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日日是労働セレクト118
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第118弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト118」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『剣鬼』(監督:三隅研次、大映京都、1965年)を観た。三隅研次×市川雷蔵の「剣」三部
作の三作目である。第一作の『斬る』(三隅研次、大映京都、1962年)は鑑賞済みだが〔「日日是労働セレ
クト101」、参照〕、第二作の『剣』(監督:三隅研次、大映京都、1964年)は未見である。柴田練三郎
原作の荒唐無稽な物語ではあるが、良質の時代劇とはこういう作品を指すと言えよう。
 物語を確認しておこう。例によって〈Movie Walker〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  柴田錬三郎の同名の原作を、『眠狂四郎魔性剣』の星川清司が脚色、『無法松の一生(1965年)』
 の三隅研次が監督した剣豪もの。撮影もコンビの牧浦地志。

   〔あらすじ〕

  信州、一万三千石、海野式部少輔正信(戸浦六宏)の藩中に、冷笑蔑視の中で育った無足の若者斑
 平(市川雷蔵)がいた。……斑平の母キン(小村雪子)は、藩主正信の母まきの方(橘公子)の侍女
 だったが、まきの方は狂死し、最後まで忠誠に仕えたキンは、まきの方の遺言で中臈として遇される
 ようになり、まきの方ご寵愛の牝犬を与えられた。そして三年後、キンは男子禁制の奥向きにもかか
 わらず、男の子を生み悶絶して息絶え、牝犬も後をおうようにして餓死したのだ。人々は口々に人獣
 交婚を囁き、殉死した犬が斑であったため、その子は斑平と名付けられたのだ。……それから二十三
 年の歳月が流れ、斑平は花造りに特異の才能を発揮して登城が許され、仕官後も韋駄天の速足が買わ
 れて、無足組頭にあげられ、馬乗下役につけられ、その異才は隣藩にまでひびきわたった。その頃、
 藩主式部少輔正信の行動に奇行が目立ち、城代影村主膳(香川良介)、小姓頭神部菊馬(佐藤慶)は、
 この事実が幕閣に知れることを怖れた。一方の斑平は、彼に思慕の情をよせるお咲(姿美千子)とと
 もに、心は孤独ながら平安の日々を送っていた。ところがある日、斑平は見知らぬ初老の浪人の鬼気
 迫る居合術を目撃した。それからというもの剣に魅せられた斑平はこの浪人に学び、やがて浪人から
 太刀を授った。そしてある日斑平は神部菊馬から公儀隠密暗殺を命じられた。無我夢中で斑平は斬っ
 た。恩師である、あの浪人醍醐弥一郎(内田朝雄)をも斬った。弥一郎は幕府の隠密だったのだ。そ
 のころ、藩主正信の行状は日増に悪化し、藩論は正信を守る保守派と新藩主を迎えようとする革新派
 の二つに割れ、若侍たちは幕府評定所へ実情を訴えるため次々と脱走した。怒った神部は、斑平に、
 彼らの暗殺を命じた。運命のおもむくまま斑平は、指令どおり十一人の若侍を斬った。ところが、正
 信は変死し、海野藩は新藩主を迎えた。それとともに斑平は謹慎を命じられ、十一人の遺族は斑平に
 仇討を仕掛けた。斑平の持つ妖剣はうなり、急を聞いてかけつけたお咲の前に紅に染まった三十人の
 若侍の屍があった。

 他に、五味龍太郎(虚無僧=公儀隠密のひとり)、睦五郎(友蔵=無足のひとり)、工藤堅太郎(朝蔵=
同)、水原浩一(伍助=斑平の義父)、伊達三郎(戸田信吾=やや年配の藩士)、戸田皓久(田所外記=上
級藩士)、杉山昌三九(池永丹左衛門=同)、島田竜三(八田肝介=藩士)、玉置一恵(津崎太一右衛門=
同)、浜田雄史(平田万之助=同)、木村玄(棚倉武=同)、平泉征七郎〔=平泉成〕(若い藩士)、酒井
修三〔=酒井修〕(同)などが出演している。
 斑平が疾駆する馬を追い抜くシーンにはさすがに笑った。あり得ないだろう。なお、姿美千子を久しぶり
に見た。1971年、彼女は当時巨人の投手だった倉田誠と結婚しているが、けっこう話題になった記憶がある。
ちなみに、女優業の方はあっさり引退している〔ウィキペディアより〕。また、内田朝雄の立居振舞がよか
った。晩年の彼は、高利貸しなどのあまり感心できない人物を演じることが多かったが、この作品では、き
りりとした本物の武士を演じている。


 某月某日

 DVDで邦画の『下郎の首』(監督:伊藤大輔、新東宝、1955年)を観た。中間(ちゅうげん)の「忠義話」
であるが、よく練られており、時代劇としても一級品であると思う。伊藤大輔監督は、その名前をもじって
「移動大好き」と綽名されるほど「移動撮影(レールを敷き、カメラマンとカメラを載せた台車がレール上
を移動させて撮影する方法)」が非常に好きな監督だった由(ウィキペディアより)。さまざまな角度から
撮影できるので、躍動感を演出するのに好都合だったのであろう。当該作品で移動撮影がどれほど使われて
いたのかは分からないが、刃傷沙汰を描くには効果的だったと思われる。ただし、50年代の作品なので、血
が迸るような演出はまったくない。主演の田崎潤は、小生のような世代には渋い脇役俳優という印象だが、
この作品では無学だが忠義者の中間を見事に演じている。主人役の片山明彦も現代劇以外ではあまり印象が
ないが、葛藤する武士の役を巧みにこなしている。その他、嵯峨三智子、小沢栄(栄太郎)、丹波哲郎、三
井弘次なども、それぞれの個性を存分に発揮している。
 物語を確認しておこう。例によって〈Movie Walker〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞いたい。

   〔解説〕

  サイレント時代に映画化された伊藤大輔の『下郎』の再映画化で、彼自身が新しく脚本を書き直し、
 『明治一代女』についで監督する。撮影は『忍術児雷也 逆襲大蛇丸』の平野好美。主なる出演者は
 『のんき裁判』の田崎潤、『青春怪談(監督:市川崑、1955年)』の瑳峨三智子、『たそがれ酒場』
 の高田稔、『母性日記』の片山明彦、『藤十郎の恋』の小沢栄、『森繁のやりくり社員』の岡譲司な
 ど。

   〔あらすじ〕

  湯治中の結城新兵衛(高田稔)は、碁の席上、言葉の行き違いから相手の浪人磯貝某(小沢栄〔栄
 太郎〕)に殺された。息子の新太郎(片山明彦)と奴の訥平(田崎潤)は、折悪しく不在だったため、
 顔に九つの黒子があるというだけで相手の顔も知らなかったが、主従二人仇討の旅に出た。やがて時
 が流れ、新太郎は病のためにある城下町の乞食小屋に臥す身となったが、訥平は忠勤をはげみ、槍踊
 をして投銭を稼ぐ日々であった。訥平はある日、雨やどりが縁で、妾のお市(瑳峨三智子)と知り合
 い、お市は素朴な訥平を愛するようになった。お市は新太郎に同情して病を慰めるためと鳥籠をくれ
 るが、新太郎は訥平の乞食根生を罵り、鳥籠を返してこいと命じた。訥平が再びお市を訪れた時、た
 またま旦那の須藤厳雪(小沢栄)が現れ、訥平は刀で追われた。須藤の顔を見ると九つの黒子があっ
 た。訥平の必死の抵抗とお市の助けで、彼は逆に須藤を殺した。思わぬ所で仇を討った主従は、国許
 へ急いだが、ほど遠からぬ宿場で須藤の息子静馬(山本豊三)をはじめとする一団の追手に発見され
 た。訥平の引渡しを要求された新太郎は、須藤を討ったのは訥平だという口実で、彼が字を読めない
 のをよいことに、須藤門下が待っている地蔵の辻へ訥平を送った。忠義一途の訥平は、この時ようや
 く卑怯な主人の裏切りを知ったが、下郎の腕では武士たちの刀を防ぐことが出来ず、彼を追って来た
 お市とともに殺された。心がとがめた新太郎は訥平を追ったが、彼を待っていたのは群衆の嘲罵だけ
 だった。

 他に、岡譲司(溝呂木佐仲=巌雪の門弟)、高松政雄(片品=同)、澤村昌之助(源吾=若党)、小森敏  
(彦六=一文字屋の番頭)、東京子(お初=一文字屋の少女)、横山運平(嘉十=ゆとうやの主人)、伊藤
皇紀子(つぎ=ゆとうやの少女)、倉橋宏明(六助=手代)、武田正憲(弥陀七=小屋番)、三井弘次(躄
勝=小屋者)〔現代では使用を制限されている言葉が登場するが、歴史的背景を考慮して、そのまま表記す
る〕、市川正之助(馬六=小屋者)、五月藤江(お花=同)、井波静子(お歳=同)、高堂国典(梅里軒=
旅人)、広瀬康治(重兵衛=同)、築地博(豊作=百姓)、浦辺粂子(お角=お市の雇婆)、丹波哲郎(石
谷=旅の浪人)、鳥羽陽之助(丹羽)、舟橋元(千石)、水村民子(お稲)などが出演している。
 同年に、同じ奴さん(中間)が活躍する映画が撮られている。最近鑑賞した『血槍富士』(監督:内田吐
夢、東映京都、1955年)である〔「日日是労働セレクト117」、参照〕。この映画の協力者に伊藤大輔の
名前が見えるので、あるいはそれに刺激されて自分もリメイク作品を撮ってみたくなったのかもしれない。
観てみたい映画の中に、小生未見の伊藤監督作品が数本あるので、機会があったら鑑賞したいと思っている。
なお、小生が鑑賞済みの作品は以下の通り(5本)である。

  『鞍馬天狗横濱に現る』、監督:伊藤大輔、大映京都、1942年(1953年、『鞍馬天狗 黄金地獄』と改
   題されて再上映されている)。
  『宮本武蔵 二刀流開眼』、監督(演出):伊藤大輔、大映、1943年(戦後、『宮本武蔵 金剛院の決闘
   (「二刀流開眼」改修版)』、監督(演出)伊藤大輔/田坂勝彦、大映、1953年として再上映されて
   いる)。
  『王将』、監督:伊藤大輔、大映京都、1948年。
  『下郎の首』、監督:伊藤大輔、新東宝、1955年。
  『反逆児』、監督:伊藤大輔、東映京都、1961年。

 当然ながら、阪東妻三郎を主演に据えた『王将』が最も優れた作品であろう。ちなみに、同作品のリメイ
クである、三國連太郎を主人公(坂田三吉)に起用した『王将』(監督:伊藤大輔、東映京都、1962年)は、
おそらく観ていない。


 某月某日

 DVDでJアニメの『ゲド戦記』(監督:宮崎吾朗、「ゲド戦記」製作委員会〔日本テレビ放送網=電通=
博報堂DYメディアパートナーズ=ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント=ディーライツ=東宝〕、2006 
年)を観た。だいぶ話題になった作品なのでいつか観てみようと思っていたが、期待外れだった。原作を読
んでいないので何とも言えないが、少なくとも小生の好みとは程遠い感じである。アニメだけに絞れば、登
場人物の造形もその背景もリアリティに欠けるし、物語に至ってはほとんど破綻していると思う。思わせぶ
りな設定、困れば魔法に逃げる……といった塩梅で、子ども騙し以外の何ものでもない。本職の声優を使わ
ないで、有名どころの俳優をかき集めてきた点でもいただけない。商業主義にどっぷりと浸かった「凡作」
と言うしかない。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  世界中から注目を集めるジブリの宮崎駿の息子、宮崎吾朗の監督デビュー作。『花よりもなほ』な
 ど話題作の主演がつづく岡田准一が主人公、アレンの声を担当したファンタジー。

   〔あらすじ〕

  物語の舞台は、多島海世界「アースシー」。その世界の均衡が今、崩れつつあった。魔法使いのハ
 イタカ〔ゲド〕(声:菅原文太)は、災いをもたらす者を突き止める旅の途中でエンラッドの王子ア
 レン(岡田准一)と出会う。父王(小林薫)を刺し、その父の持ち物であった魔法の剣を持って国を
 出たアレンは、実体の無い「影」に追われ、精神を病むようになっていた。世界を混乱させる力はア
 レンの頭の中にまで及んでいたのだ。ともに旅をするようになった二人は、ホート・タウンという町
 に辿りつく。ここでも、荒廃は人々を捉えていた。その町外れに住むハイタカの昔馴染であるテナー
 (風吹ジュン)の家に身を寄せる二人。そこには親に捨てられた少女のテルー(手嶌葵)も住んでい
 た。ともに農園を耕し、暮らす日々。しかしある日、ハイタカが出かけている隙に近くの城に住む魔
 法使いのクモ(田中裕子)の部下がやってきて、テナーを誘拐してしまう。ハイタカを城におびき寄
 せようというのだ。クモはかつて無法な魔法の使い方を戒められたことから、ハイタカに恨みを持っ
 ていた。さらには心の闇に翻弄されているアレンもまたクモの毒牙にかかり、城に幽閉されてしまう。
 クモは永遠の生命を手に入れるために、開けてはならぬ生死両界を分つ扉を開けてしまった魔法使い
 だった。そして、それが世界の均衡が崩れた原因だったのだ。クモと決着をつけようとやってきたハ
 イタカだが、城に入ると魔法の力を奪われ、囚われてしまった。一方、その頃テルーはアレンの「影」
 と出会い、魔法の剣を授かっていた。皆を救えるのはもはやテルーしかいないのだ。単身城に乗り込
 んだテルーの必死の説得によって闇の世界から脱したアレンは見違えるように強くなってクモを追い
 詰めていく。しかしもう一息のところでクモが、恐ろしい魔法の力でテルーを殺し、城もろとも全て
 を破壊しようとした。万事休す。しかし、その時テルーがドラゴンに変身して蘇り、クモを殺したの
 だった。かくして再び世界の均衡は回復され、アレンは罪を償うために国に帰る決心をする。テルー、
 テナーとの再会を誓い合ってアレンたちは去っていくのだった。

 他に、香川照之(ウサギ)、夏川結衣(王妃)、内藤剛志(ハジア売り)、倍賞美津子(女商店主)など
が声の出演をしている。ちなみに、英題は《TALES from EARTHSEA》である。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たのでご報告。1本目はアニメの『コクリコ坂から』(監督:宮崎吾朗、スタジオジ
ブリ=日本テレビ放送網=電通=博報堂DYメディアパートナーズ=ディズニー=三菱商事=東宝、2011年)
である。宮崎駿の息子である宮崎吾朗の『ゲド戦記』(2006年)〔筆者、未見〕につづく第二作である。
昭和30年代を舞台にした古風な恋愛物語であるが、それなりに丁寧に作ってあるので、けっこう楽しめた。
しかし、インパクトがあったわけではない。内容も展開も陳腐の域を出ていない。
 物語を確認しておこう。例によって〈Movie Walker〉のお世話になる。ただし、あらすじや配役に関して
は、<ウィキペデイア>のものを借りた。それぞれの執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご寛恕を
乞う。

   〔解説〕

  宮崎駿が企画と脚本を担当し、『ゲド戦記』以来5年ぶりに宮崎吾朗が監督を手がけた、同名漫画
 が原作のスタジオジブリによるアニメ映画。1963年の横浜を舞台に、16歳の女子高校生である松崎海
 の恋愛模様や友情を通して、まっすぐに生きる高校生たちの青春を描き出す。海役の声を長澤まさみ、
 彼女が好意を寄せる少年の風間俊の声を岡田准一が担当している。

   〔あらすじと結末〕

  海の見える丘に建つ“コクリコ荘”を一人で切り盛りしている女子高生の松崎海(声=長澤まさみ)
 は、朝鮮戦争で亡くなった船乗りの父を偲び、毎朝庭に旗を上げている。ある日、自分らしき“旗を
 上げる少女”をうたった詩が匿名で『週刊カルチェラタン』に掲載されると、海は胸をときめかせる。
  ちょうどその頃、高校では老朽化した男子文化部の部室練“カルチェラタン”の取り壊しの是非が
 論争になっていた。海は『週刊カルチェラタン』で取り壊し反対の論陣を張っている風間俊(岡田准
 一)と知り合い、二人は淡い恋心を抱くようになる。俊に協力したい海が、カルチェラタンの大掃除
 を提案すると、高校では女子生徒たちをも巻き込んだ一大掃除作戦が始まる。
  しかし、海が亡くなった父の写真を俊に見せてからというもの、俊は海に対して急によそよそしく
 なってしまう。海が問いただすと、なんと俊も同じ写真を持っており、戸籍を調べたところ二人が兄
 妹であることが分かったのだという。俊は、海の父が養子として他人に譲り渡した兄だったのだ。俊
 から、今まで通りただの友だちでいようと告げられた海は、深く落ち込んでしまう。
  やがてカルチェラタンの大掃除が進むと、取り壊しに賛成していた生徒たちまでもが保存を望むよ
 うになるが、学校側はそれを意に介することなく取り壊しを決定する。俊と海は、生徒会長の水沼史
 郎(風間俊介)とともに、生徒の代表として東京に赴き、徳丸理事長(香川照之)に直談判して綺麗
 になったカルチェラタンを見学してもらう約束を取り付ける。その帰り道に、海は例の詩の作者が俊
 であったことを知る。海は気づいていなかったが、俊は毎朝、海が上げる旗に応答を返していたのだ。
 海が、たとえ兄妹でも俊のことがずっと好きだと告白すると、俊も海が好きだと答える。
  海が帰宅すると、アメリカから帰国したばかりの母の良子(風吹ジュン)が待っていた。母によれ
 ば、俊は父(澤村雄一郎)の子ではなく、父が亡き友人(立花洋)から引き取ってきた子だという。
 しかし、当時の両親には俊を育てる余裕はなく、俊の養親に譲り渡していたのだ。それを聞かされた
 海は、母の胸で泣きつづける。
  翌日、約束通りにカルチェラタンを訪問した徳丸理事長は、生徒たちに共感してカルチェラタンの
 保存を約束する。喜びに沸く学校に、俊の生い立ちを知っているという人物が近くに来ているという
 連絡が入ると、海と俊は駆けつける。その人物は、海の父と、俊の父の、かつての親友であるという。
 その人物である小野寺善雄(内藤剛志)から真相を聞かされた二人は、笑顔で肩を並べるのであった。

 他に、竹下景子(松崎花=海の祖母)、石田ゆり子(北斗美樹=コクリコ荘の住人)、大森南朋(風間明
雄=俊の養父)、柊瑠美(広小路幸子=コクリコ荘の住人)、白石晴香(松崎空=海の妹)、小松翼(松崎
陸=同じく弟)、手蔦葵(悠子=海のクラスメイト)、冠野智美(信子=同)、桝太一(全学討論会壇上の
発言者)、藤巻直哉(徳丸ビルの受付係)、伊藤綾子(徳丸理事長の秘書)などが声の出演をしている。
 海や俊が通っている港南学園高校の食堂のメニューを下に掲げておく。

  A定食 80円
  B定食 50円
  大盛5円増
  ライスカレー 30円
  カレーうどん 25円
  かけうどん  20円

 空が買った「俊がジャンプしている瞬間を撮った写真」が30円。海が肉屋で購入したカレー用のブタコマ
の並が400グラムで240円。俊が同じ店で買ったコロッケが1個10円。なお、小生の母親は「ブタコマ」では
なく、「トンコマ」と言っていたはずである(カレーに入れる肉はたいていトンコマだった)。だいたいそ
んな値段だったような気がする。もしかすると、コロッケはそのころ5円だったような気もするが……。た
だし、もう少し前の時代だったかもしれない。なお、英題は《FROM UP ON POPPY HILL》である。
 2本目は、『あゝ野麦峠』(監督:山本薩夫、新日本映画、1979年)である。以前からマークしていた作
品で、予想通りの展開であった。山本監督の作品としては、中程度の出来か。この手の物語はとかく「お涙
頂戴」になりがちであるが、そこそこの抑制が効いていたと思う。ただし、少し型にはまった演出で、もう
少し捻りが欲しかった。
 物語を確認しておこう。上記同様、〈Movie Walker〉のお世話になるが、配役に関しては<ウィキペディア>
も参照した。

   〔解説〕

  明治中期、長野県岡谷市にある製系工場に、岐阜県飛騨地方から野麦峠を越えて働きに出た少女た
 ちの姿を描く。昭和四十三年に発表された山本茂実の同名小説を映画化したもので、脚本は服部佳、
 監督は『皇帝のいない八月』の山本薩夫、撮影は『曽根崎心中』の小林節雄がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  明治三十六年二月、飛騨から野麦峠を越えて信州諏訪へ向かう百名以上もの少女たちの集団があっ
 た。毎年、飛騨の寒村の少女たちはわずかな契約金(5円が相場)で製糸工場(キカヤ)へ赴く。河
 合村の政井みね(大竹しのぶ)、三島はな(友里千賀子)、庄司きく(古手川祐子)、平井とき(浅
 野亜子)も新工として山安足立組で働くことになっていた。途中、篠田ゆき(原田美枝子)という父
 なし子の無口な少女も一行に加わった。明治日本の富国強兵のための外貨獲得はこのような工女のか
 細い手に委ねられていた。三年後、みねは一人前の工女になっていた。取り出す糸は細く一定で光沢
 がなければ輸出用にはならず、毎日の検査で外国向けにならない糸を出したものは、みんなの前で検
 番から罵倒され、一定基準に合格しない場合は当人の給金から罰金として差引かれた。ときとはなは
 劣等組、みねとゆきは、社長の足立藤吉(三国連太郎)から一目おかれるほどの優等工女で、跡取り
 息子の春夫(森次晃嗣)もそんな二人に関心を抱いていた。大日本蚕糸会の総裁伏見宮殿下(平田昭
 彦)一行が足立組を訪れた日、劣等工女のときが自殺した。やがて正月がやってくると、各工女たち
 は、一年間の給金を懐に家に帰るが、ゆきには帰る家がなかった。ひとりぼっちの正月の寂しさと、
 みねをライバル意識していたことから、ゆきは春夫に身をまかせるのだった。ある日、金庫の金が紛
 失し、帳付けの野中新吉(山本亘)は藤吉に嫌疑をかけられる。新吉を慕うきくは見番頭の黒木権三
 (三上真一郎)に相談するが、小屋に連れ込まれて手籠めにされてしまう。自暴自棄になった彼女は、
 小屋に火をつけ、新吉とともに天竜川に身を沈めてしまった。旧盆で工場が休みになると、工女たち
 は束の間の解放感に浸り、いくつかのロマンスが生まれる。はなは検番代理にまで昇格した工女たち
 の唯一の理解者、川瀬音松(赤松真人)とこの夜互いに告白し合った。ゆきは春夫の子を宿していた
 が、春夫には許婚者がおり、彼女は妾になるのを嫌い、春夫から去って、一人子どもを育てようと野
 麦峠を彷徨っているうち流産してしまう。明治四十一年、アメリカに不況が訪れ、生糸の輸出はとま
 ってしまう。倒産から逃れるには国内向けの生糸を多く生産しなければならず、労働条件は日ましに
 悪化した。そんな中、みねは結核で倒れた。病気の工女は使いものにならず藤吉はみねを家族に引き
 取らせるのだった。知らせを受けた兄の辰次郎(地井武男)は夜を徹してキカヤに駆けつけた。物置
 小屋に放り出されて衰弱しきったみねを背負って、辰次郎は故郷に向かった。秋、野麦峠は燃えるよ
 うな美しい紅葉でおおわれていた。みねの前で、涙でかすむ故郷が広がっていた。「兄さ、飛騨が見
 える」……それがみねの最後の言葉だった。みねは永遠の眠りに入っていくのだった……。美しい飛
 騨は何も語らず、みねを見つめていた。

 他に、西村晃(政井友二郎=みねの父)、野村昭子(政井もと=同じく母)、北林谷栄(お助け茶屋の老
婆)、小松方正(金山徳太郎=山安の見番)、江幡高志(丸正の検番)、三条泰子(伏見宮妃殿下)、岡本
茉利(久保えい)、黒川明子(杉山みつ)、志方亜紀子(荒井たみ)、今村文美(山村さわ)、草薙幸二郎
(横浜の中田商店主)、斉藤美和(足立とみ=藤吉の妻)、渡辺由光(政井菊五郎=辰次郎の弟)、中原早
苗(石部いわ=工女の躾係)、津田京子(木谷やえ)、采野圭子(井上まさ)、石井くに子(松本さだ)、
長浜藤夫(山安の守衛)、福原秀雄(きくの父親)などが出演している。なお、ナレーターは鈴木瑞穂。
 キカヤ、諏訪の千本煙突、デニール検査、百円工女などは、初めて耳にする言葉であった。お助け茶屋の
老婆が、流産したゆきの世話をしている際、「キカヤで大勢孕まされて戻って来て、猫の子のように産んで、
これでは野麦峠ではなくて野産峠だ」と呟くシーンがあるが、雇う側が工女を「糸を取る大事な機械」とし
か看做さない過酷な扱い以上の地獄が存在していたことを伝えている。


 某月某日

 DVDでアニメ映画の『海がきこえる』(監督:望月智充、徳間書店=日本テレビ放送網=スタジオジブリ、
1993年)を観た。元々はTVで放映された作品であるが、好評なので劇場公開された由。宮崎駿、高畑勲以
外の監督がスタジオジブリから作品をリリースすることは初めてのことで、最初はTVだったとはいえ、一  
種の冒険だったらしい。等身大の若者が描かれており、面映さは格別だが、思い当たる節もたくさんあった。
「青春時代なんてこんなもの」といったら叱られるかもしれないが、その分地に足のついたリアリティがあ
る。舞台は高知で、「武藤」という苗字の女の子が登場するので、その意味でも親近感が湧いた。ほのぼの
とした恋愛アニメといってよいだろう。
 物語を確認しておこう。例によって〈Movie Walker〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『月刊アニメージュ』に連載された氷室冴子の同名小説をアニメーション化。土佐・高知を舞台に、
 男女高校生の青春を描く。制作は『紅の豚』のスタジオジブリ。監督は『めぞん一刻 完結篇』の望
 月智充。キャラクター設計と作画監督は、雑誌連載時にイラストを担当し、『おもひでぽろぽろ』な
 どを手掛けている近藤勝也。なおこの作品は、九三年五月に日本テレビでオン・エアされている。併
 映は『そらいろのたね』と『なんだろうスポット』(いずれも日本テレビ四十周年キャンペーン用に、
 スタジオジブリが制作したアニメーション)。

   〔あらすじ〕

  土佐・高知の名門私立で中・高六年間を過ごした杜崎拓(声:飛田辰男)は、東京の私大に合格、
 無事ひと学期を終え、帰省のため高知行きの飛行機に乗り込んだ。機内でクラス会の通知を眺めなが
 ら、彼は武藤里伽子(坂本洋子)と出会った“あの夏”を思い出す。中三の時、学校側の一方的な判
 断で修学旅行が中止となり、拓はその騒ぎのなかで松野豊(関俊彦)と知り合う。しっかりと自分の
 考えを持ち、行動している豊に、拓は尊敬に近い想いを抱き、二人は親友になった。高校二年になっ
 て、里伽子が両親の離婚により東京から母の故郷・高知へやってくる。成績優秀、スポーツ万能の彼
 女は編入と同時に一躍有名人となった。だが彼女はクラスメートに馴染もうとせず、目立つだけに女
 子からは反感を買い、男子からは敬遠され、クラスでは浮いた存在となっていた。それでも豊は気の
 強い里伽子に惹かれ、何かと面倒をみていた。拓は豊が遠くに行ってしまったような淋しさを覚える
 のと同時に、都会から来た女の子に豊の良さがわかるものかと、里伽子に腹を立てていた。その年、
 修学旅行先のハワイで里伽子はお金をなくしたからと、拓に六万円を借りる。それを返してもらわな
 いまま時が過ぎ、彼らは高校三年、同じクラスになる。ゴールデンウィーク初日、拓は里伽子の唯一
 の友人、小浜祐美(荒木香恵)の電話で高知空港に呼び出される。里伽子と祐美は二泊で大阪のコン
 サートにいくはずだったが、突然里伽子が「東京へ行って、パパに会う」と言い出したという。彼女
 はハワイで借りたお金を東京行きの費用にあて、着実に計画を練っていたのだ。拓は取り乱した祐美
 を家に返し、里伽子を東京の父親(有本欽隆)の許に送ることにする。だが父親はすでに別の女性と
 暮らしており、娘の訪問を歓迎してはくれなかった。行き場を失った里伽子は、泣きはらした目で拓
 の泊まっているホテルを訪れる。拓にしがみつき、泣き続ける里伽子。土佐に帰った二人は、それぞ
 れの想いを胸に秘めたまま、卒業していった。

 他に、さとうあい(拓の母)、渡部猛(校長)、緑川光(山尾忠志)、天野由梨(清水明子)、金丸淳一  
(岡田)、徳丸完(川村)、鈴木れい子(おかみさん)、関智一(見習い)などが出演している。なお、英
題は《THE OCEAN WAVES》だった。最後の拓の独白の英語字幕の文字を下に掲げておこう。

   And that's when I know I'd always been crazy about her.


 某月某日

 DVDで邦画の『二十才の微熱』(監督:橋口亮輔、ぴあ=ポニーキャニオン、1992年)を観た。橋口監督
と言えば、自分がゲイであることをカミング・アウトしている希有な人というイメージがある。作品にも自
らの傾向が反映しているものが多い。当該作品の主人公はゲイではなさそうであるが、微妙な立ち位置にい
る。むしろ、男性とか女性とかの区別に関心を払わないタイプなのかもしれない。BL(Boy's Love)という
言葉を知ったのはいつ頃だったか。たぶん、2010年の秋だったと思う。その年の「基礎倫理学」のテーマは
「結婚と恋愛」(居場所IX)だったが、ある受講生のグループが《BL》を発表のテーマとして採り上げ、そ
の際にこの言葉を知ったという経緯である。もちろん、同性愛に関しては、中学生くらいから漠然と知って
はいたが、小生とは無縁の事柄だと思い、関心を払ったことはあまりなかった。それでも、同性愛者からア
プローチされたこともないわけではないし、小説などで知識はあったので、「世の中にはそういう志向性の
人もいる」ぐらいの認識であった。たとえば、三島由紀夫の「仮面の告白」や、吉行淳之介の「寝台の舟」
などの小説も、文学的な意味での感慨は抱いたが、同性愛そのものにはさほどの興味はなかったと思う。つ
まり、しょせん「他人事」といった感覚であった。なお、論考としては、とりあえず以下の書籍が参考にな
るだろう。

  『愛について』、今道友信 著、中公文庫、2001年。
  『正義論/自由論 寛容の時代へ』、土屋恵一郎 著、岩波現代文庫、2002年。
  『同性愛と異性愛』、風間孝/河口和也 著、岩波新書、2010年。

 それでは、映画の方はどうだろう。男性同士の同性愛をモチーフにした作品には次のようなものがある。
ただし小生が鑑賞済みの邦画に限る。

  『おこげ OKOGE』、監督:中島丈博、東京テアトル、1992年。
  『きらきらひかる』、監督:松岡錠司、フジテレビジョン、1992年。
  『二十才の微熱』、監督:橋口亮輔、ぴあ=ポニーキャニオン、1992年。
  『渚のシンドバッド』、監督:橋口亮輔、YES(Young Entertainment Square)、1995年。
  『御法度』、監督:大島渚、松竹=角川書店=IMAGICA=BS朝日=衛星劇場、1999年。
  『ハッシュ!』、監督:橋口亮輔、シグロ、2001年。
  『メゾン・ド・ヒミコ』、監督:犬童一心、アスミック・エース エンタテインメント=IMJエンタテイン
   メント=日本テレビ放送網=S・D・P=カルチュア・パブリッシャーズ、2005年。
  『真夜中の弥次さん喜多さん』、監督:宮藤官九郎、アスミック・エース エンタテインメント=ジェイ・
   ストーム=カルチュア・パブリッシャーズ=ティー・ワイ・オー=大人計画、2005年。
  『46億年の恋』、監督:三池崇史、「46億年の恋」製作委員会〔松竹=衛生劇場=真樹プロダクション〕、
   2006年。
  『LOVE MY LIFE』、監督:川野浩司、LOVE MY LIFE Partners〔フェローピクチャーズ=日本出版販売=
   タキ・コーポレーション〕、2006年。

 この他にも、いわゆる「オカマ」が登場する映画はあまた存在する。たとえば、小生に強烈な印象を与え
た作品としては、『塀の中の懲りない面々』(監督:森崎東、松竹映像=磯田事務所、1987年)が挙げられ
るだろう。ケーシー高峰が「上州河童」というオカマの受刑者を見事に演じている。
 さて、物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛恕を乞いたい。蛇足ながら、この映画の英題は《A TOUCH OF FEVER》である。

   〔解説〕

  ゲイバーで働く大学生を中心に、彼を慕うホモセクシュアルの高校生や二人の女の子ら四人の若者
 たちを描く青春ドラマ。『夕辺の秘密』(1989年)でPFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワード
 89グランプリを受賞した橋口亮輔の監督・脚本による劇場デビュー作。主演の樹を演じたモデル出身
 の袴田吉彦をはじめ、四人の男女はいずれも本作が映画デビューとなった。

   〔あらすじ〕

  離婚した両親と別れ一人東京で暮らす島森樹〔たつる〕(袴田吉彦)は、昼間は大学に通いながら、
 夜はアルバイトとしてゲイバーで男たちに身体を売っていた。そんな彼に同じクラブで働く高校生の
 宮島信一郎〔信ちゃん〕(遠藤雅)や、大学のサークルの先輩・鈴木頼子(片岡礼子)らがそれぞれ
 に想いを寄せるが、樹はそれを拒むわけではなく、かといって求めるでもなかった。信は彼に好意を
 寄せる幼なじみのあつみ(山田純世)の助けを借りてバイト先から学校に通っていたが、ホモセクシ
 ャルであることから両親と対立し、しばらく樹の部屋に泊めてもらうことにする。樹のアパートを訪
 ね信と鉢合わせした頼子は、樹を自宅に招く。彼女の家で、彼女の父親(石田太郎)が先日の自分の
 客であったことを樹は知り、居心地の悪い思いをしながら知らぬふりをしていたが、食事中に思わず
 吐いてしまう。一方信を心配するあつみも樹に会い、そこで信のバイトの内容を初めて知ってショッ
 クを受ける。四人の気持は微妙にずれ始めていった。ある日樹はクラブ「ピノキオ」のマスター(佐
 藤恒治)から、信がホテルの客(橋口亮輔)を困らせているからと代わりを頼まれる。ホテルについ
 た樹は、若い男の客から信と二人抱き合うよう注文されるが、お互いにこわばって行えない。客から
 激しく叱責を受け嗚咽してしまう二人だったが、帰り道の彼らは、押し隠していた感情を解放した後
 のごとく、微妙な関係のまま、だがどこか晴れ晴れとしていた。

 他に、入江若葉(頼子の母)、原田文明(川久保=ピノキオのスタッフ)、草野康太(タカシ)、川口洋
一(太田)、大河内浩(客の男)などが出演している。なお、《BL》と言えば、少女漫画(小説)やそれを
原作としたアニメがあるが、小生はまったく不案内なのでここでは触れない。さらに、「薔薇族」に関して
も、興味のある人はご自分で調べてほしい。レズビアン(女性同士の同性愛)についてもしかり。ただし、
おまけとして、《LGBT》についての記事を掲げておこう(ウィキペディアより)。ほぼ、原文通りである。

   LGBT:LGBT(エル・ジー・ビー・ティー)または GLBT(ジー・エル・ビー・ティー)とは、女性同
      性愛者(レズビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、
      Bisexual)、そして性同一性障害含む性別越境者(トランスジェンダー、Transgender)など
      の人々を意味する頭字語である。LGBという頭文語は1980年代中期から使われ始め、Tを加えた
      LGBTという言葉は1990年代から現在まで使われ始めた。それ以降、このLGBTという言葉はこの
      ような人々の自己指定として一般的となり、さらにセクシャルマジョリティー(性的多数者)
      に対してもアメリカ合衆国やその他英語圏の国々で広く受け入れられている。LGBTという言葉
      は性の多様性と性のアイデンティティからなる文化を強調するものであり、性的少数者と同一
      視されることも多いが、LGBTの方がより限定的かつより肯定的な概念である。
       また、LGBTにクィア(Queer)のQを加えたLGBTQという表現も一般的に使われている。一方、
      Intersex(インターセックス、男性と女性の両者の性的な特徴と器官がある人)はLGBTにIを
      加えたLGBTIという表現の使用を提案しており、この表現もさまざまな活動において用いられ
      ている。 このような人々が自分たちの性を認め、公表できるかどうかは、彼らが住む地域に
      LGBTとして生きる権利が認められているかどうかによると言える。


 某月某日

 DVDで邦画の『悲しき口笛』(監督:家城巳代治、松竹大船、1949年)を観た。当時の大ヒット曲である
「悲しき口笛」(作詞:藤浦洸、作曲:万城目正、編曲:浅井拳嘩、唄:美空ひばり、1949年)を主題歌と
する当該映画は、実質的な美空ひばりのデビュー作である。小生が鑑賞済みの、彼女が出演している作品を
以下に挙げてみよう。

  『悲しき口笛』、監督:家城巳代治、松竹大船、1949年。
  『憧れのハワイ航路』、監督:斎藤寅次郎、新東宝、1950年。
   「日日是労働セレクト86」、参照。
  『東京キッド』、監督:斎藤寅次郎、松竹大船、1950年。
   「日日是労働セレクト87」、参照。
  『伊豆の踊子』、監督:野村芳太郎、松竹大船、1954年。
   「日日是労働セレクト55」、参照。
  『銭形平次捕物控 まだら蛇』、監督:加戸敏、大映京都、1957年。
   「日日是労働セレクト85」、参照。
  『ひばり捕物帖 かんざし小判』、監督:沢島忠、東映京都、1958年。
   「日日是労働セレクト72」、参照。
  『べらんめえ藝者と大阪娘』、監督:渡辺邦男、ニュー東映、1962年。
   「日日是労働セレクト116」、参照。

 以上の合計7篇であり、意外に少ないと思った。というのも、10篇以上は観ていると思っていたからであ
る。それだけ美空ひばりは特別の感慨を与えるスターなのだろう。当時のひばりは12歳。しかし、その堂々
とした役者ぶりはどうだ。こましゃくれた演技はご愛嬌だが、敗戦の暗さを吹き飛ばしてくれる明るさが頗
る付きの好感度を観衆に与えている。人気が沸騰するのももっともだと思う。監督が家城巳代治なのも意外
であった。独立プロに移る前は、松竹でこんな映画を撮っているとは知らなかった。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  『お嬢さん乾杯!』、『花の素顔』の小出孝の製作で、竹田敏彦の原作を『緑なき島』の清島長利
 が脚色し、『若き血は燃えて』の家城巳代治の監督第二回作品である。キャメラは『オオ!!市民諸君』
 の西川亨の担当である。出演者は『海の野獣』、『花の素顔』の菅井一郎、『彼女は答える』の津島
 恵子、『踊る龍宮城』の美空ひばり、『象を喰つた連中』の原保美の他、徳大寺伸、神田隆らがそれ
 ぞれ助演する。

   〔あらすじ〕

  横浜桜木町には「風太郎(ぷうたろう)」といわれる自由労働者が群がり、浮浪児(=戦災孤児)
 たちと一緒にあっちこっちに散在していた。田中健三(原保美)は駅前にぼんやりやってきたが、一
 人の妹ミツコ(美空ひばり)を探すためであった。彼は最近外地から復員してきたばかりで、帰って
 みれば家も焼け、ミツコの行方も分らなくなっていた。健三は以前音楽に志し、ミツコのために「悲
 しき口笛」という歌を作って戦地に出て行った。今こうなってみるとその歌が唯一のミツコを探すツ
 ナであった。そのころミツコはやはり風太郎と一緒に浮浪の生活をしていたのであった。健三はわけ
 も分からなくなってぶらりぶらりと、あるビヤホールで無銭飲食をしたあげく、用心棒にさんざんた
 たかれたが、この時ビヤホールの一女性(津島恵子)に救われた。たしかその名は藤川京子といった。
 この様子をみたある商事会社の吉村(徳大寺伸)が、健三の男を買って代金を払ってくれた上、いず
 こともなく自動車で連れ去ってしまった。一方、京子は父親の修(菅井一郎)と二人きりの生活で、
 家とは名のみのボロ倉庫の中で暮していた。父は往昔の夢去らず、ヴァイオリンを片手に幻想の曲を
 追っていたが、ほとんど収入の道はなかった。それでも楽団の仲間を尋ね歩いたが、ジャズのリズム
 の中にどうしても飛びこむことが出来ない性分であった。ところが、ある日ふとしたことから浮浪児
 のミツコが京子たちの生活に仲間入りすることになった。それからというものは三人の生活が始まっ
 たが、父の修は飲んだこともない酒(おそらく、メチルアルコール)のために眼がつぶれてしまった。
 心配したビヤホールの店主安田(山路義人)は見舞いにきて、京子にあるアルバイトを世話するから
 といって多額の前金をおいて行った。ミツコはミツコで歌の上手なのに自信をつけて風太郎の仲間を
 たよって歌を歌っては少しばかりの薬代を得ていた。このいじらしい姿をみて、京子は安田の仕事に
 赴いたが、いつぞや健三を救った吉村を一味とする密輸団の仕事であった。驚いた京子は逃げようと
 したが逃げられず、船底に監禁されてしまった。ところが、かつて京子が救った健三に偶然に救われ、
 漸く難を脱し健三の友人山口(神田隆)の家に二人で逃げのびた。ところが、京子が出かけたまま帰
 れなかった家は、父の修のちょっとした失敗のために焼けてしまった。家をなくした修とミツコは、
 毎日二人で京子を尋ね歩いた。京子は病気が全快するとすぐ家にもどったが家はなく、あっちこっち
 を探し歩るいたが、キャバレーにミツコの姿を見つけた。もっとも、そのとたんに密輸団の一味の者
 に捕えられてしまう。しかし、健三が自首したため間もなく一味は一網打尽にされてしまった。数日
 後、釈放になった健三は京子を尋ねた。そしてそこにミツコがいることに驚きかつ喜んで、四人はし
 ばらくの間声も出なかった。相模湖畔に楽しげに行く、健三、京子、老人の手を引くミツコ、そして
 山口夫妻の姿が「悲しき口笛」の合唱とともに明るく躍動していた。

 他に、水島光代(芳子=山口の妻)、大坂志郎(松ちゃん=桜木町の自由労働者)、清水一郎(キャバレ
ーの支配人)などが出演している。健三が「悲しき口笛」を作曲するときに用いていたピアノは、ドイツ製
の《bluthner》だった。なお、かつて藤川修の全盛期には、以下のような独奏会が開かれていた。

    藤川修提琴独奏會        提琴=ヴァイオリン   

     1.クロイツェル・ソナタ ── ベートーヴェン
     2.コンチェルト(ホ短調) ── メンデルスゾーン
       A.ロマンス ── ベートーヴェン
       B.トライメライ ── シューマン
       C.チゴイネルワイゼン ── サラサーテ

       帝國劇場 9月5日5時
        會員券 A.5.00(5円のことだろう)
              B.3.00
              C.1.00

           オーケストラ伴奏 東京管弦楽団
           ピアノ伴奏 日高美榮

 昭和20年代の映画には、画家や音楽家が登場することが多いような気がするが、戦争で消沈した日本人の
こころを鼓舞するためだったのだろうか。もしかすると、当時の映画製作者たちは、金儲けではなく、芸術
や文化によって日本が立ち直ることを望んでいたのかもしれない。しかし、戦後70年経って、その頃の志は
風前の灯となっている。なお、これは蛇足であるが、桜木町には、いわゆる「日雇い労働者」に仕事を斡旋
する場所があったと思う。小生が高校生の頃、横浜の磯子区に住んでいたので、彼の地で何度か見かけた記
憶がある。昭和40年代の後半だから、松ちゃんたちのように、路上で暮らす人はさすがにいなかったと思うが……。


 某月某日

 DVDで邦画の『わが生涯のかゞやける日』(監督:吉村公三郎、松竹大船、1948年)を観た。鑑賞した人
(70歳代)から「面白かった」と聞かされていたので、観たかった作品のひとつである。吉村公三郎の作品
は以下に挙げるように6本しか観ていないが、いずれも高い水準の作品で、もっと観てみたい監督のひとり
である。

  『安城家の舞踏会』、監督:吉村公三郎、松竹大船、1947年。
  『わが生涯のかゞやける日』、監督:吉村公三郎、松竹大船、1948年。
  『夜の河』、監督:吉村公三郎、大映京都、1956年。
  『大阪物語』、監督:吉村公三郎、大映京都、1957年。
  『女経(じょきょう)』、監督:増村保造/市川崑/吉村公三郎、大映、1960年。
  『越前竹人形』、監督:吉村公三郎、大映京都、1963年。

 さて当該作品であるが、物語は敗戦前夜(1945年8月14日)に始まり、その三年後に幕を閉じる。敗戦直
後の世相を背景にした男と女の物語であるが、殺伐とした設定ながら純愛が見事に描かれている。森雅之と
山口淑子の組合せも正統派の美男・美女で鼻に付きそうだが、いっそ心地よかった。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  製作:小倉武志、脚本:新藤兼人、監督:吉村公三郎、撮影:生方敏夫は、それぞれ『安城家の舞
 踏会』、『誘惑(1948年)』につぐ同じスタッフである。主演は『安城家の舞踏会』、『われ泣きぬ
 れて』、『受胎』の森雅之、『野戦軍楽隊』の山口淑子(李香蘭)で、『安城家の舞踏会』の滝沢修、
 『リラの花忘れじ』、『愛情十字路』の井上正夫、『酔いどれ天使』の清水将夫、民藝より映画第一
 回出演の宇野重吉、それに加藤嘉らが助演している。

   〔あらすじ〕

  敗戦前夜のことである。青年将校沼崎敬太(森雅之)は、偏った国家観により平和主義者の重臣戸
 田光政(井上正夫)を暗殺し、その娘節子〔たかこ〕の短剣によって腕に傷をうけた……。歳月は流
 れ、一九四八年、銀座裏<Cabaret Myojo>の一隅に一人の魂を失った青年がいた。彼は敬太であった。
 彼を手先に使っている佐川浩介(滝沢修)は、表の顔としては「愛國新聞」を発行し、裏に回っては
 悪徳の限りをつくしていた。彼の経営する<Cabaret Myojo>には、父と家を失い転落した戸田節子が
 いた。節子の義兄である平林達造(清水将夫)は、かつて鬼検事として自由主義者を牢獄に叩き込み、
 今は人の目をしのんで佐川の新聞社の一隅に生きていた。節子は運命の皮肉によりいつか敬太に心ひ
 かれ、敬太もまた節子を愛した。だが敬太はかつて犯した罪の、あのときの娘の面影を今、その節子
 に見出して愕然とした。だが、今は愛する彼女に打明ける勇気がなかった。佐川は節子をわがものに
 するため敬太を殺そうとした。暗夜、敬太は佐川の手下に傷つけられ節子に救われた。敬太を介抱し
 た節子は、彼の腕の傷痕に父の仇の人を見出した。しかし、彼女は今敬太を愛しているのだ。そのこ
 ろ、昭和産業の隠匿物資は摘発寸前であった。それを妨害したのは佐川であることを察知した「民主
 新報」記者である高倉好雄(宇野重吉)は、佐川の新聞社にのりこみそこで平林の姿を見た。高倉は
 かつて平林のために過酷な拷問にあい、片足が不自由になっていた。彼は逆上したが、理性をもって
 心をおさえた。これを知った佐川は高倉と平林をけしかけ決闘させることにした。高倉がたおれれば
 犯罪が暴露せず、平林がたおれることにより介添に敬太をつけることから節子は敬太を憎み離れるだ
 ろう。だが決闘の夜、平林も高倉も、そして敬太もすべてが佐川のたくらみであると知り、敬太は今
 こそ人民の敵佐川を憎みそして殺した。彼は自首を決意し、節子のアパートへ別れにいった。そして
 節子の父を殺したことも告白するのだ。節子の眼ざしは静かだった。「知っていました……」。軍閥
 が二人を憎しみ合う位置においたので、今愛し合う二人はそれを乗り越えようとしている。二人はひ
 しと抱きあった。この日こそ敬太の生涯に輝ける日であった。翌朝、節子の明るい眼ざしに送られて、
 敬太の姿は警視庁の扉の中に入っていった。

 他に、加藤嘉(森山泰次郎=在ビルマ後方主任参謀だったこともある佐川の右腕)、村田知英子(トミー=
佐川の元情婦)、清水一郎(アキちゃん=佐川の子分。敬太に発砲して怪我を負わせた男)、三井弘次(敬
太の弟分)、殿山泰司(同)、逢初夢子(バーのマダム)などが出演している。敬太はモヒ中(モルヒネ中
毒)であるが、こんな人は戦後山ほどいたのであろう。敬太は、中毒を治すには監獄に入るしかないと決心
するが、恋の力がそれに与ったことは言うまでもないだろう。よくあるタイプの物語ではあるが、当時の雰
囲気が存分に伝わって来るので、貴重な物語でもある。なお、佐川を演じた滝沢修は、さすが民藝の重鎮、
札付きのヤクザを憎々しげに演じていた。またこれは蛇足だが、殿山泰司の髪はまだふさふさしている。


 某月某日

 先月(6月)はとても多忙で、邦画は5本しか鑑賞できなかった。ここ数年、年間200本を鑑賞ノルマと
決めているので、一月あたり約17本の邦画を鑑賞する必要があるが(年間204本)、先月は12本も足りなか
った勘定になる。残りの月日(約半年ある)で挽回しなければならないが、毎年そんなペースなので、何と
か目標を達成したいものである。
 さて、久しぶりに邦画を鑑賞したので、感想を記そう。『貸間あり』(監督:川島雄三、宝塚映画、1959
年)という作品である。一本前に観た『山河あり』(監督:松山善三、松竹、1962年)と「あり」つながり
で観たというわけ。もっとも、後者が悲劇タッチであるのに対して、当該作品は明らかに喜劇そのものであ
る。小生は深刻な悲劇映画も悪くはないが、気質的には良質の喜劇映画が大好きなので、楽しく観終えるこ
とができた。また、川島雄三監督の作品は味わい深いものが多いので期待したが、期待通りであった。以下
に、小生が鑑賞済みの同監督の作品を挙げておこう。

  『愛のお荷物』、監督:川島雄三、日活、1955年。
  『あした来る人』、監督:川島雄三、日活、1955年。
  『銀座二十四帖』、監督:川島雄三、日活、1955年。
  『洲崎パラダイス 赤信号』、監督:川島雄三、日活、1956年。
  『風船』、監督:川島雄三、日活、1956年。
  『わが町』、監督:川島雄三、日活、1956年。
  『幕末太陽傳』、監督:川島雄三、日活、1957年。
  『暖簾』、監督:川島雄三、宝塚映画、1958年。
  『グラマ島の誘惑』、監督:川島雄三、東京映画、1959年。
  『貸間あり』、監督:川島雄三、宝塚映画、1959年。
  『女は二度生まれる』、監督:川島雄三、大映東京、1961年。
  『花影』、監督:川島雄三、東京映画、1961年。
  『雁の寺』、監督:川島雄三、大映京都、1962年。
  『しとやかな獣(けだもの)』、監督:川島雄三、大映東京、1962年。

 小生は、渋谷実(1907年-1980年)、増村保造(1924年-1986年)、今村昌平(1926年-2006年)、森崎東
(1927年-)といった職人気質の監督が好きだが、川島雄三(1918年-1963年)などもその系列に属するので
はないだろうか。どこか斜に構えており、人生の悲喜こもごもをさらっと描くことに長けてはいるが、「お
涙頂戴」式の作品はけっして作らない。それでいて、薄情というわけでもない。厳しくも温かい目を通して
観察した、愚かな人間群像を坦々と描写しているのだ。「洒脱」という言葉があるが、それに近い味わいが
ある。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  井伏鱒二の原作を、『グラマ島の誘惑』の川島雄三と『海から来た男』の共同執筆者・藤本義一が
 脚色し、川島雄三が自ら監督したコメディ。撮影は『愛情不動』の岡崎宏三。

   〔あらすじ〕

  大阪のある町の風変りなアパート屋敷の住人たちの物語である。二階に陣取る与田五郎(フランキ
 ー堺)は四カ国語に通じ、小説、論文、翻訳の代作引受け業とコンニャク製造、キャベツ巻の大家で
 ある。根が善良単純なため、彼に恋心を抱く同宿人の津山ユミ子(淡島千景)を怒らせたり、遂には
 チャッカリ学生江藤実(小沢昭一)の罠にかかり、九州まで連れ出されて大学受験の替玉をやらされ
 そうになる。彼の親友である小松(加藤武)の妻の実家がこの土地で温泉旅館をやっているのを知り、
 五郎は漸く己の生業をこの旅館に求めた。しかし、アパート屋敷からユミ子が跡を追って来るという
 知らせに、五郎はあわてて逃げ出す始末だ。ユミ子は青春を陶芸一筋に打ち込む三十娘で、生来の勝
 気ゆえに五郎との恋が実を結ばない。ところが、隣室の洋さん〔谷洋吉〕(桂小金治)から五郎の気
 持を聞き、九州へ五郎を追跡する。洋さんは五郎の軍隊における元上官であり、奇癖として「貸間札」
 をつることが大好きである。同宿人のひとりであるお千代さん〔村上千代〕(乙羽信子)の送別会、
 ユミ子と五郎の取持ちと大活躍する好人物である。お千代さんは恋人との結婚費用を稼ぐため、アパ
 ートを根城に旦那三人を交替制でたらい廻ししている相当な人物だ。このお千代を脅迫しては五郎に
 とっちめられているハラ作〔西原作一〕(藤木悠)は下着泥棒の容疑で刑事に追われている。洋酒ブ
 ローカーの島ヤスヨ(清川虹子)は権田(福山博寿)を情夫に持ちながらちょいちょい五郎に色目を
 使う絶倫ぶり。だが密売で挙げられた。この屋敷の持主は独り暮しの御隠居さん(沢村いき雄)。同
 宿人のひとりである熊田寛造(山茶花究)が拵えた不老長寿、強壮ゼリーの薬に飛びついたりして俗
 気十分である。奥の間に住む古物商の宝珍堂(渡辺篤)もこの愛用者でゼリーを密かにヘソに塗って
 はいるが、効目なく若い女房のお澄(西田慶子)に悲鳴をあげている。この屋敷の賄い一切を引受け
 ているのがおミノ婆さん(浪花千栄子)、お千代から記念に貰ったテレビを止宿人たちに観せて銭を
 取ろうという勇ましい婆さんである。このように変り物の集団の奇妙奇天烈な生活にも春が来て、冬
 が訪れる。人間の品位、仮面などをさらりと捨てた男女の物語ではある。

 他に、益田キートン(野々宮真一=同宿人のひとりである保険の勧誘員)、加藤春哉(高山彦一郎=同じ
く同宿人の学生)、市原悦子(その妻である教子)、西山ヒノデ(岸山=お千代の旦那のひとり)、宮谷春
夫(四方山=同)、青山正夫(菩提寺=同)、長谷川みのる(刑事)などが出演している。
 井伏鱒二の訳詩である于武陵の「勧酒」の一節「サヨナラダケガ人生ダ」がさりげなく採り上げられてお
り、比較的に若くして逝った川島雄三の叙情を排した人生観が看て取れる。なお、ユミ子が借りた部屋の権
利金は2万円、一ヵ月の家賃が4,000円である。ちなみに、昭和30年代の前半までは、「貸間あり」や「空
間あり」などの札は珍しくなかったと思う。蛇足だが、昔あるカント学者が、この「空間あり(あきまあり)」
を「空間あり(くうかんあり)」と読んで、「確かにそうだ」と腑に落ちた由。作り話かもしれないが、小
生にとっては、けっこう興味深い逸話ではある。


 某月某日

 さて、恒例の2015年上半期(1月-6月)観賞映画(邦画、限定)ベスト10を発表しよう。今年の上半期に
鑑賞した邦画は87本(昨年96本、9本減)だった。年間目標の200本をクリアーするためには、下半期に113
本鑑賞しなければならない。例年、下半期に挽回して何とか年間目標を達成しているので、その伝で行こう
と思う。

 1位 『東京難民』、監督:佐々部清、「東京難民」製作委員会〔キングレコード=ファントム・フィルム=
   シネムーブ〕、2014年。
 2位 『そこのみにて光輝く』、監督:呉美保、「そこにのみて光り輝く」製作委員会〔TCエンターテイン
   メント=スクラムトライ=函館シネマアイリス=TBSサービス=ひかりTV=ギャビット=TBSラジオ=
   太秦=WIND〕、2014年。
 3位 『野獣死すべし』、監督:須川栄三、東宝、1959年。
 4位 『大悪党』、監督:増村保造、大映東京、1968年。
 5位 『ハウルの動く城』、監督:宮崎駿、「ハウルの動く城」製作委員会〔徳間書店=日本テレビ放送網=
   電通=ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント=ディーライツ=東宝〕、2004年。
 6位 『たそがれ酒場』、監督:内田吐夢、新東宝、1955年。
 7位 『シャブ極道』、監督:細野辰興、大映、1996年。
 8位 『脳男』、監督:瀧本智之、「脳男」製作委員会〔日本テレビ放送網=日活=ジェイ・ストーム=
   東宝=読売テレビ放送=バップ=講談社=読売新聞社=GyaO!=札幌テレビ=ミヤギテレビ=静岡第一
   テレビ=中京テレビ=広島テレビ=福岡放送〕、2013年。
 9位 『超高速! 参勤交代』、監督:本木克英、「超高速! 参勤交代」製作委員会〔松竹=テレビ東京=
   博報堂=ケイファクトリー=松竹ブロードキャスティング=講談社=キングレコード=福島民報社〕、 
   2014年。  
 10位 『おこんじょうるり』、監督:岡本忠成、桜映画社=エコー社、1982年。

 以上である。なお、『テルマエ・ロマエ II』(監督:武内英樹、フジテレビ=東宝=電通=KADOKAWA、
2014年)、『博奕打ち 総長賭博』(監督:山下耕作、東映京都、1968年)、『WOOD JOB! 神去なあなあ日
常』(監督:矢口史靖、「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」製作委員会〔TBSテレビ=博報堂DYメディアパー
トナーズ=日活=東宝=徳間書店=MBS=CBC=RKB=朝日新聞社=HBC=TBC=SBS=RCC〕、2014年)、『プ
ラチナデータ』(監督:大友啓史、「プラチナデータ」製作委員会〔東宝=電通=ジェイ・ストーム=幻冬
舎=ジェイアール東日本企画=日本出版販売=Yahoo! JAPANグループ〕、2013年)、『民暴の帝王』(監督:
和泉聖治、東映京都、1993年)、『体脂肪計タニタの社員食堂』(監督:李闘士男、「体脂肪計タニタの社
員食堂」製作委員会〔角川書店=ピクニック=大和書房=文化放送=ローソン=アマゾン ジャパン=ソニ
ーPCL=メーテレ=ポルテッロFM=讀賣新聞社=協同宣伝=パレード〕、2013年)〔「メーテレ」の「ー」は、
実際には波線。文字化けするので、音引で代用した〕、『まほろ駅前多田便利軒』(監督:大森建嗣、「ま
ほろ駅前多田便利軒」製作委員会〔フィルムメイカーズ=アスミック・エース エンタテインメント=ハピ
ネット=日活=TSUTAYAグループ=Yahoo! JAPAN=ヨアケ=リトルモア〕、2011年)、『キツツキと雨』(監
督:沖田修一、「キツツキと雨」製作委員会〔角川映画=オフィス・シロウズ=関西テレビ放送=衛星劇場=
トライストーン・エンタテイメント=NTT DOCOMO=Yahoo! JAPAN=読売新聞社=パレード〕、2011年)、
『奇跡のリンゴ』(監督:中村義洋、『奇跡のリンゴ』製作委員会〔東宝=博報堂DYメディアパートナーズ=
幻冬舎=KDDI=ジェイアール東日本企画=読売新聞社=Yahoo! JAPANグループ〕、2013年)、『私の男』
(監督:熊切和嘉、「私の男」製作委員会〔ハピネット=日活=マックレイ=ドワンゴ=GyaO!〕、2013年)、
『十兵衛暗殺剣』(監督:倉田準二、東映京都、1964年)、『不良少年』(監督:羽仁進、岩波映画製作所、
1961年)、『カラスの親指』(監督:伊藤匡史、「カラスの親指」フィルムパートナーズ〔フォックス・イ
ンターナショナル・プロダクションズ=20世紀フォックス映画=20世紀フォックスホームエンタテイメント
ジャパン=キングレコード=ファントム・フィルム=日活=電通=衛星劇場=KDDI〕、2012年)などの作品
も面白かったが、ベスト10にはやや及ばなかった。もちろん、例によって小生の好みが100パーセント反映
しているので、極めて恣意的なベスト10であることをお断りしておく。なお、今年の映画鑑賞の中心ジャン
ルは「アニメ・SF・特撮」であるが、文字通りの意味でのその手の作品では、新旧のアニメ作品が2本ベス
ト10入りした。まったく味わいの異なる二作品であるが、両者ともに捨て難い魅力を備えていると思う。

                                                  
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