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日日是労働セレクト148
日日是労働セレクト149
驢鳴犬吠1806
日日是労働セレクト85
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第85弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト85」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 DVDで邦画の『森繁のやりくり社員』(監督:渡辺邦男、新東宝、1955年)を観た。「森繁」の冠がついて
いる新東宝の映画は当該作品で3本目だが、前2作と比べてあまり成功しているとは思えない。「ミュージ
カル喜劇」といったジャンルに属するのだろうが、主人公の失敗ぶりが痛々しくて笑えないからである。ラ
ジオ番組のプロデューサーという、当時としては花形の仕事を職業にしている男が主人公だが、ことごとく
スポンサーに逃げられる失態が描かれている。後の植木等が演じたサラリーマンは失敗しても明るかったが、
森繁演じる主人公はどこまでもみじめである。時代の相違かもしれない。しかし、妻の蓮子を演じた杉葉子
が明るいので救われるといったところか。主人公は最後に「専業主夫」になるが、共稼ぎ夫婦のあり方とし
ては先駆的かもしれない。物語を確認しておこう。例によって、〈goo 映画〉のお世話になる。執筆者に感
謝したい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

  東西放送広告社のプロデューサー森岡繁(森繁久彌)は、どうも仕事ぶりが芳しくない。社長の園
 田カンナ女史(暁テル子)はなかなかの強者で、森岡には苦手の存在だったが、ある日彼が新規に契
 約したポポナ化粧品の番組にカンナ社長自ら出演すると大張切りで、その交換条件に森岡には若草も
 ゆる(遠山幸子)という可憐な助手がつけられた。ところがカンナ女史歌う「情熱のカンナ」がワイ
 セツじみてしまい、ポポナの野村宣伝部長(江川宇礼雄)のカンにさわり、彼はそこに勤める森岡の
 妻蓮子(杉葉子)に、そうとは知らず森岡に電話で文句をいわせる。そこで夫婦の珍妙な喧嘩が展開
 されたが、森岡の仕事は滅茶苦茶になってしまった。しかもあるとき、カンナ社長が、「明日は契約」
 といったところまでこぎつけた鳩屋蚊取線香の社長(益田キートン〔喜頓〕)が、歌手の谷間百合子
 (新倉美子)にいい寄る現場を目撃した森岡は、憤慨して契約を破棄してしまい、責任上会社をやめ
 る破目に陥ってしまった。妻の蓮子は何かと森岡を励まし、屋台で酒をおごってはとかく沈み勝ちな
 森岡に活を入れるのだった。暫くして蓮子はミス・ポポナに選ばれ、それを機会に森岡もポポナ化粧
 品提供の放送劇を演出することになったが、主役が時間を守らないことからまたもオジャンになって
 しまった。しかし蓮子の方が放送で大活躍するようになり、逆に森岡がアパー卜で食事の支度に忙し
 い。すっかり立場が逆転してしまった(当時はまだ、男が料理をしている姿は「情けない」と看做さ
 れていた)。ガスコンロの鍋を見ながら森岡は、ラジオから流れる蓮子の声に拍手を送るのだが、や
 がて彼の口からも歌声が流れるのだった。

 他に、高島忠夫(青柳=森岡の後輩)、久保菜穂子(松野みどり=青柳の恋人)、相馬千恵子(松浦貞子=
女優)、小笠原弘(加賀=森岡の大学時代の同窓生)、高田稔(ツルカメヤの重役)、廣瀬恒美(同)、岡
譲司(ピントカメラの重役)、東山千栄子(水田やす子=ラジオ放送劇の役者)、千田是也(花木章吉=同)、
岸井昭(巡査)、阿部九州男(銭屋六兵衛)、花岡菊子(芸者)、徳大寺君枝(屋台のおばさん)、山室耕
一(山麓の百姓)などが出演している。なお、森岡役(新潟県柏崎出身という設定)の森繁久彌と、巡査役
(新潟県佐渡出身という設定)の岸井明との遣り取りがなかなかいい。
 繁と蓮子の夫婦は、スイート・ホーム建設のために、いろいろ取り決めをしているが、その一部を下に記
してみよう。ほとんど手を加えていない。なお、旧字(正字)は現行の文字に改めた。

    労働二関スル正当ナル報酬

  寝具整頓料               5yen
  洗濯 はだ着類             5yen
     ユカタ
     寝マキ類             10yen
  茶沸シ手数料              5yen
  炊事用品買出シ手数料        10yen
  炊事料                  15yen
  食器アト始末料             10yen
  代食注文手数料            10yen
  アイロンカケ
     肌着類               5yen
     洋服類               10yen
  掃除 ハタキ ハキダシ       10yen
     ゾウキンガケ           15yen
  干シ物トリ込ミ料            5yen
  ツクロイモノ
     ボタン他小物           5yen
     ミシン程度ニ依リ         時価
  弁当ツメ料                5yen
  洋服、着物着セカケ料        5yen
  家事万タン質問料           5yen
  ラヂオ希望番組聴取料
      三十分毎ニ           10yen
  金魚水トリカエ料            5yen
  戸ジマリ手数料             5yen

 ざっとこんな按排である。なお、さらにこんな貼り紙が部屋に貼ってある。

   毎朝起サレテ起床セシ者ニハ
   怠惰ニ流レタルモノト認メ
   発奮料金百円也ヲ課ス。 
   繁、蓮子 共同声明

   厳守ノコト 定時6時30分
   理由ナキ遅刻帰宅ニハ
   一金、五百円也ノ罰金ヲ課ス。
   夫繁 妻蓮子

 なお、繁の少年の日の夢は、「丘の上の赤い屋根の大邸宅に住み、そこには自動車、プール、テニスコー
トなどがあり、それに加えて、たんまりオアシ(札束)の入った大金庫がある生活をすること」だそうであ
る。典型的な現世的幸運に恵まれれば、まんざらそのような夢の実現もあり得ないわけではないだろうが、
「だからどうした」と言いたくなる。小生のやっかみだろうか。


 某月某日

 DVDで邦画の『東京ドドンパ娘』(監督:井田探、日活、1961年)を観た。渡辺マリの同名のヒット曲の映
画化である。歌謡曲の「東京ドドンパ娘」(作詞:宮川哲夫、作曲:鈴木庸一、唄:渡辺マリ、1961年)の
方はリアルタイムで知っているが、洋楽のリズムである「マンボ」と日本のリズムである「都々逸」とが融
合して生れた和製ポップスであるという認識はなかった。たしかに、小生が幼稚園に通っていた頃、「マン
ボ、マンボ、ヘイ、マンボ」などと叫びながら踊っていた自分を覚えている。だいぶ、流行していたのであ
ろう。さて、物語を確認しておこう。例によって〈goo 映画〉を参照する。なお、一部改変したが、ご寛恕
を乞う。

  ダイヤモンド・レコードの社長鶴野亀三郎(嵯峨善兵)は高血圧のため自宅療養を続けることにな
 った。喜んだのは専務の小松(森川信)と文芸部長の木原(神戸瓢介)だ。社長には息子がいないの
 で社長の座は自分たちにまわってくると睨んだからだ。ところが社長に呼ばれた小松はビックリ仰天。
 二十数年前にできた男の隠し子を探し出して社長にするというのだ。この小松と木原に悪智恵をつけ
 たのがヤクザの親分の悪津(由利徹)である。悪津は彼の子分の並木五郎(沢本忠雄)を鶴野の隠し
 子桜井光彦に仕立ててしまった。親子の対面も小松たちの巧妙な芝居で成功した。五郎は若社長にな
 りすまし毎日中味をろくに見もしないで書類に判を捺す生活が始った。こんな五郎の姿に心を痛めて
 いるのが恋人の吉田京子(香月美奈子)だった。彼女は父の松造(杉狂児)が元刑事で厳格なため、
 やくざな五郎との仲を打ちあけられないでいた。一方、鶴野家の執事竹造(河上信夫)は五郎に疑い
 を抱き、友人の松造に調査を依頼していた。小松は会社乗取りのために、わざと会社の損失になるよ
 うなことばかりしていた。その結果、作曲家の池田(三国一朗)や人気歌手の美鳩ゆかり(水森亜土)、
 大林(宮川敏彦)らがイミテーション・レコードに移っていった。これをみた熱血社員の三宅(逗子
 とんぼ)は怒りを爆発、五郎と大喧嘩になった。だが、若い二人は殴り合っているうちに憎悪を超越
 した友情を感じあった。三宅の言葉に真相を知った五郎は会社を昔のように繁栄させようと一生懸命
 になった。そんなところに鶴野の娘恵美(田代みどり)が友人の渡井マリ(渡辺マリ)を連れて来た。
 マリの唄う「東京ドドンパ娘」の売り込みである。忙しい五郎はとりあおうともしなかった。五郎と
 三宅は退社した作曲家や歌手に復帰を口説いてまわった。復帰交渉は全部だめだった。力つきた五郎
 の目にマリがおいていった一枚の楽譜があった。五郎はマリを呼んでレコードにふきこんだ。この曲
 は世紀の大ヒットとなった。会社は黒字になった。松造の調査で小松と木原は逮捕され、また五郎は
 本当に鶴野の実子であることがわかった。鶴野は引退して五郎が会社を継ぐことになった。嬉しそう
 にみつめる京子、恵美、三宅の顔。マリの「東京ドドンパ娘」は広い広い東京の空に流れてゆくのだ
 った。

 他に、小園蓉子(鶴野郁代=恵美の母親)、南利明(ジェリー横溝=イミテーション・レコードの極東支
配人)、武智豊子(おうめ=鳩の豆売り。光彦に関する事情通)、野呂圭介(支配人)などが出演している。
昨日、『松川事件』(監督:山本薩夫、松川事件劇映画製作委員会、1961年)に言及したが、同じ年に製作
されたとは思えないほど、両者は対照的である。まさに、日本の「光と影」といったところか。


 某月某日

 「小夏の映画会」(代表:田辺浩三)が主催した上映会で、『にっぽん泥棒物語』(監督:山本薩夫、東
映東京、1965年)を観てきた。1965年の東映作品なので、ひょっとしたら子どもの頃(小学5年生頃)映画
館で観ているかもしれないと思ったが、まったく覚えているシーンがなかったので、たぶん初見であろう。
だいいち、このシニカルな映画を子どもが理解することは難しいだろう。「泥棒」がひとつのモチーフとな
っているが、それはカモフラージュで、実は「松川事件」外伝みたいなものを撮りたかったのではないのか。
実際、山本監督は、当該作品を撮る前に、そのものずばりの『松川事件』(監督:山本薩夫、松川事件劇映
画製作委員会、1961年)を撮っている。「小夏の映画会」でいただいたパンフレットがあるので、その一部
を転載させていただく。関係者、とくに奇特な上映会を開催していただいた田辺氏に、深甚なる謝意を表し
たい。なお、一部改変したが、ご海容いただきたい。

   にっぽん泥棒物語 一九六五年/東映東京作品

  検事たちのデッチあげ論告に泥棒の論理で対峙するところが、痛烈な権力風刺になっている。山本
 薩夫監督の喜劇面での才能を示す代表作の一つ。

   〔あらすじ〕(〈goo 映画〉の「あらすじ」とほぼ同文)

  窃盗、強盗、置き引き、泥棒の種類も多い中で、林田義助(三国連太郎)は、そのトップクラスの
 「破蔵師(むすめし)」である。狙いをつけた家を詳細に調べあげた末、土蔵に穴を開けて品物をリ
 レーで運び出すと、「ずや師」と呼ばれる盗品買いの処へもっていき現金に代えるのだ。義助が前科
 四犯の破蔵師になったのは歯科医の父が死んだあと、母や幼い弟妹を養うため。歯科医を継ぐが、戦
 争で薬が手に入らず、この商売に入ったのだった。こんな義助がある時仲間たちと温泉に遊びにいき、
 芸者桃子(市原悦子)に見染められ世帯をもつことになった。里帰りする桃子に、手土産をと、盗品
 を渡したのが、義助にケチをつけ、苦手の安東刑事(伊藤雄之助)につかまって拘置所いきとなった。
  拘置所内で知り合い義助のもとに弟子入りした自転車泥棒の馬場庫吉(江原真二郎)は、保釈にな
 ると義助の指示で呉服屋に忍びこみ、巡回中の消防団に追われる破目となった。庫吉と別れて線路づ
 たいに逃げた義助は、九人の大男とすれちがった。その夜明けのこと、大音響とともに杉山駅で列車
 転覆事故が起こった。桃子に訴えられて刑務所に行った義助は、杉山駅列車転覆事件の犯人だという
 三人の男に会った。だがその中には小男と足の不自由な男がいた。無実を訴える三人の男を見て、義
 助はあの夜会った九人の男が犯人ではないかと、不蕃を抱いた。
  やがて、堅気になる決心で出所した義助は、ダム工事場で働くとともに、はな(佐久間良子)と結
 婚し、子供も生れた。平和な生活の中で、義助は前科を隠すことに苦心した。だが、昔の仲間の菊地
 浩一(花沢徳衛)の弟で、あの事件で国鉄を馘となった菊地健二(山本勝)が、東京の弁護士の藤本
 (加藤嘉)を同伴して、杉山事件の目撃者として証人になって欲しいと訪ねて来た。義助は、安東刑
 事から「あの犯行は三人でやった」と言わなければ、はなに前科をばらすと脅かされていた。自分の
 生活を守るため、藤本らの話を蹴った義助だが、無実の三人が十年の刑を終えたのを聞くと、決心を
 して、東北高等裁判所へとんだ。あの晩の見たままを語る義助に、安東刑事は、彼の前科をあばいた
 が、傍聴席から、目顔で応援するはなを見た時、義助は堂々と証言し、差戻審裁判長(永井智雄)は、
 義助の証言を全面的にとりあげた。

 他に、北林谷栄(義助の母)、緑魔子(林田ふく子=義助の妹)、五月藤江(はなの母)、鈴木瑞穂(木
村信=無実の罪で服役した男のひとり)、金子吉延(その息子)、山本麟一(田島=ダム現場で義助によっ
て歯の治療を受けた男)、河合絃司(広川巡査)、吉田義夫(かめや主人)、潮健児(川上=義助の泥棒仲
間のひとり)、沢彰謙(鶴岡質屋の主人)、千葉真一(大木弁護士)、室田日出男(斎木記者)、岡野耕作
(石山支局員)、北川恵一(大庭)、杉義一(長谷川)、戸田春子(義助の治療を受ける老婆)、田川恒夫
(検問所巡査)、杉狂児(同)、今井健二(若い刑事)、加藤武(田村検事)、大村文武(高山検事)、大
木史朗(盗難調べの刑事)、打越正八(ダム工事の作業員)、久地明(同)などが出演していた。
 なお、「小夏の映画会」のパンフレットには、飯田心美氏の解説が載っているので、これも転載させてい
ただく。若干の言葉遣いを替えさせていただいたが、お許し願いたい。

  山本薩夫一行が「松川事件」を撮っていたとき聞き込んだ実話を土台にしたものだそうだが、たい
 へん変った話である。
  主人公は土蔵やぶり専門の泥棒で、これが仕事に失敗し逃走途上で列車転覆の下手人九名とパッタ
 リ会う。後に犯人として逮捕された青年達が果して真犯人かどうかで法廷上の問題となり検事側と弁
 護団のあいだで争われ十数年にわたる迷宮事件となったわけだが、その有力な証拠をにぎる男が前記
 の泥棒で自分の前歴がバレることにより、せっかく築いた平和な生活が崩れるのを怖れ、証人になる
 のをためらうという筋だ。主人公本位に考えればもっともなことでその小さな世界を守ろうとする庶
 民性とその人柄をユーモラスに描いているため魅力ある人間喜劇になっている。
  いちばんのヤマ場はラストちかくの法廷で、ひとたびは自己の安泰を計るため検事側のつくり上げ
 た犯人説に同調、偽証で逃げようとした彼が無実の罪をきせられる被告たちを見るに忍びず、ついに
 真相を語ってしまうくだりであろう。ここへ来るとさすがに画面は諷刺喜劇の辛辣さを帯び、検察暴
 露の調子となるが分量的にいうと作品の大半は人間喜劇の方が占めている。根本的には山本薩夫流の
 イデオロギーがあるとしても、この主人公の描き方はなかなか優れており、近来一段と増した彼の成
 長ぶりを想わせる。
  これには高岩肇と武田敦の脚本の力も与っていると思えるが、主人公が単なる空巣や窃盗ではなく
 土蔵破りの専門家にしたこと、加えて父親ゆずりの歯科医(やはり手先の技術が本命)の技を持って
 いること、これが足を洗って堅気になる意志を持っていたことや独自の泥棒気質のプライドを持って
 いたことなどが自然と人柄を出している。
  そしてそんな人柄だけにラストで真相を吐かずにいられなかった心理も肯けてくるのである。山本
 演出はこれを東北農村の後進性と土の匂いを背景に語る。
  十数年にわたる経過のため生活環境も変化するが、それを思い切った省略で片づけ、ところどころ
 に珍妙な相棒をからませてギャグを変えるあたり描写力は溌剌としている。そのタッチはけっしてス
 マートとはいえないが一流の泥臭さと滑稽さをミックスした味でイタリア農村喜劇を連想させる。
  俳優では主人公になる三国連太郎を筆頭に、花沢徳衛、江原真二郎の相棒ぶりがよく、天井裏に盗
 品を隠すくだりや露見のくだり、深夜忍び込んだ家の幼児が目を覚ましたので、仕方なく菓子をやる
 くだりなど秀逸である。ただ、台詞の発声に訓練不足で東北弁をいよいよ難解にしていた俳優がいた
 が、これは反省を要す。しかし、山本作品的に見れば「赤い陣羽織」「台風騒動記」よりも勝ってお
 り、喜劇作家としての腕前も上がっていることが分かる。

 当時東映の若手俳優だった、千葉真一〔現 JJサニー千葉〕、室田日出男、今井健二、潮健児などが出演し
ているが、皆若い。また、緑魔子が義助の妹のふく子を演じているが、まったく分からなかった。後年の個
性的な風貌ではなかったからであろう。小林稔侍も出演しているはずだが、同定できなかった。なお、松川
事件を扱った上記の映画に関しては、「日日是労働セレクト11」に小生自身の記事があるので、下に引用
してみよう。


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 某月某日

 邦画のDVDを4本観たので、その感想を少々。先ず1本目は『松川事件』(監督:山本薩夫、松川事件劇
映画製作委員会、1961年)である。 戦後の混乱期、三大鉄道事故として、「三鷹事件」、「下山事件」と並
んで、「松川事件」がある。当該作品はこの事件を正面から扱っており、主として「冤罪」の側面から描い
ている。冒頭で、「全国くまなく集められた松川映画をつくろうという会員券の結晶がこの映画を産みまし
た」とある。1949(昭和24)年から13年にも亙る法廷闘争がこの映画の中心部分をなしている。第一・第二
審で有罪であったが、この映画がつくられた二年後の1963(昭和38)年、最高裁で全員無罪が確定している。
映画の中で事件の概要が語られているので、聞き取った限りを下に写そう。

  昭和24年8月17日未明、福島県松川駅近くで、旅客列車が脱線転覆、乗務員3名が機関車の下敷きに
 なって死亡するという事故が起こりました。午前3時9分頃、東北本線青森発上野行きの旅客列車が、
 福島駅を過ぎて松川駅に近いカーブにさしかかったとき、突然轟音とともに脱線、寸時にして目を覆
 う惨事が繰り広げられました。この事件に対して、翌18日、増田官房長官が記者会見を行い、「これ
 はけして偶然に起きた事故ではない。明らかに計画的に仕組まれた犯罪である。最近、三鷹事件を初
 め、各地において頻々と起きている列車妨害事件と、その思想的底流において同じものである」と発
 言しました。事故直後より、この談話に沿って捜査が行われ、背後関係として、とくに思想関係の追
 及が行われていますが、今後の捜査方針とともにその成り行きが注目されています。この事件は、い
 ずれにしても、脱線の状況から、計画的に集団で行われた犯罪であることは誰の目にも明らかです。

 事実は事実であってそれ以外の何ものでもないが、映画を観ている限り、警察の捜査の杜撰さと検察およ
び裁判所の不手際が目立つようなつくりになっている。たとえば、取り調べに際して、警察、検察ともに、
「拷問」、「誘導」、「強迫」、「甘言」等が幅を利かしていては、不快にならない人は少ないだろう。ま
た裁判官の態度にも問題がある。第一審で判決が言い渡されたとき、5人の被告人が死刑判決だったにも拘
わらず、高倉陪席裁判官はニタニタ笑いを漏らしていたのである。これでは、たまったもんじゃないだろう。
それに比べて、弁護団の颯爽とした答弁と、被告人の真摯な態度が浮き彫りにされている。このようなあか
らさまな対比は、目的が「冤罪」晴らしであるから致し方がないだろう。これを客観的な観点からつくろう
とすることは、どだい神でもない限り不可能だからである。第一審で全員有罪であった20人の被告人のうち、
第二審で3人が無罪になるが、それぞれ第一審では、無期懲役、懲役15年、懲役12年であった。この違いは
どこから来て、どう解釈すればよいのだろう。結局全員無罪になるが、この事件のきわめて特殊な事情がそ
のような成り行きを許したのであろうとしか考えられない。いろいろな発言があったが、その中で大事だと
思われる発言を抜き書きしておこう。脈絡を無視するが、ご海容いただきたい。

  昭和二五年二月十三日
  裁判所は不思議な決定
  をした
  それは被告人赤間勝美
  を他の共同被告人十九名
  から分離した検察官証人
  として喚問するという
  決定であった

 以上のような文字が示された後のいくつかの発言

 「被告人を証人とすることは法律に認められておりません。自分が有罪判決を受ける虞のある場合は、
  証言を拒み得るような、そういう証人の適格のない被告人を証人とするようなことは、これは明ら
  かに脱法行為である。決定の異議を申し立てます」(岡林弁護人の発言)。

 「私は長い間弁護士をやってきましたが、こういう姑息な証拠採用に関係したことがありません。こ
  れは裁判長が真実の発見以外に何か抱いているものと考えます」(弁護団の一人の発言)。

 「たとえそれが共同被告人であっても、事実を知っている限りは、証人適格があるということは、検
  察官従来の主張でありまして、被告人赤間勝美を分離して、証人として取り調べることは許される
  のであります。裁判所がこれを分離されたことは当然であり、異議の理由はないものと思慮します」
  (検事の発言)。

 さらに、以下のような発言が耳に残った。

 「裁判所は議論を致しません」(裁判長の発言)。

 「警察っちゅうところは、ウソをいうためにあるんですか。また、ウソをいわせるためにあるところな
  んですか」、「警察っちゅうところは、人をいじめたり、自分の都合の悪いところは、覚えてないと
  か、忘れたと言って、ウソをつくところですか」(いずれも、被告人赤間勝美の発言)。

 「政治や思想や信仰が違うというだけで死刑にされては、これは実に大変なことでありますから、皆さ
  んの弁護を引き受けることに決心しました」(政治的には保守的立場にある弁護士の、第二審の判決
  が言い渡される日の発言)。

 宇野重吉が岡林弁護人を演じているが、すごい迫力であった。その他、福島警察署の吉田部長を演じた西
村晃や、司検事に扮した多々良純、第二審の藤木裁判長を演じた加藤嘉などが印象に残った。なお、赤間勝
美に扮した小沢弘次も熱演であった。さらに、宇津井健(大塚弁護人)、北林谷栄(被告人武田久の母シモ)、
下元勉(弁護団の一人)、殿山泰司(警察署長)、稲葉義男(刑事)、名古屋章(赤間勝美の兄)、山本学
(冤罪阻止運動を行っている学生)などが出演していた。なお、最後に以下のような文字が示されていた。

  その后検察官が隠して
  いた「諏訪メモ」が発見され
  昭和三十四年八月十日
  最高裁はこの事件を
  仙台高裁に差し戻し
  た. そして
  その判決の日は
  せまっている.

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 映画『松川事件』は裁判が結審していない1961年に作られているので、結審後に作られた『にっぽん泥棒
物語』(1965年)と違って、だいぶ緊迫した雰囲気に包まれている。なお、1963年(昭和38年)9月12日、最  
高裁は検察側による再上告を棄却し、被告人全員の無罪が確定した由(ウィキペディアより)。戦後の混乱
期における三大鉄道事故については、まだまだ真相が明らかにされていないと思う。関係者がまだ存命なの
で、なかなか難しいのだろう。しかし、歴史の真実は常に是正されるべきであるから、いずれはもう少しま
しな真相が現れるのかもしれない。それとも、すべてこの手の事件は「藪の中」で終わるのだろうか。
 「土蔵破り」のことを「破蔵師」もしくは「娘師」と呼ばれるらしいが、もともとは盗賊仲間の隠語の由。
しかし、なぜ「むすめ師」なのだろうか。また、義助が公判で関係者を笑いの渦に巻き込むが、とかく暗く
なりがちな裁判シーンで、これほどの笑いが起きたことがあるのだろうか。さらに、義助は、プロの破蔵師
として「夜中の二時以降に仕事をする者があったら、それは素人だ」と断言している。この辺りは、本物か
ら取材したネタではないだろうか。「小夏の映画会」の田辺氏によれば、三国連太郎自身が、当該作品を自
分の代表作であると語っているそうである。人間の複雑な心情を表現する上で抜群の冴えを見せる三国なら
ではの感慨であろう。なお、もう一作代表作を挙げているが、それは『夜の鼓』(監督:今井正、現代ぷろ
だくしょん、1958年)〔筆者、未見〕である。小生の印象では、『異母兄弟』(監督:家城巳代治、独立映
画、1957年)と『飢餓海峡』(監督:内田吐夢、東映東京、1965年)となるが……。


 某月某日

 DVDで邦画の『大鹿村騒動記』(監督:阪本順治、「大鹿村騒動記」製作委員会〔セディックインターナシ
ョナル=パパドゥ=関西テレビ放送=講談社=TOKYO FM=KИHO〕、2011年)を観た。原田芳雄の遺作な
のでぜひ観たいと思っていた。小生としては満足である。彼のデビュー作である『復讐の歌が聞こえる』
(監督:貞永方久/山根成之、松竹=俳優座、1968年)も最近になって観たので、彼の40年以上に及ぶ俳優
人生に「お疲れさん」を言いたい気分である。小生の鑑賞済みの彼の出演映画50本ばかりを、ざっと下に挙
げておこう。なお、資料としては、主に〈ウィキペディア〉と『ぴあ シネマクラブ』のお世話になった。

 『復讐の歌が聞える』(監督:貞永方久/山根成之、松竹=俳優座、1968年)。 竹中克己 役
 『反逆のメロディー』(監督:澤田幸弘、日活、1970年)。 塚田哲 役
 『野良猫ロック 暴走集団'71』(監督:藤田敏八、ホリプロ=日活、1971年)。 ピラニア 役
 『八月の濡れた砂』(監督:藤田敏八、日活、1971年)。 神父 役
 『竜馬暗殺』(監督:黒木和雄、映画同人社=ATG、1974年)。 坂本竜馬 役
 『田園に死す』(監督:寺山修司、人力飛行機舎=ATG、1974年)。
 『修羅雪姫 怨み恋歌』(監督:藤田敏八、東京映画、1974年)。
 『祭りの準備』(監督:黒木和雄、綜映社=映画同人社=ATG、1975年)。 中島利広 役
 『君よ憤怒の河を渉れ』(監督:佐藤純彌、永田プロ=大映、1976年)。
 『やさぐれ刑事』(監督:渡辺祐介、松竹、1976年)。 西野剛 役
 『はなれ瞽女おりん』(監督:篠田正浩、表現社、1977年)。
 『悲愁物語』(監督:鈴木清順、松竹=三協映画、1977年)。
 『原子力戦争 LOST LAVE』(監督:黒木和雄、ATG=文化企画プロ、1978年)。
 『柳生一族の陰謀』(監督:深作欣二、東映京都、1978年)。 名護屋山三郎 役
 『闇の狩人』(監督:五社英雄、俳優座=松竹、1979年)。 谷川弥太郎 役
 『ツィゴイネルワイゼン』(監督:鈴木清順、シネマ・プラセット、1980年)。
 『ヒポクラテスたち』(監督:大森一樹、シネマハウト=ATG、1980年)。 徳松助 役
 『陽炎座』(監督:鈴木清順、シネマ・プラセット、1981年)。 和田 役
 『スローなブギにしてくれ』(監督:藤田敏八、角川春樹事務所、1981年)。
 『さらば箱舟』(監督:寺山修司、劇団ひまわり=人力飛行機舎=ATG、1982年)。 時任大作 役
 『TATOO〈刺青〉あり』(監督:高橋伴明、国際放映=高橋プロ=ATG、1982年)。
 『水のないプール』(監督:若松孝二、若松プロ、1982年)。
 『卍』(監督:横山博人、東映、1983年)。
 『海燕ジョーの奇跡』(監督:藤田敏八、三船プロ=松竹富士、1984年)。
 『生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言』(監督:森崎東、キノシタ映画、1985年)。 宮里 役
 『友よ、静かに瞑れ』(監督:崔洋一、角川春樹事務所、1985年)。 高畠次郎 役
 『コミック雑誌なんかいらない!』(監督:滝田洋二郎、ニュー・センチュリー・プロデューサーズ、
  1985年)。 プロデューサー 役
 『TOMORROW 明日』(監督:黒木和雄、ライトヴィジョン=沢井プロダクション=創映新社、1988年)。
  山口 役
 『出張』(監督:沖島勲、アーバン21、1989年)。
 『どついたるねん』(監督:阪本順治、荒戸源次郎事務所、1989年)。 左島牧雄 役
 『浪人街』(監督:黒木和雄、山田洋行ライトヴィジョン=松竹=日本テレビ、1990年)。 荒牧源内 役
 『われに撃つ用意あり』(監督:若松孝二、松竹=若松プロ、1990年)。
 『鉄〈TEKKEN〉拳』(監督:阪本順治、荒戸源次郎事務所、1990年)。 滝浦勇 役
 『夢二』(監督:鈴木清順、荒戸源次郎事務所、1991年)。 脇屋宗吉 役
 『寝盗られ宗介』(監督:若松孝二、バンダイ、1992年)。
 『白痴』(監督:手塚眞、手塚プロ、1999年)。
 『PARTY7』(監督:石井克人、東北新社、2000年)。 キャプテンバナナ 役
 『KT』(監督:阪本順治、「KT」製作委員会、2002年)。 神川昭和 役
 『凶気の桜』(監督:薗田賢次、東映=テレビ朝日=東映ビデオ、2002年)。 青田修三 役
 『美しい夏キリシマ』(監督:黒木和雄、ランブルフィッシュ、2002年)。 日高重徳 役
 『昭和歌謡大全集』(監督:篠原哲雄、光和インターナショナル=バンダイビジュアル、2002年)。
  金物屋の店主 役
 『ニワトリはハダシだ』(監督:森崎東、シマフィルム=ビーワイルド=衛星劇場、2003年)。 大浜守 役
 『父と暮せば』(監督:黒木和雄、衛星劇場 他、2004年)。 竹造 役
 『IZO』(監督:三池崇史「IZO」パートナーズ、2004年)。
 『亡国のイージス』(監督:阪本順治、松竹 他、2005年)。 梶本幸一郎 役
 『オリヲン座からの招待状』(監督:三枝健起、東映 他、2007年)。
 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(監督:若松孝二、若松プロダクション=スコーレ、2007年)。
  ナレーション
 『火垂るの墓』(監督:日向寺太郎、「火垂るの墓」フィルム・パートナーズ、2008年)。 西宮 役
 『歩いても 歩いても』(監督:是枝裕和、「歩いても 歩いても」製作委員会、2008年)。 横山恭平 役
 『大鹿村騒動記』(監督:阪本順治、「大鹿村騒動記」製作委員会、2011年)。 風祭善 役

 以上である。さて、肝心の当該映画であるが、しっとりとした味わいの「大人の映画」である。大楠道代
や岸部一徳との息もぴったりで、最後にいい映画に出演してよかったと思う。公開3日後に亡くなったらし
いが、彼の仁徳のなせる業であろう。物語を確認しておこう。例によって、〈goo 映画〉のお世話になる。
執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

  雄大な南アルプスの麓にある長野県大鹿村でシカ料理店「ディア・イーター」を営む初老の男、風
 祭善(原田芳雄)は、300年以上の歴史を持つ村歌舞伎の花形役者である。ひとたび舞台に立てば、見
 物の声援を一身にあびる存在である。だが実生活では女房に逃げられ、あわれ独り身をかこっていた。
 そんなある日、公演を5日後に控えた折も折、18年前に駆け落ちした妻の貴子(大楠道代)と幼なじ
 みの能村治(岸部一徳)が帰ってくる。脳の疾患で記憶をなくしつつある貴子をいきなり返され、途方
 に暮れる善。強がりながらも心は千々に乱れ、ついには芝居を投げ出してしまう。仲間や村人たちが
 固唾を呑んで見守るなか、刻々と近づく公演日。そこに大型台風まで加わって……。ハテ300年の伝統
 は途切れてしまうのか、小さな村を巻き込んだ大騒動の行方やいかに……。

 他に、 佐藤浩市(越田一平=バスの運転手)、松たか子(織井美江=村役場の職員)、瑛太(柴山寛治=
郵便配達人)、石橋蓮司(重田権三)、三國連太郎(津田義一=貴子の父、大鹿歌舞伎保存会会長)、冨浦
智嗣(大地雷音=性同一性障害に悩む青年)、小倉一郎(柴山満)、でんでん(朝川玄一郎)、加藤虎ノ介
(平岡健太)、小野武彦(山谷一夫=観光旅館「山塩館」の主人)などが出演している。貴子の父がシベリ
アに抑留されていた話や、貴子の惚けぶりや、「馬鹿鍋はじめました」の宣伝文が面白かった。歌舞伎十八
番の『景清』もなかなか決まっていたと思う。とにかく、この映画は好きな俳優ばかり出ているので、それ
だけでも楽しかった。なお、蛇足であるが、大楠道代は亡くなった小生の母親と顔の輪郭が似ているので、
いつ観ても泣けてくる。


 某月某日

 DVDで邦画の『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(監督:深作欣二、松竹、1994年)を観た。何とも評価しにくい映
画で、面白いことは面白いが、物語は破綻に近い。高岡早紀の豊満な乳房が見所と書いたら、怒られるだろ
うか。「松竹創業100年記念映画」と銘打たれているせいか、大した作品でもないのに「1994年度キネマ旬
報日本映画ベストテン第2位」、「同読者選出日本映画ベストテン第2位」を獲得している。物語を記して
おこう。例によって、〈goo 映画〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご海容
いただきたい。

  元禄14年、江戸城松の廊下で、吉良上野介(田村高廣)に刃傷を起こした赤穂藩藩主の浅野内匠頭
 (真田広之)は切腹、赤穂藩はお取り潰しとなった。堀部安兵衛(渡瀬恒彦)、高田郡兵衛、片岡源
 五衛門ら江戸詰の藩士たちは大挙して赤穂城へ舞い戻るが、家老の大石内蔵助(津川雅彦)の反応は
 冷ややか。浪人となった藩士には厳しい生活が待ち受けており、2カ月前に召し抱えられたばかりの
 民谷伊右衛門(佐藤浩市)も父親譲りの琵琶を奏で、仲間の横川勘平(火野正平)や右衛門七らとと
 もに門付けに立ち生計を立てていた。そんな伊右衛門は、彼を熱い視線で見守る湯女のお岩(高岡早
 紀)に出会い、ほどなく一緒に暮らすようになる。お岩に魅かれている湯女宿の番頭の宅悦(六平直
 正)は彼女を強引に連れ戻そうとするが不首尾に終わった。その頃いつものように鬼子母神の境内で
 琵琶を奏でていた伊右衛門たちは、打ち掛けを羽織り、笛や太鼓を鳴らす侍女たちを従えたお梅(荻
 野目慶子)の一行に出くわす。一行にからんできた酔っ払いを一閃のうちに倒した伊右衛門を、恍惚
 の声を挙げ見つめるお梅。その夜、お梅の祖父である伊藤喜兵衛(石橋蓮司)が大金を持って伊右衛
 門の家を訪ねてくるが、喜兵衛は吉良家の家臣であった。刃傷沙汰から1年、内蔵助はようやく討ち
 入りする腹を決め、江戸にいた安兵衛や伊右衛門たちにも招集の声がかかる。お岩は伊右衛門の子を
 身籠ったことを打ち明けるが、仇討ちが待っている自分はいずれ死ぬ身と伊右衛門は拒絶。だが、強
 行派の郡兵衛が仲間から脱落することを知り呆然となる。同志たちが次々と京に集まり、決起の宴を
 開いている頃、伊右衛門は喜兵衛の家にいた。彼はお岩と別れお梅と一緒になる交換条件として、吉
 良家の家臣に推挙してほしいと告げた。狂喜するお梅。一方、お岩のもとには宅悦が現れ、伊右衛門
 から預かったという安産の薬をお岩に飲ませる。だがそれは、喜兵衛の策略による顔を溶かす毒薬で
 あった。もだえ苦しみ、息絶えるお岩。その日のうちにお梅と祝言を挙げた伊右衛門の寝間に、その
 お岩の亡霊が現れた。吉良家の清水一学(蟹江敬三)は伊右衛門に、仕官の土産として川崎の平間村
 に入った内蔵助を倒せと命じる。浪士たちが警護する中、伊右衛門は半ば死ぬ覚悟で内蔵助と対峙す
 るが内蔵助は斬れず、また自分も浪士たちに襲われながら逃げのびる。だが彼はもう半ば死んだ身で
 あった。討ち入り当日、吉良屋敷へ内蔵助以下赤穂四十七士が押し寄せるが、伊右衛門の姿は彼らに
 は見えない。そして、その討ち入りを亡霊となったお岩が手助けしていた。無事討ち入りを果たした
 後、互いに死んで晴れてお岩と一緒になった伊右衛門の奏でる琵琶の音のみが、かつての同志たち四
 十七士のもとに届いた。

 他に、渡辺えり子(お槇=お梅の侍女)、近藤正臣(民谷伊織=伊右衛門の父)、名取裕子(浮橋太夫)、
菊池麻衣子(おかる)、奥村公延(右衛門七の父)、下元勉(赤穂藩の家臣の一人)などが出演していた。
内蔵助の「遊行の金は貸すが、暮らしの金は貸せぬ」という台詞は少し面白かった。遊行の金は使いきった
とき、すでに両者ともに忘れているが、暮らしの金は一生その人間を縛り、卑屈にし、やがて裏切るからで
ある。小生もまったく同感である。


 某月某日

 昨日、若松孝二監督が亡くなったらしい。享年、76歳。彼はピンク映画でデビューしたが、それは成り行
きで、むしろ「政治」が彼の映画のテーマだったと思う。初期のピンク映画を何本か観ているが、官能的な
場面はほとんどなく、彼独特のメッセージが籠められた政治映画だった。まだまだ精力的に新作を発表して
くれると思っていたので、残念である。以下に、小生が鑑賞した映画18本を記しておく。合掌。

 『胎児が密猟する時』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1966年。
 『犯された白衣』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1967年。
 『狂走情死考』、監督:若松孝二、若松プロ、1869年。
 『裸の銃弾』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1969年。
 『処女ゲバゲバ』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1969年。
 『理由なき暴行』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1969年。
 『現代好色伝/テロルの季節』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1969年。
 『ゆけゆけ二度目の処女』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1969年。
 『新宿マッド』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1970年。
 『性賊/セックスジャック』、監督:若松孝二、若松プロダクション、1970年。
 『天使の恍惚』、監督:若松孝二、若松プロダクション=ATG、1972年。
 『水のないプール』、監督:若松孝二、若松プロ、1982年。
 『われに撃つ用意あり READY TO SHOOT』、監督:若松孝二、松竹=若松プロ、1990年。
 『寝盗られ宗介』、監督:若松孝二、バンダイ、1992年。
 『完全なる飼育 赤い殺意』、監督:若松孝二、セディックインターナショナル=アートポート、2004年。
 『17歳の風景』、監督:若松孝二、若松プロダクション=シマフィルム、2005年。
 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』、監督:若松孝二、若松プロダクション=スコーレ、
  2007年。
 『キャタピラー(CATERPILLAR)』、監督:若松孝二、若松プロダクション=スコーレ、2010年。

 さて、DVDで邦画の『転々』(監督:三木聡、「転々」フィルムパートナーズ〔スタイルジャム=ジェネ
オン エンタテインメント=ザックコーポレーション=葵プロモーション〕、2007年)を観た。このところ、
立て続けに三木作品を観ることになったが、不思議な味わいの映画としか言いようがない作品である。得意
の小ネタもけっこう出てくるのだが、あまり笑えない。むしろじわっとした味わいの、人生の機微みたいな
ものを描きたかったのではないか。物語を確認しておこう。例によって、〈goo 映画〉のお世話になる。執
筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

  大学八年生の竹村文哉(オダギリジョー)は、いつの間にか84万円の借金をこしらえていた。返済
 期限の前日、文哉は借金取りの福原愛一郎(三浦友和)から、一つの提案を受ける。吉祥寺から霞ヶ
 関まで歩く福原の東京散歩に付き合えば、借金をチャラにするばかりか、100万円の報酬もくれると
 いうのだ。選択の余地のない文哉はそれを引き受け、井の頭公園の橋の上から、二人の散歩は始まる。
 初日の調布飛行場で、福原は妻(宮田早苗)を殺してしまい、桜田門の警視庁に自首しに行くための
 散歩であることを文哉に告げる。一方、福原の妻が勤めていたスーパーでは、彼女の無断欠勤を部長
 の国松(岩松了)や事務員の仙台(ふせえり)、友部(松重豊)が心配していた。その頃も福原と文
 哉の散歩は淡々と続いていた。阿佐ヶ谷、新宿などを経て、やがて散歩も四日目を迎えた頃、二人は
 福原の知り合いである麻紀子(小泉今日子)の家を訪れる。そこに娘役のふふみ(吉高由里子)も加
 え、擬似家族のような数日を過ごす四人。家族に縁がなく育った文哉の心に、今まで味わったことの
 ない感情がざわついた。まもなく、福原が最後の晩餐に食べたいと言っていたカレーライスが食卓に
 上がる。その翌日、福原と文哉は霞ヶ関へと足を進め、福原はふっと警視庁へと入って消える。取り
 残された文哉は、秋の東京に一人立ちすくむのだった。

 他に、広田レオナ(鏑木=画家)、津村鷹志(時計屋の住人=空手家)、石井苗子(多賀子=文哉とニア
ミスした主婦)、横山あきお(石膏仮面)、平岩紙(尚美=文哉の幼馴染)、ブラボー小松(ギターマン)、
光生(ガラの悪いドライバー)、石沢徹(肉屋)、ペ・ジョンミョン(パチスロカップル男)、加藤真弓
(パチスロカップル女)、末広ゆい(募金を呼びかける女子高生)、渡辺かな子(同)、並木幹雄(助監督)、
明日香まゆ美(植物園のおばさん)、堤冨貴子(自転車のおばさん)、福島一樹(少年文哉)、村崎真彩
(少女尚美)、麻生久美子(三日月しずか=警察官)、笹野高史(畳屋のオヤジ)、鷲尾真知子(愛玉子店
のおばさん)、石原良純(愛玉子店の息子)、風見章子(お婆さん)、岸部一徳(岸部一徳=本人の役)な
どが出演している。「東京散歩」がモチーフの映画だが、「このバージョンは他の都市でもやれるな」と思
った。「スナック時効」、「アブドラ肉店」、「アワヤマンション」など、相変わらず「おふざけネーミン
グ」に凝っていたことを記しておく。なお、福原が皇居の堀に携帯電話を投げ捨てるが、また観たくないシ
ーンを観てしまったと思った。小生の記憶に間違いがなければ、『赤い橋の下のぬるい水』(監督:今村昌
平、日活=今村プロ=バップ=衛星劇場=マル、2001年)、『月の砂漠』(監督:青山真治、WOWOW=ギャ
ガ・コミュニケーションズ=ランブルフィッシュ=吉本興業=レントラックジャパン=サイバーエージェン
ト、2001年)、『東京原発』(監督:山川元:グランプリ=オメガ・ピクチャーズ=日活=衛星劇場、2002
年)、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』、監督:三浦大輔、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」製作委員会〔アミ
ューズソフトエンタテインメント=ティー・ワイ・オー=小学館=ファントム・フィルム=バンタン映画映
像学院=モンスター☆ウルトラ〕、2010年)に類似のシーン(携帯電話を捨てたり、壊したりするシーン)
がある。携帯電話には問題点が多く、小生が憂えていることのひとつなのだが、せめて使わない携帯電話の
回収だけはきちんとしてほしいものである。


 某月某日

 DVDで邦画の『キサラギ』(監督:佐藤祐市、「キサラギ」フィルムパートナーズ〔ミコット・エンド・バ  
サラ=東芝エンタテインメント=テレビ東京=キングレコード=読売広告社=東映チェンネル=東映ビデオ=
Yahoo! JAPAN=PARCO〕、2007年)を観た。「密室劇」として、舞台化されても通用する作品ではないか(実
際に舞台化された由)。五人の男たちが繰り広げる暴露合戦は、最後まで観ている者を飽きさせない楽しい
映画である。三谷幸喜の作風に少し似通っているか。亡くなったアイドルの一周忌に何が起こったのか。次々
と明らかにされてゆく真相。そして、最後の謎。なかなかのエンタテインメントである。物語を確認してお
こう。例によって、〈goo 映画〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。ほぼ原文通りである。

  あるビルの一室に、五人の男達がいた。家元(小栗旬)、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)、
 スネーク(小出恵介)、安男(塚地武雅)、イチゴ娘(香川照之)。五人は、一年前に自殺したアイ
 ドル、如月ミキのファンサイトの常連であり、一周忌を機に、家元の呼びかけで、顔を合わせること
 にしたのだ。アイドルオタクの五人は、無名の如月ミキに、早くから目をかけていた。だが、如月ミ
 キは、一年前にマネージャーの留守番電話に遺言めいた言葉を残し、自宅マンションに火をつけて焼
 身自殺を図ったのである。初めのうちは、なごやかに如月ミキの思い出話に花を咲かせる五人。しか
 し、話せば話すほど、如月ミキが自殺した理由など思い当たらない。誰もが、如月ミキは、決して自
 殺のよううな真似をする子ではない、と思っているのだ。遂に誰かが、如月ミキが誰かに殺されたの
 ではないか、と口火を切る。それをきっかけに男達は、真相を知るべく推理を重ねていく。次々と、
 如月ミキに関する事実が明かされ、その死の謎に迫り始めると、物語は急速にミステリーの様相を呈
 する。そして、最後に五人は、ある一つの真実に辿り着く。

 他に、酒井香奈子(如月ミキ)、宍戸錠(イベントの司会者)、末永優依、米本来輝、平野勝美などが出
演している。それにしても、最後のシーンは謎のままである。どういう意味なのか。一説には、単なる次回
作へのアトラクションである由。それにしても思わせぶりではあるが……。


 某月某日

 DVDで邦画を4本観たのでご報告。4本とも筋書を云々するような作品ではないので、一部を除いて割愛し
よう。したがって、それぞれの特徴と簡単なコメントを添えることに留めておく。
 1本目は『探偵物語』(監督:三池崇史、真樹プロダクション、2007年)である。題名から、『探偵物語』
(監督:根岸吉太郎、角川春樹事務所、1983年)のリメイクかと思ったが、まったく違っていた。なぜ、こ
の題名をつけたのか、不思議。興行的に前作の名声を利用したかったのか。三池監督は多作ゆえにときどき
駄作を世に出すが、まさにそれに当たる。出演者には悪いが、ただグロテスクなだけで、脚本も演出もいい
加減。三池監督もそろそろこういうスタンスを卒業した方がいいのでは。それとも、下手な鉄砲も数撃てば
当たるで、駄作であろうがつくればいいと思っているのだろうか。しかし、それは、ファンにとって迷惑な
話である。中山一也(風間雷太=元刑事の探偵)、真木蔵人(高島雷太=ハッカー)、内田裕也(青山幽樹=
画家)、長谷川朝晴(長峰雅邦=風間の助手)、菊池亜希子(同)、風間トオル(バーのマスター)、阿藤
快(刑事)、渡辺裕之(同)、井上晴美(風間の同業)、あらいすみれ、林屋ペー、林屋パー子、角田信朗、
IZAM、鈴木葉月、大西麻恵、真樹日佐夫、中倉健太郎、石坂みきなどが出演している。
 2本目は『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(監督:豊島圭介、「裁判長!ここは懲役4年でどうす
か」製作委員会〔ダブ=ソニーミュージックエンタテインメント=ゼアリズエンタープライズ=角川コンテ
ンツゲート=マコトヤ〕、2010年)である。北尾トロの原作を読んだとき、なかなかいけると思ったが、ま
さか映画化されるとは思っていなかった。単調な裁判劇をけっこう面白いものに仕上げている。主人公の南
波タモツを演じた設楽統に過不足はない。他に、螢雪次朗(西村幸吉=ウオッチメン)、尾上寛(永田邦明=
同)、村上航(谷川哲也=同)、平田満(平原検察官)、鈴木砂羽(須藤光子)、片瀬那奈(長谷部真理=
検事)、モト冬樹(裁判員C)、北尾トロ(裁判長)、大石吾朗(国枝裁判官)、堀部圭亮(剣崎弁護士)
などが出演している。
 3本目は『クネクネ』(監督:吉川久岳、アルモ98、2010年)である。残念ながら、撮った意図さえ見え
てこない駄作。先ず、脚本がなってない。説得力もないし、怖くもないし、まとまりもない。ホラー映画を
舐めているのだろうか、監督の姿勢が問われる映画である。それでも、出演者はそこそこ頑張ってはいる
が……。所里沙子、中野剛、熊谷美香、しほの涼、三島ゆたか、前田明日香、松川愛実、竹之内啓喜などが
出演している。
 4本目は『ダメジン』(監督:三木聡、「ダメジン」製作委員会、2006年)である。三木作品にしては、
徹底的に突き抜けたところがやや希薄で、少し物足りなかった。たぶん、ホームレスたちが主人公だったせ
いかもしれない。普通の一般人がぶっ飛んでこそ三木ワールドは映えるのに、最初からホームレスでは予想
外にならない。その点で「ギャップの面白さ」にやや欠けるのである。念のために、この作品だけは〈goo
映画〉の「あらすじ」を転載しておこう。執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご海容いただきた
い。

  京浜工業地帯の真っ只中にある川崎。ある暑い夏の日。リョウスケ(佐藤隆太)、ヒラジ(緋田康
 人)、カホル(温水洋一)の3人組は、働かずに生きていける方法を日々考えて過ごしている。彼ら
 は、猫じじい(笹野高史)から「ダラダラしているならインドへ行け。一生ブラブラしてても何とか
 なる」とインドの魅力を聞かされる。彼らの幼なじみのチエミ(市川実日子)は親友タンク(伊東美
 咲)をトルエンで亡くし、自らもトルエン中毒に陥りながらさびれた靴屋でバイトをする日々を送っ
 ていた。ある日、失踪したチエミの恋人であるササキ(篠井英介)が3年ぶりに姿を現してから、彼
 らの日々は少しずつ変化してゆく。そんな中、リョウスケ・ヒラジ・カホルは謎の宇宙人ゴールデン・
 チャイルド〔金子〕(声:園子温)のお告げを受ける。「君たち、インドへ行きなさい。そして人類
 を救いなさい」……インド行きを決意した彼らは100万円の旅費を貯めようとするが、もともと働くの
 が苦手なためまともな方法を思いつかない。リョウスケは仕方なくファーストフード店でアルバイト
 を始めてみるが、バイト先の店長の野際(岡田眞澄)に怒鳴られてばかり。そんな折リョウスケは、
 先輩のゲシル(謙吾)が倒産した銀行を襲撃するという噂を聞き、インドへの旅費稼ぎのため一枚噛
 むことになるが……。

 他に、ふせえり(カズエ)、岩松了(沼さん)、吉岡秀隆(花沢)、村松利史(インバさん)、菅原洋一
(ハーモニカ屋)、嶋田久作(おまわりさん)、迫英雄(凶ちゃん)、麿赤兒(シンジュクさん)、加藤歩
(サカモト)、片桐はいり(タイアン)、山崎一(村下)などが出演している。
 〈ウィキペディア〉によれば、撮影自体は2002年に行われたが、編集段階で当時の製作プロデューサーが
降板してしまい日の目を見なかった由。その後引継ぐプロデューサーが出てきたため、2006年公開に至った
らしい。公開順は三木監督作品三番目にあたるが、実質は初監督作品だそうである。道理で、少し「マジメ」
なところ(つまり、ダメな部分)が残っていると思った。第一回作品ならば仕方がない。言い換えれば、三
木聡脱力系ワールドの「創世記」ということになるだろう。なお、「無煙仏」(無縁仏のパロディ)という
ネタは、『図鑑に載ってない虫』でも使われていた(こちらの方が、後)。この手のネタの使い廻しはいた
だけない。


 某月某日

 DVDで邦画の『喜劇 男は愛嬌』(監督:森崎東、松竹。1970年)を観た。監督が誰かということを教えら
れなくても、たぶん森崎東ではないかと思わせるほど、彼の体臭の染みこんだ映画である。『喜劇・女は度
胸』(監督:森崎東、松竹、1969年)の姉妹篇に当たるが、物語はまったく別である。下品で騒々しく豪快
だが、その反面で、人情の機微に富み活力に溢れながら繊細なところも散見できる映画である。渥美清が主
演なので、山田洋次の『男はつらいよ』シリーズ(森崎自身も1本撮っている)のフーテンの寅を連想させ
るが、このキャラクターはシリーズ化されず、単発に終わった。少し惜しいような気がする。
 物語を確認しておこう。例によって〈goo 映画〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。もっとも、映画
そのものとは大幅な事実誤認があるので、かなり改変した。ご寛恕いただきたい。

  ホルモン焼きの小店を開く曽我カネ(桜むつ子)には、オケラの五郎(渥美清)と民夫(寺尾聡)
 という二人の息子がいて、自慢のタネだが、二人の父親が誰かと訊かれても答えられない程、乱脈な
 過去をもっていた。五郎は遠洋漁業の船乗りで、忘れた頃にしか戻って来ない。弟は地区の司法保護
 司の真似事(BBS=Big Brothers and Sisters)をやっている。ある日、隣家の小川春子(倍賞美
 津子)が少年鑑別所から戻ってきた。幼なじみの民夫は、なんとか善導しようとしたが、春子はつい
 てこなかった。そこに、五郎がヒョッコリ帰って来た。五郎は町内のブラブラ男たちを集めて、大宴
 会を催すが、酔ったドンガメこと亀吉(佐藤蛾次郎)の運転したダンプが春子の家に飛び込んで大騒
 動。民夫に責められた五郎は、「春子を今月中に大金特と結婚させてみせる」と、源太郎(太宰久雄)
 や平松(佐山俊二)らと結婚コンサルタント委員会を開き、数名の候補者を選んだ。最初に白羽の矢
 が立ったのは、資産一億といわれる元網元の守銭奴倉本倉吉(田中邦衛)であった。しかし、この縁
 談は民夫の反対と倉本の拒否にあい、消え去った。次の候補は、五郎が数年前の遠洋漁業で知り合っ
 た、某大手商社の副社長になっている神部三郎(宍戸錠)だった。五郎は神戸と晴子を見合させたが、
 神部に結婚の意思がないことを知り、五郎は即刻断わるのだった。つづいて、結婚詐欺師の斉田光太
 郎(財津一郎)とうまくいきかけたが、しょせん夢の話であった。一方、春子は、これ以上迷惑をか
 けられぬと家出した。数日後、春子を捜し回る五郎と民夫は、ダンプの一件以来失意の底にいる亀吉
 に袖をひかれた。二人は今はポン引きの亀吉の世話になるが、現われた女はなんと春子と彼女のマブ
 ダチのギン子(沖山秀子)で、双方驚き合ったのはもちろんであった。だが、刑事(山本麟一)が現
 れたとき、民夫は彼を壊れた手すりから突き落としてしまった。その刑事が死んだと思った民夫は、
 一人自首するのだった。しかし、実際には軽症で済んだ。五郎がマグロ船に乗船する日、ダンプ泥棒
 の件で警察に現われた五郎は、民夫に「お前は春子と幸せに暮らしな」と、カッコいい台詞を残して
 消えていった。

 他に、花沢徳衛(工場長)、左とん平(結婚相談所の職員)、浜村純(春子の父親)、中川加奈(美代子)、
田武謙三(亀吉のダンプのオーナー)などが出演している。紳士淑女が眉を顰めるような「ネリカン数え唄」
が出てくるが、バイタリティがあってよい。『吹けば飛ぶよな男だが』(監督:山田洋次、松竹、1968年)
にいくらか似た作柄だろうか。


 某月某日

 DVDで邦画の『図鑑に載ってない虫』(監督:三木聡、「図鑑に載ってない虫」製作委員会〔葵プロモーシ
ョン=ビクターエンタテインメント=日活=IMAGICA=ザックコーポレーション〕、2007年)を観た。いわゆ
る「スラプスティック・コメディ(slapstick comedy)」の分野に属する映画で、日本流にいえば、「ドタ
バタ喜劇」に当たる。あるいは、三木流「脱力系/ゆる系喜劇」ともいえよう。たぶん、毀誉褒貶がはっき
りと分かれるだろうが、小生としては大好きなタイプの映画である。これまで観ていなかったことが不思議
である。何となく後回しにしていたのだろう。監督の三木聡の作品は、以下に掲げるように当該作品を含め
て4作目の鑑賞である。独特の演出で、新しい才能を感じることはもちろんだが、「決定打」と呼べる作品
はまだないような気がする。今後の活躍に大いに期待したい。

 『イン・ザ・プール』、監督:三木聡、IMJエンタテインメント=日本ヘラルド映画=ポニーキャニオン=
  WILCO、2004年〔「日日是労働セレクト17、参照〕。
 『亀は意外に速く泳ぐ』、監督:三木聡、WILCO、2005年〔「日日是労働セレクト13、参照〕。
 『図鑑に載ってない虫』、監督:三木聡、「図鑑に載ってない虫」製作委員会〔葵プロモーション=
  ビクターエンタテインメント=日活=IMAGICA=ザックコーポレーション〕、2007年。
 『インスタント沼』、監督:三木聡、「インスタント沼」フィルムパートナーズ〔アンプラグドフィルム=
  角川映画=ポニーキャニオン=シネマ・インヴェストメント〕、2009年〔「日日是労働セレクト66、
  参照〕。

 この他、『ダメジン』(2006年)や『転々』(2007年)などがあるらしいので、機会があれば観てみたい。
松尾スズキ、岩松了、ふせえり、松重豊、村松利史、森下能幸などが彼の映画の常連だが、それぞれの作品
でおのれの役をしっかりと把握している。当該映画での主人公の「俺」は伊勢谷友介が演じているが、彼の
演技は松田優作の「とぼけ役」に通じるものがあり、なかなかのものである。とくに、生き返ったときの表
情と、美人編集長との遣り取りが活き活きとしていた。
 物語を確認しておこう。例によって〈goo 映画〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改変
したが、ご寛恕を乞う。

  フリーライターの「俺」(伊勢谷友介)は、『月刊 黒い本』の美人編集長(水野美紀)から、仮死
 体験できるという「死にモドキ」を使って死後の世界をルポするよう依頼される。「俺」は、友人で
 アル中のオルゴール職人、エンドー(松尾スズキ)を強引に誘い、ともに旅に出ることに。彼らは元
 SM嬢で自殺願望を持つサヨコ(菊地凛子)、ヤクザの目玉のおっちゃん(岩松了)とその弟分のチ
 ョロリ(ふせえり)などと偶然合流しながら旅を続ける。やがて「俺」とサヨコは、手掛かりとなる
 情報を得て臨死体験ショーに入ってみることに。そのショーに出ている半分男(村松利史)が古い言
 い伝えを知っており、種田師匠(三谷昇)と呼ばれる男が「死にモドキ」使いの末裔だという。まも
 なく「俺」とエンドーは師匠が住むというホームレスだらけの奇妙な島に上陸する。そこで同じく、
 「死にモドキ」を求めて行方不明になっていたカメラマンの真島(松重豊)が現れる。そして師匠か
 ら「死にモドキ」の正体を聞く。それはかつて、海女が海に潜る時に無酸素状態を維持させるために
 使っていた「昆虫」だという。こうして「死にモドキ」をめぐる騒動は、「俺」の命をかけた不思議
 な旅が終わるまで続くのだった。

 他に、笹野高史(モツ煮込み屋の親父)、渡辺裕之(船長)、森下能幸(ホームレスの親父)、片桐はい
り(SMの女王様)、志賀勝(太田刑事)、田中哲司(中村刑事)、マメ山田(黒幕の男)、嶋田久作(黒
幕の部下)、つぐみ(ワンピースの女)、園子温(ツボ師匠)、山崎一(消防署員)、佐々木すみ江(海の
家のおばさん)、新屋英子(チュッパチャップスさん)、播田美保(サヨコのお婆ちゃん)、いか八朗(ア
メリカンドッグ屋の店長)、コハ・ラ・スマート(呼び込み)、廣川三憲(宅配便の人)、ノゾエ征爾(番
頭)、海島雪(冴えないOL)、呉キリコ(色っぽい写真屋)、たかみざわはな(婦人警官)、ペ・ジョン
ミン(若い組員)、高田郁恵(若い半裸の女)、キタノ・ラニー・パギリナン(ミンミン)、菅登未男(老
人)、田島大志(巨大ホームレス)、清水萌々子(少女時代のサヨコ)、吉原拓弥(少年時代のエンドー)、
高橋惠子(サヨコの母親)などが出演している。
 とにかく細部にこだわる三木演出は、どの場面も見逃せない。チープで下品なのだが、それでも面白けれ
ばよいというところが素晴らしい。また、ときおりドキッとする台詞もあり、それもまた三木の人間観察の
成果であろう。ほんの少しだが、小生の個人的に気に入った場面や台詞を紹介しておこう。

 ○ 「岡」という文字がアザラシに似ているという指摘。
 ○ 俳優のジェリー藤尾にひっかけた「ゼリー・フジオ」人形。
 ○ モツ煮込み屋の屋号が「内臓」ならぬ「内蔵」。
 ○ リスト・カットでできた溝でワサビをする場面。
 ○ 人間の肉体がおびただしい蟹に変わる場面。
 ○ 「日朝海底通路計劃設計書」と称する古文書。
 ○ おさわりバー「結婚詐欺」や熟女バー「不当投棄」という看板。
 ○ 荼毘に付したときに煙が出ない仏を「無煙仏」と呼ぶおふざけ。

 「SMの最大の敵は分別だよ」……SMの女王の台詞。
 「初対面なのにずうずうしい」を受けて、「初対面だから何をしてもいいんでしょうが」と応える。
 「人間、反省するから、年を取る」。
 「取り返しのつかないことは、ちょっとしたきっかけで起こる」。
 
 その他、三木聡の「小ネタ」のオンパレードで、大笑いはできないが、思わずクスッとしてしまう。小生
は、レスリー・ニールセンが主演を務める『裸の銃(ガン)を持つ男(The Naked Gun)』シリーズ(監督: 
デイヴィッド・ザッカー、米国、1988年、1991年/監督:ピーター・シーガル、米国、1994年)全3作をこ
よなく愛しているが、今後、三木監督にはそれらに匹敵する作品を期待したい。


 某月某日

 一昨日スルーした映画の感想を記そう。1本目は、『銭形平次捕物控 まだら蛇』(監督:加戸敏、大映京
都、1957年)である。長谷川一夫が銭形平次に扮し、小暮実千代、山本富士子、美空ひばりが花を添えてい
る時代劇。長谷川一夫に関しては、小生にとって晩年しか知らないが、今観ると、さすがに国民栄誉賞を受
賞しただけあってすばらしい演技力である。うろ覚えなので、『忠臣蔵』(監督:渡辺邦男、大映京都、19
58年)は「家族研究への布石(映像篇)」には登録していないが、たぶん、この作品が長谷川一夫との最初
の出会いのような気がする。母親に連れられて、映画館で観た記憶が微かにあるから。その時演じた大石内
蔵助の重々しい雰囲気と、山鹿流陣太鼓の印象が、小生の幼きこころに残ったのである。しかし、昭和33年
というとまだ4歳なので、やはりはっきりとはしない(同じ話題が「日日是労働セレクト20」で触れられ
ている。参照されたし)。
 物語を確認しておこう。例によって、〈goo 映画〉のお世話になろう。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

  文政年間の江戸。当節通用の粗悪な文政小判に比べ、八十余年前の元文小判は金分を多量に含み値
 打が遥かに大きい。そのため巷では元文小判の貯蔵が流行し、幕府は遂に割増金付きの買戻しを決意
 した。これに眼をつけた元火付け盗賊改め大沼玄蕃(荒木忍)は、悪商人大阪屋喜兵衛(天野一郎)、
 御勘定奉行の矢田部大炊頭(葛木香一)、岡っ引の千吉(尾上栄五郎)らを語らい、贋小判鋳造で巨
 利を得ようと計る。佃島で刑期を了えた金銀細工物師や鍛冶屋を誘拐し、蘭医桂周庵(山茶花究)の
 薬で咽喉をつぶしてから、足枷をはめて大沼邸の地下工場に送り込む。用心棒の浪人一ノ木隼人(杉
 山昌三九)、二ノ瀬左膳(千葉登四男)らは、囚人の腕にまだら蛇を入墨して脱走の際の目印とした。
 機を見て逃げた囚人の源太(光岡龍三郎)は、大吹所で働く兄清兵衛(浅尾奥山)の一人娘お吉(美
 空ひばり)に、工場の所在を示した偽小判を渡そうとしたが、果せぬ中、一ノ木に殺された。この一
 件を探っていた銭形平次(長谷川一夫)は、お吉らとともに難事件に敢然と挑むのである。

 他に、山本富士子(喜久江)、木暮実千代(お絹)、黒川弥太郎(笹野新三郎)、堺駿二(八五郎)、大
美輝子(お栄)、東良之助(行順坊)、上田寛(仁蔵)、南条新太郎(轡屋)、水原浩一(猫安)、石原須
磨男(大道易者)、原聖四郎(河野七郎)、伊達三郎(カン竹)、藤川準(勘十)、堀北幸夫(九六)、神
田耕二(嘉六)、岩田正(市助)、石井富子(お伝)などが出演している。
 なお、金分に関しては、文政小判が四割九分、元文小判が六割五分の由。猫安が得意げに講釈を垂れる場
面がある。大沼玄蕃たちが鋳造させた小判は、十七万七千両であった。
 2本目は、『テケテケ2』(監督:白石晃士、アートポート、2009年)である。『テケテケ』(監督:白
石晃士、アートポート、2009年)の続篇であるが、併せて観るとなかなか凝った話ということが分かる。も
っとも、やはりこのテケテケ、かなり無理がある。これも、〈goo 映画〉の「解説」と「あらすじ」を転載
させていただく。執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご海容いただきたい。

   〔解説〕

  日本最古にして、最大の都市伝説と言われる“テケテケ”伝説。70年代に一大ブームとなり猛威を
 ふるったこの都市伝説は、一時は衰退するも、2000年ごろから小学生を中心に再び蔓延し始めたのだ
 という。本作は、同日公開の『テケテケ』の1年後の物語を描くホラー映画。相手の足を求めて襲い
 かかってくる下半身のない女“テケテケ”の恐怖を、『片腕マシンガール』、『赤んぼ少女』で名を
 馳せたVFX&特殊造形チームが見事に視覚化した。名作ホラー諸作に負けるとも劣らないおぞましい
 光景が観る者を襲う。主演は『吉祥天女』、『赤い糸』の岩田さゆりと、人気グラビアアイドルの仲
 村みうのふたり。 邦画ホラー界の重鎮、白石晃士監督が引き続きメガホンをとっている。

   〔あらすじ〕

  親友同士の水谷菜月(岩田さゆり)と中島玲子(仲村みう)たちは、学校で“テケテケ”の噂話で
 盛り上がっていた。ある日、文化祭委員になった玲子が打ち合わせに参加しない女子生徒を注意した
 ところ、みんなから無視されるようになる。葉月はそれまで通り彼女に接していたが、財布が盗まれ
 たことをきっかけに、玲子の様子がおかしくなってしまう。そして玲子ににらまれた者が、上半身と
 下半身が切断された死体となって発見された……。

 他に、長宗我部陽子(テケテケ)、阿部進之介(武田慎)、松島初音(刀根エリカ)、大島優子(大橋可
奈)、水木薫(可奈の母親)、つじしんめい(近藤時雄=鹿島礼子について語る老人)、螢雪次朗(行方教
授)などが出演している。なお、真知りさ、山本彩乃、さゆみ、朝倉みかん、安藤成子、天野沙織里などが
菜月のクラスメイトを演じている。誰がその役に扮しているのかは分からないが、彼女ら六人には、野口千
尋、大久保真央、葉山さやか、山崎明恵、小西佐季、可児光という役名が付いている。
 ところで、中島玲子は鹿島礼子のテケテケの継承者になるが、名前が似通っているおり、最初は気がつか
なかったが、なるほどと思った。鹿島礼子を犯した「沼崎」の名前が分解されてゆく過程はなかなか興味深
い。また、鹿島礼子の自殺をめぐる刑事の捜査日誌(昭和二十三年から二十四年にかけて)が登場するが、
当時使用されていた旧字旧仮名も正確で、かなり凝った小道具である。この捜査日誌を製作した人に敬意を
表したい。なお、テケテケから逃れる呪文は「鹿島のカは仮面のカ/鹿島のシは死人のシ/鹿島のマは悪魔
のマ」だった。これは蛇足であるが、中島玲子役の仲村みうは、『富江 アンリミテッド』(監督:井口昇、
東映ビデオ、2011年)にも出演していた(富江役)が、引退が惜しまれる。


 某月某日

 DVDと上映会で4本の邦画を観たので報告しよう。1本目は、『ゴールデンスランバー』(監督:中村義
洋、「ゴールデンスランバー」製作委員会〔アミューズ=東宝=博報堂DYメディアパートナーズ=CJ ENTER-
TAINMENT=KDDI=スモーク=Yahoo! JAPAN=ショウゲート=朝日新聞社=TSUTAYAグループ〕、2010年)で
ある。多少とも話に無理があるが、よくできた映画だと思う。警察権力の腐敗をテーマに描いた最近の映画
には、『ポチの告白』(監督:高橋玄、グランカフェピクチャーズ、2009年)〔「日日是労働セレクト54」、
参照〕や『笑う警官』(監督:角川春樹、「笑う警官」フィルムパートナーズ〔ハルキエンタテインメント=
角川春樹事務所=東映=東映ビデオ=よしもとクリエイティブ・エージェンシー=讀賣新聞=ディー・エヌ・
エーサンブック=報知新聞社=クオラス〕、2009年)〔「日日是労働セレクト71」、参照〕などの佳品が
あるが、それらに劣らず、娯楽作品としてよくここまで仕上げたと思わせる面白さがあった。中村義洋監督
の作品は、以下のように、当該作品の他に3本観ている。

 『アヒルと鴨のコインロッカー』、監督:中村義洋、『アヒルと鴨のコインロッカー』製作委員会〔アミ
  ューズソフトエンタテインメント=スカパー・ウェルシンク=デスペラード=ダブ=読売広告社=東日
  本放送=河北新報社〕、2006年〔「日日是労働セレクト75」、参照〕。

 『ジャージの二人』、監督:中村義洋、メディアファクトリー=TBSサービス=スモーク=ザナドゥ=
  Yahoo! JAPAN、2008年〔「日日是労働セレクト45」、参照〕。

 『フィッシュストーリー』、監督:中村義洋、「フィッシュストーリー」製作委員会〔アミューズソフト
  エンタテインメント=博報堂DYメディアパートナーズ=テレビ東京=CJ Entertainment=衛生劇場=
  パルコ=ショウゲート=スモーク=Yahoo! JAPAN〕、2009年〔「日日是労働セレクト62」、参照〕。

 『ジャージの二人』(原作:長嶋有)は除くが、当該作品を含めて、すべて原作は伊坂幸太郎である。彼
の原作の映画化作品としては、他に『重力ピエロ』(監督:森淳一、「重力ピエロ」製作委員会〔アスミッ
ク・エース エンタテインメント=ROBOT=テレビ朝日=朝日放送=東日本放送=九州朝日放送=Yahoo!
JAPAN=河北新報社=住友商事〕、2009年)〔「日日是労働セレクト63」、参照〕を観ているが、いずれの
作品にもなかなかのストーリー・テラーだと思わせる要素が詰まっている。もっとも、小生は一作も読んだ
ことがないので、機会があればどれかを繙いてみようと思う。
 物語を確認しておこう。例によって〈goo 映画〉や〈ウィキペディア〉のお世話になる。執筆者に感謝し
たい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。
  
   〔解説〕

  映画化が相次ぐ、ベストセラー作家、伊坂幸太郎。彼の作品の多くは仙台を舞台にしたもので、本
 作もオール仙台ロケが行われた。首相暗殺。無実の罪を着せられた主人公の逃亡。そして逃亡先にな
 ぜか先回りしている警察。冒頭から観る者を飽きさせない、たたみかけるような展開。仕組まれた巨
 大犯罪から、無力な人間がいかに逃亡するかというサスペンスを軸に、かつての友情物語がせつなく
 語られる。タイトルの「ゴールデンスランバー」は、ビートルズの「アビーロード」の中の一曲。当
 時バラバラだったメンバーをつなぎとめようというポールの思いが、本作ではかつての友人達との絆
 を象徴する存在として使われている。斉藤和義によるカバーも話題。

   〔あらすじ〕

  金田貞義首相(伊藤ふみお)の凱旋パレードが行われているそのすぐ近くで青柳雅春(堺雅人)は、
 大学時代の友人のひとりである森田森吾(吉岡秀隆)と久しぶりに再会していた。どこか様子がおか
 しい森田。そして、爆発音。首相を狙った爆弾テロが行われたのだ。「逃げろ! オズワルドにされ
 るぞ」。銃を構えた警官たちから、反射的に逃げ出す青柳。本人の知らない「証拠映像」が次々に現
 れ、青柳は自分を犯人に仕立てる巧妙な計画が立てられていたことを知る。青柳は大学時代の友人た
 ちに助けを求めるが……。

 他に、竹内結子(樋口晴子=青柳の大学時代の友人にして、元恋人)、劇団ひとり(小野一夫=同じく大
学の後輩)、香川照之(佐々木一太郎=警察庁総合情報課の警視正)、柄本明(保土ヶ谷康志=裏稼業の人。
下水道に詳しい青柳の逃亡の協力者)、濱田岳(キルオ〔三浦〕=連続通り魔。同じく協力者)、渋川清彦
(岩崎英二郎=青柳の会社の先輩。同じく協力者)、ベンガル(轟静夫=轟煙火の社長。学生時代、青柳は
彼の会社でアルバイトの経験がある。同じく協力者)、大森南朋(樋口伸幸=晴子の夫)、貫地谷しほり
(凛香=青柳に強盗から助けられたことのあるアイドルタレント。この人も青柳の逃亡の協力者になる)、
相武紗季(井ノ原小梅=ラジコン飛行機絡みで青柳に近づいてきた女)、伊東四朗(青柳平一=雅春の父。
なかなか骨のある好漢)、永島敏行(小鳩沢=不気味な狙撃警官)、石丸謙二郎(近藤守=ねちっこい刑事)、
ソニン(鶴田亜美=小野一夫と交際中の女性)、でんでん(児島安雄=青柳に拉致される巡査長)、滝藤賢
一(整形後の青柳雅春)、木下隆行(矢島=TV局のプロデューサー)、木内みどり(青柳照代=雅春の母)、
竜雷太(大杉憲司=宮城県警総本部長)、テイ龍進(鷲津=刑事)、北村燦來(樋口七美=晴子の娘)、鈴
木福(鶴田辰巳=亜美の息子)、松山愛里(カナエ=バス停にいた女性)、中林大樹(ケンジ=爆弾テロ騒
ぎを知らなかったカナエの彼氏)、少路勇介(轟一郎=轟静夫の息子。青柳の逃亡の協力者)、笠木泉(カ
ー用品の女店員)、麻衣(ウェイトレス=青柳にサインをねだる)、汐見ゆかり(病院スタッフ)、池口十
兵衛(病院警備員)、安藤玉恵(岩崎美千代=英二郎の妻)、波岡一喜(田中徹=保土ヶ谷と同じ病院の入
院患者)、上田耕一(雑居ビルオーナー)、芦川誠(大串)、山口良一(鎌田昌太=キルオにバイクと交換
でアパートを貸す男)、吉澤天純(鎌田昌夫=昌太の息子)、岩松了(謎の整形外科医=声のみの出演)な
どが出演している。
 ところで、いくつか疑問に思った箇所があったので記しておこう。まず、鷲津刑事が晴子をマークしてい
たときキルオに殺されるが、刑事は単独で行動しないのではないか。キルオが囮の刑事と相打ちになるが、
銃撃されているにも拘らずその場所へキルオが青柳を案内した際、他に警察関係者が誰もいなかった場面が
ある。小生は、明らかに無理があると思う。数年前に放置した自動車のエンジンがかかるだろうか。また、
仮にかかったとしても、ガソリンはどうなっているのか。TV番組で、警察の特殊部隊が出動したことが報道
されるが、一般的には秘匿される事項ではないのか。もっとも、警察は青柳を嵌めようとしているので、わ
ざと放送したとも考えられるが……。マンホールの蓋は60kgあるそうだが、花火で吹き飛ばせるだろうか。
そもそも、短時間で数多くの花火をセットすることが可能なのか。青柳を逮捕直前で取り逃がした際、大杉
の佐々木への発言である「本物か」という台詞は、少し意味不明。たぶん、大杉は、でっち上げた青柳の偽
者(警察、あるいは別の組織が、整形で青柳そっくりに仕立て上げた男)のことを考えていたのであろう。
この後、逃亡中の青柳の水死体が発見されることになるが、もしかするとこのダミーが青柳の「遺体」を務
めたのかもしれない。警察も、犯人が死ねばメンツが立つからである。プロローグとエピローグが興味深く
つながる構成になっているが、その中に、晴子の夫である伸幸が「キルオ」について語るシーンがある。し
かし、それはキルオが死んだ後のことなので、どこか間が抜けている感じがした。もちろん、プロローグで
は感じなかったことなのだが、話の筋立てとしては辻褄が合わない感じが残る。最後に、整形後の青柳に晴
子が気付くということになっているが、花丸の「たいへんよくできました」はやはりできすぎ。二人が別れ
る時のエピソードを伏線にしているは分かるが、気付くきっかけになったボタンを親指で押す癖は誰にでも
あるのではないか。もっとも、あわてて別の押し方をしたので、かえって気付いたのかもしれない。また、
晴子は旧姓のままだが、伸幸の方が改姓したのだろうか。一般的にはレア・ケースだと思う。
 その他、青柳の周囲には「気のいい」奴ばかりが集まるが(そうでなければ、逃亡できるはずがない)、
現実にはありえないだろう。しかし、観ている間は、それほどの違和感はない。森田の台詞である「人間の
最大の武器は、習慣と信頼だ」には、深く納得した。警察を手先に使った国家権力の陰謀の問題はともかく
として、報道等におけるイメージ操作(情報操作)の問題(たとえば、ある人物に「悪い人」であるという
イメージを植え付ければ、多くの人は自分で考えもせずにそうだと思うようになる)、監視社会の問題(た
とえば、小生は、高知の繁華街である帯屋町にも、犯罪防止のための監視カメラが数多く設置されていると
いうことを仄聞している)など、けっこう重い問題が背景にあるので、娯楽作品ながら、かなり緊張感をも
って観たことを付言しておこう。なお、警察の合法的な盗聴に関しては、中村敦夫などがあれだけ頑張って
も法案が通ってしまった「通信傍受法」がそれを後押ししているが、基本的にキルオが語っていた「電話は
すべて盗聴されていると思った方がいいよ」に同感したい。小生としては、「どんな会話も全部他人に知ら
れている可能性がある」と思った方が気が楽だからである。蛇足ながら記しておくが、小生の大好きなアメ
リカン・ニューシネマである『バニシング・ポイント(Vanishing Point,1971)』(監督:リチャード・C・
サラフィアン、米国、同年の1971年に日本公開)を少し連想した。
 2本目は、『銭形平次捕物控 まだら蛇』(監督:加戸敏、大映京都、1957年)である。
 3本目は、『テケテケ2』(監督:白石晃士、アートポート、2009年)である。
 今日はもう遅いので、この2本については、後日感想を述べよう。
 4本目は、『内部被ばくを生き抜く』(監督:鎌仲ひとみ、環境テレビトラスト、2012年)である。この
ドキュメンタリー映画は、監督の鎌仲ひとみさんの講演会(於 高知市立自由民権記念館 民権ホール)に先
立って上映会が開催された際に観た。DVDで途中まで観ていたが、全部を観たのは今回が初めてである。今日  
は簡単に触れておくが、外部被曝と内部被曝はまったく異なるものであること、福島からかなり離れた高知
でも、内部被曝の問題は他人事ではないということ、一度被爆したとしても、転地療法などによって肉体の
修復は可能であること、などが焦点だった。また、全体の筋とは直接の関係はないが、映画の中で少し触れ
ていた「劣化ウラン弾」については、耳にするたびにおぞましく感じられる。戦争とはいえ、劣化ウラン弾
などという卑劣な爆弾を使用したアメリカ軍の罪は重いと思う。鎌仲監督とも直接お話をしたが、ずいぶん
と気さくな方で、彼女の活動を応援したい気持になった。映画がもっている力の大きさについて、再認識し
たことも有意義なことであった。


 某月某日

 DVDで邦画の『孤高のメス』(監督:成島出、「孤高のメス」製作委員会〔東映=テレビ朝日=木下工務店=
アミューズソフトエンタテインメント=東映ビデオ=読売新聞=幻冬舎=博報堂DYメディアパートナーズ=
朝日放送=メーテレ=東映チャンネル=北海道テレビ放送=九州朝日放送〕、2010年)(メーテレの音引は
波線。文字化けするので、波線を音引で代用した)を観た。勘所を押さえた丁寧なつくりの映画で、テーマ
も現代の医療問題というホットなもの。小生自身、「脳死・臓器移植」についはいろいろ考えているので、
だいぶ参考になった。もっとも、現実にはこんな美談がそうそう転がっているわけでないので、その意味で
やはりフィクションの域を出ていない。物語も文法通りで、手堅さは買えるが、ややステレオ・タイプか。
 物語を確認しておこう。《Providing the Finest in Health Care With You in Mind》というサイトに詳
細な記述を見つけたの、それを転載させていただく。執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご海容
いただきたい。とくに、「生体肝移植」と記述されてる部分のほとんどは「脳死肝移植」の間違いだと思わ
れるので、訂正しておいた。

  現役医師である大鐘稔彦のベストセラー医療小説を映画化! 
   ─タブーとされた脳死肝移植に挑む鉄彦─

  新人医師の中村弘平(成宮寛貴)は、適切な治療を受けることがないまま急死した看護師の母・浪
 子(夏川結衣)の葬儀を終えると、実家に戻って母の遺品を整理していた。そこで彼が見つけたの一
 冊の古い日記帳だった。
  看護師は自分の天職だと弘平に語って聞かせていた母の日記だけに、患者のケアで忙しい毎日を送
 りながらも、充実している思いが詰まっていると思いきや、そこには綴られていたのは母の泣き言だ
 った。そして「先生のオペには気負いも衒いもない。正確で緻密な作業をコツコツ積み上げていく」
 と書き遺した一人の外科医との出会いが母を変えたのだった。
  日記に記された年月は現在からおよそ20年遡った1989年──。母子家庭のため、育児の関係で一時
 は医療現場を離れていた浪子だったが、地元のさざなみ市民病院で再び看護師として働くことになっ
 た。しかし、浪子は手術室担当の仕事を苦痛に感じており、かつてのような情熱は失っていた。
  というのも、同病院は京葉医科大学からの医師派遣なくして、外科手術ひとつ行うことができない
 有様なのだが、この医局派遣の医師自体もスキルが低いため、手術に何度も失敗したり、難しい症例
 は全て大学病院へ再搬送するからだ。
  今日も手術中に担当医がミスをしたため、溢れ出た患者の血液をバケツ一杯流して暗澹たる気持ち
 に苛まれる浪子。そして、幼稚園に通う弘平を迎えに行き、日記に愚痴を書くのだった。そんなある
 日、消毒した手術器具を整理していた浪子のもとに、一人の男(堤真一)が現れて、「器具をもっと
 優しく扱うように」と優しく声をかける。嫌な奴と思う浪子だったが、彼こそ市長の大川松男(柄本
 明)が病院再生の切り札として、米国のピッツバーグ大学から呼び寄せた外科医・当麻鉄彦だった。
  海外で高度な医療技術を習得し、肝臓移植も手掛けた経験もある当麻に期待をかける市長だったが、
 京葉医大から出向してきている医師たちの反発を考え、当初の予定である外科部長ではなく、第二外
 科の外科部長として当麻を赴任させることにした。難解な外科手術を円滑に行うためには、術医と手
 術室看護師、麻酔科医らの連携が欠かせないが、スタッフ間の意思疎通すら満足に行っていない着任
 早々、緊急手術を要する患者が搬送されてくる。
  患者が下腹部の激痛を訴えていたので、盲腸と高をくくって開腹したら、実は腹部破裂で大量出血
 を引き起こしており、救急車で運ばれてきたのだ。「そんなオペはとてもじゃないが、ウチ(さざな
 み市民病院)では無理だ。京葉医大病院へ直ぐに搬送したまえ」と事務長の村上三郎(矢島健一)は
 端から及び腰だが、医大への搬送には1時間半ほど時間を要し、患者の容態はそれを許しそうにない。
 「間に合わなかったらそれは彼の寿命ということだ」と無用な責任を追いたくない事務長は開き直る。
 だが、当麻はこのままでは大量出血で患者が危ないので自分が止血を行うと主張して、患者を手術室
 へ搬送させる。初めて当麻の手技を目の当たりにする医師と浪子らコメディカルだったが、その目に
 も鮮やかで正確な手順による腹部の止血に驚くばかり。続けて破裂した部位の手術を行おうとする当
 麻に医大から派遣されてきた若手医師の青木隆三(吉沢悠)は「この患者のような症例は医大で手術
 を行うのが慣例です」と口を挟むが、当麻は「目の前の患者を助けるのに慣例は必要ない!」とこの
 うえない正論を述べて、短時間で無事に手術を成功させる。それはさざなみ市民病院で、何かが動き
 出した瞬間だった──。
  ある日、アメリカで当麻と同じ病院で働いていたかつての同僚医師・実川剛(松重豊)から食事に誘
 われる。当麻ほどの腕前を持つ外科医が田舎の小さな市民病院で燻っていることが惜しいと考える実
 川は「どうしてこんな田舎にやってきた?」と問うが、当麻は迷うことなく「地域医療の底上げをす
 るためだ」と応える。彼が医師を続ける理由はただ一つ。目の前で苦しむ患者を一人でも多く救うこ
 とだ。そこに地位や名誉や名声が入り込む余地は全くない。
  見栄や体裁への執着、院内で幅を利かせる医大の派遣医師、慣例主義、患者への不誠実な対応など、
 本来のあるべき姿を失っていたさざなみ市民病院において、患者のことだけを考えてメスを握り続け
 る当麻の姿勢は、生え抜きの第一外科部長・野本六郎(生瀬勝久)らの反発を招く一方で、旧態依然
 とした病院の風土に風穴を開け、当初は批判的だった青木らスタッフも同調するようになる。特に、
 手術室担当の看護師として患者と真っ直ぐに向き合う当麻の姿勢を見てきた浪子は、彼の情熱に打た
 れ、自分が失っていた看護への意欲と誇りを取り戻していくのだった。

  患者の命を救うため、当麻は生体臓器移植を行うことを決意する
   ─医療現場が抱える問題を浮き彫りにする─

  しかし、病院の雰囲気が変わり始めた矢先、アクシデントが彼らを襲う。一年前に野本第一外科部
 長が手術を担当した癌患者が、切除可能な腫瘍を放置されるというミスのために症状が悪化して死亡
 したのだ。
  野本は自分のミスが原因であることが明確にも関わらず、事件が発覚するのを未然に防ぐために隠
 蔽工作を図るのだった。患者を最後まで見届けた青木は野本の責任を追及するが、事態は一向に改善
 しない。当麻は若い青木の医師としての将来を潰さないために、かつて自分が在籍していたアメリカ
 のピッツバーク病院への紹介状を書いて手渡すのだった。
  そんななか、市民病院の改革に日夜奮闘していた大川松男市長(柄本明)が、会議の演説中に吐血
 して倒れ、病院へ搬送されてくる。彼の身体は自覚がないまま末期の肝硬変に蝕まれていたのだ。
  もはや意識を取り戻すことすら危うい市長を助けるために残された手段は、世界でもまだ前例のな
 い成人間の「生体肝移植」だった。市長の娘である翔子(中越典子)は、家族で唯一市長と血液型が
 適合するのだが、彼女の肝臓は小さすぎて移植には適していなかった。
  時をほぼ同じくして、浪子の知り合いである音楽教師の武井静(余貴美子)の息子・誠(太賀)が
 交通事故で搬送されてくる。数日後、息子の脳死を宣告された静は病院の屋上で当麻に会い、「息子
 (ボランティアに熱心な青年という設定)は人の役に立ちたいと思っているはずです」と生死を彷徨
 う市長への臓器提供を涙ながらに訴える。彼女の想いに打たれた当麻は、「脳死肝移植」を大川に施
 すことを決断するのだった……。
  移植しなければ市長は確実に死ぬ。しかし、移植しても成功する確立は50%に過ぎない。加えて、当
 時の日本(1989年)ではタブーとされていた脳死肝移植を行うことは、手術の成否に関わらず、その
 倫理面でマスコミのバッシングを受けることは避けられなかった。しかし、目の前の患者を助けたい
 という当麻は怯まずに言う。「この手術の責任は私がとります!」と。すると、院長の島田光治(平
 田満)も「いえ、責任は私にあります!」と言い返し、さざなみ市民病院での手術の決行が決まった。
  それまで院内で行われる手術の一切を取り仕切っていた京葉医大の医者たちは、当麻が自分たちの
 聖域へ足を踏み入れていることが許せなかった。今回の脳死肝移植を当麻潰しの絶好の機会と捉えた
 彼らは、警察やマスコミに電話をかけ、当麻医師主導による脳死肝移植が行われる予定だが、これは
 権力志向が強い当麻によるスタンドプレーの色が濃いだけでなく、法律に抵触する恐れがあるとの誹
 謗中傷を行う。
  手術当日──。病院前には脳死肝移植の是非を倫理面から問いただそうとする記者やTVカメラが集
 まり、刑事(隆大介)もやってくる。「殺人として告訴されてもいいのか」と刑事は警告するが、倫
 理面について説明をしている時間が惜しい当麻は黙って手術室へ向かう。執刀医である当麻をサポー
 トするのは、浪子ら看護師二人と麻酔医・助手を務める医師が二人。助手の一人は半年前に野本第一
 外科部長の隠蔽を追及し、当麻の勧めでピッツバーグの病院で修行をしていた青木だった。「当麻先
 生の手術に参加できて嬉しい」と青木は胸を張る。
  (以下、クライマックスの手術シーンが展開される)半日を費やした大手術は成功し、市長は青年
 の肝臓にその生命を救われた。当麻は告訴もされなかった。当麻の追放を画策していた野本医師は、
 過去の治療におけるミスが明るみに出て、逆に病院から追い出されることになる。しかし、当麻は病
 院を自ら去るのだった。別れに際しては当麻は浪子に「あなたは最高のナースでした」と優しい言葉
 をかける。
  弘平が見つけた日記はここで終わりを迎え、彼の思いは今は亡き母親へと馳せるのだった。時を経
 て、弘平は地方のある病院へ赴任することになった。弘平が院長室で待たされている間に何気なく部
 屋を眺めると、そこにはさざなみ市民病院で撮られた集合写真と、当麻が好きだったという歌手・都
 はるみのカセットが置かれていた──。

  医師が監修した臨場感溢れる手術シーン、堤真一と夏川結衣の熱演が見所
   ─出演者情報─

  医師の偏在、看護師不足、患者のたらい回し、手術ミスと医療紛争、自治体病院の相次ぐ破綻など、
 「患者を救う」という医師に課せられた使命の前にさまざまな問題が立ちはだかる日本の医療。本作
 品(設定は1980年代)では当時タブーとされてきた臓器移植、大学病院の医局に医師派遣の生殺与奪
 を握られた公的病院の腐敗などの問題を浮き彫りにしながらも、命の価値を感じさせる感動の医療ヒ
 ューマンドラマになっている。
  類いまれな手術の腕を持ちながらも、名誉・名声に囚われることなく、患者の命を救いたい唯一心
 で手術に挑む外科医・当麻鉄彦を熱演するのは、『クライマーズ・ハイ』、『ALWAYS 三丁目の夕日』、
 『舞妓Haaaan!!!』、『SP』シリーズなど、その安定した演技力で数々の映画、TV、舞台に出演し、日
 本アカデミー賞最優秀助演男優賞にも輝いている堤真一を起用。
  彼の真摯さに打たれ、失いかけていた仕事への情熱を取り戻す看護師の波子を演じるのは、代表作
 に『アカシアの道』、『座頭市』、『結婚できない男』などがある夏川結衣。本作品では日記形式の
 ナレーションも担当している。
  浪子の一人息子で医師の弘平を演じるのは若手注目株として多数のCM、ドラマに出演している成宮
 寛貴。そのほか余 貴美子、生瀬勝久、柄本明、吉沢悠、中越典子、などの実力派俳優が脇を固めてい
 る。監督は、『クライマーズ・ハイ』(脚本)、『フライ、ダディ、フライ』『ミッドナイトイーグ
 ル』(監督)等などのヒット作を手掛けてきた成島出。
  原作は、『チームバチスタの栄光』で知られる海堂尊と同様に、本人も現役医師(京都大学医学部
 卒)としてエホバの証人の無輸血手術をはじめ約6,000例の手術に携わり、現在は淡路島で僻地医療に
 取り組んでいる大鐘稔彦。現代の医療制度が抱えるタブーを鋭く抉り出した同名小説(全10巻)は、
 累計150万部を超えるベストセラーとなっている。
  ちなみに作品内で主人公・当麻の渡米時代の勤務先としてピッツバーグ病院が登場するが、作者も
 実際にピッツバーグで肝移植手術を見学している。当麻のモデルは「半分が自分で、残り半分は自分
 の理想像」とのこと(メディカル朝日掲載のインタビューより)。作品の大きなテーマとなっている
 脳死肝移植の手術シーンは、順天堂大学医学部の医療チームが監修に完全協力しているため、見る者
 をその世界に引き込む臨場感溢れるものとなっている。

 他に、本田大輔(矢野文男=若い医師)、安藤玉恵(丘香織=若い看護師)、徳井優(白鳥孝雄=麻酔医)、
菅原大吉(浜乃屋の主人)、日向明子(その妻)、でんでん(慎二=大川市長の弟)などが出演している。
 メスの他に、クーパー、ペアン、モスキート、メッツェンバウム、太いメラトン、強彎ケリー、鑷子、フ
ォガティ鉗子、ブルドック鉗子、ヴェッセル・ループなどの医療器具の名前が頻出していた。
 決め言葉としては、「外科医にとって大切なことは目の前で苦しんでいる患者を救うことだよ。大学の慣
例じゃない」や「医師でありつづけることは、医師になることよりも何十倍も難しい」が挙げられる。見合
いの挿話や「手術中のBGMは演歌に限る」という当麻の持論の挿話などは、当麻の人柄を窺わせる点と、
緊張緩和の役割を負わせる点で、定番ながら効果的だと思った。
 ところで、小生は、この映画はだいぶ危ない映画だと思う。というのも、この映画を観た医療の素人は、
たぶんスーパーマンのような当麻医師にぞっこん参ってしまい、「彼の言うことはすべて正しい」と思わさ
れてしまうのではないか、と危惧するからである。実際、これを書いている小生だって、当麻医師の魅力に
惹かれる自分を見出すのだ。ところが、脳死・臓器移植の背景には、以下のような問題が潜んでいるのに、
この映画ではキレイゴトしか取り上げられておらず、現実の深刻さを巧妙に回避している。つまり、小生に
は、「脳死・臓器移植」推進の宣伝映画にしか思えないのである。

  ☆ 臓器移植問題の難点(技術的可能は即倫理的可能ではない)
 
 ○ 脳死判定の問題。脳死は人の死か? 
   ⇒ 映画では「全脳死だから、死と看做してよい」という風に回答していた。本当にそうか?
 ○ ドナー(donor)が承知しても、その家族が反対した場合は?
   ⇒ ドナーの母は、むしろ積極的に移植を望んでいる。その行為が尊く見えれば見えるほど、そうは
    考えない人のこころを圧迫する。
 ○ 誰がレシピエント(recipient)になるのか?
   ⇒ 優先権問題。この映画では、ドナーから臓器を摘出するのも、レシピエントに移し替えるのも、
    同じ当麻医師が行っているが、現実には同じ執刀医が配されることはあり得ない。脳死判定を早め
    る虞があるからだ。また、強行手術をしているので、コーディネーターによるレシピエントの選択
    もない。だいいち、ドナーとレシピエントは互いに知り合ってはいけない。恩返しの問題、具体的
    には金銭的な代償の問題に発展する虞があるから。
 ○ 莫大な費用を誰が払うのか?
   ⇒ この映画では、一切触れられていない。高度医療は莫大な費用を要するはずである。
 ○ 免疫問題(抗原抗体反応)をどう扱うのか?
   ⇒ この映画でも多少触れられているが、おざなり程度。実際はもっと深刻なはずである。
 ○ 臓器売買・臓器搾取の問題は?
   ⇒ この映画では、一切触れられていない。

  参考:邦画『闇の子供たち』、監督:阪本順治、「闇の子供たち」製作委員会〔セディックインター
     ナショナル=ジェネオン エンタテインメント=アミューズ〕、2008年〔「日日是労働セレクト
     60」、参照〕。

 ○ 医師の功名心から来る科学主義をどう捉えるか?
   ⇒ 当麻は清廉潔白、女色にも金銭にも淡泊という設定なので、「功名心」とは無縁であろうが、す
    べての医師が当麻のような理想的な医師とは限らない。

 人間の死は「科学の埒外」にあり、医学で何とかなると思っている医師がいるとすれば、それは傲慢以外
の何ものでもない。当麻は、「医療>科学」の図式をよく心得ているが、はたして、そんな医療関係者が現
実にどれほどいるだろうか。小生には、はなはだ疑問である。ただし、小生は、「脳死・臓器移植」に対し
て絶対反対を叫ぶつもりもない。まだまだ検討の余地があると言いたいだけである。


 某月某日

 DVDで邦画の『テケテケ』(監督:白石晃士、アートポート、2009年)を観た。「テケテケ」というモンス
ター(亡霊、妖怪の類)が登場するホラー映画。物語の中に上手に入れば、それなりに面白い。ただし、こ
のテケテケは、あの貞子よりもリアリティはさらにない。「テケテケ」についての記述が出てくるので、以
下に写しておこう。

  〔テケテケ〕

   ある冬の日、一人の女性が列車にはねられ、上半身と下半身が切断され、即死できずに数分間も
  がき苦しんだ後、息途絶えたという出来事があった。この話を聞いた者は、3日以内に下半身のな
  い女性が現れ、殺されるという。助かる方法はただ一つ、ある呪文を唱えること。

 以上である。もっとも、この記述とこの映画での物語は必ずしも一致していない。その物語を確認してお
こう。例によって、〈goo 映画〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改変したが、ご海容い
ただきたい。
  
   〔解説〕

  日本最古にして、最大の都市伝説と言われる“テケテケ”伝説。70年代に一大ブームとなり猛威を
 ふるったこの都市伝説は、一時は衰退するも、2000年ごろから小学生を中心に再び蔓延し始めたのだ
 という。“コックリさん”や“口裂けオンナ”と同じく都市伝説として語り継がれてきたこの“テケ
 テケ”をモチーフに描くホラー映画。相手の足を求めて襲いかかる下半身のない女性の恐怖から逃れ
 る術はあるのか? 主演はアイドルグループ「AKB48」の大島優子と、人気グラビアアイドルの山崎
 真実。この2人が “テケテケ”の出生の謎に迫る。『グロテスク』の白石晃士がメガホンを執る。

   〔あらすじ〕

  大橋可奈(大島優子)のクラスメイト、関口綾花(西田麻衣)が下半身のない死体で発見された。
 この事件を機に、学校では“テケテケ”の話題で持ちきりになる。“テケテケ”を見た者は、72時間
 以内に必ず死ぬという……。可奈はこの都市伝説について調べるため、図書館に向かう。と、そこで
 従姉の女子大生・平山理絵(山崎真美)に出くわす。彼女は大学で文化人類学を専攻していて、都市
 伝説に関する卒業論文の準備をしていた。2人は“テケテケ”のルーツを調べることにする……。

 他に、長宗我部陽子(テケテケ)、阿部進之介(武田慎)、一慶(内海圭太=可奈のクラスメイト)、水
木薫(可奈の母親)、螢雪次朗(行方教授)、小島可奈子(清水弘美=最初の被害者)、沢柳廸子(加古川
の自殺について語る中年婦人)、つじしんめい(噂話を否定するこの婦人の夫)、七世一樹(大学の警備員)、
八雲ふみね(TVリポーター)などが出演している。最初の被害者の清水弘美を殺害した容疑者として、恋
人の橋本信明(画面には登場せず)が、殺人、死体損壊の疑いで逮捕されるが、音声では28歳と発音してい
るのに、TV画面のテロップでは、「橋本信明(32)」となっており、食い違っている。被害者の年齢が28
歳なので、混同したのではないか。ラッシュの段階で見過ごしたのであろうが、ちょっとしたミスである。
「アウストラルピテクス」と「アウトスラルピテクス」の間違い(これは伏線)、「三笠町」と「三坂町」
の間違い(この間違いがサスペンスを生み出している)など、覚え違いや聞き間違いが物語の進行上の効果
を狙った挿話となっているので、この食い違いも作為的なものかとも思ったが、たぶん単純なケアレスミス
であろう。
 テケテケで一番無理があるのは、人間の胴体を真っ二つにするメカニズムについてまったく触れていない
ことである。カマイタチのようにただ身体の一部を切り裂くだけならばあり得るが、やはり真っ二つはない
だろう。「胴田貫」という刀剣がまさにそれを可能にするような逸話があるが、しょせんフィクションであ
る。もともと鉄道自殺が発端なので、真っ二つという発想が生まれたのだろうが、グロテスクではあっても
あまり怖くない。鉄道員の間で、鉄道事故で亡くなった仏を「マグロ」と呼ぶ習慣があるらしいが、たぶん
バラバラの死体から連想したのだろう。もっとも、テケテケはバラバラにはしない。ちょっと不思議なのだ
が、胴体が真っ二つにされる際に、腕は千切れないのだろうか。ちなみに、夏目漱石の『三四郎』に若い女
性が轢死するくだりがあるが、テケテケよりもよほど怖い。


 某月某日

 DVDで邦画を3本観たので、ご報告。2本は60年前の映画。もう1本は15年前の映画である。いずれも恋愛
絡みであるが、半世紀を隔てると、異なるところ、同じところ、いろいろあって面白い。また、日本がこの
半世紀の間にいかに変化したかが手に取るように分かるので、その意味でも興味深い。とくに、20世紀の終
り頃の日本は、少し贅沢すぎる気がする。小生が貧乏性だからであろうか。
 1本目は『アチャコ青春手帖 東京篇』(監督:野村浩将、新東宝、1952年)である。花菱アチャコの全盛
時代を知らない小生からすれば、彼が出演している映画はあまり観ていないし、まして主演を張る作品は初
めての鑑賞である。彼は一世を風靡した漫才師であるが、当該映画は当時人気を博したラジオ番組の映画化
だそうである。アチャコといえば、横山エンタツとのコンビが有名だが、エンタツはこの映画に出演してい
ない。「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」がアチャコの売り文句であるが、この映画でその台詞は登場しな
い。後のTV時代での流行語であろう。映画における芸風は「静」で、体型も手伝ってか、ペーソスに溢れ
た佇まいをみせている。物語を確認しておこう。例によって〈goo 映画〉のお世話になる。執筆者に感謝し
たい。なお、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

  柳アチャコ(花菱アチャコ)は、大学の卒業をひかえ三度目の落第の憂き目を見た。下宿代はたま
 るし(26,826円)、母親のみどり(浪花千栄子)は上京してくるし、下宿の娘愛子(木匠まゆり)と
 は結婚できないしで、悲観している。同じ落第大学生でも、北村俊夫(大泉滉)の方は金持息子なの
 で、呑気に観光バスガールの愛子の乗っているバスに毎日乗込んで、彼女にモーションをかけている。
 愛子の心はアチャコにあったが、ついに北村は愛子を自分の誕生日に家へ招待することに成功した。
 北村の家庭であらゆるもてなしを受けたが、自分もその昔バスガールだった北村の母(丹下キヨ子)
 はあまり喜ばなかった。アチャコは発奮して、色々なアルバイトをし、最後にコルセット会社の社長
 秘書という割りのよい仕事にありついた。この会社は女ばかりの会社で、社長(清川玉枝)は女の持
 つあらゆる魅力を駆使して事業の発展にこれつとめていたが、アチャコはある時は社長の父に、また
 ある時は夫君になりすますという大活躍をするのだった。社長はアチャコに次第に恋心を感じはじめ
 るが、アチャコの心はやっぱり愛子の許にあった。そのうち浮気な社長は取引客と意気投合して結婚
 することになりアチャコは馘になったが、退職金はたんまりはずんでくれた(5万円)。もっとも、
 汽車の中でスリに遭い、全額すられてしまう。仕方なしに、下宿代の残金1万円は、自らもサンドイ
 ッチマンを務めた饅頭屋の大食いコンテストで獲得。アチャコはその金で愛子一家の経済的危機も救
 うことが出来た。また卒業式が近づいて来たが、こんどはアチャコにも自信があった。晴れて卒業の
 上は、愛子と結ばれ、一人きりの母も安堵させることが出来ることであろう。

 他に、小倉繁(愛子の父親=御下宿「金柳館」の主人)、古川緑波(取引客の石川)、堺駿二(北村家の
執事)、渡辺篤(俊夫の父親)、益田喜頓(取引客の川村)などが出演している。アチャコは、関西に帰る
母親に一言いいたかったが、一足違いで汽車は出てしまう。そこで、北村に頼んで、乗用車で汽車を追いか
け、熱海で追いつくという場面がある。この場面はなかなか面白く、時代を感じることができた。一つは、
風景で、東海道の牧歌的な景色を楽しむことができる。舗装もされていないところがあるので、疾走する自
動車に伴って土埃が舞うシーンがある。小生も子どもの頃目撃しているが、今ではほとんど考えられないだ
ろう。小生は、たぶん小学校2年生の頃(1962年頃)の社会科の教科書で、アメリカの自動車道は100%舗
装されているが、日本の道路はまだまだ昔ながらの舗装率(たぶん、30%程度だったような記憶がある)だ
ということを学び、少し残念に感じたことを覚えている。もっとも、中学生の終り頃からアンチ・モータリ
ゼーションに目覚めたので、小学校2年生の頃の考えは否定されて現在に至っている。つまり、土埃が舞う
シーンは、小生にとって微笑ましく思えるのだ。また、スピード過多で2台の白バイ(一台はサイドカー付)
に停車を命じられるが、3人の白バイ警官は直ちに事情(親孝行ゆえの暴走であること)を呑み込んで、違
反で反則切符を切るどころか、かえって先導を申し出たのにはびっくりした。運転手に向かって、100キロ
までスピードを出してよいというのも面白かった。現代ではあり得ない提案だろう。落第に関してもアチャ
コの母親は頓着せず、何年かかってもよいとまで語って励ましている。北村家でも、息子の俊夫の落第を喜
んでいる。この世知辛い世の中に出すよりも、学生でいてくれた方が安心だからである。当時でも特異な考
え方だとは思うが、何とも羨ましい限りのこころの余裕がある。長い不況で苦しむ現代人も、ときにはこん
な世界も可能かもしれない、と思ってみたらどうか。余裕のなさは、人の品性を下げるからである。
 2本目は、『風の噂のリル』(監督:島耕二、新東宝=綜芸プロ、1952年)である。『上海帰りのリル』
(監督:島耕二、新東宝=綜芸プロ、1952年)のヒットを受けて、新たに製作された「リル」もの。前作と
はほとんど接点がない。津村謙が歌った「リルを探してくれないか」(作詞:東條寿三郎、渡久地政雄、唄:
津村謙、1952年)の映画化ともいえよう。主演は前作と同じ水島道太郎だが、浜田百合子を除いて、ほとん
どの出演者が入れ替わっている。なお、前作では台詞のなかった津村謙が、当該作品ではけっこう重要な役
を演じており、台詞もあるし歌うシーンもある。水島の相棒は片山明彦。ヒロインは南寿美子である。
 この作品も〈goo 映画〉の「あらすじ」を引用させていただく。執筆者に感謝したい。なお、一部改変し
たが、ご海容いただきたい。

  アル中で生活意欲を失った楽士の真田文吉(水島道太郎)は、弟子の島木哲夫(片山明彦)の親切
 な心使いで支えられているような男だった。ある時下田のキャバレー黒船へ行く五人の仲間に加わっ
 てこの二人も旅へ出たが、そこでリルと呼ばれる可憐な大原恵子(南寿美子)という乙女を発見した。
 一行が引き揚げて帰京する時、歌手志願の恵子が追ってきて東京へ同行することを頼まれた。恵子は
 東京で哲夫の叔母(清川玉枝)が切り盛りしている雑貨屋の二階へ落ち着いたが、真田は恵子の当座
 の生活費の面倒を見てやるために女剣戟大江みどり(浜田百合子)の一座の楽士となって旅へ出た。
 その留守に恵子は哲夫の友人の厚意でラジオ歌手としてデビューすることができた。ラジオからもれ
 る恵子の声を聞いた真田は、みどりの求愛を退けて東京へ帰ってきた。東京へ帰った真田に、哲夫は
 恵子との愛情を打ち明けた。しかし真田こそ一目見た時から恵子を愛し、彼女によって生き甲斐を再
 び感じ出していたので、その痛手は大きかった。実は、恵子が真田の亡くなった愛妻に似ていたので
 ある。哲夫はそれを知ると、真田のために恵子から遠ざかり、酒びたりの毎日を送るようになった。
 恵子の哲夫への深い愛を知って哲夫を探し出し、恩愛の鉄拳をもって彼の仕事への精進を激励したの
 は真田だった。そして二人を結んでやったのである。

 他に、中村是好(徳兵衛=楽士斡旋業)、潮万太郎(大森=太鼓)、富田仲次郎(真田の古い知り合い=
音楽関係者)などが出演している。南寿美子は後に日活のロマンポルノに出演しており、当該映画での清純
さとは裏腹の経歴を持っているが、女優の道を邁進した点でだいぶ逞しい。浜田百合子は、前作同様水島に
惚れて振られる役を演じているが、エキゾティックな風貌と男に対して積極的な態度から、当時の日本には
数少ないタイプの女性ではないだろうか。その勇み肌は、小生にはなかなか魅力的に映る。なお、駿豆バス
の停留所が登場するが、伊東と熱海の間の「宇佐美」という文字が小生の目を惹いた。なぜなら、1963年の
一年間、当地に住んでいたからである。映画では下田となっているが、バスを降りたらすぐにキャバレーが
あったので、宇佐美の間違いではないだろうか。「女剣戟」といえば浅香光代を思い出すが、浜田演じる大
江みどりの演目を挙げておこう。「抱寝の長脇差(だきねのながどす)」、「弥太郎おせん」、「上州土産
女國定」である。「歌謡映画」というと一段下に思われるかもしれないが、けっこう丁寧に作っており、当
時の様子もいろいろ窺えて、小生にはかなりの興味をもって鑑賞できる映画だった。
 3本目は、『恋と花火と観覧車』(監督:砂本量、松竹、1997年)である。何となく気になっていた映画
である。思いがけなくTSUTAYAのラインナップに組み込まれていたので、借りてみた。どうやら、松竹製作の
少し古い映画がレンタルされるようになったようだ。何か理由があるのだろう。「恋は遠い日の花火ではな
い」というサントリーのキャッチ・フレーズがあるが、それを地で行く映画。大人のラヴ・ファンタジーと
もいえる。どうみても予定調和ではあるが、中年すぎの男にはちょっぴり甘酸っぱい映画ではなかろうか。
主演の長塚京三と、相手役の松嶋菜々子という組み合わせもなかなかいい。脇を固める生瀬勝久、深浦加奈
子の大袈裟な演技も鼻につく寸前で止められている。演出の妙といえようか。なお、秋元康の企画。
 物語を確認しておこう。この映画も〈goo 映画〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改変
したが、ご寛恕を乞う。

  妻を病気で亡くしてから8年、森原邦彦(長塚京三)は一人娘のひとみ(酒井美紀)を育てながら、
 やもめ暮らしを続けていた。ひとみがこっそり申し込み書を送った結婚情報サービスのイベント・パ
 ーティにとりあえず参加した邦彦は、そこで取引先の会社員である野々村史華(松嶋菜々子)と出会
 う。史華は以前つきあっていた男(椎名桔平)が結婚していたことを知ってから、同世代の男に興味
 を持てなくなっており、邦彦に想いを寄せるようになった。しかし、邦彦は娘ほども年の違う史華の
 存在が眩しすぎて、彼女への気持を抑えてしまう。史華に一目惚れした西荻洋一郎(生瀬勝久)に頼
 まれて史華との食事会をセッティングさせられたりの日々が続く中、邦彦は史華に夜の観覧車で自分
 に対する気持を打ち明けられた。だが、それでも自分が恋愛の現役ではないという想いが、邦彦に煮
 えきらない態度をとらせる。そんなある日、カクテル・パーティの席で、史華への想いを断ち切れな
 い西荻が、気持を告白しようとして想いとは裏腹に彼女をなじってしまった。はっきりしない自分の
 態度に責任の一端を感じた邦彦は、後日、史華からのティー・パーティの招きに西荻を連れて彼女の
 マンションを訪れる。しかし、邦彦はそこで彼女が紅茶のインストラクターの勉強をするためにイギ
 リスへ渡る決心をしていることを知らされた。史華の出発の日、邦彦は西荻たちに説得され空港へ向
 かうが、彼の声はもう少しのところで史華に届かなかった。数日後、史華からの絵葉書を受け取った
 邦彦は、ひとみの「行ってあげなよ」という言葉に押されてイギリスへ渡り、史華が働くホテルのラ
 ウンジで自分の思いを伝える。それからしばらくして、西荻たちの合同結婚式を祝福する邦彦と史華
 の姿があった。

 他に、深浦加奈子(立花澄江=離婚歴有の二児の母。保険の外交員。邦彦に惹かれるが、最後の最後で西
荻と結婚する)、風吹ジュン(森原のぞみ=邦彦の亡妻)、樹木希林(三田さなえ=結婚情報サービスのス
タッフ)、横山通代(柴田京子=邦彦の姉)、佐野重樹(海老原義和=電気店店主)、金田明夫(渡辺部長)、
峰野勝成(堅城)、つるの豪志(ツトム)、鶴見辰吾(喫茶店店長)、大島蓉子(研究所勤務風の女)、大
杉漣(タクシーの運転手)、石塚英彦(西荻の同僚)、菅田俊(空港警備員)などが出演している。西荻が
自嘲して、「誰にも取ってもらえず、永遠に回り続ける寿司……それが自分」という台詞を吐くが、言い得
て妙だった。史華のマンションがある町が横浜の磯子区(小生はここに9年近く暮らしたことがある)、邦
彦の定期券の有効期限日が11月7日(小生の誕生日)など、物語とはほとんど関係のない事柄が目を惹いた。
「ゴールデン・チップ」という珍しい高級紅茶(茶葉の新芽。発酵によりあざやかなオレンジ色になり、香
りもよくなる。黒褐色の茶葉の中に含まれているとひときわ目立つ。採れる量が少ないため、含有量が増え
ると高級品になる)〔はてなキーワードより〕も初めて知った。劇中登場する日本紅茶協会という団体も実
際に存在し、史華がもっている「ティーインストラクター」の資格の認定も行っている由。ちなみに、彼女
は三級(ジュニア)の免状を受けている。

                                                  
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