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日日是労働セレクト140
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第140弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト140」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『君は裸足の神を見たか』(監督:金秀吉、日本映画学校=ATG、1986年)を観た。以前から
存在は知っていたが、観る機会のなかったATG関連の作品である。端正な作り方で、しみじみと味わうことが
できた。往々にして純粋さは脆さと表裏一体であるが、純粋にしてかつ強靭な魂はないものか……と思いな
がら鑑賞した。小生自身の若い頃の痛みに出遭ったからである。若い時はとかく悩みが多いものだが、とく
に恋愛が絡むと人は狂うようだ。わずかな「時薬」が効くというのに、癒しを待てないのである。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  東北(秋田県角館町)を舞台に、友情を軸にして揺れ動く18歳の若者の青春を描く。脚本は西村宣
 之、監督はこれが第一回作品となる金秀吉、撮影は金徳哲がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  吉村茂(石橋保)と鈴木真二(児玉玄)は、幼い頃からいつも一緒だった。父のいない真二は、家
 業の自転車屋を手伝ったり、新聞配達をして母親、ハツ子(矢吹寿子)を手助けしている。茂は絵の
 具や画材を買うために、毎日一緒に夕刊を配っていた。高校3年の夏になり、進路を決める時期が来
 た。茂は秘かに美術大学に進学したいと考え、次の絵画コンクールに、一つ年下の美少女、菊地春代
 (相沢朋子)を描いて出品しようとしていた。音楽部でフルートを吹く春代は、茂にとって憧れの存
 在だった。ある日、茂は真二から、中学の同級生でクリスチャンの高校に通う寺島瞳(洞口依子)を
 ずっと好きだったと告白された。内気な真二は、瞳を毎日駅で待ち伏せしながら、声もかけることが
 できない。茂は瞳を呼びだし、真二に声をかけてくれるよう強引に頼み込んだ。そして、真二は瞳と
 言葉を交わすようになるが、瞳はある日、茂に「ずっと好きだったの、茂君のこと」と打ち明けた。
 茂の家では父親、良三(樋浦勉)が、茂の進路希望に猛反対していた。良三は自分の跡を継ぐことを
 望んでおり、絵画コンクールに入選したら、進学を許すと告げた。茂は春代を描くことに精をだすが、
 思うように進まなかった。そんな時、瞳に絵を見せようと自分の部屋に誘って抱いてしまう。その後
 も、二人は真二に穏れて何度か関係を持った。ある日、真二が趣味で書いていた詩が、新聞に掲載さ
 れた。それは茂との友情を書いたものだった。だが、茂は素直に祝福できない。二人は、もう自転車
 の車輪のように、一緒に回ることができなくなっていた。真二は瞳を家に招待し、ハツ子の手料理で
 ささやかなお祝いを開いた。心暖まる雰囲気に、瞳の心は揺れ動く。茂とのことを、みじんにも疑わ
 ない純粋な真二に魅かれはじめていたのだ。茂の絵はコンクールに落選した。腹立ち紛れに瞳を引っ
 ぱりだした彼は、強引に抱こうとする。瞳は声をたてて泣くのだった。誰とも会いたくないと言って、
 学校も休んでいる瞳を心配した真二は、彼女の家を訪ねた。ドアごしに問い質す真二に、瞳は「寝た
 の、何度も。相手は真二君のよく知っている人」と答える。翌日、新聞に真二の事故死の記事が載っ
 た。自殺だった。葬儀の夜、茂はハツ子に自分のせいだと泣いて詫びた。そして、雪道へと飛びだし
 て行く。瞳の家の前で、彼は店がつぶれて越していく寺島一家に出会った。もう何にもないとあっけ
 らかんに別れを告げる瞳。駅に駆け込み、列車に飛び乗った茂は、窓ガラスに写る自分の顔を睨み、
 拳をたたきつけた。茂は新たなる道を、ひとり歩き出そうとしていた。

 他に、乱孝寿(鷲悦子=男に騙され続けて、少し精神的におかしくなっている女性)、小熊恭子(吉村妙
子=茂の母)、深水三章(郷村一生=詩人志望だったが、夢破れて故郷に帰り、吉村土木で働いている中年
男)、萩尾みどり(奈美子=郷村の妻だが、幼馴染みのヤクザと出奔)、出口哲朗(口の悪い吉村たちの同
級生)などが出演している。
 この手の作品は観ていて痛々しいが、いずれは通り抜けなければならない道を描いているので、誰にでも
納得がいくだろう。いわば、大人へのイニシエーション(通過儀礼)なのだから。大人になれば、「不純」
という武器を手に入れて、何とか生きていけるようになるのである。


 某月某日

 DVDで邦画を3本観たので報告しよう。三者三様、それぞれ互いにまったく異なる様相を帯びている。映画
の妙と言えよう。
 1本目は、『二重生活』(監督:岸善幸、「二重生活」フィルムパートナーズ〔スターサンズ=KADOKAWA=
電通=マイシスターD.D.=東芝デジタルフロンティア=テレビマンユニオン=読売テレビ〕、2015年)である。
「哲学」の修論がモチーフとなっているが、小生のように「西洋近世哲学史」を専攻した立場からすれば、
勝手が違う感じで、あまり共感できなかった。もっとも、私立大学の修論では、こういったテーマが多いのだ
ろうか。小池真理子が原作の映画としては、『無伴奏』(監督:矢崎仁司、「無伴奏」製作委員会〔キングレ
コード=アークエンタテインメント=オムロ〕、2015年)〔「日日是労働セレクト134」、参照〕を観てい
るが、半自伝的小説が原作なので、本作とはだいぶ印象が異なる。にも拘らずどこか似通った感慨を覚えるの
は、小池真理子の世界が十分に映像に活かされているからだろう。彼女は「短篇小説」に秀でているという評
判なので、機会があれば短篇集を繙いてみたい。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  小池真理子の小説を、文化庁・芸術祭大賞に輝いたドラマ『ラジオ』などを手がけた映像作家の岸
 善幸が大胆に脚色し映画化したサスペンス。大学院の修士論文のため、見知らぬ男の尾行を始めた女
 子学生が、男の知られざる姿を知り、尾行にはまっていく姿を描く。門脇麦がヒロイン役を、その対
 象となる男を長谷川博己が演じる。

   〔あらすじ〕

  城星大学大学院の哲学科に通う白石珠(門脇麦)は、19歳の時のある出来事により深い喪失と絶望
 に苛まれていたが、そんな日々からようやく恢復。現在は恋人の鈴木卓也(菅田将暉)〔ゲームデザ
 イナー〕と同棲生活を送っている。しかし、無意識のうちに穏やかな波風のたたない生活を望み、卓
 也との関係は平板などこか体温を伴わないものであった。ある日、珠は大学院の憧れの恩師・篠原弘
 教授(リリー・フランキー)から修士論文のテーマとして、フランスの女性アーティスト、ソフィ・
 カルによる『文学的・哲学的尾行』を実践してみてはどうかと勧められる。それは一人の対象を追い
 かけて、生活・行動を記録するというもので、尾行の対象者とは絶対に関わらないことが条件であっ
 た。そんな折、彼女はふと、近所に住む既婚男性の石坂史郎(長谷川博己)を見かけ、突発的に彼の
 尾行を始めるが、ある日石坂の不倫現場を目撃してしまう。他人の秘密を知ることにぞくぞくとした
 興奮を覚えた珠は石坂の尾行を繰り返し、次第にその秘密は珠と卓也との関係にも大きな影響を及ぼ
 してゆく。さらに珠は、彼女が信頼を寄せる篠原の秘密をも知ることとなり……。

 他に、河井青葉(美保子=石坂の妻)、篠原ゆき子(澤村しのぶ=装丁家、石坂の愛人)、宇野祥平(桜
井=篠原ゼミの年配の院生)、岸井ゆきの(彩夏=珠の院生仲間)、西田尚美(桃子=篠原教授の依頼を受
けた女性)、烏丸せつこ(治江=珠の住むマンションの中年女性)などが出演している。主演の門脇麦は、
『愛の渦』(監督:三浦大輔、「映画 愛の渦」製作委員会〔東映ビデオ=クロックワークス〕、2014年)
〔「日日是労働セレクト119」、参照〕で鮮烈な印象を受けた女優である。今回も、少しとろく見えるが、
そのくせ内面においては鋭敏な若い女性を的確に演じていると思う。
 2本目は、『スタア』(監督:内藤誠、筒井康隆大一座=プルミエ・インターナショナル、1986年)である。
筒井康隆による筒井康隆のための映画。悪趣味に満ちているが、スラプスティック・コメディとしては、かな
り成功していると思う。ただし出演者に素人が多いのと、低予算で作られているので、完成度が低い。筒井自
身の演技も相変わらず大根だった。もっとも、『俗物図鑑』(監督:内藤誠、自主映画〔DIGレーベル〕、1982
年)〔「日日是労働セレクト100」、参照〕よりははるかに面白かった。
 この作品も物語を確認しておこう。以下、上に同じ。

   〔解説〕

  スタアと歌手の人気者夫婦が開いたパーティでおきる珍騒動を描くブラック・ユーモアSF。筒井
 康隆の同名書(新潮社刊)の映画化で、脚本は筒井康隆、『女豹』の内藤誠、『オーガズム・真理子』
 の桂千穂の共同執筆。監督は『俗物図鑑』の内藤誠、撮影は『バロー・ギャングBC』の杉村博章が
 それぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  とある高級マンションでスタアの島本匠太郎(原田大二郎)と人気歌手の杉梢(水沢アキ)の夫婦
 が新居披露パーティを開く。梢、そのマネージャー黒木(峰岸徹)、家政婦の美知代(中村れい子)
 の三人が買出しに出かけた後、政子(松金よね子)という女がやって来た。匠太郎の下積み時代を支
 えた女性で、あなたの子よと赤ん坊を見せる。帰ってくれと頼むが政子は聞かない。思いあまった匠
 太郎は絞め殺し、死体を隠す。そこへ三人が帰ってくる。匠太郎は赤ん坊を入れたデパートの袋をダ
 スト・シュートに捨てた。ところが、それは肉を入れたスーパーの袋だった。匠太郎は昔コックの見
 習いをしていたことがあるからといって、肉を料理する。唐木(北村総一朗)、小鷹(役者、不詳)、
 豊原(同)といった芸能記者、梢のヒット曲「銀色の真昼」の作曲家都留(山下洋輔)らがやってき
 た。梢の元ヒモで左腕のない坂口(坂田明)が、現われた。梢は金づるだという坂口。彼が刑務所か
 ら帰ってきたというのを、都留がケニアと聞き違え、僕も行ったことがあると言い出し、とんちんか
 んな会話が続く。筋がなくてうまい肉だと唐木らが、匠太郎の腕をほめる。匠太郎のマネージャー吉
 田(役者、不詳)がやってくる。外では大地震があったのに、マンションでは何も感じなかった。黒
 木と梢は坂口を二人で絞め殺した。地震研究所から所長の犬神博士(筒井康隆)と織田助手(ジャイ
 アント吉田)がやってきた。犬神博士によると物には固有の振動周波があり、このマンションのそれ
 と地震の波動が同調したので振動しなかったのだが、こんな時に怪異現象がおこるという。事実、ト
 イレが宇宙空間に、冷蔵庫が北極につながっていたり、壁から人が出現したり、絵描き(山藤章二)
 が奥さん(如月小春)の目前で消えて別のバス・ルームに出現したり、ヒットラー(タモリ)が現わ
 れたりする。政子の友人という関口芳枝(和田アキ子)が来て赤ん坊を貸したのに彼女が戻らないと
 いう。都留はさっきの肉、ケニアで食った人肉の味と同じだったとうめく。梢ファンの精神異常者が
 来て黒木を刺殺。政子の死体が起きあがり、なぜかターザン(南伸坊)が出現したりして、みな部屋
 をぐるぐる廻る。そこへ、最後の客である日刊芸能の後藤(梨元勝)がやって来た。

 他に、中村誠一(三河屋=酒屋)、イヴ(浜口じゅん)、団時朗(ジョージ西尾)、奥村公延(マンショ
ンの管理人)などが出演している。主演の原田大二郎は独特の雰囲気を持っているので、もっと売れてもい
いと思うが、最近はどうしているのだろうか。
 3本目は、『手をつなぐ子等』(監督:稲垣浩、大映京都、1947年)である。打って変わって、しみじみ
とした味わいの佳作。戦前の日本人の道徳観が素直に表出されおり、小生に「修身」も悪くはないと思わせ
るところなど、まさに稲垣監督の手腕と言えるだろう。小生も小学校の頃は「問題児」と言われ、寛太のよ
うに机を他の児童とは反対向きにさせられたことがあるが、まったく堪えなかった。だから、寛太や金三の
気持がよく分る。なお、優等生の奥村も実に爽やかな少年である。「優等生嫌い」の小生が言うのだから、
完璧と言ってよいだろう。
 さて、本作も上と同様。

   〔解説〕

  特異児童研究家として著名な田村一二の原作より故伊丹万作が脚色した遺作シナリオを、稲垣浩が
 『壮士劇場』に次いで監督する。撮影も『壮士劇場』の宮川一夫の担当。一般より募集した少年俳優
 の他、徳川夢声、杉村春子らが出演している。

   〔あらすじ〕

  特異児童、それが中山寛太(初山たかし)だった。三回も学校を替わって、その新しい学校でも受
 け持ちの先生が手を焼いている。どうにも導きようのないくらい物覚えが悪く、どんな先生が受け持
 っても、日ならずして匙を投げてしまう。可哀想な子、両親さえ持て余して、寛太の顔を見るたびに
 深い溜息をつくのだった。それだけに親とすれば、一入可愛い寛太であった。なんとか寛太を育てて
 くれる先生はいないものだろうか。父(香川良介)と母(杉村春子)の話が、二口目にはそのことに
 移っていくのである。ところが突然、父親は気になる寛太を母一人の手に残して召集される。母はあ
 わてた。そしてもう何回となく足を運んだ小学校の門を、今日は一層沈鬱な面持ちでくぐった。だが
 母親にとり、いやそれ以上に寛太にとって何という幸運だったろう。松村訓導〔=現在の小学校教諭〕
 (笠智衆)という児童のこころをよく知った先生がいたのである。松村訓導は児童の教育に恐ろしい
 程の情熱を持っている。子どもを育てるのに理屈は入らぬ。ただ大きな愛情が必要なのだ。児童を愛
 さなくて、どうして導いていける! 松村先生は自信を持って、その温かい胸に寛太を抱いた。いや
 でいやでしょうのなかった学校が、寛太にとって面白い所になって来た。大好きな松村先生がいるし、
 自分にいろいろと親切に教えてくれる級長の奥村君(島村イツマ)や、他にも大勢友だちができた。
 寛太はうれしくて仕様がない。夢にさえ学校のことが浮かぶのである。毎朝小使〔=用務員〕(片岡
 好右衛門)が校門を開けると、もう寛太が鞄を肩から下げて、ニコニコしながら立っている。何とい
 う変わり方だ。松村訓導のやり方は適切を極めたものだった。もう大丈夫と思っていた矢先、困った
 ことに山田金三〔通称ヤマキン〕(宮田二郎)という札つきの悪童が同じ組に入って来たのである。
 金三にとって寛太の存在はまったく手ごろな玩具であった。ことごとに、山田は寛太をいじめた。面
 白いのである。下級生の子分どもを集めてはあくどいいたずらを始めた。しかし寛太の善良さは、山
 田の悪意を読みとろうとしないのである。山田にはそれがむしろもの足りなかった。いたずらをして
 も一向手応えがない。山田はいらいらする。もともと山田金三も孤独で不幸な子どもだったのだ。松
 村訓導はそれを見抜いていた。級長の奥村を呼んで寛太と山田のことについていろいろ相談した。児
 童の協力が絶対必要だ。そして松村訓導と児童たちの、愛情と共同の力は、やがて寛太を人並みな児
 童にし、山田の意地悪な性格を素直な人間にのばしていく。

 他に、徳川夢声(校長)、泉田行夫(岡野訓導)、常盤操子(佐藤訓導)、村田宏壽(校医)、伊達三郎
(山崎訓導)、葉山富之輔(町長)、牧龍介(坂田教頭)、小田切ふみ子(田中訓導)、向井二三子(小川
訓導)などが出演している。脚色として伊丹万作が参加しており、撮影はエースの宮川一夫である。香川良
介が寛太の父親役で出演しているが、現代劇で見るのは初めてではないか。だいぶ感じが違っていた。なお、
母親役の杉村春子は相変わらず手堅い演技をしている。それにしても、子どもたちの表情がいい。現代では、
なかなか出せない表情だと思う。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので報告しよう。両者ともにメッセージ性の強い映画で、娯楽性は希薄だが、それ
なりにいろいろ考える材料を与えてくれる映画だと思う。
 1本目は、『ひそひそ星』(監督:園子温、sion production、2016年)である。園子温の作品を連続し
て観ることになったが、以前の彼に回帰したような作品だと思った。案の定、彼が20代のころに書き留めて
いた脚本に基づく自主製作映画だそうである。冒頭のメッセージを拾ってみよう。

  人類はあれから
  何度となく大きな災害と
  大きな失敗を繰り返した。
  その度に人は減っていった。
  宇宙は今、静かな平和に包まれている。

  機械が宇宙を支配し、
  人工知能を持ったロボットが全体の8割、
  人間は2割になっている。
  すでに宇宙全体で人間は、
  滅びゆく絶滅種と認定されている。

  科学のほとんどは完結しているが、
  人間は昔と同様、百年生きるのがせいぜいだ。
  人間の人口は、宇宙の中でしだいに
  消え入るローソクの火のようだ。

 宇宙の宅配便配達ロボットが主人公の映画であるが、まるで東日本大震災後の世界を描いているようで、
『ヒミズ』(監督:園子温、「ヒミズ」フィルムパートナーズ〔ギャガ=講談社〕、2011年)や『希望の国』
(監督:園子温、「希望の国」製作委員会〔キングレコード=鈍牛倶楽部=ビターズ・ エンド=RIKI プロ
ジェクト=グランマーブル=ピクチャーズデプト=マーブルフィルム〕、2012年)のように直截的ではない
にせよ、彼の震災や原発事故に対する思いが籠っているような気がする。題名の「ひそひそ星」もどこか意
味深で、まるで「大きな声では言えませんが……」と小声で語っているような物語である。実際、ロケに際
にして、浪江町役場、南相馬市役所、富岡町役場の協力を仰いでいる由で、その絶対的な荒廃の映像を垣間
見させてくれる。
 物語を確認しておこう。今回は、「ぴあ映画生活」のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  園子温監督が20代の時に書き留めていたオリジナル・ストーリーを自主映画として映像化し、第40
 回トロント映画祭でNETPAC賞を受賞した注目作。スタジオに大きな宇宙船のセットを組み、福島県富
 岡町・南相馬市・浪江町でロケを敢行。地元の人々の協力を得て、記憶と時間、距離への焦燥を、声
 のトーンを落とした独特の台詞回しで描き出す。

   〔あらすじ〕

  静寂に包まれた広大な宇宙。アンドロイドの鈴木洋子・マシンナンバー722(神楽坂恵)は、宇宙
 船・レンタルナンバーZに乗り込んだ。彼女はいくつもの寂しい星に降り立ち、滅びゆく絶滅種と認
 定されている人間たちひとりひとりに、かけがえのないものを届け続けていた。

 他に、遠藤賢治、池田優斗、森康子などが出演している。以下に、映画の特徴を挙げておこう。


  (1)モノトーンの映像世界が効果的である。一瞬ではあるが、福島県浜通りの光景がカラーになる。
  (2)曜日(ただし、英語)の文字が何度も浮かび、少しずつ映像が流されるが、ロシア民謡の「一週
    間」を連想した。単調ではあるが、宇宙船内部の様子が克明に描かれており、同時に「仮設住宅」
    の実態を伝えているようにも見えた。
  (3)コンピュータを始めとする宇宙船のフロントがかなりレトロで、非常に長い時間が流れたような
    錯覚を起こさせる。
  (4)宇宙にあるさまざまな星を巡っていくために、届けられる宅配便はなかなか届かない。
  (5)荷物を届ける先も廃屋のような場所が多く、砂浜のタバコ屋に至っては、海の家よりもみすぼら
    しい。
  (6)この時点で、テレポーテーションが開発されているが、距離と時間に対する人類の憧憬がそれを
    拒否するという挿話が面白い。
  (7)陸に打ち上げられた漁船の姿が異様である。
  (8)鈴木洋子が配達物の中身を覗くシーンがあるが、ごく私的な写真やそのネガであったり、帽子で
    あったり、中にはタバコの吸い殻もあったりした。届けたい人、届けられる人の気持が籠っている
    のだろう。
  (9)靴に空き缶が挟まるシーンがあるが、何を象徴しているのだろうか。たとえば「放射性物質」の
    ような、人類が拵えた厄介者のように見えた。
  (10)最後に宅配便が届けられた先は、影絵で表現されている。人々のささやかな営みが無残に潰され
    てゆくような印象を抱いた。届け先は「SORI」とあったが、「総理(大臣)」のことだろうか。

 以上、気が付いたことを書いてみた。園子温の意図がどこにあるのかは判然としないが、不思議な映像を
味わったことだけは確かである。
 2本目は、『共に歩く』(監督:宮本正樹、「共に歩く」製作委員会〔ブリリアントフィルム=サモワー
ル=ユナイテッドエンタテインメント=グループ・ファースト・エース〕、2014年)である。この映画も重
いテーマを扱っているが、ハッピー・エンディングでまとめているので、希望がある。予告篇にあった、主
な登場人の特徴を挙げておこう。

  不安定で束縛をしてくる恋人
  同情し献身的に支える彼氏

  アルコール依存症の父親
  自傷行為を続ける子どもの母親

  物忘れが激しくなった認知症の妻
  困惑する夫

 宮本監督はこう語っている。「共依存、強迫観念、若年性アルツハイマーの三つのテーマを描くことがこ
の映画の目的である」、と。三者三様の物語が微妙に絡んで、生きにくさとそこからの脱出が描写されてい
る。多少とも甘い味付けではあるが、この手のテーマに慣れていない人には、よき入門書の働きをしている
のではないだろうか。
 物語を確認しておこう。この作品に関しては、<ウィキペディア>のお世話になる。以下、上に同じ。

   〔概要〕

  近年、急増していると言われる、お互いの関係維持のため過度に依存し合う共依存をテーマにした
 作品。本作が長編映画初監督作品となる宮本正樹が監督・脚本を務めた、意欲作。心に傷を負った女
 性と彼女を支える恋人、アルコール依存症の父の影響で自傷癖がある子供とその母親、アルツハイマ
 ー型認知症の妻と困惑するその夫、難しい3組の人間関係を描いている。

  〔ストーリー〕

  親から愛情を注がれずに育った、宝飾店勤務の岩村明美(入山法子)は、精神的に不安定で、恋人
 である、小学校教諭の松本哲也(小澤亮太)を束縛してしまう。そんな明美を献身的に支える哲也だ
 が、戸惑いも隠せない。哲也の学校の児童である弓永タケル(長島暉実)は、不安になると自分の身
 体を叩くなどの行動を取るため、母親である満由美(河井青葉)にさえも気味悪がられてしまう。明
 美の母親である岩村陽子(朝加真由美)は、若年性アルツハイマー型認知症を発症してしまい、夫で
 ある定雄(螢雪次朗)に対しての信頼に疑念を抱いてしまう。定雄は困惑してしまい、夫婦の絆が揺
 らぎ始める。

 他に、日向丈(川島ケンジ=タケルの父親)、染谷俊之(野口雄一=松本の同僚)、近藤奈保妃(広瀬由  
美=タケルの担任教師)などが出演している。
 小生の父親も強度の「アルコール依存症」の傾向を持っていたので、幼いころから「この家はいつ崩壊す
るのだろう」と思っていた。したがって、このタケルの気持がよく分かる。もっとも、当該映画の父親の描
き方は大甘で、「こんなものでは断じてない」と思いながら観ていた。「アルコール依存症(以前は、アル
コール中毒、いわゆる<アル中>と呼んでいた)」を描いた映画としては『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』
(監督:東陽一、シグロ=バップ=ビターズ・エンド、2010年)〔「日日是労働セレクト97』、参照〕が
秀逸だと思う。なお、「共依存」に関しては、「日日是労働セレクト40」に小生自身の文章を発見したの
で、以下に引用してみよう。


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 某月某日

 今日は母親の祥月命日である。2004年に亡くなったので、5年の月日が流れたわけである。その間いろ
いろなことがあったが、母親の信条や生活ぶり、あるいは小生との関係を思い返してみると、生前彼女に
助けられたことが随分あったことが思い返される。八方美人というあまり芳しくない性格が散見できたが、
それもご愛嬌で、人には好かれた方だと思う。小生がジェンダー問題に興味を抱くようになった理由のひ
とつに、母親のあり方が影響していることは明らかである。どの点から見ても母親より見劣りする父親に
仕えていた彼女のあり方に、子どものころから疑問をもっていたからである。今ならば、「共依存」とい
う概念が当て嵌まるかもしれないが、そんな関係にあった両親に嫌悪感を抱いていたことも事実である。
母親が亡くなり、父親が逝ってしまった現在、そんな心の澱もだいぶ澄んできたが、個人的な体験を材料
にして、夫婦、親子、兄弟、家族について、まだまだ考えることは一杯ある。

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 当該映画を甘く感じる最大の観点は、ずばり「暴力」である。半端ではない暴力を目の当たりに見たこと
のある人ならば分かるだろうが、それを徹底的に拒否するのか、あるいは連鎖してしまうのか、紙一重だと
いうことである。小生は、小生自身の「暴力性」に辛うじて蓋をしているが、それは明らかに文学や哲学を
学んだお陰だと思う。もしそれらを学ばなかったならば、あるいは父親と同じ道を歩んでいたような気がす
るのである。


 某月某日

 DVDで邦画を3本観たので報告しよう。いずれも題名がカタカナの作品で、それなりに面白かった。京都
のネカフェでこれを書いているので、詳細は割愛せざるを得ない。ご寛恕を乞う。
 1本目は、『クライマーズ・ハイ』(監督:原田眞人、「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ
〔ビーワイルド=ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント=トゥモロゥー〕、2008年)である。実は、
単なる「山岳映画」だと思い込んでいて、TSUTAYAの店頭でもあまり触手が動かなかった作品である。何か
のDVDの予告篇で1985年に起きた「日航機123便墜落事故」をモチーフにした作品であることを知り、機会が
あればぜひ観たいと思った映画である。期待に違わず、素晴らしい出来であった。文句なしに、「佳品」と
言ってよいだろう。
 いわゆる「ブンヤ魂」(新聞記者にとっては、今や「ブンヤ」は蔑称と化しているかもしれないが、以前
は自らそう呼んでいた記者も多かった印象がある)を描いた作品で、編集と販売の確執も丁寧に扱っており、
新聞離れが深刻になった現在、「新聞(新聞社)」の実態をある程度知る上で貴重な映画だと思う。もちろ
ん、テーマである「日航機事故」に関しても、いろいろ学ぶことができた。1985年は、阪神タイガースが日
本一に輝いた年で、歌手の坂本九らと一緒に、当時の球団社長が犠牲になったことを覚えている。その後、
吉田義男監督が「チーム一丸となって」を連呼していたことが懐かしい。先ずは、犠牲者の冥福を祈りたい。
 物語を確認しておこう。今回は、<ウィキペディア>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『クライマーズ・ハイ』は、横山秀夫による日本の小説。2003年1月、『別冊文藝春秋』に掲載され、
 8月25日に文藝春秋から単行本が刊行された。週刊文春ミステリーベストテン2003年第1位、2004年本
 屋大賞第2位受賞。
  著者が上毛新聞記者時代に遭遇した日本航空123便墜落事故を題材としており、群馬県の架空の地方
 新聞社を舞台に未曾有の大事故を取材する新聞記者の奮闘を描く。「クライマーズ・ハイ」とは、登
 山者の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のことである。
  2006年6月10日には文春文庫版が刊行された。
  2005年12月にNHKでテレビドラマ化され、東映・ギャガ・コミュニケーションズの共同配給で映画化
 され2008年に全国公開された。2007年7月5日クランクイン、8月31日クランクアップ、10月に製作が発
 表され、2008年7月5日に公開された。事故現場となった上野村において特別試写会がおこなわれ、多く
 の村民が鑑賞した。

   〔あらすじ〕

  1985年8月12日、群馬県の地方紙「北関東新聞社」の遊軍記者で、社内の登山サークル「登ろう会」
 メンバーの悠木和雅(堤真一)は、販売部の安西耿一郎(高嶋政宏)とともに、県内最大の難関であ
 る谷川岳衝立岩登攀へ向かう予定だった。帰宅の準備をしているとき、社会部記者の佐山達哉(堺雅
 人)から「ジャンボが消えた」との連絡が入る。悠木は、白河頼三社長(山崎勉)から直々に事故関
 連の紙面編集を担う「日航全権デスク」を命ぜられる。同新聞社にとって、「大久保・連赤」(大久
 保清事件・連合赤軍事件)以来となる大事件を抱えた悠木は、次々と重大かつ繊細な決断を迫られる。

 他に、尾野真千子(玉置千鶴子〔ズーコ〕=地域報道班)、中村育二(粕谷隆明=編集局長)、螢雪次朗  
(追村穣=編集局次長)、遠藤憲一(等々力庸平=社会部長)、田口トモロヲ(岸円治=政経部デスク)、
堀部圭亮(田沢善吉=社会部デスク)、金子和(山田厳=地方部デスク)、マギー(吉井弁次郎=整理部)、
滝藤賢一(神沢周作=地域報道班)、皆川猿時(伊東康男=販売局長)、でんでん(亀嶋正雄=整理部長)、
矢島健一(守屋政志=政経部長)、樋渡真司(暮坂直樹=広告部長)、山田明郷(稲岡信也=投稿欄担当)、
矢柴俊博(森脇時彦=地域報道班)、大鷹明良(藤浪鼎=事故調査委員長)、野波麻帆(黒田美波=元・社
長秘書)、西田尚美(安西小百合=安西耿一郎の妻)、小澤征悦(安西燐太郎=安西耿一郎の息子・成長後)
などが出演している。
 2本目は、『グラスホッパー』(監督:瀧本智行、「グラスホッパー」製作委員会〔KADOKAWA=ハピネッ
ト=電通=ジェイ・ストーム=松竹=朝日新聞社〕、2015年)である。荒唐無稽な物語で、リアリティはあ
まり感じられないが、人気作家の伊坂幸太郎が原作者なので、テンポよくまとめている。しかし、穴も多く、
もう少し錬るべきだったかもしれない。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。以下、上と同じ。

   〔解説〕

  伊坂幸太郎の同名小説を、生田斗真、浅野忠信、山田涼介らの出演で映画化したサスペンスドラマ。
 渋谷のスクランブル交差点で起きたある事件を機に、恋人の復讐を誓う元教師、自殺専門の殺し屋、
 驚異的な身体能力を持つ殺人者という3人の運命が交錯していく様がつづられる。『脳男』で生田と
 タッグを組んだ瀧本智行が監督を務める。

   〔あらすじ〕

  世界でも屈指の人が集中する過密都市、東京・渋谷。この街のスクランブル交差点で、ある事件が
 起こる……。恋人を失った中学校教師の鈴木(生田斗真)は、復讐のために仕事を辞め裏社会に身を
 投じる。組織に追われながらも真相を追ううちに、鈴木、人を絶望させる力を持つ自殺専門の殺し屋・
 鯨(浅野忠信)、そしてナイフ使いの若き殺し屋・蝉(山田涼介)という、出会うはずのなかった三
 人の運命が交錯する。

 他に、吉岡秀隆(押し屋=プロの殺し屋)、麻生久美子(すみれ=押し屋の女房を装う女)、波瑠(甘利  
百合子=鈴木の婚約者)、石橋蓮司(寺原会長)、菜々緒(比与子=寺原会長の腹心)、金児憲史(ジュニ
ア=同じく息子)、村上淳(岩西=殺し屋稼業のエージェント、蝉の相棒)、宇崎竜童(鯨の父の亡霊、息
子に殺されているという設定)、佐津川愛美(メッシュの女)、山崎ハコ(桃=鯨のエージェント)などが
出演している。
 3本目は、『エクステ』(監督:園子温、「エクステ」フィルムパートナーズ〔東映=東映ビデオ〕、
2007年)である。久しぶりに園子温の作品を観たが、やはりこの頃の作品は思い切りがよい。どうもメジャ
ーになってから切れ味が鈍ったような気がするが、彼には彼の考えがあるのだろう。年を取って丸くなった
のだったら、失礼ながら「まだ早い」と言いたい。
 物語を確認しておこう。いわゆる「ホラー映画」に属する作品で、<ウィキペディア>のお世話になる。
以下、上に同じ。

   〔あらすじ〕

  海辺の美容室「ジル・ド・レエ」で働く美容師の卵・水島優子(栗山千明)は実の姉(ただし、血
 縁なしという設定)の清美(つぐみ)から虐待を受けた過去を持つが、一流の美容師になるため日夜
 励んでいた。そんなある日、姉から姪である少女の水島マミ(佐藤未来)を図らずも預かることにな
 ってしまう。初めはマミを厄介者扱いした優子だが、次第に彼女と心を通わせ合い、姉妹のような関
 係を築き、初めは母からの虐待で心を閉ざしていたマミも心を開き、明るい顔を見せるようになった。
  その頃、横浜港では巨大コンテナから、膨大な量の髪の毛と少女の遺体が発見される。その遺体は
 臓器売買の被害者であり、剃り落とされたはずの髪は死後も伸び続けていた。死体安置所に勤める山
 崎(大杉漣)は無類の髪フェチで、その少女の遺体を持ち帰り、伸び続ける少女の髪でエクステ(=
 付け毛〔hair extension〕)を作り、優子の務める美容室をはじめとする美容室にそのエクステを提供
 していくが、それには殺された少女の強い怨念が込められていた。

 他に、佐藤めぐみ(森田由紀=ダンサーの卵、優子のルームメート)、光石研(菅原達夫=刑事)、山本  
浩司(田村二郎=菅原の相棒刑事)、田中哲司(矢口=清美の彼氏)、山本未來(杉村佳代=ジル・ド・レ
のオーナー)、野町絵里(幸田サチ=優子の同僚のひとり)、夏生ゆうな(近藤=同)、満島ひかり(椎名
百合子=同)、尾上綾(加藤奈々=同)、イニキZ(JUN=同)、田中要次(高島=横浜港の警備員)、柳
ユーレイ(服部=同)、蛭子能収(タクシーの運転手)、澤山薫(看護師)、松下恵(別の美容室の美容師)、
不二子(その客)、井上花菜(少女時代の優子)、さとう樹奈子(その母)、末武こうじろう(回想シーン
のスタイリスト)などが出演している。なお、「美容師技術指導」として、末武光二郎の名前が見える。


 某月某日

 DVDで邦画の『大洗にも星はふるなり』(監督:福田雄一、「大洗にも星はふるなり」製作委員会〔日
活=SEP=日本出版販売〕、2009年)を観た。かなり崩れたラヴコメだが、役者の力で魅せる舞台劇にな
っている。この手の作品は作りやすいが、台詞が命なので、意外に難しいと思う。
 物語を確認しておこう。今回は、〈ウィキペディア〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『大洗にも星はふるなり』は、福田雄一の戯曲。劇団ブラボーカンパニーにより2006年12月に恵比
 寿・エコー劇場にて初演、2009年12月に同劇場にて再演された。福田の脚本・監督によりコメディ映
 画として映画化され、2009年11月に公開された。

   〔あらすじ〕

  クリスマスが近づいたある日、自信過剰の勘違い男・杉本(山田孝之)のもとに、夏にアルバイト
 をしていた茨城県大洗の海の家「江の島」のマドンナ・江里子(戸田恵梨香)から「イヴの夜にあの
 海の家で会いたい」という手紙が届いた。誘いに乗って海の家に行ってみると、そこには同じ手紙を
 受け取ったサメの研究者である松山(山本裕典)やハイテンションなおバカなど個性的な男たち4人
 がやって来た。杉本を加えた5人の男たちは「自分こそは本命」と信じ込み、熾烈なアピール合戦を
 始める。そこに弁護士・関口正義(安田顕)が現れ、事態を収拾しようとするが、関口もまた江里子
 への恋心に気付いてしまい、男たちの争いはヒートアップ。さらにそこに遅刻して来た林(白石隼也)
 も加わり……。果たして7人の男たちの江里子をめぐるバトルの行方は?

 他に、ムロツヨシ(猫田)、小柳友(仁科)、佐藤二朗(「江の島」のマスター)などが出演している。
舞台劇の好きな人にはお勧めできる。


 某月某日

 DVDと上映会で、それぞれ1本ずつ邦画を観たので報告しよう。
 1本目は、『大木家の楽しい旅行 新婚地獄篇』(監督:本田隆一、オニオン、2010年)である。DVD
で観た。存在も知らなかった映画だが、それなりに面白かった。ただし、あくまで「それなりに」であ
る。ギャグのゆるいところが三木聡の作品そっくりだが、影響関係はないようである。余計なことだが、
この題名は何とかならないか。観る気を起させないタイトルの典型である……観たけれど。
 物語を確認しておこう。この作品に関しては、〈allcinema〉を参照した。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛恕をこう。

   〔解説およびあらすじ〕

  『あの空をおぼえてる』、『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』の竹野内豊と『のだめカ
 ンタービレ』の水川あさみの共演で贈る痛快ハートフル・コメディ。ひょんなことから、新婚旅行で
 “地獄ツアー”に参加するハメになったカップルが体験する奇想天外な旅の行方を、脱力したタッチ
 でユーモラスに綴る。原作は演劇界期待の若手、前田司郎の同名小説。監督は『GSワンダーランド』
 の本田隆一。長い同棲生活のせいで新婚なのに倦怠期のカップル、大木信義(竹野内豊)と咲(水川
 あさみ)。新居に引っ越して早々、炊飯ジャーが見つからずモメるふたり。近所のスーパーへ出かけ
 た咲は、怪しげな占い師の女(樹木希林)から声を掛けられる。そして、炊飯ジャーの行方を知って
 いる口ぶりの占い師から地獄ツアーを勧められるのだった。翌日、咲は信義とともに再び占い師のも
 とを訪れ、要領を得ないままいつの間にか地獄ツアーへと向かうことに。そして、スーパーの屋上に
 置かれた薄汚いバスタブに体を沈めるや、本当に地獄へと落ちてしまう咲と信義だったが……。

 他に、片桐はいり(但馬=占い師の助手)、荒川良々(いいじま=地獄のホテルマン)、橋本愛(ヨシコ=
地獄の青い人)、平田敬士(ヨシコの弟1)、鈴木福(同じく2)、でんでん(赤い人のひとり)、山里亮
太(浦澤ヒデ)、柄本明(濡れた男)、山内圭哉(燕尾服の男)、村松利史(じいや)、緋田康人(天使レ
ミエル)、大堀こういち(同じくファラエル)、綾田俊樹(食品売り場の男)、山本浩司(踊る男)、森田
ガンツ(船頭)などが出演している。竹野内豊と水川あさみの対話は絶妙だったので、あとは付け足しとい
った感じか。
 2本目は、京都文化博物館が企画した「【日本映画120年記念企画】 古典・名作映画ノススメ 6」の上
映会で観た。鑑賞した映画は、『おとし穴』(監督:勅使河原宏、勅使河原プロ、1962年)である。実は、
勅使河原宏作品、安部公房原作、ATG関連映画ということもあって、ずっと観たかったのであるが、まさか
京都滞在中に観ることができるとは思っていなかった。縁があったのだろう。
 期待通りの味わいで、とくに佐々木すみ江の熱演が光っていると思う。彼女に注目したのは、『さらば愛  
しき大地』(監督:柳町光男、プロダクション群狼=アトリエダンカン、1982年)だったと思うが、若いこ
ろから上手だったのだと、改めて確認した次第である。
 物語を確認しておこう。この作品については、《ウィキペディア》のお世話になる。執筆者に感謝したい。
なお、一部改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『おとし穴』は、安部公房原作・脚本の日本映画。勅使河原宏監督、井川比佐志主演により1962年
 (昭和37年)7月1日にATG・チェーン劇場で公開された。勅使河原プロダクション第1回作品。ATG第
 3回上映作品(初の邦画配給作品)。本作は、1960年(昭和35年)10月20日に九州朝日放送で放映さ
 れたテレビドラマ『煉獄』を映画化したものである。昭和37年度のキネマ旬報ベストテンの第7位。
  撮影は1961年(昭和36年)7月15日から9月25日まで、福岡県嘉穂郡庄内の三菱鯰田鉱業所を主な舞
 台としてオール・ロケーションで行われた。メーン・キャストのほかは地元の人々が出演し、少年の
 役は坑内夫・宮原義男の長男(小学2年生)が起用された。また、安部公房やプロデューサーらが端
 役でエキストラ出演した。
  安部公房の脚本テキストは、1962年(昭和37年)3月10日発売の雑誌『キネマ旬報』3月号別冊(名
 作シナリオ集)に掲載された。また同年6月20日発売の雑誌『アートシアター』3号にも再掲載された。
 なお、「菓子と子供」と題された第一稿のシナリオは、前年1961年(昭和36年)、雑誌『シナリオ』
 5月号に掲載された。映画題名の他候補として、「明日を探せ」、「おとしあな」、「夜が来る」、
 「死を搬ぶ者」、「明けない夜」、「影の時代」、「明日は何処へ?」、「死んだ時」などの安部公
 房のメモがあった。

   〔あらすじ〕

  2人の炭鉱夫A(井川比佐志)、B(大宮貫一)は、Aの幼い息子(宮原カズオ)を連れて、きつ
 いヤマから逃げ、百姓(松尾茂)をだまして飯にありつきながら、一軒の労働下宿(宿泊をかねた私
 設職安)にたどり着いた。さっそくAとBは港の荷役の仕事をした。労働下宿の主人(松本平九郎)
 は、Aと1枚の写真と見比べ、次の仕事先を斡旋した。その写真はAとBが百姓の土地で炭が採れる
 ふりをしていた時に、サラリーマン風の謎の男X(田中邦衛)に隠し撮られたものだった。Aは渡さ
 れた略図を手に息子と指定された場所へ向かった。駄菓子屋の女(佐々木すみ江)に道を聞き、陥没
 湖沼のそばを歩いていたAは、背後から近づいた男Xに突然ナイフで刺殺された。息子はその時ちょ
 うど草むらで蛙を捕まえていた。一部始終を目撃していた駄菓子屋の女は男Xに口止め料を渡され、
 虚偽の供述をするように威圧された。
  死んだAの体から幽霊のAが分離した。駄菓子屋の女は交番に行き、Xの言った通りの虚偽の目撃
 談を話し、犯人は右耳の上にハゲがあると言った。憤慨しながら事件の現場検証を見ているAの幽霊
 に、同じ幽霊の身の見知らぬ男(島田屯)が声をかけた。真相を知りたがるAに見知らぬ男は、「知
 れば知るほどつらさが増すばかりだ」と言うが、Aは新聞記者(佐藤慶)とカメラマン(金内喜久夫)
 の跡を追った。記者らはAが平山炭坑の第二組合の委員長・大塚(井川比佐志=二役)と瓜二つなの
 を知り、第二組合委員長が替え玉を使い、犯人を右耳の上にハゲがある第一組合委員長・遠山(矢野
 宣)に見せかけた犯行かと考えた。自分が記者に疑われていると思った大塚は、容疑者の遠山が駄菓
 子屋の女の目撃証言を変えさせるのではないかと考え、遠山に電話し、真相を確かめるために2人で
 菓子屋へ行こうと提案した。
  先に駄菓子屋へ着いた大塚が店の女の死体を発見した。女は巡査(観世栄夫)と愛撫中に店にやっ
 て来た男Xに殺されていたのだった。脅えた巡査は裏口から逃げていた。大塚を見てAの息子は、
 「とうちゃん……」と声をかけるが、大塚が近づくと逃げ去った。一方その時、遠山も駄菓子屋に着
 き、店の中で狼狽している大塚を覗き見た。大塚は遠山に女殺しの犯人呼ばわりをされ、遠山の罠に
 はめられたと思った。2人はその場で取っ組み合いの喧嘩となり、沼に捨てられてあったナイフをつ
 かんだ遠山は大塚を刺し、大塚は遠山の首を絞め、2人とも死んだ。その一部始終をAの息子は見て
 いた。2人の死体を男Xが確認し、手帳に何かをメモした。それを見ていた幽霊のAと駄菓子屋の女
 は、「あんた、誰じゃ?!」、「なんで、うちを殺したんね!」と男Xに叫び、スクーターで去って
 ゆく男Xを、茫然を見送った。Aは、「あぁ、腹のへったァ……」と、しゃがみこんですすり泣きは
 じめた。Aの息子は、父親に似ている大塚の死体の肩先をつついていた。やがてAの息子は、駄菓子
 屋のお菓子をポケットにつめ込んで、泣きながらそれをかじり、何かを断ち切るように駆け出して行
 った。

 他に、奈良あけみ(労働下宿の主人の妻)、袋正(第二組合組合員)、安部公房(死体収容人)、武満徹
(バスの乗客)、大野忠(荷役の現場監督)などが出演している。なお、《ウィキペディア》では、矢野宣
が演じた遠山を第一組合副委員長(あるいは副組合長)としているが、小生の耳には「副」の文字は聞こえ
てこなかった。また、委員長なのか組合長なのかもはっきり覚えていない。重要な点ではないので、どちら
でも構わないが、一応「委員長」としておいた。
 安部公房らしい不条理劇で、久しぶりに堪能したことを記しておこう。


 某月某日

 DVDで邦画を4本観たので報告しよう。いずれも2016年に公開された映画で、それぞれ味わいが異なるけ
れども、十分に堪能することができた。そもそも今年は忙しすぎて映画鑑賞そのものがまだ60本程度なの
で、これから挽回しようと思う。もっとも、年間目標の200本はとうてい無理なので、150本に下方修正し
たい。
 なお、洋画を1本観ているが、以前に鑑賞していたものだった。題名だけ挙げておこう。

 『バティニョールおじさん(Monsieur Batignole, 2002)』、監督:ジェラール・ジュニョ、仏=独、
  2003年(日本公開)。

 さて、1本目は、『超高速!参勤交代 リターンズ』(監督:本木克英、「超高速!参勤交代 リターン
ズ」製作委員会〔松竹=木下グループ=テレビ東京=博報堂=ケイファクトリー=松竹ブロードキャステ
ィング=講談社=キングレコード=BSジャパン=福島民報社〕、2016年)である。題名から明らかなよう
に、『超高速! 参勤交代』(監督:本木克英、「超高速! 参勤交代」製作委員会〔松竹=テレビ東京=
博報堂=ケイファクトリー=松竹ブロードキャスティング=講談社=キングレコード=福島民報社〕、 
2014年)〔「日日是労働セレクト112」を参照〕の続篇である。新味はないが、すでに馴染みとなってお
り、重要な登場人物もほとんど同じなので、安心して観ていられた。
 物語を確認しておこう。例によって、〈Movie Walker〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  幕府から突如、参勤交代を命じられた弱小貧乏藩の面々が、知恵と工夫で無理難題に挑む姿を描い
 たユニークな時代劇の続編。参勤を終え、江戸から湯長谷藩へ戻ろうとする藩主の内藤政醇らが、再
 びトラブルに見舞われる姿がつづられる。政醇役の佐々木蔵之介、彼と恋に落ちるお咲役の深田恭子
 ら、前作のキャストが再結集。

   〔あらすじ〕

  老中・松平信祝(陣内孝則)の差し金により幕府から突然の参勤交代を命じられた磐城国の湯長谷
 藩藩主の内藤政醇(佐々木蔵之介)ら一行は、金も時間も人手もない中知恵をこらし江戸へ参勤。そ
 して藩に戻る交代の路につくが、その途中、湯長谷で一揆が起きた旨が伝わる。参勤のときに政醇た
 ちに敗れた信祝が、さらに大きな権力と最強の刺客を使って逆襲に出たのだった。一揆を収めるため
 には2日以内に藩に戻らねばならず、また、交代であるからには大名行列も必要に。行き以上の速さ
 で宿役人の目をくらましながらなんとか湯長谷にたどり着いたものの、すでに田畑は踏み荒らされ、
 城を乗っ取られた後だった。城をおびただしい数の幕府軍が取り巻いているのに対し、藩主らはたっ
 たの7人。湯長谷藩は再び絶体絶命の危機に陥る。

 他に、深田恭子(お咲)、西村雅彦(相馬兼嗣=家老)、伊原剛志(雲隠段蔵)、寺脇康文(荒木源八郎=
武具奉行)、上地雄輔(秋山平吉=祐筆)、知念侑李(鈴木吉之丞=側用人)、柄本時生(増田弘忠=馬廻)、
六角精児(今村清右衛門=膳番)、近藤公園(瀬川安右衛門=江戸家老)、橋本じゅん(福田弥之助=次席
家老)、古田新太(大岡忠相=南町奉行)、宍戸開(柳生幻道=尾張柳生家の武者)、渡辺裕之(諸坂三太
夫=同)、中尾明慶(森極蔵=同)、富田靖子(荒木富江=源八郎の妻)、市川猿之助(徳川吉宗=八代将
軍)、石橋蓮司(松平輝貞=老中首座)、舞羽美海(琴姫=政醇の妹)、神戸浩(茂助=湯長谷の農民)、
大鶴義丹(与作=同)などが出演している。
 2本目は、『後妻業の女』(監督:鶴橋康夫、「後妻業の女」製作委員会〔東宝=毎日放送=朝日放送=
関西テレビ放送=読売テレビ放送=テレビ大阪=電通=WOWOW=文藝春秋=KDDI=朝日新聞社=日本出版販
売=GYAO=ROBOT=時事通信社〕、2016年)である。年配の独身男性の後妻に入って、財産をいただく稼業
の女を描いている。タッチは伊丹十三風なので、スピーディに物語が展開していく。主演の大竹しのぶにぴ
ったりの役柄といえよう。手始めに、ターゲットの第一条件を挙げておこう。

 (1)資産があること。
 (2)持病があればなおいい。看取る時間が少なくて済むから。
 (3)もっとも、女同士の取り合いになったりする。

 次に、後妻業の必須三条件を挙げる。

 (壱)住民票を移す。
 (弐)家具を移す。
 (参)近所に顔を出す。

 さらに、主人公の結婚遍歴を掲げておこう。筆者のメモによるので、〈ウィキペディア〉の記述とは少
し異なっていることを断っておく。

 (一)星野欽司 塗装業 墜落死
 (二)岸上博昭 薬剤師 二人の間に、息子の博司がいる。
 (三)西山小太 サラリーマン
 (四)名城吉彦 溺死 この苗字で初登場。元木を騙す。
 (五)元木日出夫 害虫駆除会社経営 転落死
 (六)津村泰治 一級建築士 心不全
 (七)武内宗治郎 元近畿テレビ役員 転落死
 (八)中瀬耕造 元女子短大教授 心不全
 (九)舟山喜春 不動産業という触れ込みの「竿師」

 舟山は男の「赤詐欺」なので、資産家どころか小夜子の金を狙っていたので、例外になる。なお、最後の
中瀬とは内縁の関係である。
 物語を確認しておこう。以下、上に同じ。

   〔解説〕

  金持ちの男の後妻に入り、全財産を奪う“後妻業の女”と彼女に翻弄される人々を描く、大竹しの
 ぶ主演のユーモラスな人間ドラマ。後妻業の女とグルになって人を騙す結婚相談所の所長を豊川悦司、
 ターゲットになる不動産王を笑福亭鶴瓶が演じるなど、実力派たちの演技が物語をより濃密なものに
 している。監督は『愛の流刑地』の鶴橋康夫。

   〔あらすじ〕

  結婚相談所主催のパーティーで可愛らしく自己紹介する武内小夜子(大竹しのぶ)の魅力に、男た
 ちはイチコロになっている。その一人、瀬川耕造(津川雅彦)と小夜子は惹かれ合い、結婚する。二
 人は幸せな結婚生活を送るはずだったが、2年後、耕造が亡くなる。葬式の場で、小夜子は耕造の娘
 である朋美(尾野真千子)と〔西木〕尚子(長谷川京子)に遺言公正証書を突き付け、小夜子が全財
 産を相続する事実を言い渡す。納得のいかない朋美が調査すると、小夜子は後妻に入って財産を奪う
 “後妻業の女”であったことが発覚する。その背後には、結婚相談所の所長・柏木亨(豊川悦司)が
 いた。朋美は裏社会の探偵・本多芳則(永瀬正敏)とともに、次々と“後妻業”を繰り返してきた小
 夜子と柏木を追及する。一方小夜子は、次のターゲットである不動産王・舟山喜春(笑福亭鶴瓶)を
 本気で愛してしまう……。

 他に、余貴美子(瀬川英子=小夜子の仲間)、水川あさみ(三好繭美=柏木の女)、風間俊介(岸上博司=
小夜子の息子)、樋井明日香(杉村理沙=柏木の新しい女)、伊武雅刀(武内宗治郎=小夜子の七番目の夫)、
六平直政(元木日出夫=同じく五番目の夫)、森本レオ(津村泰治=同じく六番目の夫)、松尾諭(守屋達
朗=朋美の同級生だった弁護士)、柄本明(桜田順=銃で撃たれた本多を治療する獣医)、泉谷しげる(樫
本長次郎=鍵師)、ミムラ(武内香代=宗治郎の嫁)、笑福亭鶴光(山田孫六=バッタ屋)、梶原善(奥本
幸之助=大成銀行古市支店次長)などが出演している。
 後半は少し話に無理があるが、喜劇タッチなので「これもありか」と思わせる。また、ところどころで、
過去の作品を上手にパクっているように見える。もっとも、それも鶴橋監督の力量のうちなのだろう。
 3本目は、『モヒカン故郷に帰る』(監督:沖田修一、『モヒカン故郷に帰る』製作委員会〔関西テレビ
放送=バンダイビジュアル=ポニーキャニオン=アスミック・エース=東京テアトル=テレビ新広島=オフ
ィス・シロウズ〕、2016年)である。観ないでも分かるような物語。似ている作品はいくつかあるが、今は
京都に滞在しているので、調べにくい。したがって、割愛する。パンク・ロッカーを描いた作品もいくつか
あるが、外側から描いているので、ピントがずれている。第一、矢沢永吉とは世代差が激しい。
 物語を確認しておこう。この作品に関しては、〈allcinema〉を参照した。以下、同じ。

   〔解説およびあらすじ〕

  『南極料理人』、『横道世之介』の沖田修一監督が松田龍平と柄本明を主演に迎えて贈る家族ドラ
 マ。瀬戸内海の島を舞台に、妊娠している恋人を連れ里帰りしたモヒカン頭のバンド青年が、家族と
 の葛藤を重ねながらも改めて互いの絆を確かめ合っていく姿をユーモラスに綴る。共演は前田敦子、
 もたいまさこ、千葉雄大。モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン、田村永吉。恋人の由
 佳が妊娠したのをきっかけに、彼女を連れて7年ぶりに瀬戸内海の戸鼻島に帰郷する。実家には矢沢
 永吉を信奉する父・治と熱狂的なカープファンの母・春子、たまたま帰省していた弟・浩二がいた。
 家族が珍しく顔を揃えたのも束の間、すぐに始まる恒例の親子喧嘩。そんな中、治が末期癌と判明し
 動揺を隠せない永吉だったが……。

 キャストは、松田龍平(田村栄吉)、柄本明(田村治=父)、もたいまさこ(田村春子=母)、千葉雄大
(田村浩二=弟)、前田敦子(会沢由佳=恋人)、美保純(会沢苑子=由佳の母)、木場克己(竹原和夫=
治の同級生で主治医)、小柴亮太(野呂清人=トラッペット担当)、富田望生(清水さん=クラリネット
担当)などである。
 4本目は、『日本で一番悪い奴ら』(監督:白石和彌、『日本で一番悪い奴ら』製作委員会〔日活=東映=
木下グループ=カルチュア・エンタテインメント=ぴあ=GYAO=ポニーキャニオンエンタープライズ〕、
2016年)である。北海道警の不祥事を描いた作品。いわゆる「稲葉事件」の映画化作品である。もっとも、
このネタは、『ポチの告白』(監督:高橋玄、グランカフェピクチャーズ、2009年)〔「日日是労働セレク
ト54」、参照〕でも使用されており、新味はなかった。警察の暗部を描いた作品は他にもいくつかあるが、
対象が「警察」だからだろうか、容赦のない描き方が多い。おそらく、カリカチュアにしやすいのだろう。
 物語を確認しておこう。以下、上と同じ。

   〔解説〕

  裏社会と結託し、数々の事件を起こした挙句に、覚醒剤の使用で逮捕された刑事による“日本警察
 史上の最大の不祥事”と呼ばれる実在の出来事を映画化する犯罪ドラマ。綾野剛が悪に手を染めた刑
 事の26年を、年齢にあわせて体重を10キロ増減させるなどして演じた。監督は『凶悪』で国内の数々
 の賞に輝いた白石和彌。

   〔あらすじ〕

  大学柔道部での腕を買われ北海道警察に勧誘された諸星要一(綾野剛)は26歳で北海道警察本部の
 刑事となるが、捜査も事務も満足にできず、周囲から邪魔者扱いされる。署内でも抜きんでた捜査能
 力を発揮する刑事・村井定夫(ピエール瀧)は諸星に、刑事が認められるには犯人を挙げて点数を稼
 ぐことが必要、そのためには協力者=S(スパイ)を作れ、と説く。諸星は自分の名刺をばら撒き、
 内通を得て暴力団組員を覚醒剤・拳銃所持で逮捕する。その功績で本部長賞を授与されるが、令状の
 ない違法捜査に暴力団側が激怒する。幹部の黒岩勝典(中村獅童)と面会した諸星は無鉄砲な性分を
 買われ兄弟盃を交わし、黒岩が諸星のSとなる。諸星は31歳で札幌中央署暴力犯係(マル暴)に異動
 し、ロシア語が堪能な山辺太郎(YOUNG DAIS)を黒岩から紹介される。さらに太郎からロシアルート
 の拳銃横流しに精通するパキスタン人アクラム・ラシード(植野行雄)を紹介され、共にSとして付
 き合う。要人への銃撃事件の増加に伴い道警本部に銃器対策課が新設され、諸星は第二係長を拝命す
 る。新設部署の面子のため手っ取り早く拳銃の摘発をしたいと上司に相談されると、所持者不明の銃
 をコインロッカーに入れて摘発を偽装する。これをきっかけに摘発手段はエスカレートしていき、ロ
 シア人から1丁2万円でトカレフを購入して摘発件数を水増しするようになる。諸星は銃器対策課か
 ら予算を引き出し、太郎とラシードを拳銃の仕入れにロシアまで向かわせるが、1丁しか購入できな
 かった。そこで手頃な値段で拳銃を売る東京のヤクザを頼るが、拳銃が一般の宅配便で送られてきた
 ため警視庁の知るところになり、この影響でヤクザの拳銃の販売価格が高騰する。諸星は資金不足を
 補うため、黒岩の提案でシャブを捌くことに。一線を越えた諸星は公私ともにSとの関わりを深めて
 いく。黒岩はさらに大きな計画を諸星に持ち掛け、税関、道警を巻き込んだ日本警察史上最大の不祥
 事を引き起こす。

 他に、矢吹春奈(田中由貴)、田中隆三(猿渡隆司=課長)、みのすけ(岸谷利雄=要一の先輩)、中村
倫也(小坂亮太)、勝矢(漆原琢馬=次長)、斎藤歩(桜庭幸雄=税関の職員)、白石糸(沙織=山辺の元
妻)、音尾琢真(国吉博和=警視庁銃器対策室警部)などが出演している。なお、配役は推定を含む。
 警察に限らないが、「点数」制の弊害はどこにでもある。「要するに、点数を稼げばよい」という考えが
横行するからである。以下に、主な犯罪の点数を掲げておこう(当該映画より)。

 殺人 18
 過失致死 18
 傷害致死 18
 強盗致死傷 18
 強盗 15
 現住建造物等放火 12
 覚醒剤所持 10(5グラム以上、プラス5)
 拳銃等の所持 9
 脅迫 8
 傷害 7
 詐欺 5
 住居侵入等 5
 暴行 4
 背任 2

 「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」をもじって、「浜の真砂は尽きるとも世に犯罪の種は
尽きまじ」と詠みたくなる映画であった。


 某月某日

 DVDで邦画の『修羅』(監督:松本俊夫、松本プロ=ATG、1971年)を観た。『薔薇の葬列』に続いて同じ
松本監督の作品を鑑賞したことになるが、はるかに当該作品の方が優れていると思った。時代劇としても一
本筋が通っているし、何よりもその映像的意匠が印象的である。重要なシーンを何度も繰り返す手法はむし
ろ陳腐とも言えるが、この作品に限って言えば、新鮮であった。瑕瑾をあげつらえば切りがないが、ほとん
どそれ以外にはないほどの台詞回しも、舞台劇を観ているようなライヴ感があった。中村嘉葎雄、三条泰子、
唐十郎の主要な役の他にも、脇を務めた役者がおのれの立ち位置を全うし、とくに今福正雄や田村保の演技
は素晴らしかった。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『東海道四谷怪談』、『菊宴月白浪』で知られる鶴屋南北の『盟三五大切』を、『薔薇の葬列』に次
 いで劇映画の第二目として松本俊夫が脚本・監督した。撮影は『キューバの恋人』、『薔薇の葬列』の
 鈴木達夫がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  塩治の浪人薩摩源五兵衛(中村嘉葎雄)は、主君仇討に参加しようと、敵の眼をあざむくため酒色にお
 ぼれているように見せかけていたが、芸者小万(三条泰子)に対する執心はそれ以上のものがあった。小
 万もまた腕に「五大力」をほる程に源五兵衛を慕っているかのように見えた。源五兵衛の苦悩は、仇討ち
 に加わるための御用金として必要な百両が調達できないことにあったが、このことを我がことのように感
 じている忠僕八右衛門(今福正雄)が、四苦八苦の末ようやく金の工面をして戻って来た。源五兵衛は、
 自分のふしだらを恥じ、改めて義士連判に加わる決意を新たにした。だが折も折、高野の侍賎ケ谷伴右衛
 門〔=勘九郎〕(南祐輔)から、百両で小万身請けの話が持ち上っていることを三五郎(唐十郎)から聞
 くと、矢も楯もたまらず、八右衛門が工面した百両を投げだし、小万を身請けしてしまった。しかし身請
 けした以上我が物になると信じていた源五兵衛は、小万にはれっきとした三五郎という亭主と子どもまで
 あり、自分が仕組まれた芝居にだまされたことを知ると復讐の鬼と化し、芝居を仕組んだ三五郎の手下を
 斬殺した。一方、辛うじて逃げのびた小万と三五郎は、乳のみ児をかかえ四谷の長屋に身を秘めた。そし
 て三五郎は、父徳右衛門〔=了心〕(松本克平)の主筋に当る人のために調達したその金百両を届けに、
 徳右衛門を訪ねた。その間、三五郎の住いをつきとめた源五兵衛は、小万の「五大力」の彫りものが「三
 五大切」に変っているのを見ると、乳のみ児と小万を殺してしまった。その頃、百両を手にした三五郎と、
 徳右衛門は一刻も早く主人船倉宗右衛門に渡そうと、近くにある庵室を訪ねた。庵室では源五兵衛が、う
 ち落してきた小万の首を机の上に置いて、酒を飲んでいる。源五兵衛こそは船倉宗右衛門の世をしのぶ仮
 の名だったのだ。顔を合わせた源五兵衛と三五郎の気の転倒するほどの驚ろきはいうまでもなく、二人は
 これまでの出来事が何を物語っているのか一挙に知った。三五郎は自決し、嗚咽にむせぶ徳右衛門をひと
 り残し、源五兵衛はいずこへともなく去った。数カ月後、塩治の浪人は討ち入を決行したが、もちろん船
 倉宗右衛門の名を義士の列名から見出すことはできなかった。

 他に、田村保(弥助=小万の兄)、観世栄夫(宅兵衛=同心)、江波多寛児(虎蔵=三五郎の仲間)、川
口敦子(菊野=同)、山谷初男(長八=同)、天野新士(伊之助=同)などが出演している。テイストとし
ては、『怪異談 生きてゐる小平次』(監督:中川信夫、磯田事務所=ATG、1982年)に似ていた。なお、当
初は、源五兵衛役を六代目市川染五郎(=九代目松本幸四郎)、小万の役を若尾文子が務めるはずであった
が、染五郎がミュージカル『ラ・マンチャの男』で手が離せず、やむなく交代となった次第の由。なお、小
万役を演じた三条泰子は滝沢修の秘蔵っ子だそうだが、たしかに優れた女優だと思った。

                                                  
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