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岩佐 光広
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2018 ゼミナール4

授業全体の概要(シラバスより)


【テーマ】 卒業論文の構想を立てる

この授業では、以下のステップを踏みながら、卒業論文の構想を練り上げます。

1.「問い」を立てる
 まず各自で卒論の構想を練るための「問い」を立てます。ここでいう「問い」は大きく3つに分けられます。1)主題としての問い、2)問題意識としての問い、3)問題設定としての問い、です(佐藤健二 2014 『論文の書き方』、弘文堂)。まずは、これまで受けてきた授業は書いたレポートなどを振り返りながら関心を探り、卒論を構想するための「問い」をおおまかに整理していきます。

2.先行研究の収集と整理
 各自が設定した「問い」をもとに、先行研究を収集します。この段階では、関連しそうな本、論文、資料などを「とにかく」集めます。そのなかには、概念や理論を説明するもの、調査や分析のための方法論に関するものなども含まれます。そうして集めたものを「ざっと読む」ことを通じて、先行研究においてどのような学問領域において、どのような問いが立てられ、どのような議論が展開され、そしてどのような主張がなされているか、その全体像をおおまかに把握し、各自が設定した「問い」を再考していきます。

3.各自の関心にもとづく「問いのフィールド」の設定
 先行研究を踏まえながら「問いのフィールド」を設定します。「問いのフィールドを設定する」とは、特定の対象やテーマをめぐって様々な視点から問いを投げかけ、互いに関係しあう複数の問いを生み出していく作業のことです(戸田山和久 2012 『新版 論文の教室』、NHK出版)。各自が設定した「問い」がどのような議論の広がりをもっているのか、自分なりにはどのように議論を展開してみたいのか、それを問いのフィールドという形で具体化していきます。

4.アウトラインの作成
 中間発表会での発表を出発点として、どのように卒論における議論を展開していくか、そのアウトラインを作成します。具体的には先行研究調査で集めた文献・資料のなかから鍵となるものを選び、それを中心に先行研究を「批判的に検討」し、それをもとに各自で「異論」を導出していきます。卒業論文では、ここで導出された異論を出発点として、各自が「立論」を試みていくことになります。なお、ここで言うところの「批判」「異論」「立論」とは、野矢茂樹『新版 論理トレーニング』(産業図書株式会社、2006年)を参考にします。

6.卒論構想発表会(2月)での発表
 以上の作業を踏まえ、2月に開催予定の卒論構想発表会で発表を行います。



【補足事項】

来年2月以降は就活に集中できるように、ゼミ5(卒論ゼミ1学期分)の分もこみでゼミ4を実施します。
授業が始まってから相談のしますが、少しゼミを延長することを前提にゼミを行うので、スケジュールを調整しておいてください。


連絡事項


■ 2019/02/24:授業ページをアップデートしました。


授業スケジュール


2018年
 10/04 第01回 イントロダクション
 10/11 休講(1)
 10/18 休講(2)
 10/25 第02回 先行研究の整理と「問いのフィールド」の設定(1)
 11/01 休講(3)
 11/08 第03回 先行研究の整理と「問いのフィールド」の設定(2)
 11/15 第04回 各自の関心にもとづく「問いと答えのフィールド」の設定(1)
 11/22 第05回 各自の関心にもとづく「問いと答えのフィールド」の設定(2) 
 11/29 第06回 各自の関心にもとづく「問いと答えのフィールド」の設定(3)
 12/06 第07回 目次とアウトラインの作成(1)
 12/13 第08回 目次とアウトラインの作成(2)
 12/20 第09回 目次とアウトラインの作成(3)
 12/27 休講(4)
2019年
 01/03 (冬休み)
 01/10 第10回 卒論「はじめに」の執筆(1)
 01/17 第11回 卒論「はじめに」の執筆(2)
 01/24 第12回 卒論「はじめに」の執筆(3)
 01/30 第13回 2018年度合同卒論発表会への参加(予定)
 02/08 第14-15回 2018年度卒論構想発表会での発表(予定)


STEP0:事前準備(9月中)


ゼミナール3のレポート執筆、お疲れ様でした。
一息ついたら、9月中から2学期のゼミに向けて卒論のテーマについて考え始めてください。
そのための事前準備として、以下の2つの作業を行っておいてください。


(1)参考資料を読む

この授業では、以下の文献の第2部を参照しながら作業を進めます。
すでに入手しており、ざっと読んでいるかと思いますが、改めて第2部を読んでおいてください。



(2)卒論構想案テンプレートの作成

ゼミ合宿での報告を踏まえ、卒論で取り上げたいテーマについて、改めてテンプレートに内容を記載してくること。
そのうえで、ゼミナール4第01回(10/04)の際に、7部印刷して持ってくること。
第01回の授業では、これをもとに、各自の卒論構想について改めて説明してもらいます。


このテンプレートには、以下の項目が設定してあります。
ゼミ2で学んだことを踏まえながら、各項目について箇条書きで記入してきてください。
現段階ではまだまだモヤッとした内容でも良いですが、できるだけ具体的に考え、書いてきてください。

1)テーマあるいは問い
卒論で取り組みたいテーマあるいは問いを記載すること。

2)キーワード
卒論を執筆するうえでキーワードとなるものを複数挙げてください(少なくとも5-6語)。
できれば、それぞれの英語も一緒に記載してくれるとよりベターです。

3)テーマを選んだ理由・きっかけ・背景
上記のテーマを選んだ理由やきっかけについて記載すること。
個人的な動機でも良いし、きっかけとなった本や論文を挙げてくれても良いです。
いずれにせよ、そのテーマのどのあたりに興味・関心を持ったのかを意識して記入してみてください。

4)取り上げたい対象あるいは事例
上記のテーマを論じるうえで取り上げたい対象(現象、民族、地域など)、あるいは具体的な事例を記載すること。
文化人類学は、具体的な対象を設定し、具体的な事例を考察することを重視します。

5)視点あるいは理論
上記の対象を論ずる際に、どのような視点から論じるか、あるいは、どのような理論や概念を用いて考察するかを記載する。
同じ対象でも、視点や理論が異なれば、議論の仕方も変わります。
基本的には、「文化人類学の視点・理論から」という点はみなさん共有しています。
が、文化人類学の視点・理論といってもいろいろあるので、その辺を一歩踏み込んで考えてみてください。

6)参考文献
いうまでもなく、参考にした文献を記載してください。
なお、読んでないけど関連しそうな文献などを記載してくれても良いです。


【参考資料】

以下は、ゼミ4での作業を進めていくうえでの参考資料です。
いずれも書き方は異なりますが、重要と指摘しているポイントは重複しています。
テーマの設をはじめ、作業に迷ったときには、これらの資料を読み返してください。
ゼミ4を履修している早い段階で、時間を見つけて、読み進めるようにしてください。


その他にも、卒論執筆のためのテキストが多くあります。
以下のページにオススメが挙げてあるので、参考にしてください。



STEP1:テーマの探し方、決め方


(1)テーマを決める際のアドバイス

卒論のテーマを決めるのは、意外と難しいものです。
これまで書いてきたレポートの場合、基本的には何らかのテーマが与えられ、それにそって問いを立て、論じていきます。
その点で、レポートの場合は、出発点が他者から与えられることになります。
対して卒論の場合、その出発点を自分で決めなければならないため、困っちゃいます。

以下に卒論の出発点となるテーマを決める際のアドバイスを書いておきます。
これまでの卒論指導のなかで、繰り返し言ってきたことなので、たぶん多くの人に当てはまると思います。

アドバイス1:自分探しをしない!

卒論のテーマ、出発点を決めるというときに、まず注意してほしいことがあります。
それは、「自分の本当に関心のあること」のように「自分探し」を始めてしまうことです。
もちろん自分がどんなことに関心があり、どんなことを議論してみたいのかを、改めて考えてみることは大切です。
しかし、だからといって、内向きに「自分」に問いかけ、自分と向き合えばテーマが見つかるかといえば、必ずしもそうともいえません。
しばしば見つからなかったり、自己中心的なものになったり、あるいは漠然としすぎたものになったりします。
それでは卒論うまくいきません。
「自分探し」は別の機会にするか、あるいは、卒論を書くまでに済ましておきましょう。

ゼミ等を通じて繰り返し説明してきたように、アカデミックな議論とは「対話的」なもであることを忘れてはいけません。
他者の議論に触れ、それに疑問をいだいたり、感銘を受けたりする。
そうした、他者の議論に対して「応答」するところにこそ、みなさんの関心が現れてきます。
そして、その局面においてこそ、自分を見つめ直す「自省」の契機があります。
卒論のテーマを探る場所もまた、他者の議論と自分の応答のあいだにあり、その動きのなかでテーマは深まっていきます。

アドバイス2:過去の財産を活用する!

他者の議論に触れることが大切ですが、ではどんな文献や資料から触れてみたらよいでしょうか?
ここで、新たにゼロから始めようとすることも、1つの隘路です。
むしろ卒論のテーマ、出発点を決めるとき、これまで皆さんが培ってきた「財産」を活かしてほしいと思います。

ここでいう「財産」とは、簡単にいえば、受けてきた授業のノート、書いてきたレポートのことです。
これまで受けた授業をもう一度思い返してみると、興味を持ったりしたテーマがありませんでしたか?
これまで書いてきたレポートをもう一度読み返してみると、今ならもっとしっかり議論できるようなテーマを論じていたりしませんか?
せっかく学んだことがあるのだから、それを有効活用してほしいと思います。
(先生の側としても、授業をやったかいがあったというものです。)

特に、ゼミのなかで読んできた文献や論文、資料を改めて読み返してみることが、重要な手がかりとなります。
ゼミで取り上げている文献や論文は、重要だからこそ取り上げているわけで、それを放置しておくのはもったいない。
とはいえ、たぶん多くの人は、それらの文献を「読まされた」という受動的な姿勢で読んでいたのではないでしょうか。
それを、問題意識を持って批判的に積極的な姿勢で改めて読んでみると、「読まされた」ときには気づかなかった点に気づくはずです。
そうしたものも活用してみてください。


(2)文化人類学の「視点」を意識する

卒論のテーマを決めたり参考文献を探したりするとき、岩佐光広ゼミではやはり「文化人類学」がキーになります。
ここで、あらためて文化人類学の「視点」「立場」について、考えてみましょう。

■ 2つの眺め

卒論において議論を展開していくうえで重要な点について考えておきましょう。
それは「視点」です。むしろ「立場」といったほうがよいかもしれません。

その出発点として、アメリカの哲学者にトマス・ネーゲルの著作『どこでもないところからの眺め』(春秋社、2009年)を参考にしましょう。
ネーゲルは、人間という存在は、大きく2つ「眺め(view)」が同居していると述べます。

1つは、「今ここからの眺め(the view from now-here)」です。
これは、日々の生活を営み、それを経験する主体としての「自分」からの眺めです。
苦労したり、楽しんだり、恋したり、ケンカしたり、さまざまなしがらみのなかで、どっこいそれでも生きている。
その当事者たる「自分」からみたとき、日々生じる物事は無視できることではなく、大事なことに見えるでしょう。

もう1つは、本のタイトルにもなっている「どこからでもないところから眺め(the view from no-here)」です。
これは、日常生活とそれを営む主体としての自分から距離を取り、それをまるで他人事のように物事を眺める「自分」からの眺めです。
(ゼミのなかで話した「異化」や「相対化」を思い出してください。)
たまにありますよね、ふと「これって何の意味があるんだろう?」とかって、急に冷めてしまうこと。
「所詮、今付き合っている恋人なんて、いつまで付き合っているかわからないし、そんなに本気になることもないな」とか。
「環境問題なんてどうでもいいんじゃん、関係ないし」とか。
「人生なんて、無意味だ」とか。
普段の生活のなかに身を置きつつも、そのしがらみやら常識やらからふと離れて「冷めて」しまう感覚。
そんなとき、物事は無意味に感じたり、絶望的になったりすることもあるでしょう。

ごくごく簡略化して言えば、前者は「主観的な眺め」、後者は「客観的な眺め」と言えます。
ネーゲルは、人間ちゅうのは両方の眺めが同居しているもんだ、として、次のように述べます。

「客観的な自己はわれわれの不可欠な一部であり、その一見独立したかのような役割を無視することは、自身の主観的な個性を捨てるのと同様、自分自身から自分を切り離すことになる。何らかの形の疎外や対立から逃れる術はない。」[ネーゲル 2009:361]

だから、後者の眺めのなかでふと感じとられる「不条理」も人生の一部だ、と言います。
客観化して物事を眺められる能力をもつ以上、不条理や絶望感、厭世感を抱くのもおかしいことではないというわけです。

そのうえでネーゲルは、この両方の眺めのうちどっちかだけが重要だということはなく、両方が大事だと述べます。

「そのどちらかの側面の力や重要性を著しく弱めることは、自分たちをも弱めることになり、理にかなった目標にはならないと思う。本能だけでなく、客観的な知性にたいしても、抑圧は効果的に打撃を与えることができる。このような自己の内戦は、貧しい生活しかもたらさない。取り組むと同時に突き放していた方が、つまり不条理のほうがいい。これは自己否定の反対であり、しっかりとした覚醒の結果なのだから。」[ネーゲル 2009:365]

この感覚は、卒論のテーマを考えるうえでも重要なものだと思います。
主観的にすぎるテーマは、アタリマエすぎて自分にとっても、他者にとっても「気づき」も「おどろき」もありません。
日常生活とは「アタリマエの束」で成り立っているものであり、したがって、「今ここからの眺め」だけでは、そもそも物事に問いは立ちません。
その点で「どこからでもない眺め」は、物事に鋭く問い突きつけます。
その点で客観的な視点は、アカデミックな議論においては重要なものと言えます。
しかしながら客観的にすぎるテーマは、それこそ「他人事」のような無責任さと無意味さを感じてしまいます。
そうした議論が好きな人もいるのかもしれませんが、個人的にはあまり好みではない。
「じゃぁ、なんでわざわざそんなことをグダグダ論じるの?」と、逆に「冷めて」しまいます。

そういう意味では、ネーゲルのいう通り、卒論においても両方の眺めから考える必要があると思います。
主観的な眺めと客観的な眺めを行き来する。
「取り組むと同時に突き放す」、「突き放すと同時に取り組む」。
熱しすぎず冷めすぎず。
客観的な眺めからみたとき、テーマはごくごく身近なところにひそんでいることに気づきます。
主観的な眺めからみたとき、テーマは自分の人生・生活と結び付いていることに気づきます。
そうした主観と客観の往復から、卒論のテーマは生まれてくるように思います。

■ もう1つの眺め

ネーゲルの話を踏まえたうえで、文化人類学に立ち戻ってみましょう。
ネーゲルは、「今ここからの眺め(the view from now-here)」と「どこからでもないところから眺め(the view from no-here)」の2つをあげます。
しかし文化人類学の場合に重視されるのは、これらとはちょっと異なるもう1つの「眺め」と言えます。

文化人類学は、自分とは異なる暮らしを営む他者の理解を重視します。
そのための方法として、長期間のフィールドワークを採用してきました。
こうした文化人類学的な営みを通じて得られる眺めとはどのようなものなのでしょう?

それを、アメリカの文化人類学者クリフォード・ギアツは「現地の人の視点から(from the native''''''''s pointof view)」の眺めと表現します。
長期間のフィールドワークを通じて、文化人類学者は言葉を学び、現地の人と生活を共にしながら調査を行います。
一緒に行動し、観察し、話を聞き、自分自身の種々の経験も踏まえ考えます。
そのなかで文化人類学者は、現地の人たちの暮らしの文脈の理解を試み、その文脈にもとづきながら物事の理解を試みます。
つまり、他者の立場から眺めたときに物事がどのように理解されているのか、を理解しようと試みるわけです。

いうまでもなく、フィールドワークをしたからといって「現地の人と同じ」には決してなれません。
どこまでいっても文化人類学者は「余所者」には違いなく、同じになれるというのは幻想に過ぎません。
だからといって、彼らをまったく理解できないわけでもありません。
彼らのアタリマエはアタリマエゆえに彼らには理解し難いものです。
むしろ「余所者」だからこそ、彼らのアタリマエをちょっと違った眺めから捉え、整理し、理解する可能性もあるのです。
文化人類学者は、アメリカの医療人類学者アーサー・クラインマンの言葉を借りれば、この「余所者性」を戦略的に活用しているわけです。

先のネーゲルの議論に則して整理しなおせば、この眺めとは「「他者の主観的な眺め」からの眺め」とでも言えるでしょう。
これは、主観的な眺めとは異なるものですし、客観的な眺めとも異なるたぐいのものです。
「どこからでもないところ」から眺めるわけではなく、かといって「今ここにいる自分」から眺めているわけでもない。
他者の立場から見たときに物事はどのように映るのか? それはどのように感じられ、解釈され、経験されるのか?
文化人類学者は、「余所者」だから、他者とまったく同じ立場からの眺めを獲得することはできません。
しかし「余所者」だからこそ、他者自身にはアタリマエすぎて気づきにくいことも含めて、他者の立場からの眺めを理解する可能性にも開かれている。
文化人類学者は、フィールドワークを通じて「発見的に」他者の立場からの眺めを「再構築」していくのです。

ということで、「文化人類学的」というときの一つのポイントとして、この「もう一つの眺め」、「他者の主観的な眺め」から眺めようと試みているか、ということが挙げられます。
これは、実際に試みることはとても難しい。
こうした「もう一つの眺め」は、批判的な意識を持ってフィールドワークを行うなかで、少しずつ培われていくものだからです。
じゃぁ、フィールドワークをしないとダメなのか、といえば、そういうわけでもありません。
皆さんに実践して欲しいのは、そうした「もう一つの眺め」から眺めようと試みている先行研究を重視することです。
そう考えるとこの点は、どういう文献が「大事」になるかの評価の一つの基準になるわけです。
いろいろな先行研究を探索するなかで、そうした文献をぜひ見つけ出してください!


STEP3:キーワードの設定


卒論のテーマがぼんやりとであれ決まったとしても、今度はそこで途方に暮れます。
何をどこから手をつけていいのかがわからない!
そうしたときにも、よく「自分探し」を始める学生がいますが、それもやめましょう。
内向きになりすぎず、外向きに、つまり他者の議論にふれることからはじめてみましょう。
いいかえれば、「先行研究」を読んでみる、ということです。

では、どうやって先行研究を探すのか。
先行研究を探すための事前準備が「キーワードの設定」です。
キーワードの設定の仕方について、以下説明していきます。


(1)キーワードの下調べ

まず、テーマに関連するキーワードの下調べを行います。
そのためのステップは、以下の様なカンジです。

1)ぼんやりとであれテーマが決まったら、関連しそうなキーワードをいくつか考えてみます。
連想ゲーム的にでよいので、キーワードになりそうな単語をまずは10個、決めてみよう。

2)キーワードがある程度出揃ったら、今度は、それらを組み合わせてググってみましょう。
そうすると関連するニュースや記事、文献、資料などが色々出てくると思います。
そういうのにざっと目を通しながら、どんなことが論じられているのか、概略をつかみます。

3)次に、キーワードと「人類学」を組み合わせてググってみましょう。
そうすると、今度は人類学に関連するWeb記事や文献、資料などがヒットすると思います。
それらを読みながら、人類学との関連でキーワードがどのように論じられているか、その概要を掴みます。
「人類学」でヒットしないときは、「民族学」「民俗学」「社会学」「民族誌」「エスノグラフィ」なども組み合わせて調べてみましょう。

4)ここまでの作業を踏まえて、改めてキーワードを見直してみましょう。
調べているなかで、頻出している言葉や、あるいは気になった言葉が出てくると思います。
最初に設定していたキーワードを整理したり追加したりしながら、新たにキーワードを5個、設定してみましょう。
そのうえで、1-4の作業を改めてやってみましょう。

5)以上の作業を繰り返しながら、出発点となるキーワードを5個設定しましょう。
ただし、このキーワードはあくまで「出発点」です。
今後、論文を読んだり考えたりするなかで変更が生じると思いますので、適宜修正をしていきましょう。


(2)キーワードについての調査

キーワードがある程度決まってきたら、今度はそのキーワードについて辞書や辞典を使って調べてみましょう。
注意してほしいのは、『広辞苑』などのいわゆる国語辞典を調べて終わり、にならないことです。
ここでいう辞書や辞典とは、「専門的な」ものを指しています。
これらの事典を調べることには、大きく3つの理由があります。

 1)それぞれの言葉・項目について、その筋の専門家がしっかりとまとめているため、言葉の学問的意味の輪郭を捉えるのに適している。
 2)それぞれの項目の執筆を担当した人の署名入りであるため、資料としての信頼度が高い=資料として論文で使用できる。
 3)参照・参考した文献が挙げられているので、主要参考文献を探す手がかりとなる。

以下、大きく「百科事典」と「専門的な事典」にわけて説明します。

■ 百科事典

百科事典とは、大辞泉によると、「人類の知識の及ぶあらゆる分野の事柄について、辞書の形式に準じて項目を立てて配列し、解説を加えた書物」のことです。
以下、主だったもので、かつ高知大学の図書館にあるものを2つ挙げておきましょう。

 『世界大百科事典 2009年改定新版』(平凡社、2009)。
 『ブリタニカ国際大百科事典』(フランクB.ギブニー(編)、ティビーエス・ブリタニカ、1988)

名前の通り、たいていの言葉について挙げられているので、まずは調べてみましょう。

■ 専門的な事典

専門的な事典とは、それぞれの学問分野のキーワードについて、その筋の専門家が解説をしている類のものです。
たとえば、文化人類学に関連するところだと、以下のようなものが挙げられます。

 【文化人類学】
  『文化人類学事典』(石川栄吉ほか(編)、弘文堂、1994)
  『文化人類学事典』(日本文化人類学会(編)、丸善、2009)

 【民族・地域】
  『世界民族百科事典』(国立民族学博物館(編)、丸善、2014)
  『新版 東南アジアを知る事典』(桃木至朗ほか(編)、平凡社、2008)

 【社会学】
  『社会学事典』(日本社会学会、社会学事典刊行委員会(編)、2010)
  『現代社会学事典』(大澤真幸ほか(編)、弘文堂、2012)

 【哲学や思想】
  『岩波哲学・思想事典』(廣松渉ほか(編)、岩波書店、1998)
  『岩波社会思想事典』(今村仁司ほか(編)、岩波書店、2008)

 【宗教】
  『世界宗教百科事典』(世界宗教百科事典編集委員会(編)、丸善出版、2012)
  『イスラーム世界事典』(片倉もとこ(編集代表)、明石書店、2002)

特にキー概念になるような言葉については、複数の事典を参照しておくこと。

■ その他の資料

事典ではないですが、キーワードについて解説した書籍あるいは論文というものもあります。
書籍だと、たとえば以下のようなものがあります。

(他の分野についても同じキーワード・シリーズがでています。)


論文のほうは、いわゆる「レビュー論文」と呼ばれるものです。
ちょっと探すのが難しいのですが、たとえば英語だと『Annual Review』というシリーズがあります。


このシリーズは、季刊で特定のテーマについて、その筋の専門家が他の論文などを紹介しながら論じたレビュー論文が掲載されています。
人類学の場合は、Anuual Review of Anthropologyというタイトルで雑誌が出ています。
いわゆる「人類学」を対象としているので、文化・社会人類学にとどまらず、考古学から言語学、自然人類学に関するレビュー論文が掲載されています。
さまざまなテーマについて論じられているので、一度は検索してみてください。
なお、高知大のネットワークならば論文にアクセスできます。
以下で検索をしてみてください。



STEP4:論文を探す、読む(1)


キーワードが固まってきたら、今度はそれらを用いて、ット上のデータベースを使って論文や文献、資料を探し、、文献リストを作成していきます。
あまり論文が無かったり、あるいはありすぎたりということがあるかもしれません。
中身の検討は今後行っていくとして、まずは「100本」を目安に、論文リストの作成をしてみてください。

これまでも、レポートを書くために文献を入手してきたとは思いますが、その多くは「本」であり「論文」はあまり利用したことがないでしょう。

ここでいう「論文」とは、
 1)各学会が刊行している研究雑誌(例:日本文化人類学会の『文化人類学』)
 2)大学などの紀要(例:高知大学の『高知大学学術研究報告』)
 3)商業出版されている研究雑誌(例:青土社の『現代思想』)
などに掲載されている学術論文のことです。

論文を入手する方法としては、基本的なステップとして以下の様な手順を踏んでみましょう。


1)Webリソースを探してみる

現在、多くの研究雑誌や紀要などは、web上からアクセスできるようになっています。
それを探すときも、以下のサイトを利用してみよう。




たとえば「とさーち」の場合、キーワードで検索をかけると、いろいろなものがヒットすると思います。
まず、左側の「フォーマット」の項目から「雑誌論文」をチェックしましょう。
次に、左側の「絞り込み」の項目から「本文あり」をチェックしてみましょう。
そうすると、ウェブでアクセスできる論文のリストが出てきます。
CiNiiやGoogle Scholarでも同様の検索ができるので、まずはこうした資料を有効活用してみましょう。

なお、Google Scholarの活用法をまとめた資料があったので、以下にリンクを張っておきます。



2)Web上でアクセス出来ない論文の場合

その場合は、今度は図書館を利用します。
図書館には、さまざまな研究雑誌が収蔵されており、それを検索することもできます。
まずは、高知大学総合情報センター(メディ森)のOPACにアクセスします。


まず、資料種別のなかから「雑誌」をチェックします。
そのうえで、探している雑誌の名前を入力してください。

ここでいくつか注意が必要です。
第1に、探している論文自体は検索できない、という点です。
その論文が掲載されている雑誌名、号・巻、頁を確認し、それをもとに実物を探していきます。

第2に、雑誌が収蔵されていても、必要としている号・巻がない場合がある、という点です。
たとえば、『民族学研究』(『文化人類学』の前身)の場合、29巻1号(1964年)からしか収蔵されていません。
それ以前のものは、高知大では収蔵していない、ということになります。

第3に、収蔵場所が図書館とは限らない、という点です。
たとえば、上記の『民族学研究』は人文学部の人間文化第2演習室に収蔵されています。
その場合は、図書館カウンターに取り寄せを依頼するか、直接収蔵場所を訪ねてみてください。

3)高知大学では収蔵していない論文の場合

目当ての論文が高知大学にない場合、2つの戦略があります。
1つは、その雑誌が収蔵されている別の図書館に直接行く方法、もう1つは、高知大の図書館から「複写依頼」をする方法です。
ここでは後者を利用しましょう。
複写依頼とは、簡単にいえば、他の図書館に収蔵されている論文をコピーして送ってもらうことです。
そのやり方は、以下に説明があるので、それに従って入手してください。


主だったものでもこれだけのリソースがあるのですから、「関連する論文がない」ということは、多くの場合ありません。
(学生が「ない」と言うので、私が調べると、大抵の場合、それらしい論文が見つかります。)
加えていえば、もし論文がなければ、無いこと自体が重要な知見になります。
キーワードの組み合わせをはじめ、工夫をし、試行錯誤しながら、論文の検索方法を身につけてください。

また、こうした作業を通じて、自分の「キーワード」も変化しているかもしれません。
ヒットした文献のタイトルなどを見てみると、自分の関心のあるテーマや理論、地域について、共通して使われている言葉があることに気づくとも思います。
文献リストを作ることは、同時にキーワードを定めていく作業でもあるということです。
(もちろん、キーワードが変化していくこともあリマス。)

以上のステップを踏みながら、バシバシ論文を収集していきましょう。
目指せ100本!!


【補足】(2017/11/13)

文献や論文とは何か、それをどのように探すか、ということについての参考資料の紹介。
東北大学附属図書館が「東北大学生のための情報探索の基礎知識シリーズ」というものを作成しています。
かなりしっかりとした作りにも関わらず、WEB上で閲覧できる、スゴイ!


全部は閲覧できないのですが、『基本編』はWEB上で閲覧することができます。
大変参考になるので、一度は目を通しておきましょう。




STEP5:論文を探す、読む(2)


ネット上のデータベースを使って文献リストが充実し、手元に論文や文献もたまってきたことでしょう。
ある程度、文献や資料が集まってきたら、今度はそれらを読む必要があります。

論文を読み進める前に、まずは、以下の文献を読んで下さい。



■ 「まず読むべき論文」の探し方

とはいえ、集めた論文のすべてを精読することには限界があります。
まずは、集めた論文のなかから「まず読むべき論文」を選ぶ必要があります。


(1)「要旨(abstract)」と「目次(table of contents)」を読む
まず、入手した論文の「要旨(abstract)」を読んでみましょう。
学術論文には、通常、要旨がついています。そこには、その論文の問い・主張・根拠が整理されて提示されています。
まずは集めた論文の要旨を読み、自分のテーマや興味関心に近いものをピックアップしていきます。

なお、書籍の場合は要旨がついていないのが普通です。
が、「はじめに」や「序章」は、いうなればその本の要旨のような役割も果たしています。
特に編著書の場合には、序章でその本の問いなどとともに、各章の概要がまとめられているのが一般的です。
書籍の場合には、まずは「はじめに」や「序章」を読んでみましょう。

もう1つ重要なのが「目次(table of contents)」です。
目次に目を通すと、その論文の論理構造を概観することができます。
その際、章や節にどのようなタイトルがつけられているかにも注意すること。
また、全体としては自分のテーマとは合わなくとも、章や節によってはピッタリのものがあったりもします。
今後、自分が論文を書いていく上での参考にもなるので、必ず目次に目を通すようにしましょう。

なお、論文の場合、目次がついているものとないものがあると思います。
その場合は、本文の各章・節のタイトルを読んでみてください。


(2)「はじめに(introduction)」に目を通す
次に、ピックアップした論文の「はじめに(introduction)」を読んでみましょう。
はじめにには、著者の問題意識や問題設定、先行研究のレビューなどがまとめられています。
この部分は、みなさんが問いを設定する際の参考にもなります。
どのような問題意識を持っているのか、どのように問いを設定しているのか、それをどのように表現しているのか。
こうした点に意識を向けながら、はじめにを読んでみてください。


これらの点を確認しながら、集めた論文を「まず読むべき論文」「後で読む論文」「とりあえずキープしておく論文」「読まなくてもよい論文」といったかたちで分類し、優先順位をつけていってください。


*補足
まず読むべき論文や文献を選ぶときに、もう1つアドバイスがあります。
それは、「同じようなタイトルや内容である場合は、出版年の新しいものから読む」と良いです。
新しい文献は、基本的にそれまでの議論を踏まえて書かれています。
それゆえ、きちんとした論文であれば、それまでの先行研究の概要と評価がまとめられており、さらに参考文献リストにはそうした文献がまとめられており、それらが参考になります。
また、新しい論文や文献のなかで繰り返し登場する先行研究は、その分野において重要度が高いものであり、その点で、次に読む文献を探す手がかりになります。
同じようなタイトルや内容の論文や文献が多くある場合は、参考にしてみてください。


■ 学術論文の読み方

以下の資料に、学術論文の読み方の基本をまとめています。
これを手掛かりに、論文をビシバシ読んでいきましょう!




STEP6:問いと答えのフィールドをつくる


論文・文献もジョジョに集まり、ビシバシ読み進めていることだと思います。
そうしたなかで、ぼんやりとながら卒論のテーマや問題意識が決まってきたかと思います(というか、そろそろ決める必要があります)。
今度の作業は、卒論のテーマや問いと主張を具体化していく作業になります。

学術論文とは、1つの大きな問いに答えるために複数の小さな問いを設定し、複数の小さな問いに対する小さな主張を行い、複数の小さな主張を根拠としながら、大きな問いに対する1つの大きな主張を導出するという構造を持っています。
つまり、論文の「(大きな)問い」というものは、複数のより具体化された「小さな問い」に分割していく必要があります。
そのために、まずはある程度定まってきた卒論のテーマをもとに、複数の具体化された小さな問いの見取り図である「問いのフィールド」を作っていきます。
言うなれば、大きな問を出発点に、複数のより具体化された小さな問いを派生させ、それを「見える化」する作業といえます。
(この作業は、ビジネス業界では「マインドマッピング」とも呼ばれている作業です。)

具体的には、戸田山和久『新版 論文の教室』(NHK出版)の第5章「論文の種としてのアウトライン」(pp.104-144)を参照ください。


(1)問いのフィールドをつくる

学術論文とは、1つの大きな問いに答えるために複数の小さな問いを設定し、複数の小さな問いに対する小さな主張を行い、複数の小さな主張を根拠としながら、大きな問いに対する1つの大きな主張を導出するという構造を持っています。
つまり、論文の「(大きな)問い」というものは、複数のより具体化された「小さな問い」に分割していく必要があります。
そのために、まずはある程度定まってきた卒論のテーマをもとに、複数の具体化された小さな問いの見取り図である「問いのフィールド」を作っていきます。
言うなれば、大きな問を出発点に、複数のより具体化された小さな問いを派生させ、それを「見える化」する作業といえます。
(この作業は、ビジネス業界では「マインドマッピング」とも呼ばれている作業です。)

その作業の手順は以下のとおりです。

 1.まずA4あるいはA3の白紙を用意します。
 2.その中央に、出発点となるテーマあるいはキーワードを書きます(これが複数になると混乱するので「1つ」にしぼりましょう)。
 3.次に、それに対して様々な角度から「素朴な疑問」(「本当に?」や「いつ?「どこで?」などの5WH1Hといったもの)をどんどん投げかけ、それをどんどん書きこんでいきます。戸田山『論文の教室』127頁のリストを参考にしましょう!
 4.今度は、「素朴な疑問」をテーマに合う形で派生させ、もう少し具体化させ、それもどんどん書いていきます。たとえば、「本当に?」からは、「その根拠は?」「誰がそんなこと言ってるの?」「100年前もそうだった?」「ラオスでもそう言える?」といった感じ。

この作業のポイントは、いわゆる「ブレインストーミングの4原則」を意識することです。
BS法の4原則とは「結論厳禁」「自由奔放」「質より量」「結合改善」です。
このあたりは、以下のようなビジネス系のサイトに沢山のっているので、参考にしてみてください。


考え、整理する作業は、今後の課題になります。
まずは、どんどん素朴な疑問をぶつけ、そこから問いを派生させていってください。


(2)問いと主張(答え)と根拠のフィールドをつくる

問いのフィールドが広がりを持ってきたら、今度はそれらの問いに対する主張(答え)と根拠を書き加えていきます。

まず、問いのフィールドに散りばめられている問いに対して、どのような主張/答えが導けるかを考えてみて、答えられるものは書き込みましょう。
次に、その主張/答えの根拠となる資料や文献などがあれば、それも簡単なメモとして書き加えていきましょう。既にみなさんの手元には参考になる論文や文献のリストがあるので[岩佐 2010:10]だけでも良いし、直接引用をメモしておいても良いです。

こうした作業をしていくなかで、以下の点を整理していきましょう。

・問う必要のある問いとそうでない問い
問いのフィールドには必ずしも卒論のなかで等必要のない問いも紛れています。答えてみると馬鹿らしい問いや、今回の卒論では扱いきれないような壮大な問いなどです。ただし、それはフィールドから削除するのではなく、斜線などを引いて消していくようにしましょう。みなさんにとっては問う必要がないと感じても、教員にとっては重要に感じるものがあったり、あるいは後から重要性に気づいたりすることがあるからです。

・現時点で対応可能な問いとそうでない問い
現時点で根拠に基づいて答えを主張できる問いかどうかを確認していきます。問う必要があるがどう答えてよいかわからない。あるいは、主張/答えの展望はあるが根拠がない。こうした問いが出てきたら、それに答えるための論文や文献を探し直す必要が出てくるということです。

以上の作業を通じて、「問いのフィールド」を「問いと主張と根拠のフィールド」へとアップデートしていってください。
当初の目標は、戸田山『論文の教室』の133頁の図のようなものを作成することになります。


【補足】(2017/11/13)

ゼミでは、授業までに個人で上記の作業を行い、授業ではグループをつくって上記の作業を行います。
これを機会にブレインストーミングのやり方なども学んでいきましょう。

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