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 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第121弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト121」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『さまよえる脳髄』(監督:萩庭貞明、シネマパラダイス、1993年)を観た。不思議な雰囲
気を醸している映画である。全体的にさして面白いとも思えないし、結末にもそれほどの説得力はない。し
かし、神田正輝と高島礼子という組み合わせが新鮮で、最後まで飽きずに観た。サイコ・ホラー映画に分類
されると思うが、脳科学の知識も豊富に登場し、その意味で珍品といってもよいだろう。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  直木賞作家逢坂剛原作の同名小説を映画化。精神神経科の女医と、彼女を取り巻く人間たちが異様
 な犯罪に巻き込まれていく様を描くサスペンス作品。監督は『遊びの時間は終らない』『難波金融伝 
 ミナミの帝王』の萩庭貞明。脚本は『良いおっぱい悪いおっぱい』のこがねみどり。

   〔あらすじ〕

  とあるプールバー。刑事の海藤兼作(神田正輝)は、覚醒剤の密売取引現場を押さえようとして、
 階段から落ち、後頭部を強く打ってしまった。入院した病院には、彼の婚約者南川藍子(高島礼子)
 が勤務していた。彼女は現在、女性を暴行した患者、追分知之(塩屋俊)を診察していた。追分は自
 分を捨てて男に走った母親に愛憎を抱いていて、それによって精神のバランスを崩していた。そんな
 折、殺害後被害者のまぶたを切り取るという異常な猟奇的殺人事件が起こった。事件と符合するよう
 に藍子のもとに悪質な脅迫電話が頻繁に掛かるようになった。海藤はその後、回復に向かってはいた
 が、ある日、藍子とのセックスの最中、無意識に藍子の首を絞めたことから、脳に異常があることが
 判明。右脳の人格と左脳の人格がそれぞれ独立して機能するようになっていることがわかるのだった。
 一方、警察は追分に殺人罪の容疑をかけようとうしていた。しかし、海藤は十年前の殺人事件から新
 たな事件の鍵を握っていた。それはレズの女が恋人をメッタ刺しにしたというもので、そのとき殺さ
 れた女の弟が藍子の患者、本間(石橋保)だった。追分、本間、そして海藤と疑わしい人物にかこま
 れている藍子は、ある晩、海藤の名を名乗った男から病院の階下で待っているという伝言を受けた。
 行ってみると本間が女装して立っていた。一連の事件の犯人は本間だった。危ういところで海藤に助
 けられた藍子だったが、そのとき別の人格の彼女が現れる。調べると藍子は生理中に脳梁機能不全に
 なる体質だった。事件は解決したかに見えたが、海藤と藍子の二重人格症はまだ治っていない。

 他に、北見敏之(遊佐=刑事)、光石研(木村=同)、大杉漣(滝本=覚醒剤不法所持の男)、嶋田久作
(丸岡庸三=脳神経外科医)、田口トモロヲ(福島=その協力者)、でんでん(沢田=病院の警備員)、雨
宮良(ナレーション)などが出演している。
 冒頭、次のような文字が現れる。

  脳の左右の半球はそれぞれ異なる機能を担い、脳梁という左右をつなぐ繊維束が相互の連絡を行っ
 ている。分離脳とは、脳梁がなんらかの形で損なわれた状態のことである。分離脳が人間の活動にど
 んな影響を及ぼすのか、確定した研究結果はない。

 物語の中でも、有名な心理実験(ミルグラム実験)の場面が出てくるし、「脳梁機能不全」が重要なキー・
ワードとなっている。その他、「われわれが殺人者にならないのは、精神のバランスが辛うじて保たれてい
るからに過ぎない」(丸岡の台詞)や、「犯罪は無意識に潜んでいるイメージの具体化である」(南川の台
詞)などが印象に残った。なお、追分は母親との近親相姦を告白している。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので、報告しよう。いずれも製作媒体が大手ではないので、けっこう冒険している
と思う。無難な娯楽作品ばかり観ていると、こういった作品が新鮮に感じられる。まさに両者ともにその手
の作品に仕上がっている。
 1本目は、『休暇』(監督:門井肇、「休暇」製作委員会〔山梨日日新聞社=山梨放送=リトルバード〕、
2008年)である。なかなかの佳品である。死刑囚を扱った邦画は他にもけっこう存在するが、死刑執行シー
ンをリアルに表現している作品は案外少ないのではないか。思い出したものを以下に挙げておこう。記憶に
頼っているので、「絞死刑」そのもののシーンがあるかどうかは曖昧である。

  『私は貝になりたい』、監督:橋本忍、東宝、1959年。
  『絞死刑』、監督:大島渚、創造社=ATG、1968年。
  『女囚さそり・701号怨み節』、監督:長谷部安春、東映東京、1973年。
  『13階段』、監督:長澤雅彦、フジテレビジョン=東宝=ポニーキャニオン=イマジカ、2003年。
  『明日への遺言』、監督:小泉尭史、アスミック・エース エンタテインメント=住友商事=産経新聞社=
   WOWOW=テレビ東京=ティー ワイリミテッド=シネマ・インヴェストメント=CBC=エース・プロダク
   ション、2008年。
  『私は貝になりたい』、監督:福澤克雄、「私は貝になりたい」製作委員会〔TBS=東宝=ジェイ・
   ドリーム=博報堂DYメディアパートナーズ=毎日放送=朝日新聞社=プロダクション尾木=中部日本
   放送=TBSラジオ=TOKYO FM=RKB毎日放送=北海道放送=他 JNN全28局〕、2008年。

 その他、刑務官の立場から死刑囚を描いた小説作品としては、『夏の流れ』(丸山健二、1966年)を連想
した。また、精神科医から見た死刑囚の実態を描いた『宣告』(加賀乙彦、1979年)という小説も存在して
いる。漫画では、冤罪死刑囚を描いた作品が、『人間交差点 -HUMAN SCRAMBLE-』(原作:矢島正雄、作画:
弘兼憲史、1980-1990年)にあった(第6話 谷口五郎の退官)。その他、死刑囚を扱った書籍は無数にあ
るだろうが、読むたびに暗い気持になる。「やはり、死刑にしなければならないのだろうな。できれば、し
ない方がいいのに……」という気持である。小生は、辺見庸ほどの「死刑反対論者」ではないが、できれば
死刑を廃止にしてほしいと考えている。どんな理由であれ、「人を殺すな」が定言命法として小生の胸に響
いてくるからである。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  小林薫、西島秀俊ら実力派俳優が顔を揃えた人間ドラマ。死刑囚の体を支えて刑の執行を補佐する
 “支え役”を務めることになった刑務官の葛藤と、周囲の人々の姿をつづる。

   〔あらすじ〕

  「支え役」をやれば、1週間の休暇が取れる。美香を新婚旅行に連れて行きたい平井は、その役を
 自ら志願するのだった……。死刑囚を収容し、死を間近に感じる生活を送る刑務所の刑務官たち。決
 まりきった毎日を淡々とやり過ごす寡黙な平井透(小林薫)も、ベテラン刑務官の一人。彼の勤める
 拘置所には死刑囚の金田真一(西島秀俊)が収容されていた。模範囚の金田は日々静かに絵を描いて
 過ごし、その見事な腕前は、刑務官たちも舌を巻くほどだった。独身のまま歳を重ねてきた平井のも
 とに、あるとき縁談が持ち込まれる。相手はシングルマザーの美香(大塚寧々)。縁談はスムーズに
 進んでいくものの、美香の息子、達哉(宇都秀星)は平井に心を開こうとしない。いつか慣れてくれ
 るだろうと話す平井に、美香は「あなたにも慣れてほしい」と答えるのだった。平井と美香の結婚を
 間近に控えたある日、金田の死刑執行が告げられる。刑務官たちの間では、執行の際に落ちてきた身
 体を受け止める「支え役」を誰が勤めるかということになる。「支え役」を勤めた者には、1週間の
 休暇が与えられることになっていた。しかし、人の生命を奪う死刑に荷担する仕事を誰も引き受けた
 がらない。すでに母の葬儀などで有給休暇を使い果たし、新婚旅行を計画できずにいた平井は、苦悩
 の末に「支え役」に志願。だが、同僚たちは、自分の休暇のために「支え役」を志願した彼に怒りを
 向けるのだった。死刑執行の前日。平井は、彼の結婚を知った金田から結婚相手と一緒の平井の姿を
 描いた1枚の絵を手渡される。そして翌朝、金田の刑が執行された。休暇を得た平井は、美香と達哉
 とともにささやかな新婚旅行に出発するが、彼の脳裏からは死刑執行の記憶がいつまでも離れない。
 同僚たちの冷めた眼差しや自分を拒むような達哉の態度に、平井の不安と苛立ちは増してゆくのだっ
 た……。

 他に、大杉漣(三島達郎=ベテラン刑務官)、菅田俊(坂本富美男=同)、谷本一(古木泰三=同)、柏
原収史(大塚敬太=若手刑務官)、利重剛(池内大介=部長)、今宿麻美(金田久美=死刑囚の妹)、滝沢
涼子(南雅子)、榊英雄(教誨師)、りりィ(美佐子=平井の姉)、大谷俊平(藤本悟)、村上連(亀山恭
司=刑務官)、高杉心悟(高橋五郎=同)、坂本敏夫(片山=拘置所長)、金澤太朗(木村=刑務官)、浅
田圭一(水谷=同)、加藤祐司(笹野=同)、伊藤文康(富沢=同)、足立喜之(検事)、酒井康宜(検察
事務官)、内田量子(篠原和美)、青柳里香(中里莉奈)、栗田正寛(高木=弁護士)、望月勝広(杉谷=
医務官)、小宮山絢子(恵理)、田中瑛祐(翔太)、樋口勇(法務大臣)、内藤政雄(幻想の老人)、内藤
きみ子(幻想の老女)、平井美保(結婚式場のスタッフ)、井上博一(道夫=結婚式のスピーチをする平井
の親戚)、有福正志(猛)、大塚良重(芳子)などが出演している。片山拘置所長役を演じた坂本敏雄は元
刑務官で、当該映画のアドヴァイス役を務めている。2011年より、死刑反対の立場を表明している由(ウィ
キペディアより)。
 2本目は、『幻の湖』(監督:橋本忍、橋本プロダクション、1982年)である。変わった脚本の映画であ
るというのが正直なところの印象である。<ウィキペディア>には、それを裏付ける以下のような記事がある。

  橋本自身も当初から脚本に自信が持てず、無理なシチュエーションや不自然なシチュエーションを
 強引にシナリオで押し通した結果「最後の仕上げでフィルムが全部繋がると、根本的な大きな欠陥と
 失敗が間違いなく露呈」したと後年認めており、大失敗と位置付けている。

 しかし、最近では一種の「カルト映画」として位置づけられた由。筋書も変わっているが、登場人物の性
格も変わっている。「病気」と言えるほどの変人ではないのだが、主人公の尾坂道子はかなりの偏執狂に見
えるし、彼女と仲のいいローザもどんな人間なのかよく分からない。米国の調査機関に所属する人物らしい
が、調査のためにあえて「売春婦」になるだろうか。長尾正信/吉康もどこか人間離れしているし、道子を
受け容れる銀行員の倉田も、よく考えればどこかおかしい。道子のターゲットである、作曲家の日夏圭介が
むしろまともに見える。監督を務めた橋本忍は一流の脚本家であるが、なぜこんな作品を書いたのか、どう
考えても不思議である。主人公の道子役を務めた南條玲子は、相当頑張っているが……。
 ともあれ、物語を確認しておこう。以下、上と同じである。

   〔解説〕

  『砂の器』、『八甲田山』に続く橋本プロ第3弾で、400年前の戦国時代から、現代、そして未来
 まで、喘ぎ、呼吸をしながら見果てぬ幻の夢を追い続けて生きる人間の姿を描くネオ・サスペンス。
 原作・脚本・監督は橋本忍。撮影は『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』の中尾駿一郎と斎藤孝雄、
 岸本正広の共同。特撮監督は『連合艦隊』の中野昭慶がそれぞれ担当。磁気4chステレオ。

   〔あらすじ〕

  風俗嬢の尾坂道子(南條玲子)は、琵琶湖の湖畔を愛犬のシロを追って走り続け、1年以上が過ぎ
 た。かつて、仕事に疲れ、失意のどん底にいた道子はみすぼらしい野良犬のシロとの出会いに運命的
 なものを感じた。そして、銀行員の倉田修(長谷川初範)からジョギングシューズを贈られたことが
 もう一つの刺激となって、本格的なジョギングを始めたのだった。8月末のある日、葛篭尾崎の先端
 で道子は狂おしい笛の音に誘われ笛を吹く男である長尾正信(隆大介)に出会った。私はこの人に会
 うためにシロに導かれ走っていたのでは……。秋雨の降る10月のある日、シロが何者かに殺された。
 そして、犯人が今をときめく作曲家の日夏圭介(光田昌弘)であることをつきとめた道子は、復讐を
 誓い、東京まであとを追うが、寸前のところで逸してしまう。抜け殻のようになって琵琶湖に帰った
 道子は、倉田との結婚を決意する。それから数日後、シロの墓参りに葛篭尾崎へやってきた道子は、
 偶然、長尾と再会し、激しく心が乱れた。長尾は道子に笛の由来とそれにまつわる先祖の話をした。
 ── 戦国時代、小谷城のお市の方(関根恵子〔現 高橋恵子〕)につかえる侍女にみつという娘(星
 野知子)がいて、領内に住む地侍である長尾吉康(隆大介=二役)の吹く笛の音に誘われて、ふたり
 は出会い、互いに惹かれるのだが、織田信長(北大路欣也)の浅井攻めにあい、ふたりは結ばれず、
 みつは信長に葛篭尾崎の先端で逆さ吊りの刑に処せられた。そして、吉康は死んでいったみつのため
 に、湖上で心をこめて笛を吹いた。その笛の音にはまるでみつの怨念でものり移ったかのように、結
 ばれるべくして結ばれなかった者の悲しみを漂わせていた ── 話を終えた長尾は自分は吉康の子孫
 で、葛篭尾崎の先端で笛を吹けば、誰かに逢えるという伝説を祖父から聞いたと言う。そして宇宙科
 学の研究のためアメリカへ帰るので、自分と結婚し一緒に行ってくれと頼む。しかし、道子は長尾の
 話に心を揺さぶられながらも、その申し出を断った。しばらくして、道子の前に偶然、日夏が客とし
 て現われた。道子は夢中で出刃包丁を握り、逃げる日夏の後を追い、やっとのことで日夏をとらえ、
 シロの敵を討つのだった。ちょうどその頃、スペース・シャトルに乗り宇宙へ出た長尾は、琵琶湖の
 遥かかなた上空にいて、あの笛を宇宙空間に置き、これで琵琶湖がたとえ幻の湖となろうと、永遠に
 なくなることはない、とつぶやくのだった。

 他に、かたせ梨乃(淀君=源氏名)、テビ・カムダ(ローザ=道子の友人)、室田日出男(矢崎=風俗店
の支配人)、下絛アトム(平山=同じくスタッフ)、谷幹一(関口=タクシー運転手)、北村和夫(大西=
西大津署の刑事課長)、仲谷昇(弁護士)、宮口精二(長尾吉兼=長尾吉康の父)、大滝秀治(藤掛三河=
お市の方に仕える武士)、西田健(風俗嬢・お市の方〔道子〕の客)、奥野匡(太田垣=同)、辻萬長(飯
田=道子が訴えた側の交渉人)、荒木由美子(日夏音楽事務所の受付嬢)、菅井きん(吉田屋の女将)、中
村れい子(お市の方〔関根〕の侍女)、杉山とく子(みつの母)、伊藤敏孝(大津の獣医)などが出演して
いる。なお、ランニング指導として、宇佐美彰朗(オリンピック3大会連続出場)の名前が見える。


 某月某日

 DVDで邦画の『今日子と修一の場合』(監督:奥田瑛二、ゼロ・ピクチュアズ、2013年)を観た。東日本
大震災を背景にした人間ドラマ。二つの物語がまったく関係なく進行するが、同じ震災の町に結ぼれていく
さまを描いている。当該作品を含めて、奥田瑛二監督の作品は、以下のように5本観ている。

  『少女・an adolescent』、監督:奥田瑛二、ゼロ・ピクチュアズ、2001年。
  『るにん』、監督:奥田瑛二、ゼロ・ピクチュアズ、2006年。
  『長い散歩』、監督:奥田瑛二、「長い散歩」製作委員会〔ゼロ・ピクチュアズ=大喜=朝日放送〕、
   2006年。
  『風の外側』、監督:奥田瑛二、ゼロ・ピクチュアズ=「風の外側」サポート・ファンド、2007年。
  『今日子と修一の場合』、監督:奥田瑛二、ゼロ・ピクチュアズ、2013年。

 それぞれ面白いのだが、いつもどこかはぐらかされた感覚に襲われ、何かが足りないと思う。それが何な
のか、いまだによく分からないが、たぶんどこかに綻びがあって、リアリティを欠いてしまうからだと思う。
いちいち指摘はしないが、他の映画のさまざまな映像や粗筋を連想させ、奥田監督自身が意識しているのか
いないのかは判然としないが、素人くささがまだ抜けていないような気がする。まだ5本しか撮っていない
監督としては、たぶん上々なのだろうが……。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  奥田瑛二の5本目となる長編監督作は、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町出身の2人の
 男女の姿を描くヒューマンドラマ。それぞれ心に深い傷を抱え、東京で新たな生活を送る2人が地震
 を機に、新たな一歩を踏み出していく。実生活では夫婦である安藤サクラと柄本佑を主演に迎え、南
 三陸町で長期ロケを行い撮影された。

   〔あらすじ〕

  今日子(安藤サクラ)は同居している男(和田聰宏)の言いなりで、心身ともに束縛される生活を
 送っている。一方、修一(柄本佑)は、母親を助けるために父を殺害した。彼らがそれぞれの事情で
 故郷に帰れず、過去を清算するために東京で暮らしているなか、突然地震が発生する。テレビは、掛
 け替えのない故郷が、巨大な津波に飲み込まれる様子を映し出す……。

 他に、田部周(修一の勤める会社の社長)、小篠恵奈(ミキちゃん=その会社の社員)、和音匠(ケンイ
チ=同)、諏訪太朗(とくさん=同)、柴田理恵(同)、竹山隆範〔カンニング竹山〕(今日子の上司)、
宮崎美子(修一の母)、平田満(同じく父)、高橋源一郎(大学の教員=今日子の客)、高橋長英(今日子
の舅)などが出演している。
 南三陸町の荒れ果てた姿は敗戦直後の戦災地を連想させるが、津波に洗われた廃墟は、爆撃を受けた街と
はどこか違う。生活感が根こそぎ奪われており、乾いた寂寥を感じさせる。鉄骨だけになったビル、瓦礫の
山、その間を縫うように走る整然とした道路。今日子と修一の罪はこの廃墟に刻印されて、いつまでも消え
ないかのようである。ところで、安藤サクラは、『家路』(監督:久保田直、「家路」製作委員会〔WOWOW=
ポニーキャニオン=ホリプロ=ビターズ・エンド=いまじん=ハートス=レスパスビジョン=ソリッドジャ
ム〕、2014年)〔「日日是労働セレクト111」、参照〕でも春を売る主婦の役を演じていたが、その心境
を演じ切っていたかどうかは微妙である。とんでもない境涯に身を置いた人間が、必ずしも苦悩を丸出しに
するとは限らないが、小生の目には、『愛のむきだし』(監督:園子温、オメガ・プロジェクト、2008年)
〔「日日是労働セレクト78」、参照〕で見せた迫力には及ばない感じがした。また、父殺しの青年の役を
演じた柄本佑は、『17歳の風景』(監督:若松孝二、若松プロダクション=シマフィルム、2005年)〔「日
日是労働セレクト36」、参照〕では、母殺しの少年の役を演じている。人間界の禁忌を犯した人間の役を
演じるとはどういうことなのだろうか。言い換えれば、あんなに簡単に父親を殺せるものだろうか。


 某月某日

 DVDで邦画の『舞子はレディ』(監督:周防正行、フジテレビジョン=東宝=関西テレビ放送=電通=京
都新聞=KBS京都=アルタミラピクチャーズ、2014年)を観た。おそらく『マイ・フェア・レディ(My Fair
Lady)』(監督:ジョージ・キューカー(George Cukor)、米国、1964年)のもじりだと思うが、そんな言葉
遊びは置くとしても、「京言葉」だけを浮き彫りにしたのではなく、鹿児島弁や津軽弁を絡めて、実に楽し
い映画に仕上げている。さすが、周防監督と言いたい。ミュージカル映画としては、歌唱が控えめで少し物
足りない気もするが、やっと小生の好む映画が出てきたな、といった感じ。まさに、「ブラボー!」である。
なお、同じ京都の花街を舞台にした『おもちゃ』(監督:深作欣二、東映=ライジングプロダクション、19
98年)とはだいぶ様相が違うが、それはそれ、これはこれで、それぞれに味わいがあると思う。ちなみに、
『おもちゃ』でも、富司純子がお茶屋の女将を演じている。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『Shall we ダンス?』の周防正行監督が、20年来あたためてきた企画を映画化した痛快作。京都
 の花街を舞台に、舞妓に憧れる少女が古いしきたりや言葉遣いといったさまざまな困難を乗り越えて、
 一人前の舞妓になろうと奮闘する姿を描く。鹿児島弁と津軽弁がミックスされた不思議な口調のヒロ
 イン、春子を演じるのは新鋭・上白石萌音。

   〔あらすじ〕

  京都。歴史の古い小さな花街・下八軒(「上七軒」のもじりだと思われる)は、舞妓がたった一人
 しかいないという大きな悩みを抱えていた。ある節分の夜、八軒小路のお茶屋・万寿楽に一人の少女・
 西郷春子(上白石萌音)がやってくる。春子は、女将の小島千春(富司純子)にどうしても舞妓にな
 りたいと懇願するが、どこの馬の骨ともわからない少女を老舗のお茶屋が引き取るはずもない。しか
 し、そこに居合わせた言語学者の“センセ”こと京野法嗣(長谷川博己)は、鹿児島弁と津軽弁がミ
 ックスされた春子に興味を持ち、老舗呉服屋の社長・北野織吉(岸部一徳)に「春子を一人前の舞妓
 にしたら自分に褒美をくれ」とけしかける。晴れて万寿楽の仕込み(=見習い)になった春子だが、
 厳しい花街のしきたり、唄や舞踊の稽古、そして何より慣れない言葉遣いに戸惑い、何もかもがうま
 くいかない。芸妓の豆春(渡辺えり)や里春(草刈民代)、舞妓の百春(田畑智子)たちが心配する
 中、センセの弟子の大学院生・西野秋平(濱田岳)から「君には舞妓は似合わない」と言われ、つい
 に春子は声が出なくなってしまう……。

 他に、竹中直人(富さん〔青木富夫〕=男衆)、高嶋政宏(高井良雄=大手芸能事務所社長)、中村久美
(原田千代美=踊りの師匠)、岩本多代(鶴一=下八軒の芸妓)、高橋長英(西郷田助=春子の祖父)、草
村礼子(梅=同じく祖母)、小日向文世(市川勘八郎=歌舞伎役者、里春の恋人)、妻夫木聡(赤木裕一郎=
若い頃の千春が恋した相手の映画スター)、大原櫻子(舞妓時代の千春)、松井珠理奈(福名=アルバイト
舞子)、武藤十夢(福葉=同)、徳井優(三味線の師匠)、田口浩正(長唄の師匠)、彦摩呂(鳴物の師匠)、
パンツェッタ・ジローラモ(マリオ=高井がお茶屋に連れた来たイタリア人)、津川雅彦(客)、六平直政
(同)、瀬戸朝香(春子の母〔写真〕)、加瀬亮(同じく父〔写真〕)などが出演している。
 高井が「ゴイスーなロイメ」といった時何のことか意味不明だったが、「凄い迷路」のことだった。芸能
界特有の逆さ言葉である。小野小町と深草少将の「百夜通い」や、「イップス(突然、何かができなくなる
こと)」の挿話も適切で、話に磨きがかかっていた。こんな映画が、もっともっと作られていいと思った。


 某月某日

 DVDで邦画の『非女子図鑑』(監督:清水崇/豊島圭介/山口雄大/深川栄洋/川野浩司/オースミユー
カ/塚本連平、「非女子図鑑」製作委員会〔ニューシネマワークショップ=エピックレコード ジャパン=
ビデックス=ディー・キューブ=ボイス&ハート=ブループリント〕、2009年)を観た。題名に惹かれて観
ることにしたが、ほぼ予想通りのオムニバス映画だった。現在、卒論生の論文を指導しているが、そのうち
「女子力」を含めて女性の周辺をテーマにしている学生が10人近くいるので、何か参考になるかと思い、観
てみた次第。参考になったとも言えるし、それほどでもなかったとも言える。「非女子」とあるからには、
ここに描かれている女性は皆どこか「女子」から外れていることになるが、観ていてそうは感じなかった。
おそらく、「非女子」という言葉を遣いながらも、「女子」そのものを描きたかったのではなかったか。と
いうのも、オープニングのアダムとイブのイブだって女子と言えば女子だし、順に「占い依存の女」、「た
だ闘う女」、「ノーブラの女」、「男を演りたい女」、「混浴好きの女」、「自殺にはしる女」……それぞ
れ皆「女子」そのもののように見えたからである。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『呪怨』の清水崇や山口雄大ら、日本映画を牽引する若き鬼才。そんな彼らが結集し、個性的すぎ
 る女性“非女子”の生態を活写した6本の短編からなるオムニバス・ムービー。

   〔あらすじ〕

  通学途中に神社へ立ち寄り、そこにあるガチャガチャの占いに興じる女子高生のタマエ。どんなに
 変なことが占いに書かれていても、それを実行する彼女に留学生のキャサリンは興味を持つようにな
 る(「占いタマエ!」)。身体を鍛え、ただ闘うためだけに生きている光子(「魁!! みっちゃん」)。
 考古学に打ち込むために女を捨てていると言われるが、ただ発掘現場ではブラジャーが邪魔なだけの
 美帆(「B(ビー)」)。女に飽きて、男を演じたくなった女優の純(「男の証明(あかし)」)。
 混浴が好きで全国を回り、旅慣れている千晶(「混浴 heaven」)。男に振られて死のうと試みるが、
 あれこれ気にして死ねない涼子(「死ねない女」)。それぞれの生き方が描かれている。

 主な出演者は以下の通りである。

 〔オープニング&エンディング〕鳥居みゆき(イブ=「非女子」の起源になった始祖)、大友陸(アダム=
  イブとは正反対の存在〔いわゆる草食男子〕にあたる始祖)、サラ・B、マヤ・マーシャル。
 〔占いタマエ!〕足立梨花(タマエ)、アナンダ・ジェイコブズ(キャサリン)、スネオヘアー(神主)。
 〔魁!! みっちゃん〕山崎真実(光子)、坂口拓(タク)、ジジ・ぶぅ(タナカ)。
 〔B(びー)〕月船さらさ(菅山美帆)、田中幸太朗(大和圭吾)、落合恭子(千代)、泉原豊(清水)。
 〔男の証明(あかし)〕片桐はいり(唐沢純)、菅原永二(松永強)、小西遼生(森田将人)、ノゾエ征
  爾(足立健介)、品川徹(亀井透=ディレクター)、池田鉄洋(本間利明=プロデューサー)、佐藤良
  洋=立小便の男)、清水徹也(アシスタント)。
 〔混浴 heaven〕江口のりこ(千晶)、清水元基(加藤=自殺志願の青年)、綾田俊樹(樋口=温泉好き
  の男)、河野景子(倉田=仲居)、松田章(番頭)、深澤翼(ゆーくん)、牧野愛(ぴよ)。
 〔死ねない女〕仲里依紗(中谷涼子)、佐藤二朗(松下=デカ長)、小松和重(野村=刑事)、長谷川朝
  晴(江川=同)。
 
 小生の好みとしては「死ねない女」が一番面白かった。


 某月某日

 DVDで邦画の『怪談』(監督:小林正樹、文芸プロダクションにんじんくらぶ、1964年)を観た。以前よ
り観たかった映画のひとつであるが、はっきり言って期待外れだった。構想10年、製作費3億5千万円もか
けた映画らしいが、3時間を超える長尺のフィルムの中で、これはと思われるシーンや台詞は一つもなかっ
た。当時の映像技術からすれば出色の出来なのかもしれないが、CG技術の発達した現代では通用しないと
思った。たしかに、衣裳の一つ一つにまで気を配った点は買えるが、それは小林監督のいわば「道楽」であ
って、この映画の興行不振が主な原因で、にんじんくらぶは事実上倒産の憂き目に遭っている由(ウィキペ
ディアより)。黒澤明監督にも一脈通じる節があるが、とかく巨匠と言われる人は、映画には芸術以外の側
面があることをしばしば忘れている。芸術的には優れていても、興行成績が不振ではお話にならないのであ
る。さて、裏の事情はともかくとしても、物語の内容にも問題がある。よくあるパターンで、映像は美しか
ったけれども、内容は平凡といった映画の典型例だと思う。物語に意外性はまったくないし、役者の演技も
紋切り型、やたらに長くて退屈なシーンすらあった。したがって、小生はあまり買えない。前作の『切腹』
(監督:小林正樹、松竹京都、1962年)が素晴らしかっただけに、この落差は大きい。
 物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  小泉八雲の“怪談”より和解(黒髪)、雪女、耳無抱一、茶碗の中の話、を『甘い汗』の水木洋
 子が脚色。『切腹』の小林正樹が監督した文芸もの。撮影もコンビの宮島義男。第38回キネマ旬報
 ベスト・テン第2位、第18回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。1965年1月6日よりロードショー。
 1965年2月27日より全国公開。カンヌ出品版として161分の短縮版が存在する。

   〔あらすじ〕

  〔黒髪〕昔京都で生活に苦しんでいた武士(三國連太郎)が、貧乏に疲れ、仕官の道を捨てきれず
 に、妻(新珠三千代)を捨てて、遠い任地へ向った。第二の妻(渡辺美佐子)は、家柄、財産に恵ま
 れていたが、我儘で冷酷な女であった。男は今更のように別れた妻を慕い、愛情の価値を知った。あ
 る晩秋の夜、荒溌するわが家に帰った男は、針仕事をする静かな妻の姿を見て、今までの自分を詫び、
 妻をいたわり、一夜を共にした。夜が白々と明け男が眼をさますと、傍に寝ていた妻は髪は乱れ、頬
 はくぼみ、無惨な形相の経かたびらに包まれた屍であった。
  〔雪女〕武蔵国の若い樵夫巳之吉(仲代達矢)は、茂作老人(浜村純)と森へ薪をとりに入り、吹
 雪に出会って、山小屋に閉じこめられた。その夜、若者は、老人が雪女(岸恵子)に白い息を吹きか
 けられて殺されたのを目撃したが、巳之吉は「誰にも今夜のことを話さないように。話したら必ず殺
 す」と言われ助けられた。三十近くなった巳之吉は、森の帰路出会った、美しい娘お雪(岸恵子=二
 役)を妻に迎え、子どもも出来て、仕合せな日々を過していた。正月も真近にひかえたある夜、子ど
 もの晴着に針を運ぶお雪の顔をみて、山小屋の雪女を思い出した巳之吉は、妻に思わずその話しを聞
 かせた。お雪は「それは私です」と言うと、うらみを残して吹雪の中に消えていった。
  〔耳無抱一の話〕西海の波に沈んだ平家一門の供養のために建てられた赤間ケ原に、抱一(中村賀
 津雄〔=嘉葎雄〕)という琵琶の名人がいた。夜になると、寺を抜け出し、朝ぐったりして帰って来
 る抱一を、不審に思った副住職の呑海(友竹正則)が、密かに後をつけると、抱一は平家一門の墓前
 で恍惚として『平家物語』を弾じていた。平家の怨霊にとりつかれた抱一は、高貴な人の邸で琵琶を
 弾じていると思っていたのだ。寺の住職(志村喬)は、抱一の生命を心配すると、抱一の身体中に経
 文を書き、怨霊が迎えに来ても声を出さないよう告げた。住職の留守に迎えに来た怨霊の武士(丹波
 哲郎)は、返事がないまま、抱一の耳を切って持ち帰った。住職が耳に経文を書くのを忘れたのだ。
 以後、抱一は耳無抱一と呼ばれ、その名声は遠く聞こえた。
  〔茶碗の中〕中川佐渡守の家臣関内(中村翫右衛門)は、年始廻りの途中茶店で、伏せてあった茶
 碗の中に、若い男(仲谷昇)〔式部平内〕の不気味な笑い顔を見た。それは、茶碗を何度とりかえて
 も、同じように現われた。豪胆な関内は、一気に飲みほして帰ったものの、不思議に思った。佐渡守
 の邸に帰った関内を、見知らぬ若い侍が訪ねて来た。その顔は、茶碗の底の不気味な顔であった。問
 答の末、関内は男を斬ったが、男は音もなく消えた。帰宅した関内は、三人の侍(佐藤慶/玉川伊佐
 男/天本英世)の来訪を受けた。今日の若い侍の家臣と称する三人は、来月十六日に主君が今日の恨
 みを晴らしに来ると告げると、関内の刀をかわして、影のように消えた。

 他に、以下の俳優が出演している。〔黒髪〕石山健二郎(第二の妻の父)、赤木蘭子(同じく母)、北原
文枝(乳母)、松本克平(世話人)、月宮於登女(その妻)、家田佳子(侍女)、田中謙三(従者)、中野
清(殿様)。〔雪女〕望月優子(巳之吉の母)、菅井きん(村の女)、千石規子(同)、野村アキ子(同)、
浜田寅彦(船頭)。〔耳無し芳一の話〕林与一(源義経)、近藤洋介(弁慶)、村松英子(建礼門院)、田
中邦衛(矢作=寺男)、花沢徳衛(松造=同)、北村和夫(平知盛)、中谷一郎(貴人)、夏川静枝(貮位
の尼)、龍岡晋(平教盛)、北城真記子(上ろう〔=草冠に臈〕)、桑山正一(漁師)、谷晃(同)、永井
玄哉(同)、鶴丸睦彦(平経盛)、小美野欣二(山鹿秀遠)、山本清(平宗盛)、中村敦雄(平教経)、関
口銀三(源氏の武士)、福原駿雄(同)、宮部昭夫(安芸の太郎)、内田透(河野通信)、神野光(源八広
綱)、阿部希郎(佐藤忠信)、八木俊郎(平有盛)、阿部百合子(大納言佐の局)、佐藤ユリ(安徳天皇)、
佐藤京一(悪七兵衛景清)、相川延夫(伊勢義盛)、児玉泰次(平行盛)、前田信明(平資盛)、柴田光彦
(平清宗)、梶春雄(武将)、義那道夫(安芸の次郎)、田部誠二(安芸の次郎の郎党)、中畑道子(貴族
の女)、成田光子(女官)、三倉紀子(同)、長山藍子(同)。〔茶碗の中〕滝沢修(作者/ナレーター)、
杉村春子(そのおかみさん)、中村鴈治郎(出版元)、宮口精二(関内の屋敷の老爺)、奈良岡朋子(鈴江=
関内の妹)、神山繁(関内の同僚)、田崎潤(関内の同僚)、織本順吉(同)、小林昭二(同)、青木義朗
(同)。なお、配役に関しては、<ウィキペディア>を参照した。
 弁慶を近藤洋介が演じているとは気付かなかったように、時代劇なので何人か同定できない俳優がいた。
大金を賭けて平凡な時代劇を作ったという点では、アニメ映画の『かぐや姫の物語』(監督:高畑勲、「か
ぐや姫の物語」製作委員会〔日本テレビ放送網=電通=博報堂DYメディアパートナーズ=ウォルト・ディズ
ニー・ジャパン=ディーライツ=東宝=KDDI〕、2013年)〔「日日是労働セレクト114」、参照〕と一緒
である。あまねく知られていることに寄りかかりすぎており、新機軸を打ち出せなかったからだろう。小生
の感覚では、既知の物語のままではほとんど食指が動かないのである。同じような時代劇のオムニバス映画
でも、『冷飯とおさんとちゃん』(監督:田坂具隆、東映京都、1965年)〔「日日是労働セレクト70」、
参照〕は面白かっただけに、余計にそう感じる。また、同じくオムニバス映画の『夢』(監督:黒澤明、黒
澤プロ、1990年)にも「雪女」が登場するが(第三話「雪あらし」)、現代を舞台にしており、伝統的な描
き方ではなかった点に工夫がある。さらに、楳図かずおに「雪女」を扱った作品があり(詳細は忘れたが、
やはり現代の話に改変していた)、かなり面白かった記憶がある。したがって、伝統的な話をそのまま映像
化しても大した収穫はないと思い知るべきであろう。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので、報告しよう。どちらも実績のある監督の作品なので期待したが、それなりの
満足を得る出来であった。
 1本目は、『新宿スワン』(監督:園子温、「新宿スワン」製作委員会〔講談社=トライストーン・エン
タテイメント=ジャパン・ミュージックエンターテインメント=ハピネット〕、2015年)である。おそらく、
『トーキョー・トライブ』(監督:園子温、TOKYO TRIBE FILM PARTNERS〔フロム・ファーストプロダクシ
ョン=日活〕、2014年)〔「日日是労働セレクト112」、参照〕以来の鑑賞となるはずだが、どこか園子
温らしさからどんどん遠ざかっていくような気がする。もっとも、当の園監督からすれば、知ったことでは
ないのかもしれないが……。映画は大ヒットしたらしいが、原作との違いを批判するネット記事(カゲヒナ
タのレビュー)もあり、原作を読んでいない小生としては、何ともコメントし辛い。映画自体の評価は「中
の上」くらいか。俳優のレヴェルでもっている観もあり、物語としては平凡としか言いようがない。感傷を
押し潰すような透明な叙情が消え、外側からかわいそうな人々を眺めているような冷たい撮り方である。や
はり、初期の頃の園子温とは違うと言わざるを得ない。しかし、メジャーになったのだから、仕方がないの
だろう。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  アジア最大の歓楽街、新宿歌舞伎町で奔走する水商売のスカウトマンたちの姿を描いた、和久井健
 の同名コミックを園子温監督が綾野剛を主演に迎えて映画化。スカウト会社の幹部に拾われ、スカウ
 トマンとしてのしあがっていく主人公・龍彦と、ライバル会社のスカウトマンや風俗嬢たちのドラマ
 が繰り広げられる。

   〔あらすじ〕

  東京新宿区歌舞伎町。約600メートル四方の中に4,000店以上の飲食店や風俗店が軒を連ねるこの地
 は、アジア最大の歓楽街である。あてもなく歌舞伎町をさすらっていた白鳥龍彦(綾野剛)は、スカ
 ウトの世界に足を踏み入れる。男女のさまざまな思惑が絡み合う裏社会で、力と力がぶつかり合う生
 き残りを賭けた争いが繰り広げられていく。

 他に、山田孝之(南秀吉=新宿でのし上がろうとしている野心家)、沢尻エリカ(アゲハ=龍彦を「まぼ
ろしの王子様」と看做す風俗嬢)、伊勢谷友介(真虎=龍彦の兄貴分。スカウト会社「バースト」の幹部)、
金子ノブアキ(葉山豊=スカウト会社「ハーレム」の幹部)、深水元基(関玄介=「バースト」の幹部)、
村上淳(時正=同)、久保田悠来(洋介=同じくスカウトマン。龍彦の先輩)、真野恵里菜(栄子=龍彦が
スカウトした九州出身の女の子)、丸高愛美(梨子=関の女)、安田顕(松方=「ハーレム」の社長)、山
田優(涼子=クラブのママ)、豊原功補(山城神=「バースト」の社長)、吉田鋼太郎(天野修善=「紋舞
会」の会長)、一ノ瀬ワタル(毒山〔ぶすやま〕=秀吉の手下)、長田成哉(アキオ)、関根勉(キャバク
ラの支配人)などが出演している。桜木健一も出演しているらしいが、見逃した。
 真虎が龍彦にスカウトの心得をいろいろ授けるが、人間観察のことを「オブザヴェーション(observa-
tion)」と呼んでいた。涼子が龍彦に渡した紙片は、「戦力外ホステスリスト」である。アゲハが秀吉に風
俗店を紹介された時点での彼女の借金は220万円(金融 150万、闇金70万)。アゲハが愛読していた絵本『ま
ぼろしの王子様』(サミュエル・コーン 作、岡本美里 訳)は、現実には存在しない。
 2本目は、『龍三と七人の子分たち』(監督:北野武、「龍三と七人の子分たち」製作委員会〔バンダイ
ビジュアル=ワーナー・ブラザーズ映画=東北新社=オフィス北野〕、2015年)である。久し振りの北野監
督の映画である。前作の『アウトレイジ ビヨンド』(監督:北野武、「アウトレイジ ビヨンド」製作委員
会〔バンダイビジュアル=テレビ東京=オムニバス・ジャパン=ワーナー・ブラザーズ映画=オフィス北野〕、
2012年)〔「日日是労働セレクト95」、参照〕と同様、ヤクザが主人公である。とはいえ、前作とは異な
り喜劇仕立てで、織り込まれるエピソードも奇想天外とまでは言わないが、北野監督らしい作品に仕上がっ
ている。そういう意味では、上記の『新宿スワン』よりも小生の期待に応えていると言えよう。キャスティ
ングも奇抜で、とくに「若頭のマサ」を演じた近藤正臣は抜群の演技であった。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様。

   〔解説〕

  元ヤクザと詐欺集団との戦いをコミカルに描く、北野武監督による人間ドラマ。オレオレ詐欺(現
 在では「振り込め詐欺」)にひっかかりかけたヤクザの元組長と仲間たちが詐欺で人々をだまそうと
 する若者たちに喝を入れる姿を、高齢化社会やオレオレ詐欺といった社会問題を盛り込みながらつづ
 る。元組長役の藤竜也ほか、近藤正臣など平均年齢72歳のベテラン陣が出演。

   〔あらすじ〕

  70歳の高橋龍三(藤竜也)は、元ヤクザの組長だが“鬼の龍三”と畏れ慕われた時代はもはや過去
 のもの。現在は家族にも相手にされず、社会にも居場所がなく、大企業で働く息子の龍平(勝村政信)
 の家に肩身の狭い思いで身を寄せながら「義理も人情もありゃしねぇ」と世知辛い世の中を嘆いてい
 る。そんなある日、オレオレ詐欺に引っかかりかけたことをきっかけに、元暴走族の京浜連合と因縁
 めいた関係になった龍三は「若いヤツらに勝手な真似はさせられねぇ」と、昔の仲間に召集をかける。
 集まったのは、若頭のマサ(近藤正臣)、はばかりのモキチ(中尾彬)、早撃ちのマック(品川徹)、
 ステッキのイチゾウ(樋浦勉)、五寸釘のヒデ(伊藤幸純)、カミソリのタカ(吉澤健)、神風のヤ
 ス(小野寺昭)の7人。どうせ先は長くないのだからと盛り上がった龍三たちは勢いで“一龍会”を
 結成、京浜連合をことごとく邪魔しまくるのだった。やがて京浜連合のチンピラたちは、調子に乗り
 始めたジジイたちを疎ましく思うようになり、一龍会対京浜連合の対立は龍三や子分の家族を巻き込
 み一大騒動へと発展していく……。

 他に、安田顕(西=京浜連合のボス)、矢島健一(北条=京浜連合の一員)、下條アトム(徳永=同)、
萬田久子(キャバクラのママ)、ビートたけし(村上=マル暴の刑事)、山崎樹範(田村=京浜連合の一員)、
川野直輝(松嶋=同)、川口力哉(佐々木=同)、石塚康介(石垣=同)、込江海翔(康介=龍三の孫)、
清水富美加(百合子=モキチの孫娘)、辰巳琢郎(榊=先代の息子)、徳井優(龍平の上司)などが出演し
ている。似ている作品を挙げるとすれば、やはり『死に花』(監督:犬童一心、東映=アミューズ=テレビ
朝日=東映ビデオ=IMJエンタテインメント=毎日新聞社、2004年)〔「日日是労働セレクト21」、参照〕
であろう。暴対法と不況から、ヤクザも暮らしにくくなったと言われてから久しい。引退した後、何をして
食べているのだろう。ここに眼をつけたのがこの映画だが、たけしらしいブラック・ユーモアに満ちていた。


 某月某日

 DVDで邦画の『初夜と蓮根』(監督:山口正紘、朝日放送=吉本興業、2013年)を観た。珍しく、原作は
土田英生の戯曲である。舞台劇として書かれているので、その面影が作品全体から見て取れる。この物語を
知ったのは実は初めてではなく、2012年晩秋の「演劇センター'90」の公演<NO.84>に当たる『初夜と蓮根』
(演出:帆足寿夫、於 新薫的座〔高知市洞ケ島町薫的神社〕)においてである。物語のほとんどを覚えて
いたので、少し懐かしかった。よくできた「家庭劇」で、映画作品としても過不足がないと思った。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  舞台劇として書かれた劇作家・土田英生の同名作を風間杜夫らの出演で映画化したホームドラマ。
 一見、幸せそうに見える一家で巻き起こる騒動をコミカルに描き出す。家族の関係に波紋を呼び起こ
 す発言をしてしまう長女役を市川由衣が熱演する。ほっしゃん。、小籔千豊、トミーズ雅ら人気お笑
 い芸人も多数出演。

   〔あらすじ〕

  リフォームしたばかりの家に、誰もがうらやむ結婚を2ヶ月後に控えた長女の優美(市川由衣)の
 いる松永家。しかし、この一家にはある重大な秘密があった。父の隆行(風間杜夫)、母の美幸(麻
 生祐未)、弟の実(野澤剣人)とともに食卓を囲む家族団欒のひとときに、長女の一言が波紋を投げ
 かける。「父さんと母さんって、セックスしたことあるの?……筑前煮の蓮根が転がり落ち、食卓は
 混乱する。本当の幸せと絆を見つけるため、家族は目の前にある問題と戦い始める……。

 他に、星田英利〔ほっしゃん。〕(町村喜久男=隆行の部下)、浜本広晃(沼田康彦=優美の婚約者)、
ぼんちおさむ(笹倉武彦=刑事)、白川悟実(前田吟太郎=同)、小藪千豊(横山修)、トミーズ雅(飲み
屋の大将)、小川裕也(皆川賢治=ロリコン趣味の男)、守田唯菜(三田香織里=実のガールフレンド)、
HIROKA(萩原佳奈子)、西森洋一(町村の部下)、大林健二(同)、家門鈴乃(警察署にいた顔に傷のある
女)、喜多ゆかり(白石満知子)などが出演している。小品ながら、こころに残る作品だと思う。


 某月某日

 DVDで邦画の『包帯クラブ』(監督:堤幸彦、2007包帯クラブ製作委員会〔電通=TBS=東映=S・D・P=
ホリプロ=筑摩書房=オフィスクレッシェンド〕、2007年)を観た。TSUTAYAで何度も手に取り借りようか
どうか迷った作品である。何故かは判然としないが、題名に惹かれたのと、裏切られたら嫌だという気持が
錯綜したのだと思う。題名が似ている、傑作『台風クラブ』(監督:相米慎二、ディレクターズ・カンパニ
ー、1984年)のような作品を期待したのかもしれない。だから、面白くなかった時の落差が怖かったのだろ
うと思う。果たして、期待以上の作品であった。とくに、石原さとみがいい。これまで、彼女の出演してい
る作品は何度も観ているが、さして特別の印象は残っていない。しかし、この映画のワラ役は、きっといつ
までも忘れないような気がする。それくらい自然な感じであった。また、相手役の柳楽優弥もいい。もちろ
ん、彼のデビュー作である『誰も知らない』(監督:是枝裕和、『誰も知らない』製作委員会、2004年)が
抜群の演技だったことは当然であるが、この作品のディノ役も捨てがたい味があった。少し作り過ぎの感も
あるが、映画的な遊びと思えば気にならない。久し振りに「クサイ映画」を爽やかに観た思いである。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『永遠の仔』で知られる天童荒太の同名小説を映画化。柳楽優弥と石原さとみをW主演に迎え、悩
 める少年少女たちが傷ついた人々の心を癒そうと努力する姿を描いた青春ドラマ。

   〔あらすじ〕

  高校3年生のワラ(石原さとみ)は、地方都市の団地に母(原田美枝子)と弟(落合扶樹)の三人
 で暮らしていた。近所のスーパーマーケットでアルバイトしながら家計を助けるワラには、卒業後は
 地元で就職するという選択肢しかない。同じような家庭の事情を抱える全国の同世代のように。そん
 なワラは家事の最中に誤って手首を切ってしまい、病院で治療しを受ける。その後、病院の屋上に立
 った彼女は、フェンスから街を見下ろす。そこに現れたのは、入院患者のディノ(柳楽優弥)だった。
 ワラを自殺志願者と勘違いしたディノは、ワラの手首に巻かれた包帯を手に取って、フェンスに結び
 つける。風にたなびく包帯を見るワラは、心の傷までもが癒される気がした。ワラは、ディノをはじ
 め親友のタンシオ(貫地谷しおり)やギモ(田中圭)を巻き込んで、「包帯クラブ」を結成する。そ
 の活動とは、インターネットのサイトを通じて、口にはできない「心の傷」を募集。その思い出の場
 所に「包帯クラブ」のメンバーが包帯を巻いて手当てして、その写真を無償で投稿者に送るというも
 のだった。それからは、街のあちこちで白い包帯がたなびくようになっていった。サッカーの試合の
 ゴールで失敗した少年には、包帯を巻いたゴールポストの写真。美容院で髪型より顔を変えろと言わ
 れた女性には、美容院の前で包帯巻きにされて泣いているタンシオの写真。投稿がくるたびに、メン
 バーたちは知恵を絞る。しかし、他人の傷に触れることで、メンバーたちの心の奥の傷も痛むように
 なっていった。評判になっていくと同時に、「包帯クラブ」の活動は波紋を巻き起こし、批判にも晒
 されるようになる。その活動は偽善だと攻撃されて、サイトは閉じられ活動も休止状態となる。そし
 て、「包帯クラブ」を最も必要としていたのは、自分たちだったことを知る。それぞれのトラウマか
 ら開放されたワラたちは、未来に向かって歩んでいくことを心に誓う。

 他に、関めぐみ(テンポ=本橋阿花里)、佐藤千亜妃(リスキ=芦沢律希)、風吹ジュン(テンポの母)、
岡本麗(小林和代=デパチカ)、大島蓉子(井出埜〔ディノ〕の家のお手伝いさん)、国広富之(ワラの母  
の上司)、塩見三省(先生)、佐藤二朗(医師)、平沢賢人(マイウー=津久井)、小野賢章(ツッコミ=
関口)などが出演している。リスカ(=リストカット)、メネシアの花、「ごやっけさー」(「ありがとう」
の意味の鹿児島弁)などがワサビとして効いている。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たので報告しよう。どちらも厄介な存在者を扱っているが、性質はまったく異なる。
一方は凶悪犯罪に手を染めようかという人、他方は怪獣である。どちらにも遭遇したくはないが、遠くで眺
めている分には「怖いもの見たさ」がないわけではない。また、後者はフィクションそのものであるが、前
者は実話に基づいているので、怖さの性質も違う。いずれにせよ、映画的な要素を十分に備えた両者なので、
どちらも見応えはあった。
 1本目は、『ぼっちゃん』(監督:大森立嗣、アパッチ、2013年)である。2008年に起きた「秋葉原無差
別殺傷事件」をモチーフにした映画である。大森監督の映画は、『さよなら渓谷』(監督:大森立嗣、「さ
よなら渓谷」製作委員会〔スターダストピクチャーズ=キングレコード=ファントム・フィルム〕、2013年)
〔「日日是労働セレクト102」、参照〕、『まほろ駅前多田便利軒』(監督:大森立嗣、「まほろ駅前多
田便利軒」製作委員会〔フィルムメイカーズ=アスミック・エース エンタテインメント=ハピネット=日
活=TSUTAYAグループ=Yahoo! JAPAN=ヨアケ=リトルモア〕、2011年)〔「日日是労働セレクト113」、
参照〕を鑑賞して以来の3本目であるが、どれも「痛い」映画なので、こういう志向性のある監督なのだろ
うか。麿赤兒を父にもち、弟に大森南朋がいる彼のことを忘れていた。さもありなん、である。ともあれ、
緊張感の持続する映画であった。たぶん、要所要所で流れる音楽(大友良英)がかなり効いているためだと
思う。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  2008年に発生した“秋葉原無差別殺傷事件”の犯人をモデルに、平凡な派遣労働者の青年が社会的
 に追い詰められてゆく姿を描く。出演は『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』の水澤
 紳吾、『婚前特急』の宇野祥平、『吉祥寺の朝日奈くん』の田村愛。監督、脚本は『まほろ駅前多田
 便利軒』の大森立嗣。

   〔あらすじ〕

  派遣社員として長野県の工場にやってきた28歳の梶知之(水澤紳吾)。自分の容姿に自信が持てず、
 人付き合いが苦手な彼は、インターネットの掲示板に思いを書き込む日々を送っていた。そんな梶の
 新しい友人は、急に眠りに落ちるナルコレプシーの持病を持ち、世の中をうまく渡っていけない同僚
 の田中(宇野祥平)。多くの時間を一緒に過ごすようになった2人は、ある夜ドライブに出かけたと
 ころ、彼らの同僚、岡田(淵上泰史)から逃れてきたユリ(田村愛)と出会う。彼女に惹かれ、かく
 まおうとした2人だったが、逆に窮地に追い込まれることに……。

 他に小生の知らない俳優が多数出演しているが、芸名と役名が一致いないので、すべて割愛する。最近の
俳優陣は「大根役者」がほとんどいないと言っていいほど充実しているので、たぶん競争が激しいのであろ
う。無名でも上手い俳優はいくらでもいる時代になったのではないか。
 さて、およそ危ない表現だとは思うが、最近流行の「リア充/非リア充・リア終」や「勝ち組/負け組」
の二分法に似ているので、ここに記しておこう。それは、「基地内/基地外」という二分法である。

  基地内:イケメン/彼女いる/友だちいる/正社員
  基地外:ブサイク/彼女いない/友だちいない/非正規社員

 当該作品の主人公である梶は、この「基地外」にランクされる青年である。もちろん、彼はそのことを自
覚しているし、何とかならないかと足掻いていはいるが、結局はどうにもならない。しかし、少しコミュニ
ケーション不全のところがあるものの、感情豊かだし、さまざまな人間的能力において決定的に欠けている
わけでもない。おそらく必要以上の劣等感に苛まれているのではないかと思わせるが、自信満々に振舞うこ
ともある。自意識は過剰気味で、人との交流が少ないせいか、さまざまな事柄に疑心暗鬼になっている節が
ある。態度の横柄な岡田(実は、黒岩)の「犬」に成り下がる自分が嫌でたまらないが、いざとなると抵抗
できない。死体遺棄の片棒を担がされても黙々と彼に従っている。友だちになった田中も不器用なタイプだ
が、穏やかな分、周りとの間に協調性がある。その田中にユリが靡くと、裏切られた思う梶である。彼らに
精神の壊れている岡田(=黒岩)が絡むことによって、物語は行き着くところまで驀進する。「これはフィ
クションなのだ」と自分に言い聞かせながら観ていたが、『冷たい熱帯魚』(監督:園子温、日活、2010年)
〔「日日是労働セレクト77」、参照〕や『凶悪』(監督:白石和彌、「凶悪」製作委員会〔日活=ハピネ
ット〕、2013年)〔「日日是労働セレクト108」、参照〕に感じた「出口なし」の感覚に襲われる。大森
監督の腕の冴えだけが光っている。岡田(=黒岩)の謎めいた台詞、「人を愛すると怨恨で殺すよ。孤独だ
と無差別……」という呟きが痛い。おそらく、似たような境遇や性格の人は昔からいくらでもいたと思うが、
その状況が「犯罪予備軍」を生み、実際の凶悪事件に発展してしまうところに、現代の深い闇があるのでは
ないだろうか。彼我の比較、劣等感、出来合いの幸福観、コミュニケーション不全、嫉妬、孤独、屈辱、殺
意……「イケムス=イケテル息子」への憎悪が歪曲して、無差別殺人へという流れである。比較的恵まれて
いる境涯にある人間が、比較的恵まれていない境涯にある人間に対して、どんな態度で接したらよいのか、
きわめてデリケートな問いであろう。小生は若い頃、「マッチ売りの少女は幸福だったのか」という問いを
2年近くにわたって考えたことがあるが、結局「幸福だった」という答えにたどり着いた。幸福とは本人の
幸福感のことであって、出来合いの幸福観のことではない。「本人の幸福感は本人にしか作れないので、梶
も独自の幸福感の醸成に努めるべきであった」と言えば、梶は納得するだろうか。たぶん、しないだろう。
そこに、問題の難解さがあると言ってもよいだろう。
 なお、これは蛇足であるが、田中の「ナルコレプシー」という病気は、阿佐田哲也(=色川武大)が罹っ
た病気で覚えたが、若い頃の破天荒な生活が招いたのではないかと記憶している。たしか、「素うどんに唐
辛子を一瓶丸ごと入れてかき回して食べると、空腹を感じなくなる」といった話である。これが原因で、こ
の病気に罹ったというわけ。正確ではないが、何かの本で読んだ覚えがある。
 2本目は、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(監督:金子修介、大映=日本テレビ放送網=博報堂、1995年)
である。金子修介監督の作品は、つい最近「ゴジラ」映画を観ているが、その他にもけっこう観ており、以
下に挙げるように当該作品を含めて7本観ていることが分かった。ところが、「ガメラ」で名を揚げたとい
うことは最近まで知らず、あまり意識したことのない監督であった。作風に共通点を見出すことはできない
が、創意工夫に凝るタイプのようには見える。

  『宇能鴻一郎の 濡れて打つ』、監督:金子修介、にっかつ、1984年。
  『いたずらロリータ 後からバージン』、監督:金子修介、にっかつ、1986年。
  『ガメラ 大怪獣空中決戦』、監督:金子修介、大映=日本テレビ放送網=博報堂、1995年。
  『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』、監督:金子修介、東宝映画、2001年。
  『DEATH NOTE (前編)』、監督:金子修介、「DEATH NOTE」フィルム・パートナーズ〔日本テレビ
   放送網=集英社=ホリプロ=読売テレビ=VAP=コナミDE=松竹=日活〕、2006年。
  『DEATH NOTE the Last name(後編)』、監督:金子修介、「DEATH NOTE」フィルム・パートナーズ
   〔日本テレビ放送網=集英社=ホリプロ=読売テレビ=VAP=コナミ=松竹=日活=札幌テレビ=
   ミヤギテレビ=中京テレビ=広島テレビ=福岡放送〕、2006年。
  『神の左手 悪魔の右手』、監督:金子修介、「神の左手 悪魔の右手」製作委員会〔東芝エンタテイン
   メント=松竹=衛星劇場=パノラマ・コミュニケーションズ=アルチンボンド〕、2006年。

 当該作品は、映画芸術誌邦画ベスト10で第1位を獲得しているらしいが(ウィキペディアより)、たしか
に骨太の怪獣映画に仕上がっていると思う。人間ドラマにもうひと工夫があれば、もっと評価が高まったか
もしれない。
 物語を確認しよう。以下、上と同様。

   〔解説〕

  宇宙の守護神ガメラと超遺伝子獣ギャオスの壮絶なバトルを描いた特撮怪獣映画。本作品は、65年
 に『大怪獣ガメラ』として登場したシリーズの9作目にあたり、80年の『宇宙怪獣ガメラ』に続く14
 年ぶりの作品である。最新のSFXを駆使して、迫力の映像を展開。監督は『毎日が夏休み』の金子
 修介。脚本は『ネクロノミカン』の伊藤和典。特技監督に『未来の想い出 Last Christmas』の樋口
 真嗣がそれぞれあたっている。主演は『四姉妹物語』の伊原剛志、『ゴジラVSメカゴジラ』の中山
 忍、スティーヴン・セガールの娘・藤谷文子ら。封切り代表館である日比谷映画では、上映期間中、
 『ガメラシアター』と館名を変更し、ポスター展などを場内で開催して話題を呼んだ。95年度キネマ
 旬報ベストテン第6位。同・読者選出ベストテン第2位。

   〔あらすじ〕

  プルトニウム輸送船「海竜丸」の警護にあたっていた海上保安庁の巡視船「のじま」に、「海竜丸」
 が座礁したとの連絡が入った。海底ははるか下方だったが、確かに環礁に乗り上げているのが確認さ
 れる。だが、その環礁はまもなくまるで生き物のように「海竜丸」から離れて行った。その頃、福岡
 市の動物園に勤める鳥類学者の長峰真弓(中山忍)は、五島列島の姫神島で消息を絶った恩師の平田
 を心配して県警の大迫力刑事(螢雪次朗)とともに島に飛んでいた。彼女がそこで見たものは、巨大
 な鳥によって破壊しつくされた島の変わり果てた姿だった。その後の調査により、人を食糧としてい
 る巨大な謎の鳥型生物が生息していることが判明。しかもそれは3匹だった。事態を重く見た内閣は
 鳥を捕獲することを決定した。一方、「海竜丸」の座礁事件の謎を追う海上保安庁の米森良成(伊原
 剛志)は、海上保険会社の草薙直哉(小野寺昭)を頼って調査船「けんざき」に乗り込む。太平洋上
 で環礁を発見し上陸した米森たちは、そこで不思議な金属片と、碑文の書かれた大きな石碑を見つけ
 る。ところがその瞬間、環礁は再び生き物のように動き出し、上に乗っていた調査隊は海中に投げ出
 されてしまった。その時、米森は海中で環礁の正体を見る。それは、巨大な亀の形をした生物だった。
 巨大鳥捕獲のためにかりだされた真弓は、福岡ドームに罠を仕掛け、鳥の飛来を待った。果たして、
 3匹の鳥はドーム内の餌に食らいつき、まんまと作戦に嵌まったように見えたのだったが、狙撃隊の
 発砲が一瞬早かったために鳥が暴れ出し、ドーム内はパニックに陥る。そこへ、あの環礁と思われて
 いた生物が正体を現して飛来して来た。亀の恰好をしたその巨大生物は、鳥の1匹を殺すと、逃げて
 行く他の2匹を追って、ジェット噴射を噴き出して空の彼方へ消えた。1万2,000年前、一夜にして海
 底に沈んだ伝説の大陸アトランティスで使われていた未知の金属オリハルコンと推定された石碑の文
 字を解読した米森は、「最後の希望ガメラ、時の揺籠に託す。災いの影、ギャオスとともに目覚めん」
 という文章に今回の事件を重ね合わせて見ていた。古代文明人は、遺伝子の操作によって自らが誕生
 させたギャオスによって滅亡の危機に遭い、さらにその手から逃れるためにガメラを誕生させたのだ。
 そして今、永い眠りから目覚めたギャオスと共にガメラもまた目覚めたのである。木曾山中に現れた
 ガメラは、そこで1匹のギャオスを退治。残りの1匹を追って、さらに富士の裾野へ飛行を続けるの
 だった。ところが、ガメラがギャオスを倒すために蘇ったということを信じられない政府は、ガメラ
 にもミサイルを発射。ガメラは、深い傷を負ってしまう。ところが、ガメラが傷つくと、草薙の娘で
 ある浅黄(藤谷文子)もまたガメラと同じところから血を流して倒れてしまうのであった。どうやら、
 米森がガメラの背中から拾って浅黄にあげた金属片がマガタマとなって、ガメラと浅黄の心が通じて
 しまったようだった。ガメラは海底深くに身をひそめ、回復を待っていた。ガメラの攻撃から逃れた
 最後のギャオスは、東京に出現。次々に人々を襲っては、より凶悪に、より巨大に成長していく。ギ
 ャオス退治に躍起になる自衛隊。東京タワーなどが破壊され、東京はその機能を失っていく。だがそ
 の時、昏睡状態になっていた浅黄が目覚め、ガメラの復活を告げるのだった。その言葉通りガメラは
 復活し、ギャオスと大バトルを展開する。その末に、ガメラの放ったプラズマ火球がギャオスをとら
 え、断末魔の叫びとともにギャオスは粉々に砕け散った。役目を終えたガメラは、米森や真弓、そし
 て浅黄らが見守る中、海の彼方へ消えて行くのだった。

 他に、本田博太郎(斎藤環境庁審議官)、長谷川初範(佐竹一等陸佐)、本郷功次郎(巡視船「のじま」
船長)、久保明(輸送船「海竜丸」船長)、松尾貴史(タクシー運転手)、袴田吉彦(道弥=真弓の後輩)、
夏木ゆたか(フェイスドアレイダー前のレポーター)、石井トミコ(スーパーのおかみさん)、渡辺哲(富
士裾野の中隊長)、渡辺裕之(天王洲戦闘指揮所の中隊長)、風吹ジュン(買い物中の主婦)、真山勇一
(プラスワンのニュースキャスター)、木村優子(同)、若林健治(臨時ニュースのキャスター)、永井美
奈子(アルタのニュースキャスター)、大神いずみ(プラスワンの現場レポーター)、中村明美(ドーム移
動指揮所の通信員)、古賀之士(ドームの現場レポーター)、田辺稔(三島駅待合室のニュースキャスター)、
真鍋尚晃(ガメラ)、鈴木潤(同)、ギャオス(亀山ゆうみ)などが出演している。
 「海神丸」が積んでいる荷は、ずばり「プルトニウム」1トンである。「長崎型原爆100個以上、百万分
の一グラム吸い込めば癌を引き込す」という代物である。米森は広大な範囲に及ぶかもしれない放射能汚染
を気にして自分の任務の重大さを自覚しているが、「なぜ、プルトニウムを運搬するのか」という問いには
達し得ず、任務には忠実でも彼個人の放射能に関するコメントはない。ここに、役人の限界があると思った。


 某月某日

 DVDで邦画の『祇園の姉妹』(監督:野村浩将、大映、1956年)を観た。かねてより名作の誉れ高い『祇
園の姉妹(きょうだい)』、監督:溝口健二、第一映画、1936年)のリメイク作品であるが、どうしてどう
して立派に一本立ちしている。むしろ、戦後の作品だけに、陰影はこちらの方が深いくらいである。木暮実
千代と小野道子(長谷川季子=長谷川一夫の娘)の組合せも決まって、花柳界の雰囲気を満喫できる。前作
でも同じ工藤三五郎を演じた新藤英太郎の他、田中春男、山茶花究、浪花千栄子などの芸達者が脇を固めて
いる。また、勝新太郎と中村玉緒が出演しているが、五年後くらいに二人は結婚している。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  昭和十一年、溝口健二監督、山田五十鈴、梅村蓉子主演で映画化され、同年キネマ旬報邦画ベスト・
 テン第一位を得た祇園芸者の生活図絵の再映画化である。前作同様溝口健二と依田義賢の協同原作、
 依田義賢の脚本を、『母ふたり』の野村浩将が監督した。撮影は『彼女の特ダネ』以来、大映の技術
 監督をやっていた相坂操一。主な出演者は『鬼の居ぬ間』の木暮実千代、長谷川季子改め小野道子、
 『残菊物語(1956年)』の中村玉緒、『人情馬鹿』の進藤英太郎、『柳生連也斎 秘伝月影抄』の勝
 新太郎など。

   〔あらすじ〕

  京都の春。祇園の芸妓や舞妓たちが総出演する都踊りが今年も、歌舞練場で催されていた。なじみ
 の客(上田寛/岩田正)から「三つ揃え」と呼ばれる美津次(木暮実千代)、美津ひろ(小野道子)、
 美津丸(中村玉緒)の三人は姉妹芸者で通っていたが、実は舞妓の美津丸は美津次の子だった。美津
 次と美津ひろは二人で一軒の家を持ち、自前芸者として働いていた。その夜、美津次の前の旦那で坊
 んち育ちの古沢謙三(田中春男)が無一文になって居候に転がり込んできたことから、美津次と美津
 ひろは争いを生じた。若い世代の女性として芸者という存在に疑問を持つ美津ひろは、美津丸の父古
 沢への美津次の愛情を旧いときめつけ、早く新しい旦那をつくれと迫るのだった。美津ひろは呉服屋
 の若い番頭である木村保(勝新太郎)が自分に寄せる好意を利用して姉の衣裳を作らせ、さらに古沢
 の分家の岡西喜久一(山茶花究)が姉に気があるのを察して古沢への手切金を出させ、姉の留守中に
 古沢を追い出した。木村が美津次への衣裳を内密に作ったことがばれて、主人の工藤三五郎(新藤英
 太郎)は美津ひろに文句を言いに来たが、あっさり彼女にまるめ込まれ、却って旦那になろうと申し
 出た。ある夜、南禅寺の料亭で二人の祝言の席が設けられた。だが突然現われた木村の姿に、妻文子
 (萬代峰子)に知られるのを恐れた工藤はあわてて帰ってしまった。古沢追い出しの真相を知った美
 津次は、料亭から戻った美津ひろに怒りをぶちまけ、美津丸を連れて古沢の許に移った。木村は美津
 ひろを誘い出し愛情を打ち明けたが、美津ひろは沈黙を守った。そうこうするうちに、彼女が誤って
 崖から落ちたのに、木村はそれを見捨てたのである。一方、美津次は東京に職の見つかった古沢に去
 られ茫然としたが、脚を骨折した美津ひろを病院に見舞い、二人の間には血肉の情がよみがえった。
 謝罪しに来た木村に美津ひろは結婚を誓い、美津次と美津丸は涙をかくして客の前で踊っていた。

 他に、浪花千栄子(お君=美津次たちのお目付け役)、大美輝子(南禅寺の料亭「八千代」の女将)、仲
上小夜子(同じく女中)、石原須磨男(定吉=古沢の店の元番頭)、小松みどり(おかね=美津次たちの家
の女中)、越川一(魚屋)、旗孝思(うどん屋)、武田竜(洗濯屋)、小柳圭子(芸者)、細野ふさ(お茶
屋の少女)などが出演している。
 美津次たちが夜食に頼んだうどんは、美津次が素うどん、美津ひろが天ぷらうどん、美津丸が鍋焼きうど
んだが、実際には、鍋焼きうどんを古沢が、天ぷらうどんを美津丸が啜っている。美津ひろが要らないと言
ったのと、美津丸が父親に鍋焼きうどんを譲ったからである。この辺りにも、瞬時に人間関係を伝える意匠
が凝らされていると思った。また、「抑留者」や「戦犯」などの言葉が飛び交い、当時の雰囲気がよく現わ
れていた。さらに、迷信めいたエピソードも豊富で、古沢の次のような台詞などは時代を感じさせた。

   「高い閾や。鉋かけてもおっつかんことはよう知ってます。そこをよじ登ってでも入ろうとする
    この身になってみてくれぃ」。

 ずうずうしいのは分っていても、美津次の情けを引き出すぼんぼんの常套句であろう。美津丸が初めて父
親(=古沢のこと)と対面した際にも、「今朝から耳が痒かったので、なんぞええことがあると思っていた
ら、これや」という台詞も、実に活き活きとしていた。さすが、依田義賢の脚本である。
 なお、古沢を追い出す際に美津ひろが手切れ金として渡した金が10万円、当時としてはちょっとした金額
だったのだろう。ちなみに、この金は岡西から出ている。自分の姉を斡旋した際の金(実際には、11万円)
であるが、ここから自前芸者の経済的困難が見て取れる。
 これは蛇足であるが、「けんびきを引く」という表現が出てくるが、ここで言われる「けんびき(肩引/
腱引き)」とは、「首筋から肩にかけての筋肉」のことを指している由(ネット情報「整体師のひとりごと」
より)。古沢は肩こりの酷い美津次の肩を揉んでやるが、「引くのは毒や。やんわりと揉むんや」と述べて
いる。


 某月某日

 DVDで邦画の『ゴジラ VS スペースゴジラ』(監督:山下賢章、東宝映画、1994年)を観た。「ゴジラ」
シリーズはこれで20本目の鑑賞である。残り8本であるが、小生が普段レンタルしているTSUTAYAには、残
りのDVDは置いていなかったような気がする。気長に鑑賞の機会を待つしかないだろう。本作では、「スペ
ースゴジラ」という新顔や、「モゲラ(MOGERA=Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type)」
という対ゴジラ用ロボットが登場する。「合体ロボットもの」の影響を受けていると思うが、この辺りが限
界か。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になろう。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  G(ゴジラ)細胞によって誕生したスペースゴジラとゴジラ、そして対ゴジラ戦闘ロボット・モゲ
 ラの激しいバトルを中心に展開するシリーズ21作。監督は、『19ナインティーン』の山下賢章。製作
 は、シリーズを手掛ける田中友幸。脚本は、『べっぴんの町』の柏原寛司。特技監督は、前作に引き
 続き川北紘一がそれぞれ担当している。東宝の95年お正月映画。

   〔あらすじ〕

  G対策センターではゴジラに対して2つのプロジェクトが進行していた。1つは、ゴジラをテレパ
 シーで操ろうという「Tプロジェクト」。Gフォースの新城功二(橋爪淳)と佐藤清志(米山善吉)、
 そして、超能力者の三枝未希(小高恵美)、生物工学専攻の権藤千夏(吉川十和子)、進化生物学専
 攻の大久保晋(斉藤洋介)がTプロジェクト遂行のため、南太平洋に浮かぶバース島へ派遣された。
 そこには、Gフォースの一員でゴジラを倒すことに命を燃やす結城晃(柄本明)と、リトル・ゴジラ
 が住んでいた。その結城が仕掛けた罠に、いたずら好きのリトル・ゴジラがかかってしまい、悲鳴を
 聞きつけたゴジラが姿を現す。そのチャンスに、Tプロジェクトのメンバーは、ゴジラの後頭部に小
 型増幅装置を命中させ、未希のテレパシーでゴジラを操ることに成功。しかし、大久保の無謀な操作
 で未希は意識を失い、ゴジラも海中へ消えてしまう。一方、もう1つのプロジェクトである対ゴジラ
 戦闘ロボット・モゲラ(Mobile Operation Godzilla Expert Aero-type)建造に成功したG対策セン
 ターは、地球に向かって飛来しつつある謎の物体を調査、破壊するため、モゲラを出動させる。しか
 し、その物体はモゲラをものともせず、そのまま飛行を続け、遂に地球へと降り立った。モゲラが持
 ち帰ったその物体の細胞から、それがG細胞によって生まれた怪獣、即ちスペースゴジラであること
 が判明。Gフォースは、スペースゴジラを倒すべく、再びモゲラを出動。その操縦に、結城と新城、
 佐藤の3人をつかせた。破壊を繰り返すスペースゴジラを追って、福岡市に飛ぶモゲラ。だがゴジラ
 もまた、コスモス(今村恵子/大沢さやか)にアドヴァイスを受けた未希のテレキネシスに反応し、
 スペースゴジラを追って同地へ向かっていた。三つ巴の決戦が繰り広げられる中、モゲラを操縦して
 いた結城に、ゴジラに対する友情が芽生えた。モゲラをスペースゴジラに体当たりさせる結城。そこ
 へゴジラの止どめの火炎が放射され、スペースゴジラは倒れた。廃墟と化した福岡市を後にゴジラは
 海に帰り、結城たちはいつまでもその後ろ姿を見送るのだった。

 他に、中尾彬(麻生孝昭=Gフォース司令官)、佐原健二(瀬川隆之=G対策センター長官)、上田耕一
(兵藤巌=Gフォース副司令官)、松村邦洋(サラリーマン)、小堺一機(その上司)、堀崎太郎(若月正
人=管制官)、宮坂ひろし(鈴木勇三=モゲラのパイロット)、草薙仁(上原誠=同)などが出演している。
リトル・ゴジラが攫われるシーンがあるが、その後の展開がよく分らない。全体に安直な作りで、深みがな
かった。柄本明の出演がなかったなら、もっとひどい作品になったかもしれない。なお、配役については、
一部<ウィキペディア>も参考した。感謝したい。


 某月某日

 DVD(邦画)と自主上映会(洋画)とで、それぞれ1本ずつの映画を観たのでご報告。邦画の方は『たと
えば檸檬』(監督:片嶋一貴、DOGSUGAR、2012年)である。題名に惹かれて観ようとしたのであるが、けっ
こう掘り出し物であった。「檸檬」と言えば梶井基次郎の短篇小説を連想するが、もちろんまったくそれと
は異なる世界を描いている。ところが、どこか通底する要素もなくはなかったのである。もしかすると、梶
井の短篇に多少の影響を受けているかもしれない。ネタバレになるのであまり詳しいことは書けないが、時
間軸のズレが面白く、最初は分りにくいが、最後の方で話がつながって来るにしたがって面白さが増してく
る作品である。主演格の韓英恵と有森也実はそれぞれ頑張っていると思う。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になろう。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  歪んだ愛と憎しみの間で依存し合う二組の母娘の姿を描く『アジアの純真』の片嶋一貴監督作。出
 演は『アジアの純真』の韓英恵、『育子からの手紙』の有森也実、『その夜の侍』の綾野剛、『のど
 自慢』の室井滋、『十三人の刺客』の伊原剛志、古田新太、『悪夢探偵2』の内田春菊、『シグナル 
 月曜日のルカ』の白石隼也。

   〔あらすじ〕

  20歳のカオリ(韓英恵)は、彫金の学校に通いアクセサリーデザイナーとしての夢を持ちながら
 も、母親の家庭内暴力や過干渉に悩み、生きることが苦しかった。そんなある日、愛に飢え野心を
 持つ石山(綾野剛)という男に出会ったことから、カオリは母親の支配から抜け出そうと決意する……。
 40歳の香織(有森也実)は大手企業の役員秘書。しかし、彼女は万引き常習者で、不倫や行きずり
 の情事を繰り返すSEX依存症、さらに家に帰れば引きこもりの娘の世話をする孤独な母親でもあった。
 そんな時、香織は刑事の河内(伊原剛志)と出会い、万引き常習者は“境界性パーソナリティ障害”
 の疑いがあることを知る……。カオリと香織は、母娘間の愛情に苦しみながらも、救いを求め、やが
 て二人の運命が交錯し始める……。

 他に、室井滋(カオリの母親)、佐藤寛子(ミナ=石山の恋人)、白石隼也(若い巡査)、信太昌之(神
津=総合商社専務)、町田啓太(HIRO=ホスト)、渡邉紘平(吉野浩=チーマーのヘッド)、松本若菜(ヨ
ーコ=カオリの友人)、内田春菊(精神科の医者)、古田新太(介護事業の前会長)、吉田ウーロン太(パ
ブの店長)、室種光(柿本=セラピー患者)、澤純子(橋田=同)、日野陽仁(山木=同)、元気屋エイジ
(携帯オタク=同)、阿井莉沙(腺病質な女=同)、佐々木卓馬(生活安全課の警官)、吉村美穂(婦警)、
岡村洋一(総合商社役員)、谷隆次(モブスのメンバー)、鈴木里菜(幼少時のカオリ)、佐藤陽子(ニュ
ースキャスター)、竹麓輔(質屋の店員)、滝沢充子(中年のミナ)などが出演している。
 よくできたところとよく分らないところが交錯しており、手放しで誉めるわけにはいかないが、もっと洗
練させたならば、きっと傑作に近づけたと思う。機会があれば、出世作である『アジアの純真』(2011年)
を観てみたい。
 洋画の方は、「小夏の映画会」(代表:田辺浩三、於 龍馬の生れたまち記念館)で観た『質屋(The Pawn-
broker)』(監督:シドニー・ルメット〔Sidney Lumet〕、米国、1964年)である。期待ほどではなかった
が、主演のロッド・スタイガー(Rod Steiger)の演技は観る価値のあるものだった。今となっては、ナチ
スの強制収容所の非道ぶりは大衆の知られるところであるが、この当時はそうではなかったらしく、かなり
センセーショナルな反響を巻き起こしたらしい。『シンドラーのリスト(Schindler's List)』(監督:ス
ティーヴン・スピルバーグ〔Steven Allan Spielberg〕、米国、1993年)を観ていなければ、あるいはもっ
と違った印象をもったかもしれないが、ホロコーストを扱った先駆的作品といった位置づけに留まった。
 物語を確認しておく。以下、上と同様。

   〔解説〕

  若くして死んだアメリカの小説家エドワード・ルイス・ウォーラントの、2作目の小説を、デイヴ
 ィッド・フリードキンとモートン・ファインが脚色、『グループ』のシドニー・ルメットが監督にあ
 たった。撮影は『グループ』のボリス・コーフマン、音楽は『冷血』のクインシー・ジョーンズが担
 当した。出演は『夜の大捜査線』のロッド・スタイガー、『ラインの監視』のジェラルディン・フィ
 ッツジェラルド、『野良犬の罠』のブロック・ピータース、プエルトルコ生まれの舞台俳優ハイメイ・
 サンチェスほかニューヨークの舞台人たち。製作はロジャー・ルイスとフィリップ・レインジャー。

   〔あらすじ〕

  ソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)はニューヨークの貧民街で質屋を営んでいる。かつてポ
 ーランドで大学教授だったが、一家は大戦中ナチの強制収容所に入れられ、言語に絶する苦しみの中
 で妻子は殺された。今は、妻の妹や、その家族と一緒に何不自由なく暮らしていたが、心はいつも孤
 独だった。死んだような彼の店に毎朝、生気を吹きこむのは助手のジーザス(ハイメイ・サンチェス)
 だ。プエルト・リコ生まれの元気な若者で、ゆくゆくは質屋経営をしたいと考えている。ところでソ
 ルのスポンサーは自称紳士のロドリゲス(ブロック・ピーターズ)。実は彼はスラム街のボスで質屋
 の店は彼の隠れみのだった。ある日ソルの店に毛色の変わった訪問者があった。マリリン(ジェラル
 ディン・フィッツジェラルド)という女性の社会福祉事業家だ。ソルにも仕事に一役買ってもらおう
 と説得に来たのだが彼は拒絶した。だが彼女には心ひかれた。しかし、彼女とかかわり合いになるこ
 とは世の煩わしさに巻き込まれることだ。彼は恐れた。一方、助手のジーザスは街で知り合った3人
 のチンピラにそそのかされ、自分の勤める店に強盗に入るはめになった。というのは、彼自身も金が
 欲しかったし、尊敬するソルの「世の中、金がすべてだ」という言葉に深い驚きと絶望を感じたから
 だ。その日は、ロドリゲスから金の届く日だ。一方ジーザスの恋人メイベル(セルマ・オリヴァー)
 は、この計画を知り、ジーザスの身を救うため1人でソルを訪れた。愛する男のために肉体で金を作
 ろうとしたのだ。だが目の前に投げ出された彼女の肉体から、ソルが感じとったのは、かつて妻が、
 彼の目の前でナチの犯されたいまわしい記憶だった。そして、その夜強盗が行われた。だが、その夜
 に限ってソルは金庫を開けなかった。しびれをきらした3人組はジーザスの合図を待たずに店に押し
 入り、ソルを脅迫。彼が拒むと、3人組はピストルを発射した。とっさにジーザスはソルをかばい、
 彼の身代わりになって死んだ。この事件は、ソルのかたくなな心を溶かした。彼は収容所以来、初め
 て人間を信頼する気持になった。

 なお、「映画格付」(映画ランキング専門サイト)によれば、ナチスの大量虐殺を活写した映画として、
以下の9作品を選んでいる。引用に際して、サイト運営者に感謝したい。

  『シンドラーのリスト』(監督:スティーヴン・スピルバーグ、米国、1993年)〔評価:S 4.33〕。
  『戦場のピアニスト』(監督:ロマン・ポランスキー、仏=独=波<ポーランド>=英、2002年)
   〔評価:A 4.15〕。
  『夜と霧』(監督:アラン・レネ、仏、1955年)〔評価:A 3.85〕。
  『アンネの日記(アニメ版)』(監督:永丘昭典、日本、1995年)〔評価:A 4.19〕。
  『ヒトラーの贋札』(監督:ステファン・ルツォヴィツキー、独=墺<オーストリア>、2007年)
   〔評価:A 3.83〕。
  『灰の記憶』(監督:ティム・ブレイク・ネルソン、米国、2001年)〔評価:C 3.41〕。
  『縞模様のパジャマの少年』(監督:マーク・ハーマン、英=米、2008年)〔評価:A 4.03〕。
  『ディファイアンス』(監督:エドワード・ズウィック、米国、2008年)〔評価:B 3.72〕。
  『サラの鍵』(監督:ジル・パケ=ブランネール、仏国、2010年)〔評価:A 4.18〕。

 ここでも、やはり『シンドラーのリスト』が第一位だった。もっとも、それ以外の映画は観ていない。な
お、『戦場のピアニスト』は、以前より観たいと思っている映画のひとつである。
 ちなみに、おまけとして、TVドキュメンタリー『核戦争後の地球 -地球凍結-』(NHK特集、1984年)が
上映されたが、第一部の「地球炎上」(9月23日、鑑賞)よりもインパクトはだいぶ弱かった。この第2部
は、核戦争に生き残った人々の運命を予見したものだが、ほとんど生存者はいないし、その人々もやがては
死に絶えるので、ニヒリズムそのものである。こうした「核の冬」は、超大国が保有する核兵器の0.5%で
も起きる由。地球に核兵器が存在する以上、まったくありえない話ではない。不安や恐怖よりも、深い悲し
みを感じた。


 某月某日

 DVDで邦画の『かぞくのひけつ』(監督:小林聖太郎、シマフィルム、2006年)を観た。こてこての大阪
テイストの喜劇で、それなりのほっこり感を味わえる作品である。大好きな谷村美月が出ているが、やはり
いい感じだった。9年前の作品なので、当然のごとくだいぶ若い。その他、秋野暢子を始め、芸達者がたく
さん出演している。浮気の話だが、さして深刻なことにはならない。これも大阪ならではか。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  関西出身のキャスト&大阪・十三ロケによる人情ドラマ。彼女との破局の危機に瀕した純朴な高校
 生と、離婚の危機を迎えた彼の両親の苦悩をにぎやかにつづる。

   〔あらすじ〕

  大阪、十三の商店街。地元の高校に通う不動産屋の息子である島村賢治(久野雅弘)。彼は付き合
 って半年になる彼女・桜井典子(谷村美月)と、キスどころか手をつなぐこともできない。というの
 も、童貞にも拘らず性病を罹ったと思い込んでいるため。それでも積極的に治療することも、事実を
 突き止めることもできずにウジウジと悩む優柔不断なヘタレだった。ある日、女癖の悪い父親の宏治
 (桂雀々)の近頃の行動に不審を抱いた母親の京子(秋野暢子)の依頼で尾行をすることになった賢
 治。父の後をつけて居酒屋に入ると、愛人の大澤ゆかり(ちすん)と密会する姿を目撃。ゆかりの後
 を追った賢治は、宏治のことを諦めるように説得する。しかし事情を知ったゆかりは、宏治を離婚さ
 せると息巻く。翌日、賢治が実家の不動産屋に戻るとそこにはゆかりの姿が。素知らぬ顔でアルバイ
 トに応募していたのである。宏治はその姿を見て逃げ出す始末。そんな状況にも拘らず、相変わらず
 いい加減な行動を繰り返す宏治。京子と出席した法事の席をこっそり抜け出してゆかりに会いに行く
 かと思えば、途中で偶然出会った二人組の女の子と意気投合。ゆかりそっちのけで二人組と居酒屋へ
 繰り出してしまう。翌日、何食わぬ顔で帰宅した宏治に怒り心頭の京子は、離婚届を片手に家を出て
 行ってしまう。その場に居合わせた賢治とゆかりは慌てて京子を探しに出かける。両親のそんな姿を
 見て「なんで男と女は一緒になろうとすんねやろ」と一人つぶやく賢治。一方、典子は煮え切らない
 賢治の態度に不安を募らせ、次第にスポーツ万能で学年一のモテ男である立花(井上大樹)に心惹か
 れていく……。

 他に、小堀正博(村田=賢治の友人)、テント(天道=謎の薬屋)、九十九一(福田=婦人服屋)、長原
成樹(新井=クリーニング屋)、平野麻樹子(落合マキ=宏治がナンパした二人連れの片割れ)、友田安紀
(大久保ミキ=同)、南方英二(近藤=一軒家の家主)、水木薫(初枝=典子の母)、荒谷清水(寄合の司
会)、飯島順子(青木=寄合で商店街に監視カメラを設置する案を提出した女)、浜村淳(市原=医師)、
桜井一枝(看護師)、赤松悠美(真弓=典子たちのクラスメイト)、入口夕布(恵子=同)、森理沙(久美=
同)、松本唯(千佳子=同)、大塚大雅(七歳時の賢治)、里吉萌亜(京子の義妹)、中西宏樹(その息子)、
石塚真道(住職)、角田あつし(体育の教師)、山沖亜矢(同)、信国輝彦(救急隊員)などが出演してい
る。テイストとしては、『大阪ハムレット』(監督:光石富士朗、「大阪ハムレット」製作委員会〔アート
ポート=関西テレビ=BLDオリエンタル=双葉社〕、2008年)に少し似ているだろうか。テント(旧芸名 大
空テント)が、不思議な味わいを見せている。
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