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【新選】昭和日本映画百選
【新選】平成日本映画百選
日日是労働セレクト124
 以下に、「日日是労働」のダイジェスト版・第124弾を掲げます。直ぐ下の記事がこの「日日是労働セレク
ト124」の中では最も新しい日付のものです。つまり、読み進めるほど、古い記事になります。ただし、いち
いち明示しませんが、後日に行った加筆訂正を含んだ日があります。日誌ですから、少なくとも後日に加筆
することはご法度であるはずですが、「某月某日」ということもあり、記事内容の充実を優先させました。
ご了承ください。また、頑張って「辛口」の批評を展開しようと務めておりますので、本文に何かと読者の
お気に召さない表現等が散見されるやもしれませんが、特定の個人、団体等を誹謗中傷する目的は一切あり
ませんので、どうぞご理解ください。なお、ご感想は、muto@kochi-u.ac.jp までお寄せ下さい。


 某月某日

 まことに早いもので、今年もすでに一月経ってしまった。仕事の方は順調とは言えないが、何とかこなし
ているのでよしとしよう。映画鑑賞のノルマは1月当たり17本であるが、今月は10本しか観ることができな
かった。これもよしとしなければならない。
 さて、DVDで邦画の『妖星ゴラス』(監督:本多猪四郎、東宝映画、1962年)を観た。期待外れではあっ
たが、半世紀前の映画なので、こんなものだろう。もしかすると、子どものころ映画館で観ているかもしれ
ないが、覚えているシーンは皆無だった。たぶん、初見だと思う。東宝が当時としては巨額の製作費を費や
して作ったSF大作であるが、現代の若者には通用しそうもない。レトロ好きの人には受けるかもしれないが、
特撮に関して言えば、稚拙そのものである。
 物語を確認しておこう。例によって〈Movie Walker〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  丘美丈二郎の原案から『ガス人間第一号』の木村武が脚本を書き、コンビの本多猪四郎が監督した
 スペクタクルもの。撮影もコンビの小泉一。パースペクタ立体音響。

   〔あらすじ〕

  1980年。富士山麓宇宙港から、園田艇長の第1回土星探検宇宙船隼号が離陸した。ロケットが火星
 軌道を通過したとき、地球からの通信が新しい星の出現を報じてきた。これは地球の六千倍という怪
 星で宇宙学会はこの新星を「ゴラス」と名づけた。突如、ロケットは何ものかの引力に引かれた。地
 球では「土星探検の隼号遭難」の新聞記事が人々の目を奪った。隼号のゴラス調査報告によれば、ゴ
 ラスが今の状態で進んでくると、地球に衝突する虞があると警告した。国連はゴラス対策に本腰を入
 れ、日本政府へ鳳号をゴラス調査のため派遣するよう要請してきた。今や地球を救うにはゴラスを爆
 破させるか地球が軌道を変えて衝突を避けるか、二つに一つだった。宇宙港では南極大陸に原子力ジ
 ェットパイプを並べ66億メガトンの推力機関が計画された。ゴラスは流星を吸いとり刻々と近づいて
 きた。ある日、推力機関センターで突然震動がおこり恐竜マグマが出現した。この怪獣のため七十二
 時間の空費をつくってしまった。やがて強風にうなりを発する東京タワーはすでにその四分の一を水
 に浸していた。……地球の危機。だがその時原子力ジェット・エンジンが動き出し、地球はゴラスの
 軌道から逃れた。ついに科学が勝ったのであった。

 主な配役を挙げておこう。池部良(田沢博士)、上原謙(河野博士)、園田雷蔵〔隼号艇長〕(田崎潤)、
志村喬(園田謙介=雷蔵の父)、白川由美(園田智子=同じく娘)、坂下文夫(園田速男=同じく息子)、
水野久美(野村滝子)、桐野洋雄(真鍋英夫=隼号副艇長)、佐々木孝丸(関総理)、小沢栄太郎(木南法
相)、河津清三郎(多田蔵相)、西村晃(村田宇宙省長官)、佐多契子(秘書)、平田昭彦(遠藤=鳳号艇
長)、佐原健二(斎木=同じく副艇長)、久保明(金井達麿=同じく乗員)、太刀川寛(若林=同)、二瓶
正也(伊東=同)、三島耕(真田技師)、堺左千夫(医師)、沢村いき雄(タクシーの運転手)、天本英世
(キャバレーの客)などである。
 地球の軌道を変えるという途方もない発想であるが、あの程度の噴射で地球が動くとはとても思えない。
しかも、エネルギー源は原子力(重水素と三重水素)の由。水爆と同じ原理らしいが、放射能は心配ないそ
うである。「水素イオン高圧放電振動付加装置」や「重水素原子力工場」などといった言葉も登場する。ず
いぶんお気楽な感じであった。なお、隼号の損失は11兆5,000憶円の由。ゴラスは地球の傍を通るが、月に
は衝突している。その後、どうなったのであろうか。これに関しては、「驢鳴犬吠1601」を参照してほ
しい。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たのでご報告。両者の間には80年近くの時間が経過している。奇しくも、両者ともに
在日の朝鮮の女性が登場するが、その生き方はまったく違う。これも時代の流れだろうか。
 1本目は、『水の声を聞く』(監督:山本政志、CINEMA☆IMPACT、2014年)である。宗教がメイン・テー
マの映画だが、かなり本格的に描かれていると思う。新興宗教が絡む映画を挙げるとすれば、古くは『浮雲』
(監督:成瀬巳喜男、東宝、1955年)にも登場するし、『にっぽん昆虫記』(監督:今村昌平、日活、1963
年)や『競輪上人行状記』(監督:西村昭五郎、日活、1963年)においても、物語を彩る独特の味つけとな
っている。さらに、比較的新しいところでは、『マルサの女2』(監督:伊丹十三、伊丹プロダクション、
1988年)、『教祖誕生』(監督、天間敏広、ライトヴィジョン=ポニーキャニオン、1993年)、『冷たい血』
(監督:青山真治、BRANDISH=タキコーポレーション=東北新社、1997年)、『DISTANCE』(監督:是枝裕
和、『DISTANCE』製作委員会、2001年)、『カナリア』(監督:塩田明彦、「カナリア」パートナーズ、2004
年)、『愛のむきだし』(監督:園子温、オメガ・プロジェクト、2008年)など枚挙に遑がないが、当該映
画はかなりその本質に迫っていると思う。「鰯の頭も信心から」という言葉があるように、信仰することが
大事なのであって、その対象の真贋は問われない。世界三大宗教と言われる、キリスト教、仏教、イスラム
教にしても、最初は小さな教団とも言えない集団から始まったはずである。したがって、どんなにインチキ
臭い宗教であれ、信者がいれば成立するのである。玄里(現 玄理)と村上淳以外知っている俳優は皆無で
あったが、皆それぞれのポジションをしっかり守っていると思った。
 物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部改
変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  ひょんなことから新興宗教の教祖となった若い女性を中心に、何かを求めてその周りに集う人々の
 人間模様を描いたドラマ。主演は東京に生まれ、『フリーター、家を買う。』や『ジャッジ!』など、
 韓国、日本、ヨーロッパを舞台にボーダーレスな活動を続ける玄里。監督は、実践映画塾“シネマイ
 ンパクト”を主宰する山本政志。

   〔あらすじ〕

  東京、新宿のコリアンタウン。在日韓国人のミンジョン(玄里)は、坂井美奈(趣里)の誘いに乗
 り、軽くひと稼ぎしてから頃合いを見てやめるつもりで巫女を始めた。しかし、救済を求める信者が
 増え、宗教団体“真教・神の水”が設立されると、後戻りできない状況になってゆく。借金取りに追
 われる父親の三樹夫(鎌滝秋浩)、それを追う狂気の追跡者である高沢(小田敬)やその手下、教団
 を操ろうとする広告代理店の男である赤尾(村上淳)や笹内(小松茂孝)、教団に夢を託す女、救済
 を求める信者たち。ミンジョンは聖と俗の狭間で苦悩し、偽物だった宗教に心が入ってくる。やがて、
 大いなる祈りを捧げ始めるミンジョン。不安定な現代に“祈り”を捧げ、“祈り”によって世界を救
 済する。いったい何が“本物”で、何が“偽物”なのか? 大いなる祈りは、世界に届くのか?

 他に、萩原利久(シンジ=高沢の許で働く中学生)、中村夏子(沖田紗枝=神の水の第二巫女)、松崎颯
(小宮守=神の水の団員)、薬袋いづみ(守の母親)、齋藤隆文(文人〔ふみと〕=神の水の団員)、富士
たくや(宮沢裕太=同)、西尾英子(宮沢依子=同)、岡部祐介(俊一=同)、高木悠衣(茂木奈緒=同)、
かわはらゆな(和子=同)、マーシャル・アブトゥルラフマン(Gee=高沢の手下)、牛丸亮(ジュン=同)
などが出演している。
 2本目は、『有りがたうさん』(監督:清水宏、松竹大船、1936年)である。以前から観たいと思ってい
た映画で、やっと念願が叶ったというわけ。時間の流れが独特で、人々の台詞もゆっくりとしている。ほん
の80年前のスケッチであるが、「だいぶ日本も変わったな」というのが、誰しも抱く感慨ではなかろうか。
原作は川端康成の掌篇「有難う」の由。伊豆を舞台にしているだけに、いやでも『伊豆の踊子』を連想した。 
 物語を確認しておこう。DVDのパッケージにある記事を引用させていただく。執筆者に感謝したい。なお、
若干の改変を行ったが、ご寛容いただきたい。

  伊豆の村落を抜けて峠路を走る定期乗合いバス。山道で出会う人々が道端に避けてくれる度に「あ
 りがとう」と感謝のひと言をかける若い運転手(上原謙)は、天城街道の人々から「あるがとうさん」
 と呼ばれていた。道行く人のことづてや、町での買い物まで引き受けて慕われている彼のバスには、
 さまざまな人々が乗ってくる。今日も始発の町から乗り込んだのは、港から港へ旅する訳ありげな黒
 襟の女(桑野通子)、貧しさのために東京へ売られていく娘(築地まゆみ)とその母親(二葉かほる)、
 髭の頑固な紳士〔実は、インチキ無尽の勧誘員〕(石山高嗣)、金の発掘を夢みる男(如月輝夫)、
 行商人たちなど。人それぞれの悲哀や艱難辛苦を乗せて運行していた。
  全篇オール・ロケーションで昭和十一年に製作された画期的な作品。セット撮影を一切使わない作
 品創りに意欲を燃やした清水宏の実写精神がいかんなく発揮されたロード・ムービーの先駆け的名作。
 当時の映画界に大きな論議を投げかけた野心作だった。原作は川端康成の掌篇。ロケ地に多用した伊
 豆を舞台に、多様な登場人物で内容を膨らませ、清水監督特有のペーソスと詩情で綴った作品。

 他に、仲英之助(行商人)、河村黎吉(東京帰りの村人)、忍節子(その娘)、堺一二(行商人A)、山
田長正(同じくB)、河原侃二(狩猟帰りの男)、青野清(田舎の老人)、金井光義(村の老人)、谷麗光
(医者)、小倉繁(新婚の夫)、河井君枝(新婚の妻)、利根川彰(田舎のアンちゃん)、桂木志郎(祝言
に向かう夫)、水上清子(同じく妻)、縣秀介(お通夜に向かう人)、高松栄子(茶店の婆さん)、久原良
子(この土地を離れて信州に向かう朝鮮の女性)、浪花友子(旅役者)、三上文江(同)、小池政江(同)、
爆弾小僧(同)、小牧和子(村の娘)、雲井つる子(酌婦)、和田登志子(同)、長尾寛(旅芸人)、京谷
智恵子(同)、水戸光子(同)、末松孝行(同)、池部鶴彦(薬屋)、飯島善太郎(小学生)、藤松正太郎
(同)、葉山正雄(同)などが出演している。
 売られていく娘の母親と、隣り合わせた老人の会話を再録してみよう。

 母親:十七、八と言や、昔は嫁入り盛りだった。
 老人:鼻をかんでも笑いたい年頃だに。当節、娘さんの笑う顔を見たことがないよ。
 母親:豊年だ、豊年だとかけ声ばかり。みかんの相場が一円台では ── 晴れ着一枚買ってやれんでねぇ。
 老人:それでも、お前さんは娘さんを持って幸せだよ。男の子を持ってご覧なさい。働こうにも仕事なん
    かありゃしませんし、漁に出たってジャコ一匹 ── 取れんことがままあることでなあ。お前さん
    は娘さんを持ちなさって幸せですよなあ。

 しかし、娘は東京に売られていくのである。せっかく生まれた赤ん坊も、成長すると、男は「ルンペン」、
女は「一束いくら」の時代である。だから、赤ん坊が生まれても、「おめでとう」の代わりにお悔やみの言
葉を発した方がいいくらいである。もっとも、この遣り取りは映画特有の伏線で、最後にはシボレーのセコ
ハン〔second hand=中古車〕を買う代わりに(自分で開業するつもりだった)、この青年運転手がこの娘
を救う(嫁にもらう)ことになるのである。狭いバスの中で煙草を吸ったり、運転手にウイスキーを勧めた
り、バスの後部座席の外側に子どもが貼りついて乗っていたり、現在ではあり得ない場面がごく当たり前に
描かれている。牧歌的な時代と言えばそれまでだが、小生もかすかに覚えているかつての日本の姿を懐かし
く思った。朝鮮人労働者の道普請の挿話があるが、『二人で歩いた幾春秋』(監督:木下恵介、松竹大船、
1962年)〔「日日是労働セレクト101」、参照〕を連想した。現在のようにアスファルトで舗装されてい
ない道路はすぐに傷んだものである。それを修復する仕事が「道普請」と言われていたが、それも過去の遺
物となってしまったのである。その他、ターキー(水の江瀧子)とトーキー(発声映画)の挿話、「蓄音機
の種板(=レコード)」という言葉や、「ハイキングは日蓮様が元祖かね、それとも弘法様? お経の中の
言葉?」といった会話が面白かった。黒襟の女の役を演じていた桑野通子は桑野みゆき(女優)の母親だそ
うだが、滅法いい女だと思った。あるバーのマスターが当該映画の彼女を激賞していたが、小生も同感であ
る。31歳で亡くなったのは、いかにも惜しい。美人薄命の典型例である。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たのでご報告。監督は1961年生れの園子温と1962年生れの是枝裕和である。両者とも
に中堅の定評ある映画監督の作品である。こう書くと、褒めなければいけないような外圧を感じるが、残念
ながらそうはならない。是枝作品はしばらく置くとして、園監督の近作はどうだ。はっきり言って、「なぜ、
こんな映画作ったの?」のレヴェルである。主演の長谷川博己はともかくとして、付き合わされた西田敏行
と麻生久美子は確実に株を下げた。
 1本目は、『ラブ&ピース』(監督:園子温、「ラブ&ピース」製作委員会〔キングレコード=アスミッ
ク・エース=GYAO=フィールズ〕、2015年)である。どこかで観たようなシーン、どこかで出遭ったことの
ある筋書だらけで、園子温監督の色に染まっている映画ではあるが、徹頭徹尾「閃き」を感じることはなか
った。何か新しいものを出せなくなった監督は、才能が枯渇したと言ってもよいだろう。残酷だが、仕方が
ない。『新宿スワン』(監督:園子温、「新宿スワン」製作委員会〔講談社=トライトーン・エンタテイメ
ント=ジャパン・ミュージックエンターテインメント=ハピネット〕、2015年)で持ち直したと感じていた
ので、本当にがっかりした。
 ともあれ、物語を確認しておこう。例によって<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。な
お、一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  『ヒミズ』など国内外で高い評価を受ける園子温監督が、長谷川博己を主演に迎え、“愛”をテー
 マに描く人間ドラマ。うだつの上がらないサラリーマンの人生が、一匹のミドリガメとの出会いを機
 に変わっていく姿を映す。巨大化した怪獣が東京の街を破壊する特撮怪獣映画の要素も盛り込んでい
 る。主題歌はRCサクセションのヒット曲「スローバラード」。

   〔あらすじ〕

  2015年夏。ロックミュージシャンになる夢が破れた鈴木良一(長谷川博己)は、今や楽器の部品会
 社で働く冴えないサラリーマンとなっていた。気が小さいあまりに、思いを寄せている同僚の寺島裕
 子(麻生久美子)に話しかけることすらできずにいた。そんな中、デパートの屋上で出会った一匹の
 ミドリガメと運命的な出会いを果たす。良一はカメに「ピカドン」という名前をつけかわいがってい
 たが、会社で馬鹿にされ、ピカドンをトイレに流してしまう。すぐに後悔の念に苛まれる良一。一方、
 ピカドンは下水道を通り、地下に住む謎の老人(西田敏行)に拾われ、思わぬ事態を呼ぶ。

 他に、渋川清彦(稲川さとる=マネージャー)、奥野瑛太(内藤愁=Revolution Q のギター)、マキタ
スポーツ(良一の会社の課長)、深水元基(田中透=同じく同僚)、小倉一郎(同)、手塚とおる(塚田治=
日本科学研究所の研究員)、真野恵里菜(女子高生)、神楽坂恵(ユリの母)、菅原大吉(記者)、浪岡一
喜=良一のアパートの住人)、松田美由紀(松井=レコード会社のプロデューサー)、田原総一朗(TV番組
の司会者)、水道橋博士(その番組のコメンテーターのひとり)、宮台真司(同)、津田大介(同)、茂木
健一郎(同)、長谷川大(デッド=Revolution Q のベース)、谷本幸優(ネガ=同じくドラム)、IZUMI
(ジェーン=同じくキーボード)、星野源(PC‐300 の声)、中川翔子(マリアの声)、犬山イヌコ(スネ
公の声)、大谷育江(ピカドンの声)などが出演している。
 2本目は、『海街diary』(監督:是枝裕和、「海街diary」製作委員会〔フジテレビジョン=小学館=東
宝=ギャガ〕、2015年)である。よくできている。もっとも、ただそれだけ。つまらない家族映画。ただし、
出演した俳優はすべて活き活きとしている。しかし、つまらない。どうしてだろうか。是枝監督の「家族映
画」としては、『歩いても 歩いても』(監督:是枝裕和、「歩いても 歩いても」製作委員会〔エンジンフ
ィルム=バンダイビジュアル=テレビマンユニオン=衛星劇場=シネカノン〕、2008年)をすぐに思い浮か
べることができるが、同等レヴェルの作品なのに、『歩いても 歩いても』が面白かったのに対して、当該
作品はつまらない。舞台は鎌倉、古い家、四姉妹、そのうちの一人は父の浮気の子。物語がつまらないから
だろうか。たぶんそうではない。あまりにも定型に拘っており、陳腐そのものだからつまらないのである。
また、キャスティングがいかにも平凡で、意外性に乏しいのも物語をつまらなくした原因であろう。夏帆と
広瀬すずはいくらか新鮮だが、もう綾瀬はるかも長澤まさみも若手女優としての賞味期限を過ぎている。言
い換えれば、役柄の転向を図らなければならない時期に来ているのではないか。この作品でも、彼女らの今
までのものとは違った側面を見せてはいるが、ガラッと変えなければただの人気におんぶした女優で終わっ
てしまうような気がする。また、ヴェテラン陣も、大竹しのぶ、堤真一、風吹ジュン、リリー・フランキー、
樹木希林、加瀬亮、中村優子、小倉一郎あたりは、あまりにも当たり前の配役で、飽き飽きしている。他に
役者がいないのだろうか。もっとも、若い連中はうまいけれど光っているわけではなく、つまらない小津映
画を観ているような錯覚に襲われる。おそらく、園ほどではないが、是枝も疲れてきたのだ。ここらで、自
作のコンセプトを破壊する暴挙に出た方がいいような気がする。ファンの勝手な言い分であることはもちろ
んだが……。
 物語を確認しておこう。以下、上と同様。

   〔解説〕

  海の見える街で暮らす個性的な四姉妹と周囲の人々との交流を描いた吉田秋生の同名コミックを、
 『そして父になる』の是枝裕和監督が映画化した人間ドラマ。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬
 すずという日本映画界を代表する女優たちが四姉妹に扮する。三人の母親役の大竹しのぶをはじめ、
 堤真一、加瀬亮ら豪華キャストが集結。

   〔あらすじ〕

  長女・幸〔さち〕(綾瀬はるか)、次女・佳乃(長澤まさみ)、三女・千佳(夏帆)は、鎌倉で三
 人一緒に住んでいた。そんな彼女らのもとに、ある日、15年前に家を出て疎遠になっていた父の訃報
 が届く。三人は父の葬儀が行われる山形に向かい、母親違いの妹・浅野すず(広瀬すず)と初めて対
 面する。身寄りをなくしたすずはどうしようもない大人たちに囲まれながらも、一人毅然とした態度
 を見せていた。そんなすずに幸は、鎌倉に来ないかと言う。こうして、すずを入れた四姉妹の暮らし
 が始まった……。

 他に、加瀬亮(坂下美海=銀行員の佳乃の上司)、鈴木亮平(井上泰之=湘南オクトパス〔中学生のサッ
カー・チーム〕の監督)、池田貴志(浜田三蔵=千佳の恋人)、坂口健太郎(藤井朋章=佳乃の恋人、後に
別れる)、前田旺志郎(尾崎風太=湘南オクトパスの選手、すずと仲良くなる)、キムラ緑子(高野日出子=
幸が看護師として勤める病院の看護師長)、樹木希林(菊池史代=大船のおばちゃん)、風吹ジュン(二ノ
宮さち子=海猫食堂店主)、リリー・フランキー(福田仙一=山猫亭店主)、堤真一(椎名和也=医師、幸
と不倫関係)、大竹しのぶ(佐々木都=幸たちの母親)、中村優子(浅野陽子=すずの義理の母)、清水一
彰(飯田敏男=陽子の叔父)、関ファイト(緒方将志=湘南オクトパスの選手)、三上紗弥(金子美帆=同
じく選手)、小倉一郎(零細工場の経営者)などが出演している。


 某月某日

 DVDで邦画を2本観たのでご報告。1本目は、『日本のいちばん長い日』(監督:原田眞人、「日本のい
ちばん長い日」製作委員会〔松竹=アスミック・エース=テレビ朝日=木下グループ=WOWOW=巌本金属=
読売新聞社=中日新聞社〕、2015年)である。『日本のいちばん長い日』(監督:岡本喜八、東宝、1967年)
のリメイク映画であるが、なぜ今頃この作品を作らねばならないのかよく分からない。戦後70周年を記念し
てのことだろうか。丁寧に作ってあるが、前作の緊迫感はなく、役者の貫録もだいぶ劣っていた。天本英世
が演じた佐々木武雄横浜警備隊長役を誰が演じているのか楽しみだったが、果たして松山ケンイチだった。
キャスティングとしては無難だと思うが、彼はこの役をまるでこなしていなかったと思う。やはり、若い人
には無理という感じか。阿南惟幾陸軍大臣を演じた役所広司も三船敏郎の迫力に及ぶべくもなく、海軍大臣
の米内光政役も、山村聰と中村育二では月とすっぽんだった。わずかに、昭和天皇役の本木雅弘、鈴木貫太
郎(内閣総理大臣)役の山崎努、東條英機役の中嶋しゅうあたりが気を吐いていたか。「日日是労働セレク
ト13」に前作の感想文が載っているので、以下にそっくり引用しておこう。


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 某月某日

 (前文、省略)

 2本目は『日本のいちばん長い日』(監督:岡本喜八、東宝、1967年)である。東宝が35周年の記念映画
として製作した大作である。昭和天皇によるポツダム宣言の受諾の聖断から玉音放送に至る流れを、1945年
8月14日正午から翌15日正午までの「長い一日」として描いた作品である。把握できた出演者を挙げておく。
鈴木貫太郎首相(笠智衆)、阿南陸相(三船敏郎)、米内海相(山村聰)、東郷外相(宮口精二)、下村情
報局総裁(志村喬)、松本外務次官(戸浦六宏)、軍事課井田中佐(高橋悦史)、軍務課椎崎中佐(中丸忠
雄)、軍務課畑中少佐(黒沢年男)、軍事課長荒尾大佐(玉川伊佐男)、大西軍令部次長(二本柳寛)、迫
水書記官長(加藤武)、森近衛師団長(島田正吾)、矢部日本放送協会国内局長(加東大介)、海軍302航空
隊厚木基地司令小園大佐(田崎潤)、同副長(平田明彦)、木戸内大臣(中村伸郎)、蓮沼侍従武官長(北
竜二)、佐藤官房総務課長(北村和夫)、第二総軍畑元帥(今福正雄)、横浜警備隊長佐々木大尉(天本英
世)、加藤日本放送協会総務局長(神山繁)、筧宮内省庶務課長(浜村純)、近衛師団古賀参謀(佐藤允)、
近衛第二連隊長芳賀大佐(藤田進)、児玉基地飛行団長野中大佐(伊藤雄之助)、戸田侍従(児玉清)、徳
川侍従(小林桂樹)、航空士官学校黒田大尉(中谷一郎)、日本放送協会放送員館野守男(加山雄三)、同
和田信賢(小泉博)、新聞記者(三井弘次)、ナレーター(仲代達矢)である。その他、何の役かは分らな
いが、松本幸四郎(先代)、藤木悠、井川比佐志などが出演している。
 さて、本日は少し疲れているので、これで店仕舞いにする。感想はまた明日以降に……。


 某月某日

『日本のいちばん長い日』(監督:岡本喜八、東宝、1967年)の感想を綴ろう。なお、現在では不適切な
言葉を用いるが、当時の映画の表現を尊重してそのままにした。ご海容を乞いたい。
 昭和20年7月26日午前6時、埼玉県大和田海外放送受信局が、「ポツダム宣言」を傍受。それ以前になされ
たカイロ宣言とは異なり、絶対的無条件降伏の主張を捨てて、8項目にわたる平和樹立の特定条件を示すも
のであった。

  我等アメリカ合衆国大統領、中華民国政府主席、及びイギリス帝国総理大臣は、数億の国民を代表し
 て、日本に対し、今時の戦争を終結せしめる機会を与えることに意見の一致を見たり。アメリカ、イギ
 リス、及び中華民国の巨大な陸、海、空軍は、日本に対し最後的な打撃を加える態勢を整えたり。
  一、我等は降伏に対する遅延を認めることを得ず。
  一、我等は無責任なる軍国主意者が日本より……

 翌27日、首相官邸の閣議室で、このポツダム宣言に対して日本はどういう態度を取るべきかが討議された。
現在、ソ連に仲裁に入ってもらうように要請中であるから、取り敢えず「静観」ということに決まり、新聞
もポツダム宣言に対して「豺狼の甘言」であるとか、「笑止! 米英蒋共同宣言。自惚れを撃砕せよ」など
といった調子の記事を載せている。阿南陸相(三船敏郎)の言葉を引こう。

  第一には、天皇の地位の保証。第二に、日本本土へ上陸する占領軍は、できるだけ小範囲の小兵力で、
 しかも短期間であること。第三、日本軍の武装解除は日本人の手によって自主的に行うこと。第四、戦
 争犯罪人の処置は、日本人に任せること。以上、四つの条件を敵側が入れざる場合には、あくまでも戦
 争を遂行する。これが陸軍の意見である。本土決戦によって、戦局の好転を待ち、それを和平の機会と
 すれば、もっと有利な条件を敵側に認めさせることもできる。

 しかも、アジア大陸と太平洋の諸島に布陣する272万の第一線部隊は、作戦上の通信機械、ラジオ、その
他で、ポツダム宣言の内容を詳細に知っていたのである。したがって、市ヶ谷台にある陸軍省のもとには、
なぜ明確にポツダム宣言に対して反対しないのかという詰問電報がしきりに届いていたのである。また、
鈴木首相(笠智衆)は度重なる新聞記者との遣り取りの最中「黙殺」という言葉を使ったが、この言葉が
英米圏において「無視(ignore)」となり、やがて「拒絶(reject)」に変化したのである。連合国および
中華民国が態度を硬化させたのはもっともなことである。やがて、8月6日、広島に原爆投下。8月8日、ソ
連参戦。8月9日、午前10時30分より、宮城内望岳台下地下防空壕における最高戦争指導会議が開かれたが、
その会議中に長崎に再び原爆が投下されている。映画は、そこに行き着くまでの流れを簡単に整理してい
る。

  戦争が始まってから約7ヶ月間、日本は圧倒的に強く、瞬く間に太平洋、インド洋、オーストラリア
 までを巨大な軍事力で制圧した。だが、太平洋戦争の天王山とも言うべきミッドウェー海戦で敗れてよ
 りは、次第に国力の差が現れ、ジリ貧状態となり、伸び切った前線は次々とこれを支えることができず、
 やがては沖縄までもが陥落し、サイパン、テニアンの基地より飛来するB29の爆撃に、東京を始め全国
 92の都市が焼け野原となり、軍需工場は盲潰しに(原文ママ)破壊され、陸海軍将兵の死傷はすでに360
 万、非戦闘員の死傷147万、罹災者は1,000万人以上にも及び、国力の余命はもう幾許もなかった。この
 上になお、「オリンピック作戦」と呼号する連合軍100万の本土上陸を目前にしていたのである。

 8月9日夜11時50分から、天皇の稟議を仰ぎ、御前会議が開かれた。しかし、議は容易に決せず、その最終
段階において、天皇は次のように決済せられた。

  これ以上戦争を継続させることは、我が民族を滅亡させることになる。速やかに終結せしめたい。

 8月10日午前6時、スイスとスウェーデン公使を介し、連合国宛の電報が発信された。天皇の大権に変更を
加えるが如き要求は、これを含んでいないものと解して、という「条件付宣言受託」の電報である。いわば、
「条件付無条件降伏(conditional unconditional surrender)」というわけである。9時30分、阿南陸相は佐官
以上を全員集合させて、「和するも戦うも敵側の回答による」という考えを披瀝している。8月12日0時45分、
海外放送受信局は、サンフランシスコ放送を傍受している。それは、日本の「条件付宣言受諾」に対する連
合国の回答であった。8月13日、「兵力使用計画」が陸軍大臣へ提出された。それはポツダム宣言受諾を策す
る和平派を天皇から隔離し、東京に戒厳令を領くものである。8月14日、第二回目の御前会議が要請された。
天皇に対して、最高戦争指導会議は意見の一致を見ないので、ポツダム宣言に対する反対意見を聴かれた上
で、再度の御聖断を仰ぎたいと申し述べられたのである。東郷外相(宮口精二)に対して、陸海の統帥部の
軍人たちが引き止めている。大西軍令部次長(二本柳寛)と東郷外相の遣り取りを引いてみよう。

 大西:もうあと2,000万、2,000万の特攻を出せば、日本は、日本は必ず、必ず勝てます。
 東郷:大西さん、勝つか負けるかはもう問題ではないのです。日本の国民を生かすか殺すか、二つに一
    つの……。
 大西:いかん、もうあと2,000万、日本の男子の半分を特攻に出す覚悟で戦えば……外相!
 東郷:失礼する。

 当時、本土決戦に備えて、地上軍230万、特攻飛行機7,000機、海軍特攻兵器(回天のことか)3,000の兵力
があったらしいが、いくらなんでも2,000万人の特攻部隊というのは無理を通り越している。要するに、ポツ
ダム宣言を受諾すれば国体の護持は覚束ないので、本土決戦を画策し死中に活を求めようとしたのである。
御前会議での天皇の言葉を以下に記そう。

  反対論の趣旨はつぶさによく聴いた。しかし、私の考えは、この前も言った通りで変わりはない。これ
 以上戦争を続けることは無理である。陸海軍の将兵にとって武装解除や、ほしょう(?)占領は堪えられ
 ないであろう。国民が玉砕して国に殉ぜんとする気持もよく分る。しかし、私自身はいかようになろうと
 も、国民を、国民にこれ以上苦痛を嘗めさせることは、私には忍び得ない。できることは何でもする。私
 が、直接国民に呼びかけるのがよければ、マイクの前にも立つ。陸海軍将兵を納得させるのに、陸軍大臣
 や海軍大臣が困難を感ずるのであれば、どこへでも出かけていって、宥めて説き伏せる。鈴木、内閣は至
 急終戦に関する詔書を用意して欲しい。

 受諾は決まった。阿南陸相は陸軍の幹部連中を前にして、「不服な者は阿南の屍を越えてゆけ」と言って
いる。さて、受諾は決まったが、今度は、天皇の玉音放送の文面をめぐって、阿南陸相と米内海相(山村聰)
の間で意見の食い違いが生じる。「戦勢日ニ非ニシテ」という文面が、どうしても阿南陸相には承服できな
いのである。その辺りの二人の遣り取りを下に記してみよう。あまり正確ではないが、寛恕を乞う。

 米内:阿南陸相は単なる「補給戦」における敗北だと言われるが、フィリピンのレイテ島では20万5千の
    兵力を投入して、そのうち20万の戦死者を出している。ビルマには23万6千のうち16万4千、沖縄
    には10万2千を投入して9万……しかも、沖縄では、9万2千の一般国民が……。
 阿南:多くの者がなぜ涙を呑んで死んでいったのだ。結果的な批判は何とでも言える。しかし、これは、
    誰にしても、日本を愛し、日本の勝利を固く信じたればこそのことである。しかるに、負けたと
    いう、この「戦勢非ニシテ」では、これまで死んでいった300万人の人に何と申し訳が立つ。また、
    未だに戦っている700万の部下には、何としても栄光ある敗北を与えてやらねばならぬ。それがせ
    めてものわれわれの責務ではないか。これはあくまで「戦勢非ニシテ」ではなく、絶対に「戦局
    好転セズ」と訂正すべきである。
 米内:いやあ、あなたがどのように言われようとも、私はそうは思わぬ。

 しかし、結局、米内海相が妥協し、「戦局必ズシモ好転セズ」に決まったのである。かくして、玉音放送
の録音はなされたが、一部の将校がそれを不服として宮城に立て籠もるのである。先ず、決起をしようとし
ない森近衛師団長(島田正吾)を殺害し、偽の命令書を作成して近衛第二連隊長芳賀大佐(藤田進)を騙し
て時間を稼ぎ、録音盤を捜索するのである。しかし、徳川侍従長(小林桂樹)が上手に隠したので、ついに
発見されなかったのである。その間に阿南陸相は自決、参謀総長や東部軍司令官は決起に同調せず、決起し
た古賀参謀(佐藤允)、椎崎中佐(中丸忠雄)、畑中少佐(黒沢年男)たちは次々に自決するのであった。
他方、埼玉県児玉基地陸海軍混成第207(ふたまるなな)飛行集団は、終戦間近だというのに銃後の人々に
見送られて飛び立っている。それを見送る児玉基地飛行団長野中大佐(伊藤雄之助)の胸に去来していたも
のは何だったのだろうか。最後に、決起した人々の言い分を聴いてみよう。

  形式的にただ皇室が残ればよいとする政府の敗北主義に対して、私たちは反対しているんです。形骸
 に等しい皇室、腰抜けになってしまった国民。そして、荒廃に帰した国土さえ保全されれば、それでい
 いんでしょうか。極端に言えば、敗戦処理を陛下だけに任せておいて、自分たちは責任逃れをしようと
 しているのが、現在の重臣なんです。

 たしかにその通りかもしれないが、300万人の戦死者を出した戦争をこれ以上続ければ、本当に日本は滅
んでしまっただろう。したがって、玉音放送が無事に流されたことはよかったことなのだろう。ただし、こ
の映画を観ていると、誰も悪くないので、その点が物足りなかった。唯一、横浜警備隊長佐々木大尉(天本
英世)の狂信的な言動だけが不気味であった。天本自身は「アナーキズム」の擁護者だった気配があるので、
このような役を演じているとき、どんな心境だったのだろうか。単に仕事として割り切ってこなしていたの
だろうか。

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 さて、物語を確認しておこう。例によって、<Movie Walker>のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、
一部改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  混迷極める太平洋戦争末期の日本において国の行く末を模索する人々の姿を描いた、半藤一利のノ
 ンフィクション小説を映画化。陸軍大臣、天皇陛下、総理大臣など閣議に参加した人々の姿と、クー
 デターを企む青年将校たちの姿が描かれる。監督は『駆込み女と駆出し男』など、人間ドラマに定評
 のある原田眞人。

   〔あらすじ〕

  1945年7月、戦局が厳しさを増す中、日本に無条件降伏を求めるポツダム宣言が発表された。連日
 閣議が開かれ議論に議論が重ねられるが、降伏かそれとも本土決戦か結論が出ないまま8月に突入。
 広島、そして長崎に原爆が投下され「一億玉砕論」の声も上がる中、日本最大の決断がくだる。しか
 し、降伏に反対する若手将校らは玉音放送を流させまいとクーデターを企て皇居やラジオ局占拠に向
 け動きはじめる……。

 配役を見てみよう。これに関しては、<ウィキペディア>を参照した。なお、前作で同じ役を演じた俳優を  
並べて挙げておく。

  主要人物

 阿南惟幾(陸軍大臣) - 役所広司 三船敏郎
 昭和天皇 - 本木雅弘 松本幸四郎(八代目)
 鈴木貫太郎(内閣総理大臣) - 山崎努 笠智衆
 迫水久常(内閣書記官長) - 堤真一 加藤武
 畑中健二(陸軍少佐、軍務課員) - 松坂桃李 黒沢年男

  宮中

 香淳皇后 - 池坊由紀 なし 
 木戸幸一(内大臣) - 矢島健一 中村伸郎
 平沼騏一郎(枢密院議長) - 金内喜久夫 明石潮
 藤田尚徳(侍従長) - 麿赤兒 青野平義 
 三井安彌(侍従) - 植本潤 浜田寅彦
 入江相政(侍従) - 茂山茂 袋正
 徳川義寛(侍従) - 大藏基誠 小林桂樹
 戸田康英(侍従) - 松嶋亮太 児玉清
 永積寅彦(侍従) - 岩寺真志 なし
 岡部長章(侍従) - 中村靖日 関口銀三
 侍従 - 山田啓二 なし
 蓮沼蕃(侍従武官長) - 姉川新之輔 北竜二
 保科武子(女官長) - 宮本裕子 なし
 筧素彦(宮内省庶務課長) 笠兼三 浜村純

  内閣

 米内光政(海軍大臣) - 中村育二 山村聰
 東郷茂徳(外務大臣) - 近童弐吉 宮口精二
 安井藤治(国務大臣) - 山路和弘 なし
 左近司政三(国務大臣) - 鴨川てんし なし
 下村宏(情報局総裁) - 久保酎吉 志村喬
 松本俊一(外務事務次官) - 長澤壮太郎 戸浦六宏

  陸軍

 梅津美治郎(陸軍大将、参謀総長) - 井之上隆志 吉頂寺晃 
 田中静壹(陸軍大将、東部軍管区司令官) - 木場勝己 石山健二郎
 高嶋辰彦(陸軍少将、東部軍管区参謀長) - 奥田達士 森幹大
 森赳(陸軍中将、近衛師団長) - 高橋耕次郎 島田正吾
 水谷一生(陸軍大佐、近衛師団参謀長) - 香山栄志 若宮忠三郎
 芳賀豊次郎(陸軍大佐、近衛師団第二連隊長) - 安藤彰則 藤田進
 東条〔東條〕英機(陸軍大将、元首相) - 中嶋しゅう なし
 杉山元(元帥、前陸軍大臣) - 川中健次郎 岩谷壮
 吉積正雄(陸軍中将、軍務局長) - 桂憲一 大友伸
 荒尾興功(陸軍大佐、軍務課長) - 田中美央 玉川伊佐男
 林三郎 (陸軍大佐) - 柏村栄行 なし
 井田正孝(陸軍中佐、軍務課員) - 大場泰正 高橋悦史
 竹下正彦(陸軍中佐、軍務課員、阿南陸軍大臣の義弟) - 関口晴雄 井上孝雄
 椎崎二郎(陸軍中佐、軍務課員) - 田島俊弥 中丸忠雄
 白石通教 (陸軍中佐) - 本郷壮二郎 勝部演之
 古賀秀正(陸軍少佐、近衛師団参謀) - 谷部央年 佐藤允
 石原貞吉(陸軍少佐、近衛師団参謀) - 尾崎宇内 久保明
 窪田兼三 (陸軍少佐、通信学校教官) - 青山草太 なし
 佐々木武雄(陸軍大尉、横浜警備隊長) - 松山ケンイチ 天本英世
 上原重太郎 (陸軍大尉、航空士官学校教官) - 松浦海之介 なし
 藤井政美(陸軍士官学校附属大尉) - 戸塚祥太 なし

  海軍

 豊田副武(海軍大将、軍令部総長) - 井上肇 山田晴生
 大西瀧治郎(海軍中将、軍令部次長) - 嵐芳三郎 二本柳寛
 岡田啓介(海軍大将、元首相) - 吉澤健 なし

  阿南家

 阿南綾子(阿南陸軍大臣の妻) - 神野三鈴 なし
 阿南喜美子(阿南陸軍大臣の次女)- 蓮佛美沙子 なし
 阿南惟晟(阿南陸軍大臣の次男) - 三船力也 なし
 阿南惟道(阿南陸軍大臣の五男) - 稲田都亜 なし
 秋富(阿南喜美子の婚約者) - 渡辺大 なし

  鈴木家

 鈴木たか(鈴木首相夫人) - 西山知佐 なし
 鈴木一(首相秘書官、鈴木首相の長男) - 小松和重 笠徹
 鈴木布美(一の妻) - 小野愛寿香 なし
 鈴木孝雄(鈴木首相の弟) - 福本清三 なし

  NHK

 館野守男(NHK放送員) - 野間口徹 加山雄三
 保木玲子(NHK放送局員) - 戸田恵梨香 なし

  その他

 絹子(陸軍大臣官邸の女中) - キムラ緑子 なし

 その他、不明の部分も多く、前作であった役が当該作ではなくなっているものも多かった。前作では登場
しない東條英機が、昭和天皇の叱責を受けるシーンはけっこう面白かった。その際、昭和天皇は栄螺の喩え
を用いているが、史実だろうか。また、「陸主海従(ドイツ式)」と「海主陸従(イギリス式)」の角逐、
清巌禅師の言葉である「狂人走不狂人走」が掲げてある額などが目についた。
 2本目は、『きみはいい子』(監督:呉美保、「きみはいい子」製作委員会〔アークエンタテイメント=
日活〕、2015年)である。ソフトな「幼児虐待」が描かれており、子育ての難しさがひしひしと伝わってく
る。実生活では独身のはずの池脇千鶴が二児の母を好演しており、彼女はやはり只者ではない。
 物語を確認しておこう。以下、上に同じ。

   〔解説〕

  中脇初枝の同名小説を原作に『そこのみにて光輝く』の呉美保監督が映画化した群像劇。とある町
 に暮らし、さまざまな悩みや問題を抱えて生きる人々が人と人とのつながりに光を見いだし、小さな
 一歩を踏み出すさまを映し出す。出演は『横道世之介』の高良健吾、『そして父になる』の尾野真千
 子、『そこのみにて光輝く』の池脇千鶴、高橋和也、『盗まれた欲情』の喜多道枝、『ドライブイン
 蒲生』の黒川芽以、『おおかみこどもの雨と雪』の加部亜門、『もらとりあむタマ子』の富田靖子。

   〔あらすじ〕

  桜ヶ丘小学校4年2組を受け持つ新米教師・岡野匡(高良健吾)は、まじめだが優柔不断、問題に
 真っ正面から向き合えない性格だ。そのためか、児童たちはなかなか彼の言うことをきいてくれず、
 恋人の丸山美咲(黒川芽以)との仲もあいまいな状態が続いている。一方、水木雅美(尾野真千子)
 は、夫が海外に単身赴任中のため3歳の娘・あやね(三宅希空)とふたり暮らし。ママ友らに見せ
 る笑顔の陰で、雅美は自宅でたびたびあやねに手をあげている。実は雅美自身も幼い頃、親に暴力
 を振るわれていた過去があった……。小学校へと続く坂道の家にひとりで暮らす老人・佐々木あき
 こ(喜多道枝)が他人と会話をかわすのは、登下校の途中で挨拶をしてくれる名前も知らない小学
 生〔櫻井弘也〕(加部亜門)だけであった。そんなある日、買い物に行ったスーパーでお金を払わ
 ずに店を出たことを店員の櫻井和美〔弘也の母〕(富田靖子)に咎められ、あきこは認知症が始ま
 ったのかと不安を感じるようになる……。ひとつの町でそれぞれに暮らす彼らは、さまざまな局面
 で交差しながら、やがて新たな一歩を踏み出していく……。

 他に、池脇千鶴(大宮陽子)、高橋和也(大宮拓也=陽子の夫、岡野の同僚)、内田慈(岡野薫=匡の姉)、
浅川蓮(神田雄太=孤独な少年)、松嶋亮太(田所豪=雄太の母の男)、小林なるみ(正田伽耶子=学年主
任)、近江宣夫(枝野敏文=副校長)、黒沢光春(奥寺十三=校長)などが出演している。
 あきこと弘也の交流が微笑ましい。あきこが亡くなった弟の話をする際、その弟の言い間違いの実例が古
臭くて面白い。いわく、「東郷平八郎〔とうごうへいはちろう〕を強盗平八郎〔ごうとうへいはちろう〕と
言い間違えた」というもの。もっとも、弘也には全く通じていない。やはり、通じようが通じまいが、コミ
ュニケーションを続けることは大切であると改めて思った。それがなくなると、『子宮に沈める』(監督:
緒方貴臣、paranoidkichen、2013年)〔「日日是労働セレクト122」、参照〕の世界が、ひょんなことか
ら顔を出すだろう。


 某月某日

 DVDで邦画を3本観たので報告しよう。内訳は、実写1本とアニメーション2本(長篇、短篇、それぞれ
1本ずつ)である。今年に入ってから観た邦画の初めての感想文ということになる。
 1本目は、『あにいもうと』(監督:成瀬巳喜男、大映東京、1953年)である。室生犀星の原作の映画化
作品であるが、その2番目の作品である(全部で3作ある)。他に、『兄いもうと』(監督:木村荘十二、
PCL、1936年)と『あにいもうと』(監督:今井正、東宝映画、1976年)があるが、両作ともに筆者未見で
ある。筋書は平凡そのものであるが、細部が活き活きとしており、それを楽しむ類の作品であろう。監督の  
成瀬巳喜男は「ヤルセナキオ」と綽名されたが、それほどお涙ちょうだいの映画というわけでもない。家族
を真正面から描いた映画など今どきは流行らないだろうが、60年以上も前の映画ということになると話は別
である。今では失われたと思える家族の姿がたしかにここにはある。
 成瀬巳喜男は大物だが、作品の内容は市井の家族を描いたものが多く、そういう意味では職人気質の監督
といえるのだろう。小生が鑑賞済みの成瀬映画を以下に掲げてみよう。全部で14本ある。いずれも「家族映
画」と呼んでいい作品ばかりである。

  『めし』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1951年。
  『銀座化粧』、監督:成瀬巳喜男、新東宝、1951年。
  『稲妻』、監督:成瀬巳喜男、大映東京、1952年。
  『おかあさん』、監督:成瀬巳喜男、新東宝、1952年。
  『あにいもうと』、監督:成瀬巳喜男、大映東京、1953年。
  『山の音』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1954年。
  『浮雲』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1955年。
  『流れる』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1956年。
  『女が階段を上る時』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1960年。
  『娘・妻・母』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1960年。
  『放浪記』、監督:成瀬巳喜男、宝塚映画、1962年。
  『乱れる』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1964年。
  『女の中にいる他人』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1966年。
  『乱れ雲』、監督:成瀬巳喜男、東宝、1967年。

 物語を確認しておこう。例によって〈Movie Walker〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を乞う。

   〔解説〕

  室生犀星往年の名作の再映画化。『愛情について』の水木洋子が脚本を書き、『妻』の成瀬己喜男
 が監督にあたった。撮影は『胡椒息子』の峰重義。出演者は『黒豹』の京マチ子、『胡椒息子』の船
 越英二、潮万太郎、『獅子の座』の浦辺粂子、堀雄二、『再会(1953)年』の森雅之、久我美子、な
 どである。

   〔あらすじ〕

  昔は川師の親方として名を売った赤座(山本禮三郎)も、堤防の工事を県にとられて以来落ち目で
 ある。それに娘のもん(京マチ子)が奉公先で学生の小畑(船越英二)と関係し、妊娠して家に戻っ
 て来たので、近頃とくに機嫌が悪い。末娘のさん(久我美子)は姉の送金で看護婦の学校へ行ってお
 り、うどん屋の養子鯛一(堀雄二)と一緒になりたい気持があるが、もんの不始末が知れた以上望み
 はない。兄の伊之吉(森雅之)はもんを可愛がっていただげに余計腹が立ち、身重のもんへ悪態を浴
 びせ、居たたまれなくなったもんは居所も知らさず家を出て行く。ある日、小畑がお詑びに訪ねて来
 たが、伊之吉はその帰り途小畑を殴ってしまった。鯛一は他の女との縁組を迫られ、さんと駈け落ち
 しようと決心するが、さんは二人が勇気さえ持っていれば駈け落ちまでしなくてもとたしなめて学校
 へ帰ってゆく。──それから暫く赤座の家は、もんもさんも戻って来ず淋しげだった。翌年のお盆、
 久し振り二人が帰って来た。鯛一は結婚してうどん屋の若主人に納っており、さんも今はその話をひ
 とごとに聞けるようになっていた。伊之吉はもんの顔を見ると相変らず悪態をつき、小畑を殴ったこ
 とまで言ってしまう。もんは今ではいかがわしい暮しで毎日を送っている女であり、伊之吉の悪態を
 も聞き流していたが、小畑が殴られたと聞いては黙っていられなかった。別に今更小畑とどうのこう
 のと考えはしないが。──翌日、もんとさんはまた家を後にする。兄妹喧嘩はしてもやはり二人は家
 が懐しかった。

 他に、浦辺粂子(りき=もんたちの母親)、本間文子(とき子婆さん=鯛一の義母)、潮万太郎(貫一=  
同じく義父)、宮嶋健一(喜三=赤座の子分)、山田禅二(豊五郎=伊之吉の親方に当る石屋)、河原侃二
(僧侶)、高品格(茶店の客)、目黒幸子(バーの女ルミ)、美川陽子(飲み屋「吉野屋」の女将)、筑紫
美枝子(園江)、松永倭文子(みか=茶店の近所に住む少女)などが出演している。森雅之の演じた伊之吉
は、いつもの彼とは雰囲気の違う役柄だったので、新鮮だった。上手い役者はどんな役でもこなせることの
証左であろう。

 茶店の品書を記そう。

 氷イチゴ   15円
 氷レモン   15円
 サイダー   25円
 ラムネ    15円
 あま酒    15円
 パン(1個) 10円
 ところてん  10円
 ゆでたまご  15円
 川魚(一皿) 20円

 時代を映す台詞も記しておこう。

  ○ 髪結いの女は口も手も達者だ
  ○ 川の向こうは東京、銀座も東京駅も知らない者がたくさんいる
  ○ 何でもコンクリで固める
  ○ 帳面が効く〔=ツケが効く〕
  ○ この川を離れて生きる空はない
  ○ うちの井戸水は天下一品

 小生の実家(今はない)も東京都下(東村山市)にあったので、この映画で描かれている東京近郊の雰囲
気を幾分かは知っている。もっとも、北多摩郡(東村山市の前身)は埼玉県寄りだが、この映画のロケ地は
神奈川県ではないか。井戸が登場するが、小生の実家も東京オリンピック(1964年)くらいまでは井戸水を
用いていた(ただし、ポンプ式)と思う。そういう意味で懐かしかった。
 2本目は、『猫の恩返し』(監督:森田宏幸、徳間書店=スタジオジブリ=日本テレビ=ディズニー=博
報堂=三菱商事=東宝、2002年)である。ジブリ作品は、ウィキペディアによれば長篇が20本公開されてい
るらしいが(以下に、記す)、その12本目に当る。なお、20本目を除いて小生は全作鑑賞している。また、
『風の谷のナウシカ』(監督:宮崎駿、徳間書店=博報堂、1984年)は、「ジブリ」以前の作品ということ
になる。

 1.『天空の城ラピュタ』、監督:宮崎駿、徳間書店、1986年。
 2.『となりのトトロ』、監督:宮崎駿、徳間書店、1988年。
 3.『火垂るの墓』、監督:高畑勲、新潮社、1988年。
 4.『魔女の宅急便』、監督:宮崎駿、徳間書店=ヤマト運輸=日本テレビ放送網、1989年。
 5.『おもひでぽろぽろ』、監督:高畑勲、「おもいひでぽろぽろ」製作委員会〔徳間書店=日本テレビ
   放送網=博報堂〕、1991年。
 6.『紅の豚』、監督:宮崎駿、徳間書店=日本航空=日本テレビ=スタジオジブリ、1992年。
 7.『平成狸合戦ぽんぽこ』、監督:高畑勲、徳間書店=日本テレビ放送網=博報堂=スタジオジブリ、
   1994年。
 8.『耳をすませば』、監督:近藤喜文、徳間書店=日本テレビ放送網=博報堂=スタジオジブリ、1995年。
 9.『もののけ姫』、監督:宮崎駿、徳間書店=日本テレビ放送網=電通=スタジオジブリ、1997年。
 10.『ホーホケキョとなりの山田くん』、監督:高畑勲、「ホーホケキョとなりの山田くん」製作委員会
   〔徳間書店=スタジオジブリ=日本テレビ放送網=博報堂=ブエナ ビスタ ホーム エンターテイ
    メント〕、1999年。
 11.『千と千尋の神隠し』、監督:宮崎駿、スタジオジブリ=日本テレビ=電通=徳間書店=ブエナビスタ
   ジャパン=東北新社=三菱商事、2001年。
 12.『猫の恩返し』、監督:森田宏幸、徳間書店=スタジオジブリ=日本テレビ=ディズニー=博報堂=
   三菱商事=東宝、2002年。
 13.『ハウルの動く城』、監督:宮崎駿、「ハウルの動く城」製作委員会〔徳間書店=日本テレビ放送網=
   電通=ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント=ディーライツ=東宝〕、2004年。
 14.『ゲド戦記』、監督:宮崎吾朗、「ゲド戦記」製作委員会〔日本テレビ放送網=電通=博報堂DYメディア
   パートナーズ=ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント=ディーライツ=東宝〕、2006年。
 15.『崖の上のポニョ』、監督:宮崎駿、スタジオジブリ=日本テレビ=電通=博報堂DYMP=ディズニー=
   三菱商事=東宝、2008年。
 16.『借りぐらしのアリエッティ』、監督:米林宏昌、スタジオジブリ=日本テレビ=電通=博報堂DYMP=
   ディズニー=三菱商事=東宝=ワイルドパンチ、2010年。
 17.『コクリコ坂から』、監督:宮崎吾朗、スタジオジブリ=日本テレビ放送網=電通=博報堂DYメディア
   パートナーズ=ディズニー=三菱商事=東宝、2011年。
 18.『風立ちぬ』、監督:宮崎駿、「風立ちぬ」製作委員会〔日本テレビ放送網=電通=博報堂DYメディア
   パートナーズ=ウォルト・ディズニー・ジャパン=ディーライツ=東宝=KDDI〕、2013年。
 19.『かぐや姫の物語』、監督:高畑勲、「かぐや姫の物語」製作委員会〔日本テレビ放送網=電通=博報堂
   DYメディアパートナーズ=ウォルト・ディズニー・ジャパン=ディーライツ=東宝=KDDI〕、2013年。
 20.『思い出のマーニー』、監督:米林宏昌、日本テレビ放送網=電通=博報堂DYメディアパートナーズ=
   ディズニー=三菱商事=東宝=KDDI、2014年。

 物語を確認しておこう。この作品に関しては、<ウィキペディア>のお世話になる。執筆者に感謝したい。
なお、一部改変したが、ご海容いただきたい。

   〔概要〕

  スタジオジブリの作品『耳をすませば』の主人公である月島雫が書いた物語という位置づけのスピ
 ンオフ。猫の男爵バロンが2作に共通して登場する。宮崎駿のリクエストをうけて柊あおいが描き下
 ろしたコミック『バロン 猫の男爵』を原作とする。
  バロンの声を担当する声優は主人公とのバランスを考慮し、『耳をすませば』の露口茂から袴田吉
 彦に変更された(監督曰く「若々しい感じを出したかった」とのこと。もっとも、制作時点で既に露
 口は芸能活動を休業している状態だった)。また、『耳をすませば』で雫の声を担当した本名陽子が、
 クラスメイトのチカ役を担当している。

  キャッチコピーは「猫になっても、いいんじゃないッ?」(糸井重里)。

  日本国内の興行収入は64.6億円で2002年の邦画1位、DVDとVHSを合わせたビデオグラム出荷本数は
 2007年5月時点で72万本。

   〔あらすじ〕

  何となく日常を過ごす、ごく普通の女子高生・吉岡ハル(声:池脇千鶴)は、遅刻したある日の放
 課後、ラクロス部である親友のひろみ(佐藤仁美)と帰っていた。道中、何かをくわえた見かけない
 猫がトラックに轢かれそうになるのをひろみのラクロスのスティックを使い助け、その際スティック
 を壊してしまう。助けられた後、その猫は日本語で礼を述べ、二足歩行で歩き去る。実は、彼は猫の
 国の王子・ルーン(山田孝之)だった。その夜、ハルは母親〔吉岡直子〕(岡江久美子)に昔の猫と
 のエピソードを聞かされる。そして夜中に猫王(丹波哲郎)ら猫の国一行にルーンを助けたお礼とし
 て目録を貰う。
  翌日、猫の国からのお礼が届くが、ひろみへの大量のスティック、家の庭いっぱいの猫じゃらし、
 マタタビ、ネズミといった、猫しか喜びそうのない代物ばかり。さらにハルは放課後、ひろみの掃除
 当番を代わりごみ捨てに行くと、想い人である町田が彼女と思われる人物と歩いているのを目撃。そ
 の直後にナトル(濱田マリ)がハルの元を訪れる。「私は猫じゃないから猫じゃらしもまたたびも嬉
 しくない」と文句を言うハルに、それならば猫の国へご招待致しますとナトルは答えた。さらに、猫
 王はハルをルーンの妃にしようとしていることも伝える。ハルはそのことに慌ててナトルを引き止め
 るが、ナトルは「今夜お迎えにあがります」と言い残し去ってしまう。「猫のお嫁さんにされちゃう」
 とパニックになるハルに突然声の主の見えない声が掛かった。その声によると「猫の事務所を探して。
 十字街に居る白い大きな猫が教えててくれるから。」とのこと。
  学校の帰り道、ハルは十字街で白い大きな猫、ムタ(渡辺哲)に出会い、「ついてきな」と言われ
 たハルは着いていくことに。そこで着いたのは不思議な街で、そこにある小さな家の「猫の事務所」
 で猫の男爵バロン(袴田吉彦)と、心を持つガーゴイルトト(斉藤洋介)に出会う。ムタ曰く、猫の
 国は自分の時間が生きられないやつが行く場所、それを聞いたバロンはハルに自分を見失わないよう
 にと諭す。猫の事務所にいる時、突然現れたナトリ率いる猫の集団に、ハルは連れ去られてしまう。
 そしてハルとムタは、バロンとトトと離れてしまい猫の国についてしまう。そこで、ハルは王子ルー
 ンと結婚することを決められてしまい、猫耳と尻尾が生え、ついには、猫のヒゲが生えて、猫にされ
 てしまう。
  猫の国の城でパーティーを開いている時、ハルは仮面の貴公子に扮したバロンに助けられ、ムタと
 共に迷路の堀や塔を攻略。塔の攻略の途中に猫王の策略にはまり今度こそ逃げられそうにないと思っ
 たとき、ルーン、そしてハルを猫の事務所に導いたユキ(前田亜季)により助けられる。そしてユキ
 は昔ハルに助けられたこと、ルーンと結婚することを告白。ハルはそのことを心から喜ぶ。遂にハル
 たちはトト率いるカラス達に助けられながら人間界に帰還し、猫の国の猫達も歓喜した。学校の屋上
 でハルはバロンに告白をする。バロンは寂しがるハルに、また困った事件があったら猫の事務所の扉
 は開かれると言い、去る。ハルは感謝の気持を叫び、普通の生活に戻った。

 他に、佐戸井けん太(ナトリ)、本名陽子(チカ)などが声の出演をしている。なお、猫の男爵バロンの  
正式名は「フンベルト・フォン・ジッキンゲン〔Humbert von Gikkingen〕男爵」である。
 3本目は、『ギブリーズ episode2』(監督:百瀬義行、徳間書店=スタジオジブリ=日本テレビ=ディ
ズニー=博報堂=三菱商事=東宝、2002年)である。スタジオジブリそのものをモデルにした小品である。
ここで、「ジブリ」という名称に言及しておこう〔ウィキペディア〕。

  「スタジオジブリ」の名称は、サハラ砂漠に吹く熱風(ghibli)に由来しており、第二次世界大戦
 中のイタリア・カプローニ社の偵察/爆撃機の名前でもある(CAPRONI Ca309 GHIBLI)。『紅の豚』
 (監督:宮崎駿、徳間書店=日本航空=日本テレビ=スタジオジブリ1992年)において、エンジンに
 《GHIBLI》の名前もあり、宮崎駿の思い入れが窺える。宮崎駿の思い込みから「ジブリ」となったが、
 「ギブリ」の方が原語に近い発音である(イタリアのマセラティ社の乗用車《ghibli》は日本でも1970
 年代から「ギブリ」と呼ばれている。このイタリア語はもともとアラビア語のリビア方言の「ジャバ
 ル(山)」が訛ったものである)。スタジオジブリのマークは、スタジオジブリの作品『となりのト
 トロ』(監督:宮崎駿、徳間書店、1988年)に登場するキャラクター、トトロがデザインされている。
 スタジオジブリの第2レーベルで実写作品部門の「スタジオカジノ」は、スタジオの所在地東京都小
 金井市梶野町から命名された。2005年の徳間書店傘下からの独立に際して、「ジブリ」の名称を徳間
 書店から買い取らなければならなくなった。宮崎駿が買い取りに消極的な姿勢を示して鈴木敏夫もそ
 れに同意し、新しい名称として宮崎が「シロッコ」(これもサハラ砂漠に吹く風に由来)という案を
 出したが、社内の評判がよくなく、結局ジブリの名称を継続することとなった。

 さて、当該作品に言及しよう。<ウィキペディア>の記述による。

  『ギブリーズ episode2』(ギブリーズ エピソード ツー、英題:GHIBLIES episode2)は、スタジ
 オギブリ(スタジオジブリ)の短編アニメーション映画。百瀬義行監督作品。2002年に『猫の恩返し』
 と同時上映で公開。

 以上である。冒頭の「激辛カレー」の挿話がやや面白かった。以下に主な配役を記しておく。
  
  野中くん(野中晋輔):西村雅彦
  ゆかりさん:鈴木京香
  奥ちゃん:古田新太
  徳さん:斉藤暁
  蛍ちゃん:篠原ともえ
  米ちゃん(米沢):今田耕司
  トシちゃん(カレー屋の経営者):小林薫

 以上である。


 某月某日

 さて、恒例の2015年下半期(7月-12月)観賞映画(邦画、限定)ベスト10を発表しよう。昨年の上半期に
鑑賞した邦画は87本(一昨年96本、9本減)、下半期に鑑賞した邦画は115本(一昨年106本、9本増)だった。
年間通算では202本で、一昨年と同数となっている。このところ下半期に挽回して何とか年間目標の200本は
クリヤーしているので、今年も数字だけは揃えようと思っている。

 1位 『雁』、監督:豊田四郎、大映東京、1953年。
 2位 『地の群れ』、監督:熊井啓、えるふプロ=ATG、1970年。
 3位 『月山』、監督:村野鐡太郎、櫂の会=鐡プロ=俳優座映画放送、1979年。
 4位 『休暇』、監督:門井肇、「休暇」製作委員会〔山梨日日新聞社=山梨放送=リトルバード〕、
   2008年。
 5位 『スマグラー お前の未来を運べ』、監督:石井克人、「スマグラー お前の未来を運べ」製作委員会
   〔テレビ朝日=ヒット=ハピネット=講談社=WOWOW=KDDI=クオラス=ソニーPCL=朝日放送=Yahoo!
   JAPAN=メーテレ=北海道テレビ=九州朝日放送〕〔「メーテレ」の「ー」は波線。文字化けするので、
   音引で代用した〕、2011年。
 6位 『祇園の姉妹』、監督:野村浩将、大映、1956年。
 7位 『捨てがたき人々』、監督:榊英雄、「捨てがたき人々」製作委員会〔ファミリーツリー=P-ARTS=
   アークエンタテインメント=幻冬舎〕、2012年。
 8位 『ぼっちゃん』、監督:大森立嗣、アパッチ、2013年。
 9位 『包帯クラブ』、監督:堤幸彦、2007包帯クラブ製作委員会〔電通=TBS=東映=S・D・P=ホリプロ=
   筑摩書房=オフィスクレッシェンド〕、2007年。
 10位 『渇き。』、監督:中島哲也、「渇き。」製作委員会〔ギャガ=リクリ=Gyao!〕、2014年。

 以上である。なお、『貸間あり』(監督:川島雄三、宝塚映画、1959年)、『下郎の首』(監督:伊藤大
輔、新東宝、1955年)、『愛の渦』(監督:三浦大輔、「映画 愛の渦」製作委員会〔東映ビデオ=クロッ
クワークス〕、2014年)、『メッセンジャー』(監督:馬場康夫、フジテレビ=小学館=ポニーキャニオン、
1999年)、『ペタル ダンス』(監督:石川寛、「ペタル ダンス」製作委員会〔ギークピクチュアズ=バッ
プ=ビターズ・エンド=BS日テレ=グランドファンク=リンダパブリッシャーズ〕、2013年)、『新宿スワ
ン』(監督:園子温、「新宿スワン」製作委員会〔講談社=トライトーン・エンタテイメント=ジャパン・
ミュージックエンターテインメント=ハピネット〕、2015年)、『龍三と七人の子分たち』(監督:北野武、
「龍三と七人の子分たち」製作委員会〔バンダイビジュアル=ワーナー・ブラザーズ映画=東北新社=オフ
ィス北野〕、2015年)、『舞子はレディ』(監督:周防正行、フジテレビジョン=東宝=関西テレビ放送=
電通=京都新聞=KBS京都=アルタミラピクチャーズ、2014年)、『バブルへGO!! タイムマシンはドラム
式』(監督:馬場康夫、フジテレビ=電通=東宝=小学館、2007年)、『死にゆく妻との旅路』(監督:塙
幸成、「死にゆく妻との旅路」製作委員会〔イメージフィールド=青山洋一=めいふぁず=ミノル・プラン
ニング・コーポレーション=テアトル・ド・ポッシュ〕、2011年)、『ソロモンの偽証/前篇・事件』(監
督:成島出、「ソロモンの偽証」製作委員会〔松竹=木下グループ=博報堂DYメディアパートナーズ=朝日
新聞社=GYAO!=KDDI〕、2015年)、『ソロモンの偽証/後篇・裁判』(監督:成島出、「ソロモンの偽証」
製作委員会〔松竹=木下グループ=博報堂DYメディアパートナーズ=朝日新聞社=GYAO!=KDDI〕、2015年)、
『御金蔵破り』(監督:石井輝男、東映京都、1964年)、『濡れた赫い糸』(監督:望月六郎、ジャパンホ
ームビデオ、2005年)、『寝ずの番』(監督:マキノ雅彦、光和インターナショナル、2006年)、『三たび
の海峡』(監督:神山征一郎、「三たびの海峡」製作委員会、1995年)などの作品も面白かったが、ベスト
10にはやや及ばなかった。もちろん、例によって小生の好みが100パーセント反映しているので、極めて恣
意的なベスト10であることをお断りしておく。なお、昨年の映画鑑賞の中心ジャンルは「アニメ・SF・特
撮」だったが、文字通りの意味でのその手の作品のうち、下半期においてベスト10入りするものはなかった。
小生の希望としては、大人の鑑賞に堪え得る作品に出遭いたかったが、それは見果てぬ夢の一つであろう。
 ちなみに、今年(2016年)の映画鑑賞の中心ジャンルは「ミステリー」にしようと思う。この試みは2007
年から始めており、今年で10年目を迎える。過去のテーマはこうであった。

  2007年 戦争映画
  2008年 性愛(成人)映画
  2009年 極道(任侠)映画
  2010年 喜劇映画
  2011年 時代劇映画
  2012年 ホラー映画
  2013年 犯罪映画
  2014年 恋愛映画
  2015年 アニメ・SF・特撮映画

 今年は、上で述べたように「ミステリー」映画を中心に観ることに決めた。これまでもたくさんのミステ
リー映画を観てきたが、テーマにするのは初めてなので、どんな展開になるか少し楽しみである。


 某月某日

 本年初めてのブログである。小生のブログの奇特な読者の皆さん、今年もよろしく。
 さて、年末から年始にかけて、2本の邦画と1本の洋画を観たので、報告しよう。なお、現在旅先なので、
いつもよりは軽めに記述する。
 1本目は、『三たびの海峡』(監督:神山征一郎、「三たびの海峡」製作委員会、1995年)である。以前
から観たかった作品であるが、期待したほどではなかった。描き方が常套的で、展開に意外性が少なかった
ためだと思われる。昨年末、慰安婦問題で日韓の歩み寄りが見られたが、小生の印象では「ほんの少し前進
したのかな」という程度だった。いずれにせよ、両国の間に存在する溝は深く、簡単に埋まるものではある
まい。当該映画も深刻なテーマを扱っており、20年前の作品ではあるが、現在にも通じるものがある。
 物語を確認しておこう。例によって〈Movie Walker〉のお世話になる。執筆者に感謝したい。なお、一部
改変したが、ご寛恕を賜りたい。

   〔解説〕

  日本に強制連行された朝鮮人男性の半生を描く大河ロマン。監督は『ひめゆりの塔(1995年)』の
 神山征二郎。原作は吉川英治文学新人賞を受賞した帚木蓬生の同名小説で、『君といつまでも』の加
 藤正人と神山との共同脚色。撮影は『ひめゆりの塔(1995年)』の飯村雅彦、音楽は『EAST MEET WEST』
 の佐藤勝がそれぞれ担当している。『釣りバカ日誌7』の三國連太郎、『東雲楼・女の乱』の南野陽
 子ほか、オールスター・キャストによる、日本映画初の本格的韓国ロケーションを敢行した作品。

   〔あらすじ〕

  韓国・釜山。70歳の河時根〔ハー・シグン〕(三國連太郎)の元へ、戦時中ともに徴用で連行され
 た在日韓国人の同胞・徐鎮徹(風間杜夫)が訪ねて来た。日本のことを一切断ち切っていた河の脳裏
 に、50年前の過去が蘇ってくる。アジア・太平洋戦争末期、若き河は北九州の小さな炭坑に連行され、
 朝鮮人を人間と思わず牛馬のようにこき使う日本人の労務監督・山本三次(隆大介)の下で地獄のよ
 うな日々を過ごした。脱走を謀る者へは凄まじいリンチが加えられ、労働争議を起こした金東仁(永
 島敏行)などは自殺に追い込まれた。河はついに脱走を決意し、見回り労務を殺して逃走。アリラン
 集落に匿われ、そこからさらに飯場に送り込まれて追手から逃げきった。そこで働き始めた河は、若
 い戦争未亡人の日本人・岩田千鶴〔旧姓 佐藤〕(南野陽子)と秘かな恋におちる。やがて日本は敗
 戦を迎え、徴用で連行された朝鮮人たちも解放された。河が未払いの給料を炭坑に受け取りに行くと、
 あの山本は以前とはうって変わった態度で手続きを助けるのだった。折しも千鶴は河の子どもを身ご
 もっており、河は千鶴とお腹の子どもを連れて海峡を渡り故郷・韓国へ戻ることになる。故郷の慶尚
 北道の小さな村では、日本人女性を連れた河は村八分にされるが、村外れの小屋にやっかいになって
 千鶴は男の子を出産した。そんなささやかな幸せも束の間、千鶴は置き手紙を残し、子どもを連れて
 日本へ帰ってしまう。以来河は日本のことを忘れ今日まで過ごしてきたが、不治の病に侵された今、
 さまざまな思いを込めてもう一度日本を訪れる決心をした。日本に来た河はかつての軍属や同胞を訪
 ね回り、かつての炭坑の側で眠る仲間たちの墓を訪れる。あの山本は、今はこの土地(長峰市)の市
 長となって再選の選挙に臨んでいた。河はまた今は亡き千鶴ともうけた息子・佐藤時郎(林隆三)と
 対面し、時郎の許しを得て彼の家族とも引き合わせてもらう。時郎の家族からも暖かく迎えられた河
 は、次に山本と会おうとした。半ば脅迫して山本を呼び出した河は、炭坑の側の墓へ彼を連れていき、
 墓に謝ってくれと叫ぶ。だが山本は昔は昔だと取り合わず、河に対して金まで用意していた。河と山
 本は揉み合いになり、弾みで河は山本を殺してしまう。そして、河もまた病のために力尽きるのだっ
 た。それは河にとって50年目の戦争だった。

 他に、白竜(黄錠壽=河時根を助けた男)、李鐘浩(河時根の青春時代)、草薙幸二郎(廣元範=戦時中
は田中と名乗って山本三次の手先になった男。戦後は日本に帰化している)、樋浦勉(崔石松=脱走を密告
した男)、安藤一夫(津村)、岩城滉一(安川=河時根を雇った男。黄錠壽の兄)、伊佐山ひろ子(黄英姫=
安川の妻)、神山兼三(尹在学)、有薗芳記(安先浩)、趙方豪(玄泰遠=脱走を試みて捕まり、リンチを
受ける男)、長倉大介(林守元)、賀川ゆき絵(時郎の妻)、樹木希林(ハルモニ)、泉ピン子(幸子=千
鶴の仲間)、山本圭(ナレーター)などが出演している。なお、アドバイザーとして、野球人の張本勲が参
加している。
 2本目は、『月山』(監督:村野鐡太郎、櫂の会=鐡プロ=俳優座映画放送、1979年)である。この映画
も永らく観たかった作品でやっと念願が叶った。森敦の原作(1973年、雑誌「季刊芸術」に掲載)を読んだ
のはいつのことだったか。あれから40年以上経つが、もはや内容は忘れていた。映画との相違が分からない
ので、単行本の『月山』を書架に探してみたが、姉妹篇の『鳥海山』は見つけたのに、肝心の同作は見当た
らなかった。機会があれば、読み返してみようとは思う。
 物語を確認しよう。以下、上に同じ。

   〔解説〕

  月山山麓の豪雪地帯のある寺で、一人の青年が過した一冬の生活を描く。森敦の同名の芥川賞受賞
 作の映画化で、脚本は高山由紀子、監督は『鬼の詩』の村野鐵太郎、撮影は高間賢治がそれぞれ担当。

   〔あらすじ〕

  鶴岡の住職〔方丈〕(鈴木瑞穂)に紹介状を書いてもらった明(河原崎次郎)は、月山に向かった。
 その寺は月山の山麓に抱かれた渓谷にあり、その周囲には合掌造りの家が点在し、他所者を寄せつけ
 ない寡黙な村人たちが住んでいる。その中で、独人住いの寺番太助(滝田裕介)は温く明を迎えてく
 れた。明は、菜を背負い、もう遠い庄内の風物詩になっているハンコタンナの覆面をした若い娘、文
 子(友里千賀子)に出会う。明は、この閉じこめられた渓谷の中で、なおも溌剌とした若い生の息吹
 きに一瞬とまどった。雪は村全体をすっぽりと包み、隣り村まできていたバスも遮断され、村は長い
 冬篭りに入った。庫裡の二階に泊る明は、古い和紙の祈祷簿を貰い、それを貼り合せて和紙の蚊帳を
 作りあげ、吹き荒れる風の音を聞きながらその中に寝た。蚊帳の中に、電灯の光がほのかにこもり、
 それは、乳白色の繭の中に横たわっているようだ。そんな冬の中、村人たちは密造酒を造り、闇の酒
 買が村を訪れる。数日後、村人たちは寺に集まり、念仏を唱え、やがて酒宴を開いた。明は皆が酔っ
 てくる頃、自分の部屋に戻ったが、蚊帳の中には文子が寝ており、驚いた明は、ソッとその場を離れ
 た。村人たちが帰ると、酒宴に顔を出さなかった太助が、文子の生立ちを語った。文子の母は他所者
 の後を追って村を出、数年後、村に戻ると彼女を産んで死んだと言う。「他所者と一緒になって幸せ
 になったものが居るだがや」と太肋は話す。元旦の朝、明と出会った文子は「お前様と一緒にここを
 出て行ければ幸せだの……」と言う。数日後、村はずれで男女の死体が発見された。他所者の酒買と
 駆け落ちした加代(片桐夕子)の二人だ。村はずれに薪を積み上げ、加代の屍を焼く村入たち。その
 中で、合掌する文子は明に「どうしようもないさけ……」とつぶやく。その日から文子は二度と明の
 前に姿を現わさなかった。ある日、明は雪の中に燕の屍を見つけた。「おらほうは冬の頂だけど、平
 野部はもう春だろの……」。太助は、強い燕ほど早く奥へと渓谷を上って来るのだと言う。明は僅か
 にふくらみを見せ始めた木の芽を見つめた。明は月山を下りる決意を固めた。

 他に、稲葉義男(源助)、菅井きん(かね=源助の女房)、小林尚臣(武男)、井川比佐志(岩蔵)、川
上夏代(とき)、川口敦子(方丈の妻)、北林谷栄(飛鳥の老婆)、望月太郎(石田=明の友人)、牧よし
子(文子の祖母)、河原崎長一郎(カラス)などが出演している。ATGが関わっていると思っていたが、違っ
た。芸術性の高い映画で、久しぶりに純文学が原作の映画を観た思いである。なお、2015年はこの作品が鑑
賞打ち止めで、都合202本目であった。
 3本目は、洋画の『コレクター(The Collector)』(監督:ウィリアム・ワイラー〔William Wyler〕、
米国、1965年)である。この映画も以前から観たかった作品で、期待に違わぬ出来であった。今年度の「基
礎論理学」のテーマが「パニックとパンデミック」だったので、その一環で購入しておいた作品であるが、
最近まで見そびれていたのである。なお、本年最初の映画鑑賞である。主人公を演じたテレンス・スタンプ
〔Terence Stamp〕は、『テオレマ(Teorema)』(監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ〔Pier Paolo
Pasolini〕、伊国、1970年)に謎の青年役で出演しており、この手の役がはまり役なのだろう。
 物語を確認しておこう。以下、上と同じ。

   〔解説〕

  ジョン・ファウルズ(John Fowles)の原作をスタンリー・マンとジョン・コーンが共同で脚色、
 『噂の二人』のウィリアム・ワイラーが監督した心理サスペンス・ドラマ。撮影はロバート・サーテ
 ィース、ロバート・クラスカー、音楽は『日曜日には鼠を殺せ』のモーリス・ジャールが担当した。
 出演はテレンス・スタンプ(カンヌ映画祭主演男優賞)、サマンサ・エッガー〔Samantha Egger〕
 (同主演女優賞)、モナ・ウォッシュ・ボーン〔Mona Washbourne〕など。製作はジャド・キンバー
 グとジョン・コーン。

   〔あらすじ〕

  銀行に勤めるフレディ(テレンス・スタンプ)は、蝶を集めることに熱中していた。その蝶をクロ
 ロフォルムで殺すとき、何もかも忘れてしまうという変わった男だった。ある時、フレディは賭けで
 大金を手に入れた。彼は郊外に家を買い、調度品を揃えた。そして美術学校に通う魅力的なミランダ
 (サマンサ・エッガー)という娘を誘拐し、強制的に同棲生活を送ることを計画、実行した。奇妙な
 生活だった。ミランダが欲しがるものは何でも買い与えた。だが決して監視の目はゆるめない。同時
 に、彼女の方はたえず逃げる機会をうかがった。手を縛られて散歩した時も、ある夜に予期せぬ来客
 があった時も通報する機会をもう少しのところで失ってしまった。激しい雨の夜、ミランダはフレデ
 ィをシャベルで殴り、逃走を試みた。彼は血まみれになりながらも、ミランダを芝生の上でひきずり
 回した。病院で手当てを受けたフレディが帰ってくると、ミランダは肺炎を起こして重体だった。そ
 して、死んだ……。翌日は快晴。フレディは車をゆっくり走らせた。前を行く娘にじっと視線を向け
 ていた。その娘は病院で彼の傷の手当てをした若いチャーミングな看護婦だった。

 他に、モーリス・バリモア〔Maurice Ballimore〕(隣人のウィットカム大佐)などが出演している。ピ
カソの絵や、サリンジャー〔Jerome David Salinger〕の『ライムギ畑でつかまえて(The Catcher in the
Rye)』(1951年)が登場するが、フレディはこれらを嫌悪している。彼の独特の感受性を説明するためで
あろう。

                                                 
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