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日日是労働セレクト145
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第145弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト145」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 昨日と同様、DVDで「昭和30年代の日本・家族の生活 農村のくらし編」に収められた残り1本の邦画を観
たので報告しよう。
 先ず、ニュース映画(「朝日ニュース」:朝日新聞社=日本映画新社)から始まる。「怒りの炭鉱(ヤマ)、
怒りの孤島、怒れる若者たち」と題して、三井炭鉱大量解雇問題、新島ミサイル試射場問題、全学連学生逮
捕などが報道されている。
 本篇は『刈干切り唄』(監督:上野耕三、貯蓄増強中央委員会=記録映画社、1959年)という作品である。
現在の宮崎県西臼杵郡高千穂町に伝わる「刈干切り唄(かりぼしきりうた)」をテーマにしたドキュメンタ
リー映画である。独立美術協会会員の小島善太郎が語り部となって、この町の伝統を伝えている。高千穂町
は延岡市や阿蘇市から50キロメートルほど内陸に入った高原の町で、1,000メートルから2,000メートル級の
山々に囲まれた盆地につくられた町である。天孫族が降臨した町という伝説もあり、『古事記』に著されて
いる天岩戸(あまのいわと)もある。その他、天安河原(あまのやすかわら)や国見ヶ丘(くにみがおか)
も観光スポットになっている。石器や勾玉も出土するので、かなり昔から人が住んでいたことが分る。
 ところで、肝心の「刈干切り唄」は、山で草刈りをするときに歌う唄で、その草は牛の飼料になる。過去
には、焼き畑農業も行われており、蕎麦、稗、麻などを収穫する。麻は自家用にするばかりでなく、加工し
て売りに出される。最後の仕上げとして、冬の冷たい川水に晒すことになるが、これは女衆の仕事である。
麻屑も大量に出るが、これも売れる。上等の壁すさ(草冠に切)になるという。その収益は娘のものである。
嫁入りの支度金になるというのだ。これらは古くからのしきたりであり、固く守られている。野良仕事の道
具なども自家製で、昔の人の生活の知恵の結晶である。
 牛の競り市も描かれている。佐藤明さんという「刈干切り唄」の名人の一家の牛が売られる。この人は、
当該の唄の「謡手(歌手にあらず)」で、過去には、川端康成や壇一雄も彼を訪れたという。彼らとのスナ
ップ・ショットも残っている。最後は「神楽」で締め括られる。他に、コロムビアの菊太郎が出演している。
 なお、現在、この草刈りは行われていないとの由。


 某月某日

 DVDで「昭和30年代の日本・家族の生活 農村のくらし編」に収められた3本の邦画を観たので報告しよう。
いずれも貴重なフィルムで、映画としては平凡だが、時代を映す鏡としては非凡である。
 1本目は、『おふくろのバス旅行』(監督〔演出〕:菅家陳彦、記録映画社、1957年)である。先ず、ニ
ュース映画(「朝日ニュース」:朝日新聞社=日本映画新社)から始まる。題名は「農繁期」、田植えで大
忙しの農家の様子を描いている。次いで、本篇である。家長しか団体旅行に参加しなかった当時の農村。家
族が何でも話し合い暮らせるようになればと、青年たちが両親そろってのバス旅行を計画。現在の宮城県栗
原市瀬峰町藤沢の過去の姿である。一応ドキュメンタリーだが、かなり演出が入っているように見えた。も
っとも、主人公やその家族の笑顔は本物だと思う。
 2本目は、『おばあちゃんあやまる』(監督〔演出〕:青山通春/島田耕/久保治男/宮腰祐/今村農夫
也、桜映画社、1958年)である。同じくニュース映画(同)から始まる。題名は「カメラ・ルポ ばい煙」で
ある。川崎や札幌などの大気汚染がリポートされている。本篇は、当時年間600万人もの赤痢菌保菌者がいた
事実を背景として、農家の嫁姑が、家族に赤痢患者が出たことで変化していくホームドラマとして描かれて
いる。江幡高志や織本順吉など、一流の俳優が出演している。舞台は、新潟県柏崎市中田である。
 3本目は、『おやじ』(監督〔演出〕:菅家陳彦、記録映画社=共同映画社、1959年)である。これも、
朝日ニュースから始まる。題名は「いよいよモグラ時代」で、東京や大阪の地下鉄事情が報告されている。
本篇は、家族には笑顔ひとつ見せない農家のおやじが、実は、貧しい中で、親として子どもたちにできるだ
けのことをしたいと常に思っている様子を描いている。新潟県上越市高田の過去の姿である。
 この「昭和30年代の日本・家族の生活 農村のくらし編」には、もう1本別の映画が収められているが、今
日は時間が取れなかったので、明日以降に観るつもりである。


 某月某日

 DVDで邦画の『鯨神』(監督:田中徳三、大映東京、1962年)を観た。後に官能小説の大家となった宇能鴻  
一郎の芥川賞受賞作が原作である(筆者、未読)。鯨捕りを扱った映画としては、『鯨捕りの海』(監督:
梅川俊明、シグロ、1998年)があるが、残念ながら小生は観ていない。<ウィキペディア>によれば、当時の
捕鯨の長編記録映画で、和歌山県の太地のゴンドウクジラ漁、北太平洋のミンククジラ調査捕鯨と鯨の解体、
ノルウェーの捕鯨事情、千葉県の和田浦のツチクジラ漁を詳しく取材し、誇りを持って漁に励む男たちの姿
を映し出したドキュメンタリー作品の由。キネマ旬報文化映画10位。また、2010年には、和歌山県の太地町
で行われているイルカ追い込み漁を描いている映画『ザ・コーヴ(The Cove, 2009)』(監督は:ルイ・シ
ホヨス〔Louis (Louie) Psihoyos〕、米国、2010年)が日本で公開されている。。「コーヴ(cove)」は入
り江の意味。PG-12指定。当該映画が一方的な内容であるため、より深く理解する一助として、日本では『鯨
捕りの海』を再上映する映画館もあった。
 鯨は登場しないが、何となく雰囲気の似ている映画としては、『神々の深き欲望』(監督:今村昌平、今
村プロ、1968年)〔「日日是労働セレクト11」、参照〕を連想した。沖を行く船のシーンが被ったからで
ある。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  芥川賞受賞の宇能鴻一郎の原作を『裁かれる越前守』のコンビ新藤兼人が脚色、田中徳三が監督し
 た文芸もの。撮影は『爛』の小林節雄。

   〔あらすじ〕

  漁師たちは、悪魔の化身のようなその巨大な鯨と長い間たたかい続けたが、何百人もが命を失った。
 今では「鯨神」と呼んで恐れおののき、誰一人近づこうとしない。しかし、九州和田浦に生まれたシ
 ャキ(本郷功次郎)は、祖父(河原侃二)も父(杉田康)も兄(藤山浩二)も殺され、自分の手で鯨
 神をたおすことを誓った。村の鯨名主(志村喬)は鯨神を殺した者に、一人娘トヨ(江波杏子)と家
 屋敷田地名跡を与えると宣言した。シャキの次に「おれもだ」と名乗りあげたのは、紀州からきたば
 かりの男(勝新太郎)である。シャキをひそかに愛するエイ(藤村志保)は、シャキがトヨを嫁にも
 らうのが心配だが、シャキは鯨神をたおすだけが目的なのだ。木枯吹きすさぶ冬、長崎へ出て医者に
 なろうと志すカスケ(竹村洋介)がきて、シャキの妹ユキ(高野通子)を嫁にくれという。シャキが
 反対しなかったのは、死ぬつもりだからである。梅の花の咲いた日、エイは海岸の洞窟で赤ん坊を生
 んだ。自分の子でないと知りながらも、シャキは父親になる決心をした。こころからエイを愛してい
 たのである。やがて鯨神が和田浦へ向って全速力でやってくるという通信が入った。船出の前日、紀
 州男は「俺に一番刃刺しをゆずれ」と迫るが、シャキは応じない。九艘の勢子船と二艘の双海船は一
 斉に浜を出て、鯨神に向った。「銛をうて!」の合図に十数本の銛が背中にぶちこまれた。傷ついた
 鯨神は猛烈なスピードで沖に泳ぐ。そのとき、紀州男が血の海に飛び込んだ。鯨名主はシャキを抱き
 とめた。紀州男は鯨神の背に飛び乗ると、槍で急所をえぐった。苦しまぎれに潜った鯨神が再び浮上
 したとき、紀州男は絶命していた。シャキは怪物のような頭にとりつき、鼻こぶにテガタ庖丁をふる
 った。血が滝のように噴き出し、海は朱に染った。鯨神は死んだがシャキも瀕死の重傷だった。砂浜
 で寝棺に入ったシャキは鯨神と対峙した。そこで彼は初めて子どもの父が紀州男で、自分を助けるた
 めに、あんな無謀なふるまいに出たことを知った。夕陽が海を染めるころ、シャキの最後が迫った。
 何よりも鯨神を愛したシャキは、自分が鯨神に変身したと感じた……。

 他に、見明凡太朗(ヨヘエ=元和田浦の鯨捕り)、村田知栄子(シャキの母)、橘喜久子(同じく祖母)、
上田吉二郎(土佐ザメ)、北城寿太郎(片目)、橋本力(ひげ面=長州のハダシ))、藤原礼子(オコマ=
居酒屋の酌婦)、須藤恒子(エイの老母)、宮島健一(大別当)、佐々木正時(別当A)、谷謙一(同じく
B)、大塚弘(同じくC)、阿部脩(漁師A)、森一矢(同じくB)、ウィリアム・ヒューズ(神父)など
が出演している。
 <Movie Walker>の記述では、時代背景が分からないと思うので、以下に<ウィキペディア>の記述を引用し
ておく。同じく、執筆者に感謝したい。

   〔あらすじ(映画)〕

  明治時代初期、九州沿岸には、代々悪魔の鯨と恐れられる巨大な鯨が現れ、その凶暴な性格により
 すでに何十人もの漁師が命を落としていた。村人が「鯨神」と恐れるその鯨に父と兄を殺された若き
 漁師・シャキ(本郷功次郎)は、鯨神への復讐を誓う。村の鯨名主(志村喬)は、鯨を倒した者に娘・
 トヨ(江波杏子)と屋敷を与えるという。そんな時、村に流しの鯨漁師・紀州(勝新太郎)が現れる。
 紀州はシャキと反目し、彼に恋焦がれる貧家の娘・エイ(藤村志保)を犯すが、シャキは鯨神を倒す
 ことのみに執念を燃やし、トヨやエイの愛を受け入れることはなかった。そして、再び現れた鯨神に
 対し、紀州は無謀にもその背に取り憑く。村人たちの執念の銛が無数に鯨神へ打ち込まれ、怒り狂っ
 た鯨神とシャキの最後の戦いが始まる。やがて、瀕死となりながらも勝利したシャキは、自分自身が
 鯨神と化していくのを感じるのだった。

 紀州(和歌山)、土佐(高知)、丹後(京都)が有名な鯨捕りの土地として紹介されているが、この和田
浦は、調べてみると、「和田浦駅(わだうらえき)は、千葉県南房総市和田町仁我浦(にがうら)にある、
東日本旅客鉄道(JR東日本)内房線の駅である」とあって、九州ではない。さらに調査すると、どうやら長
崎県にあるらしい。キリシタンの挿話があるので、たぶんそうだろう。なお、鯨捕りの漁師たちは、「ハダ
シ」と呼ばれている。裸足で仕事をするからだろうか。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので報告しよう。両者ともに昭和の真っ只中の映画で、貴重な時代の証言の役目を果  
たしていると思う。また、今年の鑑賞映画の中心テーマは「社会派映画」であるが、観ようによっては両者と
もにその範疇に入るのではないだろうか。
 1本目は、『酔いどれ博士』(監督:三隅研次、大映京都、1966年)である。もしかすると、『酔いどれ天
使』(監督:黒澤明、東宝、1948年)を少し意識した題名かもしれない。破天荒な医師を主人公にした映画で、
喜劇タッチの部分も多々あり、勝新も楽しみながら演技しているように見えた。映画の流れとしては、最近観
た『喜劇・一発大必勝』(監督:山田洋次、松竹、1969年)〔「日日是労働セレクト143」、参照〕に似て
いるような気がした。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『刺青(1966年)』の新藤兼人がシナリオを執筆、『処女が見た』の三隅研次が監督したアクショ
 ンもの。撮影は『若親分喧嘩状』の森田富士郎。キャッチコピーは、「げんこが聴診器/手術道具は
 ドス一丁」である。

   〔あらすじ〕

  スラム街のドヤで一人の頑丈な体躯の得体の知れない男が、花札と酒に浸っていた。「ギョロ松」
 こと大松伝次郎(勝新太郎)であった。彼は血気盛んなため、ある傷害事件を起し、外科医の免状を
 剥奪された上、大病院を追われ、やむなく潜入してきたのであった。ある日決闘で撃たれたチンピラ、
 トラ松(平泉征〔現 平泉成〕)の弾丸摘出手術をした。それを機に、スラムの自治委員長(殿山泰司)   
 ら三役の懇願により、花子(小林哲子)とお松(ミヤコ蝶々)を看護婦にして、ニセ医者を開業する    
 ことになった。ある夜バーでホステスのカルメンお春(江波杏子)にからまれ、閉口しての帰り彼は、
 麻薬王・王全吾(浜村純)のピストルの弾丸の摘出手術をやらされ、危く消されそうになった。怒っ
 た彼は「元帥」が通称の警官・西村研吉(東野英治郎)に麻薬王の居場所を教え逮捕させた。彼は釣
 りの最中、その元帥に無免許臭いと疑われるが、対岸の胸を病む貧しい少女(小林幸子)の話を聞く
 と、逆に「あんたが、いや国家があの人たちに何かしてやったかね」と、怒りを叩きつけた。そして
 彼は少女のために果物や卵をソッと置いてきた。彼はまたトラ松が恋人の時子(林千鶴)と結婚する
 ため、組と縁を切りたがって決闘に及んだことを知り、彼をそそのかした連中に鉄挙で制裁を加えた。
 また、時子が健気に養う父親(田武謙三)の怠け病に気合を入れたりもした。かくしてスラムにも、
 ギョロ松らの働きで明かるさが見え始めた。ところが、トラ松が再び瀕死の傷を負ってかつぎ込まれ
 た。しかし、さすがのギョロ松も手がくだせない。彼は手術代二十万を稼ぐため、トラ松の決闘の相
 手の三次(千波丈太郎)と花札を打ったが負け、窮した彼は腕つくで金をまき上げ、そして彼はトラ
 松を大病院に運び院長(花布辰男)に託した。実は、ギョロ松はこの院長の教え子であった。病院を
 出た彼は三次らチンピラ連中に囲まれたが、一人残らずのしてしまった。翌日彼は快方に向かい始め
 た少女を見舞って、そこを立去る決心を固めた。しかしその彼を元帥が待ち構えていた。

 他に、上田忠好(副委員長)、藤岡琢也(書記長)、酒井修(エビガニ団首領)、高杉玄(黒眼鏡=麻薬
王の配下)、玉置一恵(警部)などが出演している。なお、ギョロ松が泊まっていた木賃宿は「ホテル・ラ
ッキー」で、宿泊代は「80.円」だった。おそらく、80の次のピリオドは、銭を用いていた頃の名残りだと
思われる。小林哲子という女優はなかなか魅力的で、<ウィキペディア>によれば、「劇団俳優座に在籍。舞
台、映画、テレビにと活躍したが、中でも『海底軍艦』(筆者、未見)で演じたムウ帝国皇帝のふてぶてし
さと紙一重の威厳ある不思議な美しさは、その存在を永遠のものとした」という記述は大袈裟ではないよう
な気がする。この花子という役も、芯の強い女性に見える。
 2本目は、『闇を横切れ』(監督:増村保造、大映、1959年)である。増村監督の映画はこれで39本鑑賞
したことになる(「日日是労働セレクト137」、参照)。全作品数が57本であるから、鑑賞率は7割近く
(.684)ということになる。最近になって、『映画監督 増村保造の世界 上・下』(増村保造 著、藤井浩明  
監修、ワイズ出版映画文庫、2014年)という本を知ったので、注文した。まだ手に取っていないが、けっこ
う楽しみにしている。
 さて、当該映画だが、1958年から1966年までNHKで放映されたドラマ『事件記者』を思い出した。登場する
新聞社は4社、東京日報、タイムス、中央日日、毎朝であった(ウィキペディア)。辛うじて「タイムス」
と「毎朝新聞」の名前が耳に残っている。もちろん、小学生だったので、よく分からない部分がたくさんあ
ったのだろうが、けっこう面白がって観ていたような記憶がある。小生は「新聞記者になりたい」と思って
いた時期があるので、たぶんこのTVドラマの影響は大きかったに違いない。
 新聞の仕事と言えば、『クライマーズ・ハイ』(監督:原田眞人、「クライマーズ・ハイ」フィルム・パ
ートナーズ〔ビーワイルド=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント=トゥモロゥー〕、2008年)〔「日
日是労働セレクト140」、参照〕を連想するが、同じく地方紙を扱っているので、両者に通底する要素も
多い。たとえば、全国紙との関係、地元の新聞という意味、新聞を発行する上でのさまざまな困難(たとえ
ば、妨害や締切)など、見所満載であった。ただし、1959年と時代がかなり古いので、若者にはピンと来な
い事柄も多いのではないか。たとえば、生まれたばかりの赤ちゃんの体重を訊くシーンがあるが、「一月で
一貫二百目(=匁)になった」という台詞があった。一貫は約3.75キログラム、一匁は3.75グラムだから、
メートル法に換算すると、4.5キログラムくらいだろうか。資本金の数字も現代とは桁違いである。たとえ
ば、全国紙の「東都日報」が7億円、地方紙の「西武新聞」が720万円という風に。飲食店での勘定が370円
というのもばかに安く感じられた。現代だったら、少なくともその5倍くらい、あるいは10倍くらいかもし
れない。冒頭でストリッパーが殺されるが、そのプロフィールも時代掛かっている。「貧乏漁師の娘として
生まれて、不良女学生、ドサ廻りのジャズ歌手、転んで、進駐軍のオンリー、最後にストリッパー」という
ものである。若者は、「進駐軍のオンリー」などという言葉に、どんな反応を見せるのだろうか。また、米
軍のキャンプ地の払い下げ問題が出てくるが、日本全国に及ぶ都市開発と絡むだけに、戦後日本の一側面を
伝えているとも言えるだろう。お金に纏わる話も、時代を感じさせる。警察官や医師が金の誘惑に弱いのも
薄給だからだという按配である。また、「恩給」という言葉も、若者には馴染がないだろう。いずれにして
も、昭和30年代(1959年は、昭和34年)は小生にとって最も懐かしい時代なので、それだけでも楽しめた。
ヴェテランの新聞人が若手に「夜ものを考えるな、酒をあおって寝てしまえ」という台詞を吐くが、これも
今の若者だったら大きなお世話で、ウザったく感じるのかもしれない。このヴェテランは、「支那(=中国)
で4年弾の下を潜ってきた」猛者である。小生にも記憶があるが、昭和30代には、このようなタイプの男性
は山ほどいたと思う。ただし、誰とは言わないが、新聞記者にも拘らず、「物見遊山(ものみゆさん)」を
「ものみゆうざん」と発音していた。これは時代のせいではなく、たぶん単なる間違いだろう。撮影現場に
いた誰も気づかないのも問題だが、編集の時のチェックが甘いのはもっと問題だと思う。また、主人公のひ
とりである若い女性が女の幸せについて語るシーンがあるが、「好きな男と結婚して子どもを産むこと」と
答えている。小生は、東京オリンピック(1964年)辺りを境にしてこの「大思想」が少しずつ変わっていっ
たという見立てをしているが、まさにそれを証明しているような答えであった。フランス国歌の「ラ・マル
セイエーズ」《La Marseillaise》(フランス革命のときの革命歌。マルセイユの連盟兵〔=義勇兵〕が歌っ
て広めたことからこの名前がある〔ウィキペディアより〕)が口笛として背景に流されるが、おそらく新聞
による地方の改革を高らかに謳い上げるためだったのだろう。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  ある地方都市の市長選挙をめぐって起った連続殺人を追う新聞記者を主人公にしたアクション・ド
 ラマ。『日本誕生』の共同執筆者・菊島隆三と、『美貌に罪あり』を監督した増村保造との脚本を、
 増村保造が監督し、同じく『美貌に罪あり』の村井博が撮影した。なお、音楽は口笛を除いて一切使
 用されていない。

   〔あらすじ〕

  女が殺されていた。絞殺死体の傍に泥酔して倒れた男が一人、女はストリッパーの鳴海秋子〔DVDの
 キャストでは「純子」になっていたが、まったくの間違い〕(八潮悠子)、男は市長選挙に革新党の
 候補として出馬している落合正英(松本克平)だった。落合はその場から容疑者として警察に連行さ
 れた。なぜこの二人が一緒にいるんだ、話がうますぎる──西部新聞の社会部記者・石塚邦夫(川口
 浩)は疑問を抱いた。現場に居合せた老警官の片山(大山健二)は事件の発生直後、黒コート、顎に
 傷痕のある男を見たという。殺し屋(守田学)だと石塚は確信した。彼はこの事実を編集局長の高沢
 渉(山村聰)に話した。高沢は激励した。石塚にとって、高沢は最も尊敬する人物だった。西部新聞
 を今日あらしめたのは高沢の手腕だった。石塚は、片山が休暇を命ぜられて旅に出たことを知った。
 温泉旅館の一室で、石塚は片山に会った。証言を取消さなければ、クビにして恩給がつかないように
 すると、捜査係長の生田(高松英郎)に言われたという。石塚は、殺された女の友人のストリッパー
 鳥居元美(叶順子)にも会った。彼女は何かに怯えているようだ。片山が亡くなった。生田捜査係長
 の「自殺だよ」という言葉は疑わしかった。石塚は、市の大ボスと見られている広瀬陽吉(滝沢修)
 から呼出しを受けた。広瀬の目はこの事件から手を引けと言っていた。石塚は事件の核心と思われる
 材料を聞きこんだ。現市長一派の汚職である。彼らは都市計画の道路拡張を理由に、この市の中心地
 帯の土地を一斉に買い上げた。が、都市計画は中止され再び民間に払下げになった時、その土地を買
 ったのは広瀬だったのだ。写真コンクールの応募作品の中に、偶然殺し屋らしい顔が写っていた。撮
 影者(飛田喜佐夫)は、片山が殺された旅館の前のDP屋だ。その写真を石塚は元美に見せた。彼女
 の顔は青ざめた。警察に照会の結果、殺し屋で前科五犯の森という男だった。石塚は警察署長(見明
 凡太朗)に今までのことを喋り、なじった。結果は、生田捜査係長の休職というかたちでやって来た。
 生田は買収されていたのだ。また殺人が起った。DP屋が殺されたのだ。殺し屋のネガが紛失してい
 た。石塚には、どうしてDP屋が殺されたのか不思議だった。新聞社の中にも内通する奴がいるのだ
 ろうか? 石塚は元美から、殺された秋子が持っていた都市計画汚職の関係者一覧表を受取り社へ乗
 りこんだ。しかし、石塚の調べたことは記事にはならない。高沢が広瀬と手を握っていたのだ。しか
 し、東都日報が広瀬をくどき落したという知らせを聞き、高沢も立ち上った。彼は言った。「新聞可
 愛いさだけでボスと手を握ってきたが、それまでにして育てたこの新聞が、今ドタンバに追いつめら
 れた。俺は大事なことを忘れていた。新聞は読者という民衆のものだ。真実を訴えてそれにより民衆
 の支持を受ける。それで勝負するのが新聞屋の根性だ」と。記者に発破をかけた後外に出た高沢は、
 例の殺し屋に殺された。石塚は歯をくいしばりながら原稿を書いていた。

 他に、杉田康(掛川紘一=広瀬の子分で、秋子の夫)、滝花久子(片山の妻)〔52歳という設定だが、随分
老けて見えた。これも時代を現していると思う〕 、潮万太郎(山野=タクシーの運転手)、浜村純(首藤真
五郎=保守党の現市長)、花布辰男(岡田=東都日報支局長)、夏木章(デスク)、森矢雄二(選挙カーの
学生A)、青山邦夫(同じくB)、三宅川和子(同じく女子学生)、中田勉(ホテル・ワシントンの支配人)、
半谷光子(おとき=同じくスタッフ、殺人現場の第一発見者)、竹内哲郎(按摩=指圧師)、此木透(革新
党支部長)、杉森麟(選挙事務長)、高村栄一(広瀬の顧問弁護士)、春本冨士夫(水上博士=秋子の司法
解剖で執刀した医師)、角梨枝子(バー「エリート」のマダム)、新宮信子(花月の女将)、伊達正(モヒ=
モルヒネを元美に打とうとした男)、村田扶実子(ホテル・ワシントンの掃除婦)、伊東光一(西部新聞社
社長)、丸山修(同じく社会部長)、松村若代(旅館「西屋」の女中)、谷謙一(広瀬の秘書)、三角野郎
(愚連隊A)、高見貫(アパートの管理人)、藤巻公義〔潤〕(新聞記者)などが出演している。
 山村聰や滝沢修は、このような役を配されると本当に精彩を放つ。脇役陣の浜村純、潮万太郎、見明凡太
朗、夏木章らも、実に生き生きとした演技を見せている。もちろん、主人公の川口浩や叶順子には、地味な
がら華があった。日本映画全盛時代の作品らしい出来であった。


 某月某日

 DVDで邦画の『妻二人』(監督:増村保造、大映東京、1967年)を観た。コンパクトにまとめられた愛憎ド
ラマで、四人の女性の競演にも見所があった。締め括りはウソ臭いが、映画なのでこれもまたアリなのだろ
う。思うに、原作者が外国人なので、どことなく日本とは異なる様相が滲み出てくるようだ。ともあれ、よ
くあるタイプの物語であった。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になろう。執筆者に感謝したい。なお、事
実誤認が甚だしいので、大幅に改変した。お赦し願いたい。

   〔解説〕

  パトリック・クェンティンの原作を『酔いどれ波止場』の新藤兼人が脚色し、『赤い天使』の増村
 保造が監督した風俗もの。撮影は『兵隊やくざ 俺にまかせろ』の宗川信夫。

   〔あらすじ〕

  作家志望の夢を捨てた柴田健三(高橋幸治)は愛人の雨宮順子(岡田茉莉子)と別れ、婦人雑誌社
 の社長永井昇平(三島雅夫)の長女道子(若尾文子)と結婚したが、ある夜何年かぶりに順子に会っ
 た。彼女は文学青年の小林章太郎(伊藤孝雄)を養い、健三で果せなかった夢を追っていた。順子の
 部屋を訪ねた健三は拳銃を見つけたが、それは彼女が乱暴な小林から身を守るためのものだった。順
 子と健三の過去を知った小林は金目当てに道子の妹利恵(江波杏子)に近づき、強引に順子と手を切
 った。道子が小林の人柄が嫌いで二人の結婚に反対すると、小林は健三と順子の過去を道子に知らせ、
 さらに永井昇平と井上美佐江(長谷川待子)の情事、会社の会計係で美佐江の夫井上潤吉〔元伯爵の
 御曹司〕(木村玄)が横領していることも公表すると脅迫したのだ。誠実と清潔をモットーとする会
 社にとって、大きなスキャンダルである。道子はその夜大阪出張を口実に家をあけて小林と取引しよ
 うとした。口止め料として、100万円を用意して小林が純子を住まわせていた部屋で会ったのである。
 ところが小林に犯されそうになった道子は小林のポケットにあった拳銃で彼を射ち殺してしまったの
 である。翌日、新聞で事件を知った永井昇平は利恵が犯行時刻に小林の部屋にいたと聞き、スキャン
 ダルを恐れて、健三と利恵が一緒にいたというアリバイを作った。しかし健三は、拳銃と、自分が昔
 与えた指輪が現場にあったために順子が逮捕された時、犯行時刻に彼は順子と会っていたから、彼女
 が犯人であるはずはないと考えて彼女を救う決心をした。そんな時道子が帰ってきた。やがて健三は
 小林が道子を脅迫していたことをつきとめ、道子に問いただした。正直な道子は総てを告白したが健
 三は道子を見捨てることは出来なかった。道子は正当防衛だし、彼女が健三を愛する愛が誠実である
 ことには変りはなかったからである。また健三も、順子に惹かれながらも道子を愛していた。そして、
 自殺を思いとどまった道子は、健三に付き添われて警察に自首した。健三は、釈放されて警察を去っ
 ていく順子を複雑な思いで見送るのだった。

 他に、早川雄三(町田警部補=城南警察署の捜査係長)、村田扶実子(お年=永井家の女中)、原田げん
〔言遍に玄〕(バー「すずらん」のバーテン)、仲村隆(新聞記者)、伊東光一(雑誌『主婦の世界』の編
集部長)、井上大吾(永井家の書生)、谷謙一(永井昇平の秘書)、小山内淳(タクシーの運転手)、九段
吾郎(町田の相棒刑事)、笠原玲子(婦人警官)などが出演している。なお、一部の配役は小生の推定であ
ることをお断りしておく。
 現代の若者にはなかなか想像できないことや事柄が出てきたので、記しておく。たとえば、恋人同士だっ
た頃の健三は順子のことをOL(オフィスレディ)ならぬBG(ビジネスガール)と呼んでいる。『主婦の世界』
の標語は、「清く明るく美しく」である(よく使われた似ている標語として「清く正しく美しく」があり、
吉永小百合のイメージがダブる)。社長の昇平は、多角経営を成功させたビジネスマンだが、会社の方針通
り、原宿の深夜喫茶で警察に補導されて注意を受けた、レストランのコックである矢部一郎と化粧品売場の
金子妙子(姓名の漢字は推量)を、即刻解雇している。瀬戸内海の漁師町における未就学児童の問題が登場
する、等々である。最後に、この映画最大のメッセージを記しておこう。永井昇平が娘の道子に向かって吐
き捨てる台詞である。「いいか、人間は生き物なんだ。清く明るいどころか、汚くって出鱈目なものなんだ」
……いかにも、原作を脚色した新藤兼人の書きそうな台詞ではなかろうか。


 某月某日

 今日は、2017年に鑑賞した邦画の総括をしよう。例年ならば、半期ごとに小生の鑑賞映画(邦画、限定)
ベスト10を発表していたが、昨年は鑑賞映画の本数が極端に減ったので行わなかった。よって、新たに年間
ベスト10を企画して、それを以下に示すことにする。なお、2016年に鑑賞した邦画が212本(上半期78本、
下半期134本)だったのに対して、2017年は110本(上半期49本、下半期61本)だった。都合102本の減であ
る。今年は再び年間鑑賞ノルマを200本に設定して、大いに邦画を堪能したいものである。
 
 1位 『予告犯』、監督:中村義洋、映画「予告犯」製作委員会〔TBSテレビ=WOWOW=ジェイ・ストーム=
     電通=CBCテレビ=C&Iエンタテインメント=MBS=ジェイアール東日本企画=東宝=TCエンタ
     テインメント=日本出版販売=RKB=HBC〕、2015年。
 2位 『クライマーズ・ハイ』、監督:原田眞人、「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ
     〔ビーワイルド=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント=トゥモロゥー〕、2008年。
 3位 『葛城事件』、監督:赤堀雅秋、「葛城事件」製作委員会〔ファントム・フィルム=テレビマン
     ユニオン=コムレイド〕、2016年。
 4位 『動脈列島』、監督:増村保造、東京映画、1975年。
 5位 『西陣心中』、監督:高林陽一、ATG=たかばやしよういちプロ、1977年。
 6位 『女の勲章』、監督:吉村公三郎、大映東京、1961年。
 7位 『将軍家光の乱心 激突』、監督:降旗康男、東映、1989年。
 8位 『日本で一番悪い奴ら』、監督:白石和彌、『日本で一番悪い奴ら』製作委員会〔日活=東映=
     木下グループ=カルチュア・エンタテインメント=ぴあ=GYAO=ポニーキャニオンエンター
     プライズ〕、2016年。
 9位 『おとうと』、監督:山田洋次、「おとうと」製作委員会〔松竹=住友商事=テレビ朝日=博報堂
     DYメディアパートナーズ=衛星劇場=デンナーシステムズ=日本出版販売=FM東京=Yahoo !
     JAPAN=読売新聞=朝日放送=名古屋テレビ放送=木下工務店〕、2010年。
 10位 『手をつなぐ子等』、監督:稲垣浩、大映京都、1947年。

 以上である。なお、『クリーピー 偽りの隣人』(監督:黒沢清、「クリーピー」製作委員会〔松竹=木下
グループ=アスミック・エース=光文社=朝日新聞社=KDDI〕、2016年)、『絞殺』(監督:新藤兼人、近
代映画協会=ATG、1979年)、『怪異談 生きてゐる小平次』(監督:中川信夫、磯田事務所=ATG、1982年)、
『暴力』(監督:吉村公三郎、東映京都、1952年)、『海潮音』(監督:橋浦方人、シネマハウト=ATG、
1980年)、『おとし穴』(監督:勅使河原宏、勅使河原プロ、1962年)などの作品も面白かったが、ベスト
10にはやや及ばなかった。もちろん、例によって小生の好みが100パーセント反映しているので、きわめて恣
意的なベスト10であることは言うまでもない。なお、昨年の映画鑑賞の中心ジャンルは「アクション映画」
だったが、文字通りの意味でその手の作品は7位の『将軍家光の乱心 激突』だろうか。この映画を選んだの
は、時代劇アクションとして優れているばかりでなく、過酷な武家社会がきちんと描かれていると思ったか
らである。その他、ベスト10入りした作品はすべて、小生のこころを激しく揺さぶった点で忘れがたい。
 ちなみに、今年(2018年)の映画鑑賞の中心ジャンルは「社会派映画」にしようと思う。これまでにも注
目すべき社会派映画をけっこう観てきたが、ずっしりと重いテーマを扱った映画をじっくりと観てみたいも
のである。この試みは2007年から始めており、今年で12年目を迎える。過去のテーマは以下のようであった。

  2007年 戦争映画
  2008年 性愛(成人)映画
  2009年 極道(任侠)映画
  2010年 喜劇映画
  2011年 時代劇映画
  2012年 ホラー映画
  2013年 犯罪映画
  2014年 恋愛映画
  2015年 アニメ・SF・特撮映画
  2016年 ミステリー映画
  2017年 アクション映画

 今年は、上で述べたように「社会派映画」を中心に観ることに決めた。ドキュメンタリーを含めて、さま  
ざまな社会問題を直視した映画を鑑賞しようと思う。洋画ではあるが、今年になってから観た『帰ってきた
ヒトラー』は、その手の作品に含めてもいいと思う。なお、昨年のテーマである「アクション映画」鑑賞の
動機のひとつだった、『女必殺拳』シリーズ(主演:志穂美悦子)や『ずべ公番長』シリーズ(主演:大信
田礼子)はすべて観ることができた。それだけでも昨年の収穫だったと思いたい。


 某月某日

 DVDで邦画を5本観たので報告しよう。最初の4本は中古DVDで、最後の1本は新品のDVDで観た。中古の方
はいずれも10年以上前の作品で、以前から知っていたけれどもこれまで観る気の起きなかった作品ばかりで
ある。京都にある古本屋で購入した中古DVDで観た。「正月特需」といったところか。最後の1本は存在さえ
知らなかった作品で、大映倒産(1971年)寸前の作品である。つまり、いずれも観たくて観たわけではない。
ただし、大映作品の方は監督が増村保造なので、少しだけ期待して鑑賞に臨んだ。
 1本目は、『転がれ! たま子』(監督:新藤風、近代映画協会=シネカノン=衛星劇場=S・D・P=ハピ
ネット・ピクチャーズ、2005年)である。似ている作品を探せば、『もらとりあむタマ子』(監督:山下敦
弘、「もらとりあむタマ子」製作委員会〔エムオン・エンタテインメント=キングレコード〕、2013年)あ
たりか。もしかすると、当該作品がヒントになって、後者が製作されたのかもしれない。少なくとも、「タ
マコ」つながりはある。後者の方がシリアスだが、状況は似ている。つまり、人生に行き詰っていた若い女
性が自らの居場所を見つける物語である。監督は新藤兼人の孫の由で、撮影現場にも祖父その人が陣中見舞
いに来たらしい。作風に祖父の影響はないかと探しながら観たが、これといって見つからなかった。当たり
前と言えば当たり前か。独特の時間の流れがあり、女性監督ならではの柔らかいタッチだった。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   〔解説〕

  好物は甘食、どこへ行くにも鉄カブトが手離せないという風変わりでキュートなヒロインの“変身”
 を描くコメディ。山田麻衣子、竹中直人ら多彩なキャストも魅力的。

   〔あらすじ〕

  運河に囲まれた町。桜井たま子(山田麻衣子)は、美容室<たっまき>を経営する母・タツコ(岸本
 加世子)と、高校三年生の弟・大輔(松澤傑)と暮らしている。幼い頃、かくれんぼの最中に父の鳥
 越平吉(竹中直人)が家を出て行って以来、すっかり用心深くなったたま子は、24歳になった今もど
 こへ行くにも鉄かぶとが欠かせない。たま子の好物は、<日進月歩堂>のジイチャン(ミッキー・カー
 チス)が作る甘食だ。最近までは店のレジから甘食代を抜き取っていたたま子だが、「自分の甘食は
 自分で買え!」とタツコに言われ、たま子に恋心を寄せるトラキチ(与座嘉秋)が紹介した配送所で
 アルバイトを始めた。今日も甘食を買ったたま子は、父の平吉がやっている<鳥越メカニック>へ行く。
 平吉は、昼は自動車修理、夜はオブジェ作りという夢見心地な人生を送っている。ある日、細い道に
 入ったたま子は、不思議な雰囲気の少年(染谷州真)と出会う。少年は「気をつけて」と言い、次の
 瞬間、向こうからやって来る自転車をよけようとしたたま子は、穴に落ちる。その頃、桜井家のリビ
 ングでは、タツコとトラキチが年の差を超えて激しい恋に落ちていた。さらに<日進月歩堂>が休業し
 てしまった。ショックを受けたたま子は<鳥越メカニック>へ行くが、雑誌に取材されてアーティスト
 魂に火がついた平吉は、たま子の話など上の空。自分の部屋に戻ると、ひきこもり猫だったはずのタ
 マまで姿を消していた。タツコとトラキチの結婚式が行われた夜、<たっまき>で盛り上がる家族や友
 人をよそに、たま子はひとり孤独をかみしめる。どうしても甘食が食べたいたま子は、一念発起して、
 街で唯一たま子好みの甘食を作れるパン屋に弟子入り。修行の末に甘食を作ることができるようにな
 り、たま子の世界は少しだけ広がったのだった。

 他に、広田レオナ(マーブル=タツコの幼馴染みのバスガイド)、平岩紙(カシコちゃん=<たっまき>の
従業員)、草村礼子(<日進月歩堂>のバアチャン)、松重豊(中村源蔵=ベーカリー<Madu>の主人)、ユウ
スケ・黄帝液。(フタバ=同じく従業員)、ケンスケデリカット(ミツバ=同)、根岸季衣(村田=近所の
オバチャン)、永澤俊矢(田口=大福観光人事部長)、津川雅彦(大福千歳=同じく社長)、諏訪太郎〔太
朗〕(配送所の所長)、山根和馬(三四郎=同じく従業員)、廣川将都(五郎=同)、榊英雄(広瀬=雑誌
『美しい人生』編集者)、山野海(看護師)、やべきょうすけ(入院患者)、中原翔子(中村の店の客)、
三上瓔子(太極拳のおばちゃん)、坂野真弥(小学生のたま子)、荒船彩花(幼いたま子)、鴻野舞郁(赤
ちゃんのたま子)、杉本陽音(幼い大輔)、平田未央子(サンバガール)、新関ふみ乃(同)、Miki(同)、
松田美保(同)、中村正(ナレーター)などが出演している。
 2本目は、『life 天国で君に逢えたら』(監督:新城毅彦、「life 天国で君に逢えたら」製作委員会
〔東宝=TBS=電通=MBS=CBC=RKB=HBC=サニーサイドアップ=朝日新聞社=Yahoo! JAPAN〕、2007年)
である。今年初めて観た映画『星になった少年』と同様、早逝した実在の人物が主人公の映画である。もっ
とも、当該映画の方はすでにウインド・サーファーとして名を成している人物なので、「早逝」という表現
は少し外れるかもしれない。いずれにしても、その人生を多くの人々に伝えておきたい人物のひとりなのだ
ろう。ところで、サーフィンは「波に乗る」だが、ウインド・サーフィンは「風に乗る」らしい。したがっ
て、「風乗り」の物語ということになる。主人公の台詞に「どんなに吹き上がっても、ボード280、フィンは
33センチと29センチ、セイル6.5と6.0、完璧にチューニングしたから、どんなコンディションにも対応でき
る」というものがあった。簡単な説明を<ウィキペディア>から引用しておこう。詳しくは自分で参照してほ
しい。

  ウィンドサーフィン(Windsurfing)とは、セイルボード(以降、略してボード)とセイルを接続し
 た専用の道具を使用して、風を受けたセイルに発生する揚力と重力により波の斜面を滑り降りる推進
 力を主な動力源として水面を滑走するウォータースポーツである。ヨットとサーフィンを融合・発展
 させたスポーツである。ウィンドサーフィンをする人のことをウィンドサーファー(Windsurfer)と
 いう。

 主役の大沢たかおは相当練習したのであろう。かなり様になっていた。乗れるものなら小生も乗ってみた
い。とても気持ちよく波を滑っていく感じだからである。
 物語を確認しておく。以下、上と同様。

   〔解説〕

  ウィンドサーフィンの世界大会で入賞経験を持ち、38歳の若さで亡くなった飯島夏樹の自著を映画
 化。大沢たかおと伊東美咲が飯島夫妻を演じ、家族愛のドラマを感動的に紡ぐ。

   〔あらすじ〕

  プロウインドサーファーの飯島夏樹(大沢たかお)は、ワールドカップに出場するため、妻の寛子
 (伊東美咲)と二人で世界中を転戦していた。貧乏所帯で、寝る場所や日々の食事にも事欠く生活だ
 ったが、夢に向かって歩む夏樹と、そんな夫を信じ続ける寛子にとって苦にはならなかった。しかし、
 レースでは勝つことができない。夏樹は、次の大会で優勝できなければワールドカップに挑むことを
 諦める決意を固める。そして迎えたオーストラリア大会。夏樹にとっては師匠であり、日本人初のプ
 ロウインドサーファーである藤堂完(哀川翔)は、「ただ風と波を感じて乗れ」とアドバイスした。
 その結果、見事に優勝。好調のウェイブはその後も続き、結婚式も挙げた夏樹と寛子はハワイに居を
 構え、4人の子宝にも恵まれた。しかし、長女の小夏(川島海荷)が10歳になる頃からレースに勝て
 なくなった夏樹は、家庭を顧みなくなる。そんな父に反感を抱いた小夏は、家を飛び出してしまった。
 必死で小夏を探し出した夏樹は、娘に向かって許しを乞う。このときすでに、夏樹の体は肝細胞ガン
 (類土皮血管内皮腫)に侵されていた。治療に専念するため日本へ移住する飯島一家。二度の手術と
 入退院を繰り返す夏樹は、さらにパニック障害に襲われた。それでも、献身的に看護を続ける寛子と
 子どもたち。余命宣告を受けた夏樹は、「自分は生かされている」と実感して執筆活動を始める。再
 びハワイに戻り、インターネットで日々の暮らしを書き綴ると、その連載が圧倒的な反響を呼んだ。
 多くの人たちからの熱い反響と支持の声を聞きながら、波と風と家族を愛した夏樹は38歳で眠るよう
 に生涯を終える。その最後の瞬間まで、彼は執筆を続けていた。

 他に、真矢みき(藤堂玲子=完の妻)、袴田吉彦(篠田=夏樹の後輩)、石丸謙二郎(武藤=同じく主治
医)、塚本将(ヒロ=小夏の弟)、塚本僚(吾郎=同)、村山蒼也(タマキ=同)などが出演している。
 3本目は、『四日間の奇跡』(監督:佐々部清、「四日間の奇跡」製作委員会〔東映=TBS=喜八プロダク
ション=日販=東映ビデオ=BIGLOBE=シネムーブ=東京都ASA連合会〕、2005年)である。落雷の影響で二
人の人間のこころが入れ替わるという物語。安直な設定であるが、それなりに一捻りしている。
 物語を確認しておく。以下、上と同様。

   〔解説〕

  『半落ち』の佐々部清監督&吉岡秀隆主演による感動のファンタジー。再起不能になった元ピアニ
 ストの青年と、彼を取り巻く2人の女性に訪れる奇跡の物語だ。

   〔あらすじ〕

  5年前、ロンドンのコンサート会場で銃撃事件に巻き込まれ、左薬指の神経を切断、将来を嘱望さ
 れながら夢を断たれたピアニスト・如月敬輔(吉岡秀隆)は、その時両親を亡くした少女・楠本千織
 (尾高杏奈)を引き取ると、サヴァン症候群であった彼女に音楽の才能を見出し、今は各地の施設で
 千織の演奏を披露、慰問する日々を送っていた。ある日、敬輔と千織は小さな島の療養センターを訪
 れる。そこには、高校時代、敬輔に憧れ続けた一年後輩の岩村真理子(石田ゆり子)がセンター職員
 として働いており、ふたりを招いたのも彼女だった。かつて、不妊症から結婚生活に失敗していた真
 理子。彼女は、初恋の人との再会に胸をときめかすが、演奏会が終わった午後、突然の落雷が真理子
 と千織を襲った! 意識不明の重体の真理子に対し、幸いにも軽症で済んだ千織 ── ところが、彼
 女の身体に真理子の魂が宿っていたのだ。それを敬輔だけに告白した真理子は、千織が与えてくれた
 余命4日間を敬輔とともに過ごす。そして最期の日、敬輔に別れを告げた真理子の魂は千織の肉体を
 離れ天に召されていき、千織の肉体には千織の魂が戻るのであった。

 他に、西田敏行(倉野順次=脳科学研究所勤務医)、松坂慶子(倉野和枝=順次の妻)、平田満(藤本正
造=療養センター所長)、中越典子(長谷川未来=看護師)、鳥羽潤(萩原誠=未来の恋人の調理師)、石
橋蓮司(長谷川隆=未来の父)、西村和彦(後藤則幸=真理子の前夫)、小林綾子(後藤小夜子=則幸の現
在の妻)、小倉一郎(岩村秀雄=真理子の父)、宮下順子(則幸の母)、中原丈雄(同じく父)、佐々木す
み江(同じく祖母)、岡本麗(老人ホームのスタッフ)、小林麻子(坂口=看護師)、谷津勲(新田満)、
山本緑(老婦人)、竹内和彦(理学療法士)、鈴木信明(患者)、八巻博史(同)、渡辺直樹(同)、松尾
晶代(患者の家族)、森川絢(ヘルパー)、永倉大輔(千織の父)、中村栄子(同じく母)、井上肇(市役
所の男子職員)、金子藍(同じく女子職員)、田村三郎(警備員)、大沼百合子(真理子の母)、松山まみ
(高校生の真理子)、山田果琳(少女の真理子)、岩本美佑紀(後藤則子=則幸の妹)などが出演している。
 4本目は、『この胸いっぱいの愛を』(監督:塩田明彦、「この胸いっぱいの愛を」製作委員会〔TBS=東
宝=MBS=東京都ASA連合会=中部日本放送=小学館=WOWOW=日本出版販売=ジェネオン エンタテインメン
ト=レヴィプラス=S・D・P=ツインズジャパン=IMJエンタテインメント〕、2005年)である。この映画も
『四日間の奇跡』同様、荒唐無稽の物語ではあるが、人間の切ない思いを叶えるという意味で、誰もが一度
は想像(創造)したことのあるような世界ではないだろうか。
 物語を確認しておく。以下、上と同様。

   〔解説〕

   『黄泉がえり』の製作チームが新たに放つ純愛ファンタジー。伊藤英明&ミムラを主演に、少年時
 代にタイムスリップした青年が織り成すせつない恋のてん末を描く。

   〔あらすじ〕

  勤務する百貨店のお弁当フェア開催のため、小学生時代を過ごした北九州の門司を訪れた鈴谷比呂
 志(伊藤英明)は、同じ飛行機に搭乗していた布川輝良(勝地涼)ら3名の乗客とともに、自分が20
 年前の世界にタイムスリップしていることに気づく。そして、家庭の事情から祖母・椿(吉行和子)
 の経営する旅館で暮らしていた10歳の自分=ヒロ〔少年時代の比呂志〕(富岡涼)と出会い、旅館の
 仕事を手伝いながら幼い自身との奇妙な同居生活を始めた彼は、近所のお蕎麦屋さんのひとり娘で、
 彼にヴァイオリンを教えてくれた憧れの“和美姉ちゃん”〔青木和美〕(ミムラ)のことを想い出す。
 東京の音大を主席で卒業したものの、難病にかかってこの世を去ってしまった和美。比呂志は、彼女
 の命を救えなかったことを心にずっと引きずっていた。布川らとの話で、どうやら過去に遂げられな
 かった想いに決着を着けたら、元の世界に戻れるらしいと判明した。そこで、比呂志は和美の命を救
 うべく、ヒロとともに彼女に手術を受けさせようと腐心するのだが、心を閉ざした和美はそれを聞き
 入れようとしない。しかもそんな中、彼は知ってしまうのである。実は、自分や布川らが飛行機事故
 で既に死んでいたことを! しかし彼は諦めず、あるアイデアを思いつく。それは、門司で開かれる
 クラシックのコンサートのステージに和美を立たせてやることだった。果たして、比呂志とヒロの招
 待で会場にやって来た和美は、痛む体を押しながら満員の観衆を前に演奏を繰り広げ、生きる勇気を
 与えられる。しかし、それは同時に比呂志との別れを意味した──。2006年、飛行機事故で行方不明
 だった4名の遺体が、無事見つかったとの報道がされた。同じ頃、とある音楽教室では和美が子ども
 たちにヴァイオリンの指導をしている。障害は残ったものの、今、彼女はどんなことがあっても生き
 続けようと思っていた。自分を支えてくれ、その後姿を消した“あの男性”のためにも。

 他に、愛川欽也(青木保=和美の父)、宮藤官九郎(臼井光男=飛行機事故で亡くなった犠牲者のひとり)、
倍賞千恵子(角田朋恵=同)、古手川祐子(吉原園子=幼稚園の園長)、臼田あさ美(布川靖代=輝良の母)、
坂口理恵(ハル=旅館“鈴谷”のスタッフ)、中村勘三郎(花を愛する男)、金聖響(間宮浩介=指揮者)、
ダンカン(ヤクザの兄貴)、諏訪太朗(喫茶店のマスター)などが出演している。
 5本目は、『やくざ絶唱』(監督:増村保造、大映東京、1970年)である。これはいかにも昭和の映画で、
勝新としては大映立て直しの思いで出演していたのだろうが、増村保造でもそれは叶わなかった。もう、時
代がこの手の映画を求めていなかったのであろう。なお、大谷直子が『肉弾』(監督:岡本喜八、「肉弾」
をつくる会=ATG、1968年)に引き続いて出演している第二作目である。
 物語を確認しておく。以下、上と同様。

   〔解説〕

   『兵隊やくざ』以来五年ぶりに顔を合わせた増村保造と勝新太郎がやくざの世界を背景に、異父兄
 妹の愛情を描いた作品。脚本は『女体(1969年)』の池田一朗、監督は『でんきくらげ』の増村保造。
 撮影は同作の小林節雄が担当。なお、原作は黒岩重吾の『西成山王ホテル・崖の花』である。

   〔あらすじ〕

  石川組のやくざ、立松実(勝新太郎)には美しい異父妹、あかね(大谷直子)がいた。彼にとって、
 あかねは妹というより、恋人だった。その狂おしいまでの奉仕ぶりは、他人を二人の間から遠ざけ、
 情婦の小林可奈江(太地喜和子)でさえも、入りこむ余地のないほどだ。だが、あかねは孤独だった。
 そんな彼女に新任の教師、貝塚茂太郎(川津祐介)は興味をもった。あかねは肉親を越えた兄の異常
 なまでの想いを断ち切るために、自ら貝塚に身を任せてしまった。その頃、実は新興勢力の東風会幹
 部、外山(橋本力)の暗殺を命じられていたが、あかねの一件を知って猛り狂い、東風会のチンピラ
 と一騒動をひき起し、刑務所行きとなった。それを知ったあかねの実父の犬丸泰助(加藤嘉)が、養
 子の祐二(田村正和)を伴って一緒に暮そうとあかねにもちかけた。あかねは、一度は断わったもの
 の、次第に祐二に心を惹かれていった。やがて、泰助が莫大な遺産を残して死んだ。妻の里枝(荒木
 道子)は冷たい女で、あかねと裕二の仲をけっして認めなかった。実の舎弟である本田進(青山良彦)
 からこの話を聞いた実は、ふたたびあかねへの異常な想いにかられた。保釈で出てきて、実はまず、
 義母里枝から大枚一千万を脅し取り、裕二にあかねと別れるようすごんだ。そんな実にあかねはその
 異常さをさとすのだった。実は、うらめしく思いながらも、あかねから身をひいた。すべてを失った
 実には、外山を殺すことしか残されていなかった。実は弾丸の尽きるまで射ちまくった。しかし、実
 も子分たちのすさまじい連射を浴びた。うすれゆく意識の中で、実はあかねの名をつぶやいていた。

 他に、内田朝雄(石川=石川組の組長)、早川雄三(木山=あかねが一時勤めた会社の社長)、中条静夫
(宮沢=石川組の組員)、中田勉(森川=同)、平泉征〔平泉成〕(久井=東風会のチンピラ)、伊東光一
(木山の客)、米山ゆかり(朱実=リンチを受ける石川組のコールガール)、武江義雄(トルコ風呂“ニュ
ーふじ”の客)、甲斐弘子(同じく湯女)、谷謙一(バー「ナイト」のバーテン)、三笠すみれ(同じくホ
ステス)、河島尚真(警官)、仲村隆(刑事)、飛田喜佐夫(運転手)、花村泰子(あかねの来店した飲屋
の女将)、杉森麟(同じく客)、川内悦子(犬丸家の女中)、中原健(花山組組員)、荒木康夫(同)、松
山新一(東風会会員)、九段吾郎(同)などが出演している。
 立松実が逮捕されたときの容疑は、公務執行妨害、暴行・傷害、器物破損、営業妨害、脅迫である。刑事
によれば、長くても2年の懲役で済むそうだ。もっとも、彼は石川に保釈金を積んでもらって直ぐに出所し
ている。なお、映画や小説が好きなあかねの読んでいたのはフランスの小説『海の沈黙』(ヴェルコール)
である。小生の既読作品(岩波文庫)であるが、ほとんど覚えていない。なお、あかねが観ていた映画が何
かは分からなかった。


 某月某日

 京都にある某ネカフェにいる。今年初めてのブログである。休暇は何日あっても困らないが、今年の冬
休みは比較的長いので、喜んでいる。しかし、それも一週間を切った。せいぜいのんびりしたい。
 さて、DVDで邦画と洋画を1本ずつ観たので報告しよう。1本目は、邦画の『星になった少年』(監督:
河毛俊作、フジテレビジョン=東宝=S・D・P、2005年)である。主演の柳楽優弥は、名作『誰も知らない』
(監督:是枝裕和、『誰も知らない』製作委員会、2004年)への出演で第57回カンヌ国際映画祭の「男優賞」
を受賞し、一躍スターダムにのし上がった若手俳優である。当該作品は、その受賞第一作に当たる作品であ
る。もちろん、公開当時から知っていたが、まったく観る気が起きなかったので、これまで鑑賞を伸ばし伸
ばしにしてきた作品の一つである。もちろん、とくに柳楽を嫌っているわけではなく、「どうせつまらない
だろう」と見限っていたからである。古本屋で中古DVDを入手したので、今回観てみることにした。公開か
ら10年以上も経っているので、かえって新鮮だった。内容もまあまあか。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『誰も知らない』の柳楽優弥主演による、実話に基づく人間ドラマ。日本初のゾウ使いとなり、夢
 に生きた少年の成長と、家族愛、動物との交流を見つめた感動作だ。

   〔あらすじ〕

  1989年、千葉県東金市。家族経営の小さな動物プロダクション“小川動物プロダクション”に、母・
 佐緒里(常盤貴子)の長年の夢であった2頭の象、ミッキーと子象のランディがやって来た。象たち
 と仲良しになった13歳の長男・哲夢(柳楽優弥)は、ある日、立派な象使いになりたいと思い立ち、
 両親の反対を押し切って、単身チェンマイ北部の象学校に留学する。言葉もわからないまま、子象の
 ファーをあてがわれ、トレーニングを開始した哲夢。やがて、ポーを始めとした他の生徒たちとも打
 ち解けるようになった彼は、努力の甲斐あって一人前の象使いへと成長。帰国した後、ランディを調
 教し、町のフェスティヴァルや映画への出演を果たすと、自身の夢であった日本で初めての“ぞうさ
 んショウ”をも成功させる。そんな哲夢の次なる夢は、年老いた象たちがのんびり余生を暮らすため
 の楽園を作ること。しかし1992年11月10日、彼はバイク事故により帰らぬ人となってしまう。佐緒里
 が哲夢のガールフレンド・村上絵美(蒼井優)から、なぜ哲夢があんなにも象に夢中だったのか、そ
 の訳を聞かされたのは翌年の春のことだった。彼は、母の夢を追いかけたかったのである。そして、
 2005年、タイの象学校では、ポーがファーの子どもの調教を始めていた。その子象の名は──テツ。

 他に、高橋克実(小川耕介=哲夢の父)、倍賞美津子(藤沢朝子=佐緒里の母)、於保佐代子(小川紀=
哲夢の姉)、加藤清史郎/谷山毅(小川貴生=同じく弟)、井上花葉/甲野優美(小川万希=同じく妹)、
小野武彦(岩本信介=サファリパークの飼育係)、森下能幸(動物プロの飼育係)、友部康志(同)、佐藤
二朗(数学の教師)、相島一之(銀行員)、永堀剛敏(同)、武田鉄矢(ドラマの俳優)、中村育二(同じ
く監督)、ブラザートム(同じくプロデューサー)、伴美奈子(製麺屋の女主人)、JARAN PHETJAROEN(ゾ
ウ学校の校長、WISANUKORN SAISATH(ポー)、夏木ゆたか(テレビスタジオの司会者)、佐藤真弥(哲夢の
同級生)、森聖矢(同)、柳沢大介(同)、中村奎太(同)、岡本奈月(女生徒)、前場莉奈(同)、小手
伸也(コンパニオンの上司)、武田義晴(イベント会場の男)、加藤啓(同)などが出演している。
 タイのチェンマイ北部の景観は素敵だった。ただし、蠍や毒蛇はやはり願い下げである。もっとも、タイ
のことわざである「毒蛇は急がない」は、小生の座右の銘である。
 2本目は、洋画の『帰ってきたヒトラー(ER IST WIEDER DA, 2015)』(監督:デヴィット・ヴェント
〔David Wendt〕、独、2016年)である。これは、ドイツのタブーに挑戦した傑作である。以前にドイツ人
から直接聞いた話であるが、ドイツでは「ヒトラー(Hitler)」という苗字は消滅しているという。ムッソ
リーニ(Mussolini)や東條は消えたわけではなさそうだから、この事実は大きい。原作はティムール・ヴ
ェルメシュ(Timur Vermes)で、映画と同じ題名の小説を2012年に発表して、ベストセラーになった由。
その経緯は<ウィキペディア>に詳しいので、以下で引用してみよう。執筆者に多謝。一部改変したが、ご海
容いただきたい。


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  『帰ってきたヒトラー』(原題:Er ist wieder da「彼が帰ってきた」)は、ティムール・ヴェル
 メシュが2012年に発表した風刺小説である。現代のドイツに蘇ったアドルフ・ヒトラーが巻き起こす
 騒動を描く。ドイツではベストセラーになり、映画化されている。
  ヒトラーに対する数々の肯定的な描写から物議を醸したが、ヴェルメシュ自身は、ヒトラーを単純
 に悪魔化するだけではその危険性を十分に指摘できないとし、リアルなヒトラー像を表現するために
 あえてその優れた面も描き出したと述べている。

   〔あらすじ〕

  1945年に自殺したアドルフ・ヒトラーは、自殺直前の記憶を失った状態でベルリンの空き地で目を
 覚ます。ヒトラーは戦争指導に戻るため総統地下壕に向かおうとするが、ベルリンの人々が自分を総
 統と認識していないことに疑問を抱く。ヒトラーは情報を得るために立ち寄ったキオスクで、自分が
 いる時代が2011年のベルリンであることに気付き衝撃を受け、空腹と疲労が重なりその場に倒れ込ん
 でしまう。
  倒れ込んだヒトラーは、キオスクの主人に介抱され目を覚ます。キオスクの主人はヒトラーを見て
 「ヒトラーそっくりの役者かコメディアン」だと思い込み、「店の常連の業界人に紹介するから、し
 ばらく店で働いてくれないか」と頼み込んだ。地位も住処も失ったヒトラーは、生活の糧を得るため
 仕方なくキオスクで働き始めるが、数日後、キオスクの主人に紹介されたテレビ番組制作会社のゼン
 ゼンブリンクとザヴァツキのスカウトを受け、コメディアンとしてトーク番組に出演することになる。
 また、専属秘書のヴェラ・クレマイヤーからパソコンの使い方を習い、「インターネッツ」や「ウィ
 キペディア」を通して情報を得て現代に適応していく。
  ヒトラーはトーク番組でトルコ人を罵倒する演説を打つと、その映像が<YouTube>にアップロード
 され、一躍人気コメディアンとなる。ヒトラーはその後、タブロイド紙との騒動や極右政党への突撃
 取材など社会の反響を巻き起こし、ドイツで最も有名なコメディアンとなる。ヒトラーは自分の人気
 を「ナチズムを支持する国民の声」と解釈し、再び政界に進出することを考え事務所探しを始める。
 しかし、ヒトラーは「ドイツを冒涜した」としてネオナチから襲撃を受け重傷を負う。襲撃事件が報
 道されると、社会はヒトラーを「ネオナチの暴力に立ち向かうヒーロー」として持てはやし、政界か
 らは与野党問わず入党依頼が舞い込んで来た。ヒトラーは療養先の病院で社会の動きを見つつ、司会
 を任された新番組の構想と選挙運動の準備を進めていた。

   〔登場人物〕

  アドルフ・ヒトラー:ナチス・ドイツの総統。1945年の自殺後に2011年のドイツにタイムスリップ
            してくる。持ち前の知能の高さから、自分がタイムスリップした事実とドイ
            ツの戦後の歴史を理解し、再び政界復帰を目指す。
  カルメン・ベリーニ:テレビ番組制作会社・フラッシュライト社の女性副社長。ヒトラーの才能を
            見込み、専属コメディアンとして採用する。会社の実質的な経営を任されて
            おり、ヒトラーからも手腕を認められている。
  ヨアヒム・ゼンゼンブリンク:フラッシュライト社の社員。ヒトラーをコメディアンとしてスカウ
                トする。種々の能力には優れているが、問題が起きると責任回避に
                腐心する性格で、ヒトラーからは「小心な中間管理職」と思われて
                いる。
  フランク・ザヴァツキ:フラッシュライト社の社員。ヒトラーのトーク(演説)に感激し、ヒトラ
             ーの番組作りに積極的に協力る。下巻終盤でクレマイヤーと結婚する。
  ヴェラ・クレマイヤー:フラッシュライト社の女性社員。ヒトラーの秘書として事務処理を担当す
             る。ヒトラーからは「ユンゲの代わり」として重宝されている。ゴシップ
             騒動やユダヤ人の祖母からの叱責に葛藤する。
  アリ・ジョークマン:フラッシュライト社所属の人気コメディアン。エスニックジョークを得意と
            し、トーク番組〈クラス・アルター〉の司会を務めている。番組にゲストと
            して出演したヒトラーに人気を奪われたため、ヒトラーのことを煙たがって
            いる。
  ウルフ・ブロンナー:フラッシュライト社の助監督。ヒトラーの番組の撮影クルーのリーダー。
  ウーテ・カスラー:ヒトラーのトーク(演説)を「悪趣味なプログラム」として批判するビルト紙
           の女性記者。ヒトラーへの単独インタビューを申し込む。
  ベアテ・ゴルツ:大手出版社の女性編集者。社会的な注目を集めるヒトラーに本の執筆を持ちかけ
          る。
  イルムガルト:ヒトラーが入院した病院の看護婦。ヒトラーからは「自分が20歳若ければ」と好意
         を寄せられている。
  ホルガー・アプフェル:(ドイツ語版)実在の政治家。「ナチスの後継者」を自称するドイツ国家
             民主党の党首。ヒトラーからは「民族主義を理解していないならず者」と
             突撃取材で批判されてしまう。
  レナーテ・キュナスト:(ドイツ語版)実在の政治家。緑の党の元党首。ヒトラーの冠番組〈総統
             は語る〉のゲストとして登場。政策におけるナチスとの親和性を指摘され、
             困惑する。
  ジグマール・ガブリエル:実在の政治家。ドイツ社会民主党の党首。人気を集めるヒトラーに自党
              への入党を持ちかける。


   〔出版〕

  本書の定価は19.33ユーロで、これはナチ党の権力掌握が行われた1933年にちなんだものである。
 2013年5月の段階で20ヶ国語での翻訳が決定していた。クリストフ・マリア・ヘルプスト(ドイツ語
 版)の読み上げによるオーディオブック版も存在する。
  日本語版(森内薫訳)は河出書房新社より2014年1月21日に発売された。2016年4月には同社より文
 庫版が刊行された。これには単行本には収録されなかった原著者による注解の一部が付された。
  日本語版(単行本・文庫本)の発行部数は、文庫本の刊行から3か月の時点で累計24万部を突破し
 ている。

   〔評価〕

  ユダヤ系アメリカ人向け新聞・前進紙にて、ガブリエル・ローゼンフェルドは本書を「スラップス
 ティック」でありながら、最終的には道徳的なメッセージにたどり着く作品と評した。ただし、ロー
 ゼンフェルトはヴェルメシュがドイツ人によるナチズムの許容を説明するためにヒトラーを人間的に
 書いたのであろうと認めつつ、その描写が作品自体のリスクを高めているとして、「(読者は)ヒト
 ラーを笑っているだけではない、彼と共に笑っているのだ」(laugh not merely at Hitler, but also
 with him.)と書いている。
  南ドイツ新聞紙にて、コルネリア・フィードラーは本書の成功について、作品のクオリティや文学
 的魅力よりも、ヒトラーを主人公に選んだこと、そして彼を漫画のような滑稽さや邪悪さをもって描
 かなかったことが大きな理由であろうと断定し、歴史的事実を曖昧にするリスクがある一方で、ヴェ
 ルメシュがヒトラーを笑いの対象にしたかったのだろうともしている。

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 さて、映画化作品の方だが、これは<Movie Walker>の記述を引用しよう。以下、上と同様である。

   〔解説〕

  現代にタイムスリップしたヒトラーがモノマネ芸人としてテレビで人気になっていくさまを描き、
 話題を呼んだ小説を映画化したコメディ。リアリティを追求するため、無名の舞台俳優オリヴァー・
 マスッチがヒトラー役に選ばれたほか、実在の政治家や有名人、ネオナチと顔をあわせるなど、アド
 リブシーンを交えて物語が展開する。

   〔あらすじ〕

  ヒトラーの姿をした男(オリヴァー・マスッチ〔Oliver Masucci〕)が突如街に現れる。リストラ
 されたテレビマンに発掘された男は、復帰の足掛かりにテレビに出演させられる。男は長い沈黙の後、
 とんでもない演説を繰り出し、視聴者の度肝を抜く。自信に満ちた演説はかつてのヒトラーを模した
 完成度の高い芸と看做され、過激な毒演はユーモラスでありながら真理をついていると評判を呼び、
 男は一躍人気者に。しかし、彼はタイムスリップしてきた本物のヒトラーだった。そして天才扇動者
 である彼にとって、現代のネット社会は願ってもない環境だった……。

 他に、Fabian Busch(Fabian Sawatzki)、Christoph Maria Herbest(Christoph Sensenbrink)、Katja
Riemann(Katja Bellini)などが出演している。
 日本の現状もドイツとさほど変わらないような気がする。どうすればよくなるのか。国民がひとりひとり
自分で考え、それを寄せ合ってさまざまな角度から議論する外はない。気の遠くなるような話であるが、人
間に解決済みの問題などないからである。

                                                  
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