐藤允(女衒の清六)、ガッツ石松(田
端軍曹)、正力愛子(尾上瑞枝)、小林稔侍(権造)、大泉滉(小使さん)、坊屋三郎(ボンチャンの父=
床屋)、泉谷しげる(老漁師)、浦辺粂子(お参りする老婆)、宍戸錠(校長先生)、明日香尚(駄菓子屋
の女将)、小林のり一(英吉)、桐野幸知(参次)、タンクロー(車夫の辰吉)、大前均(入道)、山本学
司(大山)、多賀基史(チビ)、高柳崇(デブ)、利根川龍二(ヤセ)、仙田信也(サル)、姉崎澄子(ハ
ル)、林優枝(サキ)、桂川昌美(ユキ)、横江麻紀(ウメ)、望月真実(おしゃれ狂女)、柄本明(酒屋
の親爺)、坂田明(サキの父)、吉行和子(同じく母)、赤座美代子(ハルの母)などが出演している。
 製作にATGが関わっており、その意味でも探していたDVDだが、当該作品の鑑賞により、ATGが製作に関わっ
た映画の残りは、以下のように5本となった。いずれも鑑賞機会に恵まれるチャンスはほとんどないので、
もしかすると当該映画は最後の鑑賞済みATG作品ということになるかもしれない。

  『キャロル』、監督:瀧村仁、怪人二十面相プロ=ATG、1974年。
  『変奏曲』、監督:中平康、中平プロ=ATG、1976年。
  『日本人のへそ』、監督:須川栄三、須川栄三プロ=ATG、1977年。
  『星空のマリオネット』、監督:橋浦方人、東京ビデオセンター=ATG、1978年。
  『キッドナップ・ブルース』、監督:浅井慎平、バーズスタジオ=ATG、1982年。

 大林監督はときどき戦争が絡む映画を撮るようだが、敗戦時7歳(1938年生れ)という年齢が、多少は関
係しているのかもしれない。当該作品は、いわゆる「悲恋もの」なのだが、全然悲しくない。鷲尾も尾美も、
どんな演技指導を受けたのだろうか。ときどき、大林監督の意図が分からなくなる。もっとも、「尾道三部
作」に当る『転校生』、『時をかける少女』、『さびしんぼう』において、小林聡美、原田知世、冨田靖子
を育てた大林監督は、本作でも鷲尾いさ子を世に送り出すことに成功している。思うに、女優を育てること
も監督の仕事のひとつだから、彼はまさに名監督なのだろう。趣きは異なるが、『八月の濡れた砂』(テレ
サ野田)、『修羅雪姫』・『修羅雪姫 怨み恋歌』(梶芽衣子)、『赤ちょうちん』・『妹』・『バージン
ブルース』(秋吉久美子)、『もっとしなやかに もっとしたたかに』・『十八歳、海へ』(森下愛子)、
『スローなブギにしてくれ』(浅野温子)、『ダイヤモンドは傷つかない』(田中美佐子)、『海燕ジョー
の奇跡』(藤谷美和子)などを撮った藤田敏八もそれに重なる。作風は大いに異なるが、女優を育てるとい
う点で、通底していると思うからである。


 某月某日

 DVDで邦画の『御用牙 かみそり半蔵地獄責め』(監督:増村保造、勝プロダクション、1973年)を観た。
漫画が原作の作品で、そちらの方も知らないわけではない。すなわち、原作:小池一夫、作画:神田たけ志  
による日本の時代劇漫画作品である。1970年10月から1976年12月にかけて、『ヤングコミック』(少年画報
社)に連載された。<ウィキペディア>に概要があるので、それを引用させていただく。執筆者に感謝したい。
なお、一部改変したが、ご寛恕いただきたい。

   〔漫画作品の概要〕

  隠密廻りで一匹狼の同心、板見半蔵の活躍を描いた捕り物時代劇。たんなる時代劇と一線置き、ダ
 ークヒーロー的な趣もあり、完全無敵の存在ではなく殺陣のシーンで負けてしまうこともある。言い
 換えれば、悪を退治するのではなく、相手の弱みを握って権力で己の正義を証明するという泥臭いヒ
 ーロー像である。
  物語序盤では江戸の町を舞台とし、悪党や権力を笠に着た者たちとの戦いが描かれ、その後「山流
 し」と呼ばれる甲府勤番勤めとなり甲府での活躍が描かれる。これまでに培った人脈を使って江戸の
 町奉行所勤めに復帰した半蔵は、そこで天保の改革を推進する老中・水野忠邦と南町奉行であり半蔵
 の最大の敵となる鳥居耀蔵と対決する。鳥居にすべての仲間を殺され、自身も深く傷つきながら、巨
 悪を倒すためその懐に入り、鳥居の腹心となって働く半蔵は、密かに遠山景元と手を組む。遠山の協
 力で水野と鳥居の追い落としに成功した半蔵は、次に正体を隠して大坂の町奉行所勤めとなる。そこ
 で新たに仲間を集め、悪党たちと戦うが、生き残るためまたもや仲間を全て失うことになる。危機を
 脱し、雪の降る町中を巡回していた半蔵は、刃物を持った若者に刺される。路地裏で倒れた半蔵は、
 生死不明となり、物語の幕は引かれる。
  ラストで半蔵は人知れず死んだように描かれていたが、後に描かれた続編では助けられて一命を取
 り留めたことになっている。なお、作中では11代将軍・徳川家斉が隠居したことで後ろ盾を無くした
 水野が失脚したことになっているが、実際には天保の改革は徳川家慶が12代将軍に就任していた時期
 に行われたため、史実とは大幅に違っている。

   〔主人公・板見半蔵〕

  主人公の板見半蔵(いたみ はんぞう)は、北町奉行所の隠密廻り同心である。奉行所仲間とは一線
 を画し、しばしば身分を弁えず啖呵を切るが、内容は正論であり異論を許さない。このため上役とは
 概ねそりが悪い。
  幕閣への立場を超えた建言を理由に甲州へ左遷、それでも実力で再び南町へ返り咲く。しかし鳥居
 耀蔵と壮絶な対決で全てを失い、辛勝のち姓を変えて大坂東町奉行所へ渡る。
  刺されて生死の境を彷徨った後は再び江戸に舞い戻り、どこにも与せず沖から大局を眺める「沖同
 心」として江戸市民の警護に身を投じる。
  町民からは「かみそり半蔵」「そりかみ半蔵」等と呼ばれ、強面として恐れられる反面、弱者の味
 方として慕われており、半蔵のためなら命を捨てる覚悟のある仲間も多い。これと見込んだ女を取り
 調べと称して強姦して快楽の虜とし、これを間者として各所に勢力を拡大していく。体捨流剣術を使
 うが、真の実力は竹内流小具足術にあり、鎖分銅を仕込んだ「南蛮一品流鼻捻十手」、「あられ鉄拳」
 と呼ばれる棘のついたメリケンサックなど、多くの武器を取り回して戦う。
  風呂場には多くの武器が隠されており、槍が降るなどの罠も仕組まれている。ここでイチモツを打
 擲し、米俵に挿入して鍛えるのが毎朝の日課。

 いかにも70年代前半に流行った物語で、当時の閉塞状況から生じる鬱憤を晴らすには格好の作品であった。
とくに、学生運動が終息していった背景があるので、権力に対する激しい憎悪が読者の気持にマッチしたの
ではないだろうか。

   〔映画作品の概要〕

  江戸北町奉行所同心・板見半蔵(勝新太郎)は、二人組の盗っ人を捕えたところ、盗品は水車小屋
 に捨てられていた女の屍体から盗んだものだ、と白状した。半蔵はその死体の状況から、今、寺や神
 社で流行っている“子おろし”に関係があるとにらんだ。寺や神社は半蔵の管轄外だったが、強引に
 女神主・大酔女(宗田政美)のところへ押しかけ、“ややおろし”の現場をおさえた。そして、大酔
 女を半蔵得意の拷問にかけ、死体が駿河屋の娘お町(榊陽子)であることを白状させた。駿河屋の主
 人六左衛門(稲葉義男)から、お町が海山寺にお茶、お花を習いに通っていたことを知った半蔵は、
 その尼寺に潜り込んだ。その茶室では、住職の如海尼(相川圭子)が豪商たちを集め、全裸の女を囲
 んでせりを行っている。踏み込んだ半蔵に驚いて逃げ回る豪商たち。半蔵は錦地の覆面男を追うが、
 突然御子柴十内(黒沢年男)が現われ、その男を逃がした。捕えた如海尼の口を割らすと、その男は
 大久保山城守(小松方正)と判明。そんな時、半蔵は奉行の矢部常陸守(大森義夫)から、悪党浜島
 庄兵衛(佐藤慶)を捕えるように命ぜられた。幕府の金座、後藤家に庄兵衛が現われる、とにらんだ
 半蔵は、若後家の陸(稲野和子)を陥落し、押し入れに身を隠した。ところが、その部屋で、半蔵が
 潜んでいるとは知らない大久保が、陸に対して私腹を肥やす悪事の相談を始めた。半蔵がにらんだよ
 うに庄兵衛がやって来た。半蔵は庄兵衛を捕えた。庄兵衛逮捕に喜ぶ矢部に、半蔵は褒美に大久保の
 首を頂きたい、と言う。狼狽する大久保……。数日後、半蔵は御子柴十内に待ち伏せられたが逆に十
 内を斬った。しかし、半蔵は悪奉行に忠誠を誓って死んでいった十内を惜しんだ。侍の心を持った男
 が一人減ったような気がしたのだ。腐りはてた御政道の中で……。
  “御用牙”シリーズ第二作目。板見半蔵こと“かみそり半蔵”がその正義感から彼が考え出した拷
 問術と鍛えあげたイチモツなどを駆使して権力の恥部をつかみ、体制の壁を突き崩す活躍を描く。シ
 リーズ第一作の三隅研次に代わって脚本・監督を務めたのは、前年にも勝新が製作・主演の『新兵隊
 やくざ 火線』を手掛けていた増村保造。撮影は『子連れ狼 親の心子の心』の宮川一夫がそれぞれ
 担当している。

 他に、草野大悟(鬼火=半蔵の手下)、蟹江敬三(マムシ=同)、西村晃(大西孫兵衛=筆頭与力)、岸
田森(大久保山城守の用人)、高木均(丹波屋=海山寺に集まった豪商のひとり)、近江輝子(お甲=駿河
屋の女房)、速見かをり(三河屋お静)、北野拓也(勘八)、宮下有三(小三郎)、小柳圭子(巫女)など
が出演している。
 このシリーズを二作目から観たのには理由がある。先ず、全部で三つの作品が存在することを知らなかっ
たことがその理由である。さらに、そもそも増村保造監督作品ということで手に入れようとしたのである。
作品内容から見て、TSUTAYAのラインナップに並んでもよさそうであるが、実際に見かけたことはない。小生
自身は、DVDが存在することすら知らなかった。残り二作あるが、縁があれば観てみたい。増村保造の作品
は通算40本目の鑑賞で、鑑賞率は七割を超えた。蛇足だが、浜島庄兵衛は御公儀火付盗賊改「遠山五郎兵衛」
を名乗って金座に乗りこんで来るが、いくらなんでも無理があると思った。全体の筋書も実に安直だが、主
人公のキャラからすると、これでいいと思い直した。徹頭徹尾、娯楽が目的の作品だからである。


 某月某日

 DVDで「昭和30年代の日本・家族の生活 都会のくらし編」に収められた5本の邦画を観たので報告しよう。
「昭和30年代の日本・家族の生活 農村のくらし編」と同様、いずれも貴重なフィルムで、映画としては平凡
ではあるが、時代を映す鏡としては非凡である。
 1本目は、『百人の陽気な女房たち』(監督:青山通春、桜映画社、1955年)である。先ず、ニュース映
画(「朝日ニュース」:朝日新聞社=日本映画新社)から始まる。「保守新党発足へ(自由民主党結成大会)」
と題して、当時の自由党と民主党の保守合同が報道されている。自由党の佐藤栄作がそれに参加しなかった
ことは知らなかった。なお、鳩山一郎引退後に彼は自民党に入党している。
 さて、本篇である。横浜市南区が舞台のショート・コント(30分)であるが、当時の都会の衛生事情がよ
く分る一篇である。小生にも記憶があるが、戦後の日本は蚊や蠅だらけで、伝染病を防ぐために、ヴォラン
ティアで公衆衛生改善運動を続ける主婦たちの姿を活写している。住民のケン坊が疫痢になったのは、ゴミ
捨て場から大量に発生している蠅が原因である。それを何とかしようとするのであるが、最初は協力者も少
なかった。しかし、だんだんとその数を増やしていき、行政側も度重なる陳情に対して重い腰を上げること
になる。やはり、主婦を中心とする住民パワーは力強い。付録として、きれいになった現在の中村川の映像
を観ることができる。戸田春子、新田喜美枝、亘幸子、黒田隆子、田所千鶴子、島田屯、米倉栄、和田公克、
高野二郎などが出演している。小生は幼稚園時代から中学校の3年生まで晴海の団地(東京都中央区)に住
んでいたが、埋立地である「夢の島」から蠅が飛んで来るとよく言われたものである。今ではあんなに汚か
った隅田川もきれいになったと仄聞するので、やればできるのではないか。
 2本目は、『大都会の生活 ─東京─』(監督:不在、日本映画新社、1957年)である。「新日本 地理映
画体系」の一篇の由。昭和32年には800万人だった東京の人口は、平成17年には1,200万人に膨れているとあ
る。あれはたぶん小学校2年生のとき(昭和37年)だったと思うが、担任の先生が、黒板に「10,000,000」
と書き、これは何を意味しているのかと訊ねたことがあった。東京の人口が一千万人を超えたことを児童に
伝えたかったのである。なお、これもニュース映画(同)から始まる。「小さい流行 大きい流行」と題され
ており、8ミリカメラが大流行したことなどが報道されている。さて、本篇であるが、大都会の繁栄ぶりを
紹介しながら、交通や住宅などの問題点も指摘する。50年前の空から見た東京の街並みも珍しい。NHKで放映  
(1961年4月から1963年10月まで)された「魔法のじゅうたん」(キャスターは黒柳徹子)を思い出した。あ
れから50年以上経つが、彼女はまだ現役なので恐れ入る。
 3本目は、『おやじの日曜日』(監督:金子精吾、桜映画社、1959年)である。これも、同じく朝日新聞
社のニュース映画から始まるが、今回は「特別号」である。「輝くご成婚」と題されたニュース映画で、当
時の皇太子(現 平成天皇)のご成婚が報道されている。本篇はフィクションで、小津安二郎の「喜八もの」
で主演を演じたこともある大物脇役俳優の坂本武が主人公の「おやじ」を演じている。人情味のあるその顔
は相変わらずで、はまり役とも言えよう。造船工場で働く父親が、休日に、妻と四人の子どもと回るユーモ
ラスな東京見物が描かれている。上野動物園や寄席などがその行先であるが、おやじはシネラマが観たかっ
たようである。他愛のない物語であるが、あの頃のことを思い出した。勝鬨橋が登場するが、幼稚園から中
学校にかけて毎日のように渡った橋なので、懐かしかった。他に、陶隆をはじめ、高野由美、桂典子、朝戸
正秋、多川譲二、小森甲二、助川喜久枝、加藤修、槐柳二、坂本進平などが出演している。高座に上がって
落語を一席披露している六代目三遊亭圓生の姿も見ることができる。
 4本目は、『昼だけの都会』(監督:不在、日本映画新社、1961年)である。上記の『大都会の生活 ─東
京─』の補遺のような作品で、昼の人口と夜の人口が極端に異なる丸の内のオフィス街が描かれている。当
時、東京の昼間だけの人口は80万人と言われており、その大半はサラリーマンやBG(現在のOL)である。
ところが、丸の内がある千代田区の住民は12万人であり、少子化対策に躍起となっている区長の姿も登場す
る。小生の弟は目黒区駒場に居を構えているが、貸家に住んでいた頃(20年前くらいか)は、娘三人が近隣
の小学校に通っていたため、高額の住宅補助金が目黒区から支給されていた由。小学校を維持するために、
東京23区の一部ではそのようなことが普通にあったらしい。なお、この映画に登場する千代田区長は、何と
か家賃5,000円くらいの住宅を千代田区内にたくさん造りたいと語っている。区長のそのような苦境を知って
か知らずか、憧れの丸の内で働くサラリーマンやBG(OL)の一日が活写されている。出勤簿に群がる出
社風景や、昼休みの屋上における縄跳びやコーラスの風景を観ると、高度経済成長時代の日本の一部がよく
分かるような気がする。前振りのニュース映画(朝日新聞社)の方は、「青田刈りの求人戦線」と題して、
当時の学生にとって「一流企業もよりどりみどり」といった光景が描かれている。就職氷河期の学生が観た
ら、かなりのショックを受けるかもしれない。
 最後の5本目は、『猫の散歩』(監督:大橋秀夫、桜映画社、1962年)である。この短篇(26分)の前振
りとして、やはりニュース映画(同)が組み込まれている。「マンモス化の団地住宅」と題されており、大
阪の香里園団地や東京の赤羽台団地の様子が報道されている。本篇であるが、野良猫の口を借りて人間世界
が描かれており、『百人の陽気な女房たち』同様、都会の衛生問題がテーマとなっている。野良猫の目が見
た都市のゴミ問題が浮き彫りにされる。本物の野良猫の演技は「お見事」の一言である。山本嘉次郎が監修
を務めており、猫の声をサザエさんのカツオの声でお馴染みの高橋和枝が担当している。映画としては、こ
の作品が一番面白かった。「日本脳炎」や「小児麻痺」の脅威も挿入され、時代を感じざるを得ない。

                                                  
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